「いまになって思うんですよ。それは本当に高寺の理想だったのかな、って。……いいえ、
きっと理想ではあったんでしょうね。けれどもその理想って、ひょっとしたら、ただひたすら
今までの仮面ライダーらしくない、ということでできてたんじゃないかなって思うんです」
儲はぽかんとした。
「今までの仮面ライダーの諸要素はすでに新鮮味を失っていた。だからなくすべきだと高寺は
考えたわけですよね? するとドラマは停滞し、売上は落ち、子供たちからも支持されなく
なりました。黍団子やラッパの音などで予算を浪費し、スケジュール通りにテレ朝に納品する
こともできなくなった――そうでしょう?」
「……ええ」
「高寺は、悲劇や葛藤、バイクや変身や玩具とは何で、何のためにあり、それを盛り込むことは
なぜ悪で、なくすことがどうして良いことなのか、本当に考えたことがあったのかな。
ただひたすら、今までの仮面ライダーらしくなくするために、なくしたのじゃないでしょうか。
なくすことで何が起こるのか。そこまで考え抜いて出した結論だったのかな……」