272 :
第X話 魃槌:2005/07/18(月) 00:23:02 ID:G6nUq8fm
暗闇。足音だけが響く。「ねえ、今何処歩いてんの?」前方を歩く黒服は、無言。
「曲がった方角と歩数、全部記憶してるけどイイ?」振り向く黒服。目隠しをされた変人女。
「ジョーダンよ」くすくすと笑う。無言のまま歩き出す黒服。
やがて広い場所。床が絨毯。目隠しが解かれると視界に紅い風景が飛び込む。
「お待ちしておりました」紅い絨毯。紅い壁飾り。饕餮紋の刺繍。其の前の太った禿頭。
「非礼はお許しを、内密にお呼びしたかったもので」細い目に、じっとりとした視線。
『洪 関竹』と名乗る禿頭。用件を聞く変人女。「用が無いなら帰りたいんだけど」
禿頭が合図を送る。暗くなる部屋。目前に中国全土の地図が映る。光点が五つ。
「慌てなさんな、『月の女王』殿」にやりと笑う禿頭。眉を顰める変人女。
「ん〜・・・・」ガイドが悩んでいる。「矢張り時期が悪すぎましたねェ・・・・・」
田園地帯を走る車両。その前後に装甲車。人民解放軍の護衛だ。
現在、極東地域で四体の怪獣が確認されているという。内一体は先程のパゴス。
ウィグル自治区でマグラ。日本との領海境界付近でペスター。攻撃権で揉めているらしい。
それより。そう、変人女だ。彼女は何処に?一応警察と大使館には連絡していが・・・・・
「申し訳有りません、この混乱です。先ずは皆様の安全が第一かと」
「そんな無茶な───」云い掛けた瞬間の急停車。見ると前方を特殊戦車が通過している。
「人民解放軍の部隊かぁ?すごいねー」スミ先生が感心している。しかし、「───いいえ」
妙な旗が翻る。「コレは、『怪獣傭兵』の一団です」
「率直に云いましょう。我々は貴方を同志として迎え入れたい」意外な言葉に驚く変人女。
組織内から強力な推薦が有ったらしい。其の為の試験、ということか?
「思い出した」禿頭を見据える変人女。「人民解放軍に於ける非公式部隊『黒隊』───」
禿頭がにやにや笑う。「怪獣迎撃専門傭兵団、通称『朱猟軍』、ソレでしょう?」
273 :
第X話 魃槌:2005/07/19(火) 00:47:55 ID:SUifgdUq
「怪獣傭兵?」ガイドの解説。『怪獣の撃退・討伐』を主目的とする営利集団だそうだ。
怪獣に対して対抗手段を持ち得ない国家や公共団体が、法外な賃金で雇い入れる。
契約内容により、怪獣の退治は元より、捕獲や死骸の処理なども行う。
怪獣は存外利用価値が高い。撃退に掛かる軍事経済効果。新兵器開発における知的財産。
死骸から採れる希少物質。ゴルドンの金、パゴタ科のウラン等が代表的だ。
また捕獲研究による生化学・行動学等の分析。ペスターの回遊は海底油田開発に欠かせない。
『怪獣傭兵』、それは怪獣そのものを資源として利用する企業なのだ。
「カネになるんですよ、怪獣って云うのは」
ガイドの遠い目。地平線の向うで煙が上がっている。
丘の上から地平を望む。白煙の中に怪獣がもがいている。周辺に展開する部隊。
あれ?確かパゴスは・・・・・「生体風化爆雷なんか使ったら、死骸が劣化するでしょう?」
生体捕獲。其れが怪獣で最も儲かる方法なのだ。──────・・・「・・・あっ?」
農村一つ踏み潰して、パゴスが地下へと逃走していく。
「貴方に一体、怪獣を退治して頂きたい」中継映像を見る変人女。向い側に禿頭。
「パゴスなら1950年以降、中国では膨大なデータ蓄積があるハズだけど?」
「『金蜃事件』ですか」地図上を移動する『金蜃竜』の名の光点。
「見違わぬ様」杖で別の光点を指し示す。「こいつが、今回の目標ですよ」
急に天候が悪くなってきた。遠雷が聞こえる。カーラジオが必死で何か伝えている。
「局地的な強い低気圧の発生?んなバカな・・・・・」ぼやくガイド。
前方の山地の向こう側で、巨大な砂色の入道雲が立ち登っている。
274 :
第X話 魃槌:2005/07/20(水) 00:38:09 ID:LvWVAL4+
停車する車。今朝からの避難強行軍だ。久々の休憩。大衆食堂に入る。
人々がTVの前に群がっている。聞いてみるガイド。「・・・・・『金蜃竜』の中継らしいですね」
緊急番組らしい。周辺地図に移動予測範囲、其れに伴う避難注意報・警報が出ている。
遠雷。砂色の入道雲からだろうか。と、飯台上のコップが揺れる。
TVからコール音。最新情報。出現予測地点が特定されたらしい。騒ぐ人々。
「あれ?」ガイドが居ない。辺りを見回す。店の外で一人で立っていた。
声を掛ける。「・・・───ああ、いえ」向いていた方向には砂色の入道雲。再び遠雷。
「おお〜ゥいガイドさぁン!」スミ先生だ。「いやちょっとタイヘンなんですがねホラあのネ」
「TV中継がとんでもない事になっている。君も見たまえ」要点を掴んで云う編集長。
中に入り人々の背中越しに。『怪獣傭兵』傘下TVクルーのパゴス出現予測地点生中継だ。
何故かTV画面が紅い。紅い何かが─────いや。是は、「溶岩、だろう?」
舐めるように移動する画面。突如黒山のような物体が映し出された。
・・・────蛇腹。──前足。───双角。────長牙。コレは。この物体は。
「・・・───パゴス?」溶岩に浮かぶ。微塵も動かない。「死んでんのか?」
と、突如画面が乱れ始めた。乱気流らしい。揺れ動く画面内にまた別の物体が映し出された。
紅味がかった白金色。表面には複雑な紋様。形は何処か─────漸く安定する画面。
「何だ?」「・・・・・・金色の、亀?」そう見えた。巨大な亀。瞬間、画像が再び乱れる。
横倒しになった。どうも設置カメラが転倒したらしい。縦に映る其の物体。
紅白金色に輝く亀。ただ甲羅前部が衝角の様に張り出している。表面には饕餮紋。
「四川省北西部の古代遺跡から出現した怪獣だ」禿頭の解説。
全身から凄まじい高温を発し、地殻を融解させて其の中を移動。地上出現時は高温により
周辺に上昇気流が発生、小規模だが強大な低気圧を発生させる。
「名は『魃槌』。遺跡周辺の伝承から名付けた。貴方の倒さねばならぬ『怪獣』です」
モニターの中継映像。焼き殺されたパゴスの死体を脇に、地殻へと前進沈降していく『魃槌』。
275 :
第X話 魃槌:2005/07/25(月) 23:56:13 ID:F3ALXo0v
「それでは皆さん、私はここまでです」空港ロビー。新聞記者の一行。ガイドの挨拶。
「申し訳有りません・・・・・」事態について謝るガイド。もう2、3言葉を交わし、別れる。
目の前に大使館の手配した航空機。安全地帯への退避。──────変人女を残して。
うなだれる編集長。「彼女は一体、何処に───」と、スミ先生の奇声。「あれェ?」
雑誌記者の姿が無い。
あの繁華街に響く声。片言の中国語。罵声とともに飛び出したのは雑誌記者。
