【お前】ゴジラ FINAL WARS 25【強ぇなぁ!】
朝日朝刊の記事(1)
荒唐無稽さ、力技で昇華 「ゴジラ FINAL WARS」
評者・江戸木 純 映画評論家
1954年(昭和29年)の本多猪四郎監督作「ゴジラ」から50年。その
集大成を目指し、シリーズ最高となる20億円の製作費をかけた第28作
である。
監督は「あずみ」の北村龍平。ハードなアクション作品で評判をとった
ものの、まだ新人同然の彼の起用に関しては製作が発表されて以来、
賛否両論が渦巻いた。白状すると、実は筆者も懐疑派だった。
結論から言えば、北村龍平はとてつもない仕事を成し遂げた。起用は
大正解どころか、2作目以降、シリーズ中最も面白いゴジラ映画の誕生
といっても過言ではないだろう。これまでこのシリーズは外部の新しい
才能の起用に消極的だったが、実はもっと早くにやるべきだったのだ。
同シリーズは、反核メッセージ濃厚な社会派パニック映画だった1作目
で誕生した“ゴジラ”という恐怖の対象を、子供たちのアイドルとして
再生・復活させ、人気を維持してきた。その一番の見せ場は何といっても、
日本が世界に誇る「着ぐるみ特撮」を駆使した怪獣たちによる「破壊の
カタルシス」だった。しかし、今や戦争や災害の悲惨な映像がテレビに
氾濫し、環境破壊に対する認識も高まっている時代、破壊は観客の
快感にはなりにくくなっている。だからこそ、怪獣映画をK-1やPRIDEの
延長線上にある究極の格闘技映画と捉えた今回の方法論は極めて
正しい。