>>61 高寺は音撃棒を握った右手にぎゅっと力を込めた。
そのとき――生きるか死ぬかの戦闘の最中だというのにもかかわらず、高寺の意識は突然、全く
別のところへと滑り込んでいた。
僕は、妥協はしないと思っているだけだよ
いつから――そうやって働いてきたのだろう? 超力戦隊が吉川のジジイに引っ掻きまわされて
から? 激走戦隊が最低視聴率を更新してから? バリンガーZがダイナミックプロの抗議でお蔵
入りになってから? 鈴木のジジイがクウガの現場に白倉と井上を押しつけてから? オダギリが
クウガを黒歴史と封印したときから? あるいはクウガの映画化が御破算になった日から? それ
ともデビルマンの映画化の企画を那須の野郎に奪われた日から? それとも――
――みんなが少しずつ、いやはやたっぷり、高寺から奪っていった。誰も高寺に与えてくれな
かった。そして高寺は、窓際族になってしまった。いやしかし――
どうでもよかった。
僕は、正しい。絶対、負けない。
高寺の腕に力がこもり、音撃棒が持ち上がった。そして「爆裂強打の型」を――
日笠の手にしたカードがぱららら、と五枚飛び出し、高寺の立っている場所から縦一列に五つ、
畳が立った。高寺の口から血が噴き上げ――上半身が後ろに反った。
日笠がキングラウザーをかかげて畳の中を突っ切った。
今度こそ高寺の体が吹っ飛び――次の瞬間、背中が濡れた地面にどっと当たった。当たった
ときには、事切れていた。いや、もうとっくに死んでいたのかも知れない。肉体的にはその数秒
前に、精神的には、響鬼のPを下ろされた昔に。
【高寺成紀(プロデューサー)更迭】残り5人
65 :
名無しより愛をこめて:2005/11/10(木) 15:18:42 ID:BBdk+kJk0
age
66 :
名無しより愛をこめて:2005/11/11(金) 18:16:56 ID:WF7S19Ww0
保守しておきますか
>>61 >>64 「あいつは――なんなんだろう? 俺にはそれがどうしても、理解できないんだ」
そういえば、白倉はもうずっと前に、わかる必要なんかないんだ、と言った。
またそう言われるかな、と塚田は一瞬予想した。
しかし、白倉の答えは違った。
「そうだな」すいと顔を上げた。「俺はあいつに似たやつを、見たことがあるぞ」
「――前の職場(京撮)で?」
「いや、そうじゃない」
白倉は首を振った。
「別のところでだ。全く別のところで。ネットでブログなんかやってるとな、いろんな
やつを見るもんさ」
白倉はまた、煙草を出して火を点けた。煙を吐き、それから言った。
「とても――空虚なタイプの人間だと思う」
「空虚?」土田が訊いた。
「そうだ」白倉は頷いた。「視聴率とか関連商品の売り上げとかに対して、いや、
いかようなオトナの事情に対しても、根をはる部分が心の中にないんだ。そういう
タイプだ。しかもそれに――多分、後先の見境がない」
白倉はそれから「てのはだ」と続けた。
「俺みたいな会社人でも、ときどき、何もかもが無意味に思えることがある。しかし、だ。
番組作りには、予算とか、撮影スケジュールだとか、そんなふうな制約もまた、あるはず
だろう。煩わしいことには違いないさ。だが、俺たちの信頼を支えてくれるのは、それなん
じゃないのか? それで――高寺には多分、そういう認識が欠落してるんだ。だからあいつ
には、オトナの配慮ってもんがない。従って、(番組作りを)楽しむだけだ。自分が何を
しでかしたのか。確固とした認識があるわけじゃない。ただ、行き当たりばったりに楽しむ
だけだ。これが俺の仮説だ」
そこまで一気に喋り、それから、言った。
「――そう、恐ろしいよ。そんなプロデューサーが番組しきるのかも知れないということも、
そして、今、俺たちがそんなやつと仕事をしなきゃならないということもな」