あの時、変人女は此処で消えた。手懸りを得るには此処しかない。
だが何処の店だったか───次の店に向う記者。と、何かに躓く。ガラの悪い男が三人。
裏路地に連れ込まれ、殴られる記者。意識を失う寸前─────目前を舞う白衣。
ちりん。鈴の音が鳴った。
「綺麗な髪ですね」髪を梳く女性が呟く。「下ろした方が美しいですよ」
「煙草、吸われるんですか?」粉をはたく女性が呟く。「きめ細かい肌なのに、勿体無い・・・・・」
「生憎、キレイなのは大嫌いだから」金刺繍をひらめかせ立ち上がる女。
「応援、してますよ」小声で呟く女達。
「ほぉう・・・・・」感嘆する禿頭。チャイナドレスを着た変人女。不機嫌な顔。
「戦場行く服装じゃないわよコレ」禿頭に付いて行く。成程、行き先は戦場ではない。
VIPルームだ。居並ぶのは偉そうな男達。幹部連中といった所か。
挨拶もそこそこ、早速説明。前部スクリーン。手元のモニタ。まるで司令室だ。
手元から、展開している部隊を思い通りに操作できるそうだ。だが─────
「操作マニュアルは?」無し。「部隊、及び装備データは?」無し。「『魃槌』の既知データは?」
「其れらは貴方がこれから自ら掴むべき事。期待していますよ」
────────目尻を僅かに歪ませる変人女。
276 :
第X話 魃槌:2005/07/27(水) 00:38:16 ID:i8ZZGMIF
「『朱猟軍』目標地点に展開開始」 田園地帯を踏破し展開する戦車の一団。
「『黒鵬』より『白澤眼』投下開始」 天空に航空機の編隊。ばら撒かれる何かの装置。
指示を出しているのは変人女ではない。目前のモニターだ。画面左上に『白澤』の文字。
中国全土に渡るスパコン網であり、これに対怪獣処理の大部分を任せているという。
「君はまあ、あの怪獣の正体でも考えて居給え」痩せぎすの老人の弁。厭味だ。
凭れ、目を閉じ、耳をすます。「あの連中の推薦など・・・」「何もさせねば、此処で終りだ」
────────成程。内輪紛めの茶番。己はその生贄か。
『目標現出』大きな赤文字。一斉に一方向を向く戦車の砲塔。
片田舎の神廟から蒸気が上がる。やがて火を噴き、崩れ、赤熱する岩盤が飲み込む。
一帯が灼熱する溶岩と水蒸気に覆われ、其の中に紅白金色の影。『魃槌』だ。
号令と共に砲撃開始。────轟く跳弾音。飛び散る火花。煙が渦巻く。
映像を見てざわめく男達。徹甲弾が効いていない。航空支援攻撃にも進路を変えない。
「方向は?」「大丈夫、進路上だ」男達の呟き。溶岩の海から揚がる『魃槌』。
周辺の気象が悪化。降り出す雨。湧き上がる砂色の入道雲。周辺から退避する部隊。
。頬杖を突き、腐っている変人女。「早いわねェ〜、逃げ足」厭味を一言。
「違うな、画面を見たまえ」 ・・・────怪獣進路方向に、何かの漢字表示。
突如、画面がホワイトアウト。直後に砂嵐。遠距離からの映像に切り替わる。
拍手し歓声を上げる男達。 「『太歳』。対怪獣用自律型地雷だ」
遠距離映像も衝撃波で乱れる。凄まじい。ちょっとした核兵器程度の威力だろうか?
「良かったじゃないか、これで貴方もお払箱だ」禿頭の弁。にやにや笑う。
古代遺跡からの怪獣。超古代文明の遺産の価値に花を咲かせる男達。
警告音。『注意:熱源反応有』映された文字に驚く男達。回復する映像。────『魃槌』だ。
一部装甲が剥げているものの原型を保っている。歩み出した。「馬鹿な!?」男達の罵声。
『魃槌』。その装甲の間隙には、まるで懐中時計の中の様な歯車がぐるぐると廻っていた。
277 :
第X話 魃槌:2005/07/28(木) 01:41:24 ID:2MIKWIc/
・・・・・────ちりん。鈴の音。目を開けると、コンクリートの天井。
勢い良く起き上がる記者。周りを見回す。殺風景な部屋。一応シーツの掛かったベッド。
「お加減、如何ですか」はためく白いカーテンの向こうから声。栗色の髪。丸眼鏡。あのガイド。
「・・・・・此処は?何で」後頭部に痛み。「無茶しすぎですよ、彼女の為とはいえ」
カーテン越しの強い日差し。此処は何処か。ガイドが外を指し示す。
外にはテント。兵員。砲塔。そして建物の向うに、大気に白む巨大な紅白色の影。
『・・・・・・───現在調査班対象まで20mに接近、特に異常無し』
無線連絡。VIPルームのざわめき。正面スクリーンに『魃槌』。停止している。
先の攻撃の後数分でこの状態に。しかし間隙の歯車は依然回転している。死んではいない。
『魃槌』表面に辿り着く調査班。ナイフで表面を叩く。辺りに響く澄んだ金属音。
「生体では無かったのか・・・」「やはり古代兵器の類か?金属製だな」男達の雑言。
「サンプルを。そう、表面と、あと内部歯車状部分のもね」変人女も指令を出す。
「TVの奴か・・・・・仕留めたのか?」反応しないガイド。「───いえ。そろそろ頃合、かな」
ガイドの手に小さなモノ。ヒモが付いた小さな鈴。手に持ち翳し、ちりんと一振り。
澄んだ、それでいてよく響く、しかし目立たない音。気付く兵員も居ない。
「待って、今の音は?」反応する変人女。僅かだが妙な音。澄んだ金属音────
異変に気付く調査班員。『魃槌』が音を発している。共鳴し、大きくなり、表面が振動し、
「調査班至急作業中止。現場撤退を最優先。急いで!」変人女が気付いた。
「何!?」「いかん、まずいぞ!」遅れて気付き慌てる男達。『魃槌』が起動し始めた。
『魃槌』に接近していた装甲車達が慌てて後退していく。既に陽炎にゆらむ怪獣の姿。
「さ、行きましょう。歩けますか?」起こされる記者。脚は大丈夫だ。しかし───
階段を降りる。玄関。外は退避する兵員と軍用車で一杯。其の中をガイドは気にも留めず進む。
「彼女、助けたいですか?」振り向くガイド。「もう、諦めなさい。彼女は既に────」
ガイドの背景。砂塵の渦を巻き始めた『魃槌』。「この『怪獣の世界』に取り込まれたのですから」
278 :
名無しより愛をこめて:2005/07/29(金) 16:46:09 ID:MN32AmEY
ageてみた
279 :
第X話 魃槌:2005/07/31(日) 01:26:31 ID:9bIsfX0a
並ぶデータを眺める変人女。「・・・・何だ是は?」VIPの内、サングラスの男が騒ぐ。
サンプル含有成分グラフ。何処で間違えたのか?騒ぎを制止する変人女。
手に持つ光沢のある歯車。サンプル現物。叩くと、妙に軽い音。
「間違い無いく人工樹脂製─────しかも、工場に於ける大量生産品です」
その他のサンプルデータの表示。「これらも同様、未知の技術の産物は一切認められません」
それでは、あの饕餮紋の怪獣は。「・・・───超古代の遺物などでは無い。
「極最近建造された人工物、そう考えるべきでしょう」
