妄想がSSになってしまった
裁鬼さん出てこないし、鋭鬼と吹雪鬼の話だから、鋭鬼スレにでも書き込むのが筋だろうが
ここのレスに触発されたもんだから、スレ違いと思いつつも投下してみる
「はぁ〜また留年しちゃった……」
駅前のカフェで、長くしっとりとした黒髪と、ツンとした唇を揺らしながら吹雪鬼は頭を抱えた
白のブラウスよりも白い手で、アイスティーにミルクを入れる
「やっぱり鬼と女子大生両方って、欲張りなのかな……」
ミルクをかき混ぜながら、頬杖をつく吹雪鬼に、店にいた男達は全員溜息をついた
吹雪鬼の斜め後ろに座ってる男三人組は、「お前、声かけろよ」等と互いに言い合ってはいるが、
反面、吹雪鬼は近づきがたい空気を持つ美人であった
「吹雪鬼さん!」
「あら、鋭鬼くん。遅かったわね」
そんな吹雪鬼に、声をかけたのはまだ少年の面影を残した青年だった。まぁ、言っては何だが美形とは言い難い。何よりチビだ
吹雪鬼に見とれていた男達からは軽いブーイングが上がる
「店員さーん、俺もアイスティーで。ほら、俺ってばアイスティーが大好ティーじゃない?」
「鋭鬼くん、ここ初めてでしょうに」
「え、えぇ〜と、ダジャレなんだけど。ホラ、アイスティーと大好ティーって」
素っ気ない吹雪鬼の態度に、慌てて鋭鬼が説明すると、吹雪鬼は面倒くさそうに
「判ってるわよ、それくらい」
と言いながら、その長い髪を掻き上げた。それが非道く様になって美しい
「あ〜良かった、良かった。俺の大好ティーな吹雪鬼さんに嫌われちゃ、コンビ解消のキティー(危機)って奴?」
キティのストラップを出しながら、鋭鬼が再びダジャレを言ってる間にウエイトレスはアイスティーを持ってきていたらしく、鋭鬼のダジャレに固まっている
「あぁ、ソコ、置いておいていいわよ。彼、いつもこの調子だから気にしないで」
棘は無いのだが、優しさも無い言い方で吹雪鬼はウエイトレスに言うと、鋭鬼に向き直った
「それで?」
「ん〜ヤマアラシが出たみたい。吹雪鬼さんと俺が一番近いから向かって欲しいって」
クシャクシャにしたストローの袋に、ストローで一滴アイスティーを垂らして遊んでいる鋭鬼を「食べ物を無駄にしないの」と吹雪鬼は叱ると、立ち上がった
「お〜い、俺、まだ飲み終わってないよ」
「会計は済ましておくから、後で来ていいわよ」
「……もうちょっとデートを楽しまない?」
ストローを咥えたまま喋る鋭鬼に、吹雪鬼はそのストローを押しつけて
「マナーを覚えてから言いなさいな」
「痛てて……」
口元だけで笑う吹雪鬼と、顔全てを崩して笑う鋭鬼は対照的だった
茨城の山間地に入った鋭鬼と吹雪鬼はディスクアニマルを展開すると、キャンプの準備を始めた
関東の鬼は11人であり、基本的には三人ないし二人一組で行動するのが基本である
他にサポーターや弟子が付く場合があるが(前者では響鬼、後者では裁鬼が良い例だろう)吹雪鬼と鋭鬼はそのどちらも持たない
「ちゃちゃっと終わらせるわよ。もう山は寒いしね。泊まりは厭だわ」
吹雪鬼がその長い髪を束ねると、その白いうなじが覗いて見えて、鋭鬼はドキマキした
「……?どうしたの、鋭鬼くん。やけに静かね」
「え?いや、俺はいつもの通り、元気爆発の鋭鬼くんだぜ?」
「……やっぱり変よ。いつもの鋭鬼くんなら、ここでくだらないダジャレの一つや二つ言うでしょうに」
訝しんだ吹雪鬼に、鋭鬼はダジャレで返そうとしたとき、ディスクアニマルが半壊した姿で返ってきた
「アタリみたいだね」
鋭鬼はディスクに戻ったアニマルから場所を特定すると、地図に当たりを付けていった
「可哀想に……後でちゃんと直してあげるからね」
吹雪鬼は負傷したディスクアニマルを撫でた後、ハンカチで包んでしまうと、鋭鬼に魔化魍の生息場所を訪ねた
「ま、大体この辺りとは思うんだけどね。後はランニングしてハンティングすれば魔化魍も、捕まっかもー、なんちゃって」