竹林の中を歩む記者とガイド。長い坂。「────諦める気は、無いんですか」
「当り前だ」一瞬の問答。再び沈黙、坂を登る。「────貴方にとって、彼女は何ですか」
何って────────・・・・・詰まる記者。心には有る。言葉には無い。顕せない。
「助ける考えに、変わりは無い」そう答えた記者に、投げられる白い布。
「ならば、同朋になって頂きましょう」坂の頂上。竹林の向うに崖。見える景色は先程の町。
ちりん─────────先程の澄んだ良く響く鈴の音。と、後ろの藪から音。
白い導師服。奇妙な仮面の四人。二人ずつに分かれ、各々銅鑼と撥を出す。
じゃあん。廃墟の町に響く音。煙を上げる倉庫に、折れた電柱に、血塗られた家屋に。
じゃあん。音に誘われるが如く、人影。そこかしこから何人も。皆白い布を身に纏う。
じゃあん。突如、首を掴まれる記者。ガイドの眼鏡の反射。白い布が目前を覆った。
「役に立って頂きますよ」
「『太歳』全機配置完了」「全部隊配置完了」第二次作戦準備の報告が入る。
アラーム音。不正アクセスが有ったらしい。「日常茶飯事だよ」『白澤』に対応を任せる。
やがて目標攻撃地点到達。攻撃開始。砂色の積乱雲に砲撃が開始される。
再びアラーム。「何だ?今日はやけに多いな」念の為『白澤』自己診断走査が開始される。
280 :
第X話 魃槌:2005/07/31(日) 23:32:39 ID:d+/abppE
猛烈な嵐の中を中心部へ向う幾つかの砂煙。『太歳』だ。
編隊を組んで暴風圏に侵入。内2機が怪獣に迫る。「泰山府君の御許へ逝け、怪獣」
『魃槌』は止まらない。『太歳』機関停止。脚を踏み出し、閃光が──────
────『太歳機能停止、応答無し』
「不発だと!?」驚くVIP。もう一機を向わせようとした所、閃光、爆発。同時にアラーム音。
『白澤』に侵入者。複数箇所からの同時アクセス。ファイアーウォールが効いていない。
再びアラーム音。何と、後方待機中だった『太歳』が起動している。
担当班に連絡。起動は『白澤』からの指令通りだと云う。だが次の瞬間、移動を始めた。
『各部隊より連絡、電子機器系統に異常が起こっている模様』通信班からの連絡。
赤く警告を発する自己診断走査。その下では正常な顔をして異常行動を起こす『白澤』。
間違いない、『白澤』が乗っ取られている。
「侵入速度が速すぎます!」「命令系統変更、『白澤』を情報網から隔離の後、電源を落とせ!」
「命令拒絶!『白澤』外にも侵入の模様」擬似情報により各部隊が転進し始めた。
防空レーダーに反応。近隣空軍基地から支援戦闘機『窮鬼』5機が上がっている。
砂色の積乱雲を旋回する戦闘機『窮鬼』。前進する戦車『刑天』。『太歳』の砂煙。
乗っ取られた。完全に、『朱猟軍』が乗っ取られた。そして、部隊の行く方向は────
「待て、この方向は?」「真逆────」使用中作戦案ファイルの検索。間違い無い。
作戦案白23号。進行方向は──────────────北京。
「おい、あの女は?」皆が一斉に振り向く。其処には空席が一つ。
VIPルームから、変人女の姿が消えていた。
281 :
第X話 魃槌:2005/08/01(月) 01:25:21 ID:/yjrutgr
廊下を歩く変人女。脇の電子板に矢印。其の方向に進む。暫らくして丁字路。
真っ直ぐ行こうとすると隔壁が降りる。「・・・・ヘイヘイ、行くなってんのね」
暫らくして向うから人の気配。脇の部屋に入り、ロッカーの陰に隠れる。警備兵だ。通り過ぎる。
────と、警備兵の声。発砲音。倒れる音。すろすろと進む音。見えた。
白い導師服に奇怪な仮面。両手に装剣銃。ふ、と此方を見て、再びすろすろと去る。
驚きつつ、近くにあった箒を握り締める。何だ今のは!?
「探せ!まだ敷地内に居る筈だ!」叫ぶVIPの男達。懸命に変人女を探す。
其の間にも状況は悪化。着実に北京へ近付く砂色の積乱雲。このままでは拙い。
「中央へ連絡を─────」と云った禿頭に突きつけられる銃口。
白い道服。妙な文様の羅羽織。「無理ですよ」云ったのはあのガイド。歯軋りする禿頭。
「御前の仕業か・・・・・李 連開同志」
暗がりを走る変人女。おかしい。兵士でない者がうろついている。一般人の様だ。
皆頭や肩に白巾を巻いている。だが、先程からの誘導により直接遭遇はしていない。
又電子板に矢印。微笑する変人女。「全く・・・──あんたのお名前、何てェの?」
背後から到着音。エレベーターだ。扉が開く。身構える変人女。扉の向うに、異形の顔。
「な・・・・・!」異様に飛び出た瞳。黄金の仮面。纏われる白巾。変人女に飛び掛る。
のし掛かられ倒れる。目前に蛮刀。箒の柄で必死で止める。男の腹に蹴りを入れ、離れる。
男と向き合う。息が荒い。そうだ。この仮面何処かで見たことがある。確か─────
男の突き。変人女も同時に突く。男の一撃を必死にかわし、肩に一撃。
「『縦眼仮面』!?何者よあんたら」───男が空いた片手にもう一つ蛮刀を出す。
殺られる──────其の刹那、軽い破裂音。男がよろめき、倒れる。
侵入者用のスタントラップだ。微塵も動かない仮面の男。仮面がズレている。小突いて外す。
其の素顔は──────「へ?」・・・・・雑誌記者。白眼を剥き泡を吹いている。
「ちょ・・・・何・・・こんなトコで文化財被ってテロってんのよ!コラぁ────!!」
282 :
第X話 魃槌:2005/08/01(月) 23:27:52 ID:AYuqWkKe
「目的は何だね」葉巻の首を飛ばす禿頭。VIPルームには白い影が四つ。いずれも銃を構える。
李が段を降りる。「判っておられるのでは?」ふわりと羅の裾が舞う。
葉巻に火を付ける禿頭。「・・・・・・『朱猟軍』の占拠、そして掌握」李の流し目。「・・・・・それで?」
目線が合う。しばしの睨合い。笑い出す李。「やはり判って居られない様だ、よろしいか?」
目的は、『朱猟軍』による北京中央の転覆。そして───「革命か?流行らんぞ今時」
「革命?骨董品を弄ぶ趣味など有りませんよ」両手を掲げる李。
「我等の、目的は」両の手の間に、モニターの『魃槌』が映りこむ。
「檻の破壊。鎖の断裁。楔の抜砕。万物の破戒────────」眼鏡の奥、鳶色に光る瞳。
「そして、天地は原初の霧中へと立ち戻る」
手を下げ、禿頭に近付く。「────で、貴方に質問です。彼女は、何処ですか」
ホールの放送室の中に隠れ、一息付く変人女。引きずられる記者。まだ気絶している。
窓から外を覗く。白い布を被った者達がうろついている。────と、妙だ。
片腕をだらりと垂れ下げながら歩いている者。腕というより、手提げ鞄の様な────
「彼女?『月』のお姫様の事かね」ご名答、といった表情の李。あの変人女を、何故?
「────彼女は、私と同じだ。同じ魂の主だ」────故に、共に。
「お前の推薦したあの女か。逃げたよ」するり。「嘘は、良くありません」ちりん。鈴が鳴る。
モニターから閃光。アラームが鳴る。『太歳』が北京近郊北西部で爆発したのだ。
天安門広場。観光客が突如の轟音に振り向く。其の方向にキノコ雲。
其の背後には、うっすらと砂色の積乱雲。いや、もう既に其れは───────
積雲の壁。稲妻の柱廊。其れは恐るべき雲塊の城塞。
283 :
第X話 魃槌:2005/08/02(火) 01:05:07 ID:GS8X+lZB
「さあ、彼女は?」鈴を掲げる李。す、と口の端を上げる禿頭。「・・・・・『夢観屋』君」
葉巻を吸う。「矢張り御前は解ってないな、『朱猟軍』がいかなる物か」暗室の一筋の煙羅。
『朱猟軍』を始めとした怪獣傭兵は対怪獣を想定した集団。怪獣には強いだろうが───
「猟師がいくらいきがっても、ヒト狩り専門集団に勝てると思うか?」
其の瞬間、跳ね飛ぶ李の身体。砕ける鈴。機関銃音。倒れる白衣の仮面導師達。
黒い戦闘服の男達が乗り込んでくる。幾つもの足音。無線の声。銃声。
倒れ伏した李。見開く瞳。見下ろす禿頭。「そォら、英雄たちのお成りだ」
助け出される変人女と雑誌記者。変人女の前に戦闘ヘリ。火焔輪の文様。
「ああ・・・・・」人民解放軍対テロ特殊部隊。「・・・────『那托』、か」
目を覚ます記者。「・・・・?これは・・・・・」「大丈夫、休んでな」目前の車両に乗る。
倒れ伏している白衣の男達。裾から覗く機械の腕。────そうか。彼らはロボットだったか。
発信する車両。其の背後には、煙を上げる『朱猟軍』基地。
病院。向うから掛け声。見ると編集長とスミ先生。心配して残っていて報せを受けたらしい。
「?彼女は?」「ああ、ちょっと、友人の所に─・・・・」
戸を開ける黒服。「事態は急を要します、手短に」「わーってるわよ」病室に入る変人女。
白いシーツ。点滴。人工呼吸器。鼓動のモニター音。横たわる、『夢観屋』。
脇の椅子に座り、ベッドに肩肘を突く。『夢観屋』が薄眼を開けた。」
「や」 ・・・・・・────ああ
「・・・・・・・どんな、気分?」 ・・・・・────悲しい様な、満足な様な
「解かり難いわね、昔と変らず」 ・・・・・────ごめん
284 :
第X話 魃槌:2005/08/04(木) 00:00:07 ID:4T3hO/tf
「貴方が、あの怪獣を創ったのね」 ・・・・・────ああ
「何故、そんな事を?」 ・・・・・────そう、何故、この国、
・・・・・────この世界には、怪獣が居ない
・・・・・────1950年以来、幾度も怪獣達に見舞われたこの世界、
・・・・───襲われ、克服し、刻を重ね、捕らえ、利用し、
・・・・・────やがて全て日常と化し、怪獣もまた日々の生活の糧へ
「我慢、できない?」 ・・・・・────悲し過ぎる
・・・・・────日常世界の一部、其れはもう怪獣ではない
・・・・・───君も、そう思うだろう?
・・・・・────悲しい顔を、するのだね
両手を重ね、顎を立てる。
「只座して来訪を待つモノ、それが彼ら。ヒトの貴方が創るモノなら、其れもまた日常の欠片よ」
『夢観屋』の瞳が、ゆっくりと閉じる。拍動の波が平らかになった。
促され部屋を出る変人女。少し振り向き、「・・・────バイバイ、『夢観屋』」
病院の外に出る。強風。砂埃が舞い目も開けられない。スミ先生がウヒョーとか喚く。
変人女が出てきた。「・・・・あ、如何だった」「御免、まだ用事あるから待ってて」
黒服に連れられ、大型軍用指揮車へ向う変人女。目前には雲塊の城塞。
「お急ぎを、将軍と主席がお待ちです」
昔々あるとこにウルトラマンとオバケのQ太郎がいました。
二人はホモに走ってウルトラQが出来ました。
きゅっきゅっきゅっ
うるとーーらQ!