「OK、じゃ、行きましょ」
「……はいはい」
頭を掻いて、走り出そうとした鋭鬼を、吹雪鬼は呼び止めた
「ちょっと待って、ここら辺、湖があるみたいね……」
鋭鬼は森を探索していた。この辺りは針葉樹林が多い
「案外、童子の方は俺の事見つけて見張っていたりしてな」
キョロキョロと辺りを見回すと、一番大きな木に印を付けておく
「この針葉樹は信用樹?」
例え一人でもダジャレを言い続ける男、鋭鬼
「しんよーじゅ?」
「シンヨージュ?」
訂正、やっぱりダジャレは人に聞いて貰ってなんぼだなと、鋭鬼は笑うと変身音叉をデコピンする
「はぁ〜〜〜でぇいや!」
緑色の炎を掻き消して、仮面ライダー鋭鬼が姿を現す
「しんよーじゅ……あ、鬼だ」
「鬼だ、鬼」
童子と姫が鋭鬼を指さすと自らの体を硬化させ、怪人へと姿を変えた
「吹雪鬼さんに、お願いな」
鋭鬼は腰に装備してたディスクアニマルを一枚展開すると、吹雪鬼の元に使わせた
「さて……と、童子がココにいるって事は……」
構えた鋭鬼の足下が揺れる。ズドンズドンという音と共に地鳴りが近づいてくる
「アリ?ひょっとして三対一?童子よー(どーしよー)」
ディスクアニマル浅葱鷲が上空から森の中の湖を見つけると、急降下する
湖の中心には吹雪鬼が水面に立っていた
「ん……鋭鬼くん、当たったみたいね」
ごくろうさまと、浅葱鷲の頭を撫でるのと、地鳴りが響いてくるのが同時だった
「吹雪鬼さ〜〜ん」
ヤマアラシに追いかけられる鋭鬼はのんきに手を振っている
「……つまらないダジャレを言われて怒ったのかしら、あのヤマアラシ」
と、溜息をつくと、吹雪鬼は変身音笛をその整った唇に当てる
「っ〜〜はぁあ!!」
鈍く縹色に光るボディに白い角――仮面ライダー吹雪鬼だ
「鋭鬼くん!打ち合わせ通り、湖の中に引き入れて!」
「オッケー!ほーら、鬼さんコチラ!!……って、鬼は俺じゃん?」
「なんでもいいから!!」
まぁ、鋭鬼のその態度にヤマアラシは怒ったらしい。湖に入った鋭鬼を追ってヤマアラシもその巨体を湖に沈めてきた
「勝兵はまず勝ちて後に戦いを求め、敗兵はまず戦いて後に勝ちを求むってばっちゃが言ってたわよ!すぅ〜〜はぁっ!!」
吹雪鬼の烈息で、湖が凍っていく
「ガル?ギャオアァオアァオッォオォォォォ!!!?!!」
足下が凍って身動きが取れなくなったヤマアラシが奇声を上げる
「吹雪鬼さ〜ん!俺も凍ちゃってるんだけど〜〜」
「音撃管・烈氷!はぁ!!」
吹雪鬼は鬼石をヤマアラシに打ち込むと、続いて音撃鳴『六花』を取り付けた
「音撃射、凍衷華葬!!」
「グルオオォォッォォォ!!!」
ヤマアラシが断末魔の叫びをあげると、物言わぬ肉塊となって弾け飛んだ。ついでに鋭鬼も
「痛てて……」
岸に打ち付けられた鋭鬼は、顔だけ変身解除をする
「出られて良かったわね、鋭気くん」
「酷いなぁ、吹雪鬼さん」
湖を凍らせて、その水面に立ったままの吹雪鬼も又、顔の変身を解く
一歩も動かないで倒したらしい
――ペキ……ペキペキ……
「え?」
足下から妙な音が聞こえて吹雪鬼が音がした下を向くと
「きゃ、きゃあ〜〜〜」
――じゃっぽ〜〜〜ん!!
「吹雪鬼さ〜〜ん!!」
「……う〜しばれるな〜〜」
ブルブルと震えながら、火に当たる吹雪鬼は、鋭鬼のTシャツを着ている
哀しいことに、サイズがぴったりなんだ、これが
「はっ……ハックション!!」
当然ながら、鋭鬼が服を二着持ってきてる筈もなく……まぁ、この寒いのに上半身裸だったりする訳で
「鋭鬼くん、こっち着て火当たりなさいよ」
しゃがんだ吹雪鬼のTシャツでは下着まで隠し切れてない訳で、鋭鬼は近づくどころか、向こうむいたままな訳で
「お〜い、鋭鬼くん?風邪ひくぞ〜?いいふりこぎしねで、火さ当たれよ〜」
「くっ……もう氷はこりご〜りだぜ!」
「……3点」
FIN