ぼくはオヤジのQ太郎
頭のてっぺんに毛が3本屁が3ボン
だけども僕はトベルんんだ。
主題歌できました平成のウルトラQで使ってね
287 :
第X話 魃槌:2005/08/05(金) 01:02:44 ID:J8gTsF4d
暗い車内。目前に積乱雲。背後に黒服。「君か、あの男の同窓というのは」其の先にはスピーカー。
「では見せて頂こう、我々政府、及び人民を救う術を」又別のスピーカー。姿は、無い。
目前に砕けひび割れた鈴。コードが繋がる。変人女の解説。
「『魃槌』の命令系統は、恐らく特定物質同士の共振に関係するものでしょう」
鈴の音波と『魃槌』の一部を共振させ、命令を伝える。其れを利用するのだ。
鈴に特定の命令を連続的に伝達させ、『魃槌』を暴走。発生温度を際限なく上昇させる。
其の先は、メルトダウン。「駆動源すら判明していない現状では、これが唯一の可能性です」
「─────よろしい、始め給え」其の声と共に、起動する装置。
闇の中に鈴の音。蝉が鳴くような、機械的で耳障りな音色。
モニターを見つめ、鈴を見つめる。やはり破損個所による雑音。発生音域を変える。
あまり変化はない。『魃槌』の影が雲間に見える。「─────忘れたのかね?」姿無き声。
「其処は怪獣進路の最前線だ、君も、連れも生きて帰れんぞ」───歯軋り。
と、モニターの片隅に矢印。何処かで・・・・・そう、脱出時の、あの案内者のモノ。タッチする。
『刻 至らずして 鈴の主は彼岸へ消ゆ』
一瞬、澄んだ鈴の音色。響いたと同時に飛散する鈴の欠片。思わず眼を庇う。
響く共鳴音。『魃槌』からだ。同時に白く輝き白熱していく。「───!出してください。早く!」
車両が動き現場を離れる。「『魃槌』から半径20kmから人払いを。後───・・・・・」
揺れに身体を支える。「彼──────李 連開の、居る病院へ」
車両から降りる。病院の方が騒がしい。「おい、大変だ!あの男が────」
軍関係者の蠢く病室に入り、カーテンを開ける。其処には伽藍堂の、真っ白なベッドが一つ。
暑く白い風がカーテンを波立たせ、病室を吹きぬけた。
288 :
第X話 魃槌:2005/08/07(日) 00:09:43 ID:XkUpNbjp
騒めき。遠いアナウンス。受付を済ませ、小走りに移動する雑誌記者。
空港のロビー。細く立ち昇る煙。椅子に座りTVを観る変人女。天安門広場からの中継映像。
大分治まってきたようだ。首相による終息宣言も予定されている。
北京郊外にてメルトダウンした『魃槌』は、凄まじい低気圧を発生させながら沈下。
自重で自ら発生させた溶岩中に沈んだ。やがてマントルまで突き抜け分解されるだろう。
沈下開始時は低気圧の激しさの為北京から政府関係者の脱出まで行われたそうだ。
「よォ」記者が声を掛け、チケットを渡す。「?後の二人は?」
空港職員に捕まっている。どうも禁輸品をお土産にしていたらしい。今事務所で取調べ中だ。
「まぁたあの先生は・・・・・」呆れ笑う変人女。だが目線はTVを外れない。
「・・・・・気になるか、未だ」応えない変人女。思うのは恐らく、あの男。
あの時消えた『夢観屋』の遺体。軍警察の大捜索にも関わらず発見されなかった。
何処に消えたか。そもそも生死は。「────まぁ、ね、大丈夫」煙草を吸う。
「おお〜い!」編集長とスミ先生だ。「いやはや全く、すまん」「何持って帰ろうとしたんです?」
「パゴスの鱗ですヨン」・・・・・呆れて物も云えない。兎に角全員揃った。搭乗口へ───
と、TVによる速報。『魃槌』の地下20kmでの反応消失を告げた。歓声を上げる人々。
其の横で変人女が固まっている。「?どした?」眉をしかめ、一言。「・・・・・・・・・浅すぎる」
「は?」「───んにゃ、何でも無い」振り返り、搭乗口へ急ぐ。
飛び立つ旅客機。窓に変人女の顔。翼は雲を抜ける。雲海に何処かの山嶺。
山頂に何かの廟。門前に立つ白道服の男。丸眼鏡。薄い栗色の髪。天を仰ぐ。
廟の背後の霧が晴れる。其処には────茶銅色の大亀。生える木々の間に饕餮紋。
振り向き、廟の中へ入っていく白い男。風が吹き───────全て、雲海の中へ。
289 :
第X話:2005/08/07(日) 00:22:13 ID:XkUpNbjp
島の生活はきつかとです
最も恐るべきは女性事務員が皆腐女子だった事です(´A`)ノage
290 :
名無しより愛をこめて:2005/08/07(日) 23:04:29 ID:BnVfs5iG
>>289 がんばれ!
逆境こそ作家に名文を書かせる好機会!!
と・・・変な励ましを・・・
夕闇の林道。瞬く街灯に羽虫が纏う。草叢には虫が鳴く。其の向う、峠の頂上。
箱バン、軽トラ、4WD。バイクが数台。群れ騒ぐ人々。親子連れ、カップル、大学仲間。
「ねぇ、まだ──?」「も少し待てって」大学生が携帯をいじる。「そろそろだろ。日も沈んだし」
やがて釣瓶落としに日は沈む。星が出てきた。と────「あっ!あれ!!」
峠から見える谷間に灯が見えた。杉林の間をゆっくり動いている。どよめく人々。
灯は高度を上げ、空中へ飛び出した。上がる歓声。見ると、谷間の彼方此方に似たような灯。
首乗峠、通称『貫玄さんの見晴台』。
此処最近、毎晩此処では謎の光が谷間を飛び廻るという怪現象が起こっていた。
正体については皆目不明。只、現象がネットで紹介され少しずつ見物人が現れている。
今度は地元TVも来ると云う。後少しで観光地化するのだろうか?そんなある夜─────
「──────ねえ、あれ何?」指差す其の先。いつの間にか杉林の中が光っている。
其の光を逆光に、奇妙な人影が動いていた。上半身を上下させ、地面を何か探す様な。
どうも人形かロボットじみた、ぎこちない動きだ。「あれ───もしかして、宇宙人?」
「マジ?俺見たの始めて」見物人達が騒ぎ始めた。戯れにライトを向ける者も居る。
「でかいよな、アレ」確かに近くの古看板に比して大きい。4,5m程?間違いなく人ではない。
「おい、ヤメロッテば」響く高い音と共に、人影に向けて花火が打ち込まれた。遠くで破裂音。
同時に、奇妙な人影を照らしていた光が消えた。宙を舞うあの灯も居ない。
人々の溜息。と同時に背後の林から強烈な光。「え?ひえええっ!?」
逆光に照らされた巨人の影。其れと共に、虫の声の様な、電子音の様な音。
泡を食って逃げ出す人々。車に乗り込み急発進。次々に峠を下る。一台バイクがこけた。
起き上がって振り向くと、逆光の影が此方に蠢いている。バイクを置いて走って逃げた。
光も人影もすうと消えると、あの灯がふわりと現れ、谷の方へ飛び去った。
292 :
第X話 異棲人来訪す:2005/08/11(木) 01:49:14 ID:oc203wDe
ブラインドの下りたオフィス。キーを叩く音のみ響く静寂。「おかじー先輩聞いてますぅ?」
音は休まない。「もうヤなんですよあの子ぉ〜」一方的に話す女性。頬杖を突くショートカットの顔。
「じっと天井の端っこ見つめたり、変な所に話し掛けたりモウきしょいんですよぅ」
「ヒマだからって一人でダべんな、もう6時廻ってるぞ早く帰れ」冷たくあしらう。
「え〜、だってぇ・・・・・」まあ判る。なるべくあの子に会いたくないのだ。
しょうがない、と帰り支度を始めた。ネットカフェにしけこむらしい。「──それじゃ〜」
と、開けた扉の向うに人影。 「・・・・・おむかえにきた」引きつる女性の顔。
つぶやくおかじー。「よかったじゃねーか、小坂」
晩の帰り道。前方に双尾髪の少女、後ろにおかじーと飯嶋。公園緑地内を近道する。
変人女達の中国旅行。其の間のチーコちゃんの面倒をこの小坂は任されたのだ。
行きたいイベントがあったので旅行を辞退したらこの始末。「・・・あんまりですよぅ〜」
留守番を任されたおかじーはその愚痴をここ数日聞かされているのだ。
「恨むなら自分を恨め、あと其の口調止めろ」「何ですかこのチビハゲクソオタ」
雰囲気が険悪に・・・・・と、チーコちゃんが立ち止まっている。茂みに片手を入れていた。
「あれ?どしたの〜?わんこでも居たぁ〜?」小坂精一杯の猫撫声。「ん、ちがう」
茂みから手を離す。と、ずるずる。ずるずるずる。ずずずずず。
「待った!チーコちゃんいいから!ゴミはいいから!」ボロのシートを引きずり出してきた。
「このひとがたすけてくれって」理解できない二人。「かえりみちおしえてくれって」
指差すチーコちゃん。眉を顰める岡島と小坂。
其の先には、枯葉のついた小汚いブルーシートが有るばかりであった。
293 :
第X話 異棲人来訪す:2005/08/15(月) 00:09:46 ID:Zd+Ok1iz
「で───あれからずっとか?」「そーなんですよも───考えられますぅ?」
小坂の部屋。背後で遊ぶチーコちゃん。手にはあのブルーシート。
何でもそのシートを相手に会話しているらしい。「もういいかげん───あの、聞いてます?」
「今な、来客中。愚痴はもーいい」携帯を切る。
「で、何でしたっけ───弓取サン」来客ソファに座る男。背広だがネクタイをしていない。
「ああ、あのニュース、知ってるかい?」TVニュース。首乗峠の怪光パニック事件の続報。
怪光出現の見物に来た人々が巨人の影に追われ、パニックで数人の怪我人が出たのだ。
「如何思う?」そりゃあ、まあ───「宇宙人、ですかね」「ご明察」笑う弓取先生。
「1947年のアーノルド事件以来、宇宙人来襲の話は枚挙に暇が無い。だが────」
今回の宇宙人らしきものは未だ正体不明。「其処で、だ。その正体とやら、突き止めてみんか?」
編集長もスミ先生も、あのウザい変人女も不在。好き勝手も出来よう。
「彼らのハナを明かしてやろうじゃないか!」
繁華街の裏道。とある飲み屋。「・・・・・・・で、何で飲み会になるんですか」
「親睦会も兼ねた会議だよ」何人も集まった関係者、というか同好会、というより魑魅魍魎。
弓取サンの挨拶もそこそこ、早速酒が進む面々。小説家、ライター、漫画家、研究者(自称)。
漸く本題に入る。「で、アレの正体なんだが・・・・・」「まあ、宇宙人だろうな」
「宇宙人たってピンキリだ。俺はアレはバルタン星系だと思うね、瞬間移動するし」
「分身してねーじゃん!第一有りふれてんだよバルタン系は。セミ面は見飽きた!」
「私はプラズマ生命体の一種だと思う。本体はあの光球で巨人の影はダミーだろう」
「ベムラーじゃ有るまいし。探査ロボットの線は?無いか?」 「ウンモ星人だろ」
「亡霊の一種とか。確か昔防衛基地に入り込んだのが居たな」 「ウンモ星人だって」
「地球産てオチは?」「オメガファイルか?ありゃヨタ話だろうに」 「ウンモ星人は〜?」
「黙れ」 「黙れよ」 「黙ってろボケ」
「ヘイ」
ちんちんいれすぎてまんまんガバガバ
好きなんだけど・・・結構面白いと思うんだけど・・・
何か小難しいよ!もっとこう・・・カネゴンのような・・・。
296 :
名無しより愛をこめて:2005/08/15(月) 17:08:13 ID:9hCeRiz0
ウルトラQの脚本を書いた山田正弘氏が亡くなりました。74歳
ペギラもカネゴンも、育てよカメも、鳥を見たもみんなこの人。
合掌。
結局、会議は平行線、というより酒が進んで話が進まず、そのまま解散となった。
夜の歩道橋。おかじーとうずくまる弓取サン。「う、うううん・・・・」「ちょ、こんなトコで・・・・・」
手摺にもたれる弓取サン。目の前には公園の緑地帯。あちこちに街灯の灯り。
と、其の中の一つがゆっくり動く。「・・・・・うぁ?」弓取サンが気付く。
木陰に揺らめく灯。おかじーも気付く。やがて緑地帯の一角に─────
「おお・・・・・!?」「ま、まさか・・・・・」逆光に照らされた人影が蠢き始めた。
「ミンナ非常召集だああああああああああああっっっっ!!!!!!」
翌朝、会社の会議室に集められた昨夜の面々。張り切る弓取サン。うつむくおかじー。
「いいか皆!ついに昨夜この東京都下、しかもえらい近所で宇宙人が目撃されたっ!
「千載一遇!まさにチャンス!私はこれより『ヒトダマ宇宙人捕獲作戦』を提案するっっっ!」
誰も聞いていない。何せ皆二日酔いなのだ。一人ハイテンションの弓取サン。
「日下部先生、確か宇宙生物捕獲ケージの開発をされてましたよねっ!」
「あ──・・・・、まあ使えん事も」「そんな半端使えんのかぁ──?」「な・・・何を云う多田!」
「失敗は許されんぞ?ま、珍発明してもナぁ」「大丈夫に決まってる!俺の発明だ!特許も取ってる!」
・・・・・・・・・何か皆さんハイテンションになってまいりました。
会議室を出るおかじー。接客ソファにブルーシート。チーコちゃんだ。「・・・・あれ?学校は?」
「夏休みですよぅ」小坂の声。かなり弱っているらしい。シートに話し掛けるチーコちゃん。
「おかじまさん」突如の呼び掛けにビビるおかじー。チーコちゃんだ。「な・・・・・何?」
「このひともほかくさくせんにいきたいって」
『エイエイオー』会議室から面々の掛け声が響く。
298 :
第X話 異棲人来訪す:2005/08/19(金) 17:01:37 ID:zdMGb34W
夕方。外で弓取サンの大声。例の捕獲ケージが来たらしい。「・・・おおい、大きすぎるぞー」
軽トラの周りで騒ぐ面々。夕日の差し込む編集室。見下ろすおかじー。
「行かないんですかぁ?」「これ以上付き合ってられるかって」・・・・・帰り支度をする小坂。
「え?おい、この子は?」「すいません、今日合コンなんで頼みます〜」「おい!ちょ」
止める間も無く行ってしまう。横目に見る。ブルーシートと遊ぶチーコちゃん。
溜息をつき、椅子に座る。「────そいつと遊ぶの、愉しいかい?」
頷くチーコちゃん。「そんなに愉しい?」「いろんなことができるから」説明するチーコちゃん。
──例えば。豆粒程に小さくなったり、ビルよりも大きくなったり。
──天高く飛び上がったり、驚くほど高速で移動したり、分身したり。
まるで宇宙人だ。いや?元々そういう設定だったか?「・・・へええ?どんな奴なの」
山型に盛り上がったブルーシートをつまむ。捲くると──────
──────虚ろな瞳がこちらを見つめた。
尻餅をつく。・・・・今のは!?
鈴虫が鳴いている。夜の公園。茂みに隠れる弓取。サラリーマンが避けて通る。
ゴーグル、迷彩服、ヘルメット。背後の軽トラに満載の謎装置。ニヤリと笑う。二人帰ってきた。
「準備完了」「OK!来るなら来いフッフッフッフッ」バカップルが驚き飛び退く。
緑地帯を通るバカップル。茂みに入り抱き合う。顔を近づけ─────照らされる二人の顔。
輝く光球が二人の頭上に降臨していた。
「来た────────!!!」喜ぶ弓取。「よーし先ずは・・・・何だっけ、北川先生」
「矢張り先ずはコミュニケーションを」「正体の確認が目的だ!捕獲捕獲!!」
「野蛮だな」「うるせー、よ毎度毎度キレキレテとか役立つか!」「やはり此処はウンモ星人に」
「煩い」 「うるせー」 「小煩い」
「ヘイ」
299 :
怪獣大戦1:2005/08/19(金) 20:40:33 ID:v8pYwgr5
ここはマンモス都市、東京である。
突然、道路に亀裂ができた。そして、1対の長い目をもった巨体があらわれる。
「ぎゃおーーーーー」
その巨体はナメゴンだ。ナメゴンは目から光線を発射し、車を焼き尽くす。
ずががーーん。ずががーーん。
ビルヂングを押し倒しながら進むナメゴン。
東京は地獄と化してしまったのだ。
300 :
怪獣大戦2:2005/08/19(金) 20:41:06 ID:v8pYwgr5
ナメゴンの存在に気がついたのか、地中から2体目の怪獣が現れる。
毛で覆われたその怪獣はモングラーだ。
「ぐおーーぐおーーー」
モングラーは地響きするような大きな声で鳴き、ナメゴンに突進する。
どかーーーん。
2体の怪獣は激突。お互い倒れてしまう。
先に起き上がったのはモングラーだ。
モングラーは倒れているナメゴンの目をつかむと、蝶々結びにしてしまった。
これはたまらないナメゴン。
ナメゴンは地中に帰って行った。
「ぐおーーぐおーーー」
モングラーは勝利の雄たけびをあげた。
301 :
怪獣大戦3:2005/08/19(金) 20:41:54 ID:v8pYwgr5
そこに到着したのは万丈目淳の車である。
車から万丈目淳と銀色の銃を持った一ノ谷博士が降りてきた。
「万丈目くん、この銃で怪獣を倒せるはずだ」
「分かりました」
万丈目は博士から銃を受け取ると、モングラーに銃口を向けた。
ビビビ・・・・・・・!
銃口から勢いよく光線が発射された。
光線は宙を切り裂き、モングラーに命中した。
「ぐおーーーーーー・・・・!」
モングラーの断末魔だ。モングラーは燃え尽きたのだった。
こうして、万丈目と博士で怪獣は撃退されたのだ。
チャンチャン
公園の中心に舞い降りる光球。光が地表へ放たれ、巨人が降り立った。
錨型ないし茸型の頭部。虚ろな瞳が輝く。逆光に照らされる身体。猫背で周辺をうろつく。
「いいか、捕獲!捕獲するぞ!準備は?」「何時でも・・・・・おお!?」
光球から再び光。巨人が降り立つ。これで合計3体。「おい・・・如何する?増えたぞ」
「装置に問題は?」「無い。複数体でも捕獲可能だ」「よし・・・・・スイッチ入れろ!」
公園各所から光。ビビるバカップル。脈動する緑の光輪が出現し、瞬時に縮小する。
縮小した中心部に────あの巨人達。縮小する輪に押さえられ移動する巨人の身体。
只どうも意に介さない様だ。慌てるそぶりは無い。
「やったっ!」「よーし!ケージスタンバイ!捕縛光輪焦点合わせろ!」更に縮小する光輪。
と、巨人たちが背を向け、一箇所に集まった。────いや、というより────
「へ?」数回閃光。と共に、「わ?おわ!?おああ!!?」巨人がゆっくり起き上がる。
「じゃ、そいつはあの宇宙人の仲間なんだね?」「うん、そ」夜の道路。
軽四を運転するおかじー。助手席にチーコちゃん。「迷子になったから仲間のトコに、か」
「うん、そ」しかし何故、宇宙人が迷子になってブルーシートなぞに化ける?
「モギサンがヘバネってモルモルモルったとどうじにウメポジーになったから」
「・・・・・はぁ?」「げんごやにがいとうたんごがそんざいしないからせつめいできないって」
「・・・・・はぁ」まあ取りあえず、弓取サン等の居る公園に行けば何か────
そろそろ横に見えるハズ。
───高架から見える公園緑地帯。40mは有ろうかという宇宙人が猫背で立っていた。
あっけに取られるおかじー。「・・・・・・・・うそン」
はしゃぐ弓取サン。「おー!巨大化したぞー!流石宇宙人!!」「弓取サン、あの」
「何よ」「ヤバい」「ん?」巨大な宇宙人が両手を上げる。いとも簡単に弾け飛ぶ光輪。
ぽかんと見上げる面々。猫背の宇宙人が此方を向いた。両掌をヒラヒラさせている。
虫の声の様な、電子音の様な音。脚を踏み出してきた。
「え」二歩目。「、に、」三歩目。「・・に」宇宙人が腰を曲げて此方を見降ろして来た。
「逃げろ────────!!」号令と共に散り逃げる面々。
何と弓取サンは宇宙人の股の間を通って逃げた。其れを眼で追いもんどりうって倒れる宇宙人。
やっと公園につくおかじー。入り口に赤色灯。既に警察が着いているらしい。
樹々の向うで巨大な宇宙人が暴れている。「うわ、やば・・・・」何処から入るか。
と、其の横のフェンスの破れから女が出てきた。「・・・・・あれー?先輩?チーコちゃんも?」
「小坂?お前何で」「デートしてたんですよココでぇ〜そしたら、こんなんだしんも〜」
「彼氏は?」しばし沈黙。「・・・・・・あ」
ヘロヘロになって逃げる男。其の横に付く弓取サン。「おーさっきの色男!大丈夫か!?」
男が加速した。「オイ待てよ、大丈夫!宇宙人は」・・・・・振り向くと後ろに付いて来ている。
「わー!付いて来んな!」手を振り上げる宇宙人。樹やベンチを持ち上げ投げてきた。
「だ〜っはっはっは!当るかそんなもん!」次に持ち上げたのは、公衆便所。
「ウわや─め─て─!それだけはやめて──!?」
走るおかじー、チーコちゃん、小坂。ブルーシートがずるずる音を立てる。
向うに巨大な宇宙人。其の前を走るのは、「───弓取サン!」「おお!岡島君!」
・・・・・何か汚れている。「ムわクサッ」「ごめん、ちょっと当ったの」
前に出るチーコちゃん。ブルーシートを構える。「お?何この子?」「ええ、あのシート・・・」
シートの中の宇宙人が、巨大化した宇宙人を説得してくれると云う。「・・・・マジかっ!?」
巨大な宇宙人が迫ってきた。砂場の滑り台の上でシートを掲げるチーコちゃん。
「チーコちゃん!今だ早く!」声と同時に、巻かれていたブルーシートが開く!
ひらん、ひらん。ブルーシートの中から現れたのは、
無邪気な宇宙人の落書き。
「・・・・・・・・は?」・・・・・・皆、開いた口が塞がらない。
見下ろす巨大宇宙人。目の前の滑り台上で、落書きがひらひら振られている。
虚ろな瞳が細くなった。と、腰を上げ、上を向く。光が照らされた。あの光球だ。
宇宙人の身体が持ち上がり、光球に吸い込まれていく。
完全に宇宙人を吸い込んだ後、ドクリと一回脈動して、光球は北北西の空へと去って行った。
あっけに取られる面々。弓取サンの仲間も集まってくる。
ひらん、ひらん。滑り台の上では、チーコちゃんがまだシートをひらひらさせていた。
真夜中の編集室。「───成程、眼のトコに蛍光塗料が使ってある」弓取サンがシートを調べる。
「でもコレを本物と間違えるとはネぇ」「・・・・・もう勘弁して下さいって」
多田サンと北川が酒とツマミを買ってきた。既に出来上がっている。呑み散らかす面々。
「でも何で落書きで治まって帰ったのかね?あの宇宙人」「言語的な意味があんのかね」
「降伏とか?仲間だとか?モチツケとか?」「ホントに仲間と間違えたとか」「アリエナーイ」
「何で居る小坂!?」「いーじゃんデート潰されたんだからー」「ほー夜の公園でかホー」
「塗料に嫌いな物質が有ったとか」「それともエネルギー切れとか」「ウンモ星人とか」
「お前な」 「テメエな」 「オマエな」 「お前等な」
入り口に立つ編集長。「・・・・・・・・・・一体会社で何やっとるんだ?」
ガチャン。鍵が開き扉が開く。「は〜ああ、疲れた疲れた」ベッドに横たわる変人女。
大荷物を抱えて入ってくる雑誌記者。「・・・・・はああぁ、ツカレタ」荷物を下ろす。
「お、荷物持ちごくろーサン!帰っていいわよ」・・・・・少し位休ましてくれ・・・・・・
と、「?チーコちゃんは?」「ベランダ。何か『かたづけ』だって」
ベランダに立つチーコちゃん。手にはブルーシート。東の空が白んでいる。うっすら青い空。
シートを広げる。宇宙人の落書き。一度はためかせると、朝方の澄んだ空気へと押し出した。
地上に堕ちずふわりふわり。少しづつ上昇していく。其の先には明けの明星。
やがてブルーシートは、朝の空に溶けて見えなくなった。
「ばいばい」
変人女の声。「チーコちゃーん、ちょっとでも寝ときなー」
「あい」 振り向くと、小走りに室内へと入って行く。
瞬いた明けの明星。
ゆっくりと円を描くと、やがて白む天蓋の彼方へと飛び去っていった。
306 :
第X話 異棲人来訪す:2005/08/23(火) 00:02:16 ID:8Yqr6X0o
>>295 恐らく、自分にカネゴンは出来ません。
>>139『木曜日の円盤』みたいになります。
挑戦はしてみますが・・・・・・
ポケモンキライダカラナァ('A`)ノage
307 :
名無しより愛をこめて:2005/08/23(火) 12:41:04 ID:hvQfdkrI
>>306 なんか・・・あれでしょ?小難しいこと書いてる自分が好きなんでしょ?
ってか、いちいちageなくていいよ
とかいいながら、自分がageちゃったよ。ぶへ。
ここは、一ノ谷博士の研究室である。
一ノ谷「怪獣の中には、変わったものを食べるやつがいるんだ」
「例えば・・・?」
一ノ谷「放射能や石油などを食べる怪獣もいるんだ。他にはな・・・」
一ノ谷博士はパソコンを立ち上げ、2ちゃんねるという巨大匿名掲示板を開き、
『おまいらウルトラQの脚本を創ってください。』というスレを探し出した。
万丈目「『おまいらウルトラQの脚本を創ってください。』・・・?なんですか、このスレは?」
一ノ谷「うむ。見ていたまえ。もうそろそろ現れるぞ・・・。レスを食べる怪獣が!」
万丈目「レスを食べる怪獣ですって・・・!?」
一ノ谷「・・・ほら、現れたぞ」
ムシャムシャ・・・
ムシャムシャ・・・
ムシャムシャ・・・
ムシャムシャ・・・
ムシャムシャ・・・
>>307 小難しいこと書けるだけでもたいしたもんです。
ageるのは、他の書き手を開拓するのに是が非でも必要です。
夜の庭。其処彼処で鳴くコオロギ。茂みの傍らにベンチ、そしてオブジェ。
ベンチに座る男。くたびれたネクタイ。煙草に火を付けふかす。広がる赤煙。
庭全体が赤色灯に照らされている。其の度、闇に浮き上がる幾つもの奇妙なオブジェ。
「警部」もう一人。「配置完了。警報装置も設置しました」「・・・・・そうか、行こう」
「しかし───本当に来るんですかねぇ、奴は」「さぁ、な」中庭を出、廊下を歩く。
「だが『予告状』が打ち込まれてたんだ、来ないってのも無ぇだろうよ」
無線による確認。『警報装置に異常無し』ブツリ。・・・・・何だ、今の無愛想なのは?
「ホラ、あれですよ『分局』の」────ああ、あいつ等か・・・・「えーと、便所何処だっけな」
「奥行って右です」「ん、すまん」通路の奥へ。赤色灯が消え、緑の非常灯。
用をたし出てくる。と、廊下の隅、クズカゴの影に何か塊。確か、此処は────
塊を拾う。確認し、無線を取る。「────総員警戒態勢。至急内部を確認しろ」
ぶら下がるコード。「警報装置が破壊されている。侵入者の可能性が高い」
展示室に走り込む。並ぶ展示物。「警部!───」台座のみの展示。───やられた。
照らされる床。乱れた敷物。大理石の破片。何者かが争った跡が有る。
何人か警備の警官が昏倒していた。其の上、渡り廊下に─────黒い外套の人影。
「待てっ!」見えなくなる人影。階段を上がる警部。後姿が見えた。
狭い廊下を追う。曲がり角毎見失う姿。右に曲がった直後、ガラスの割れる音。
廊下の端、割られている窓ガラス。・・・・・・逃がしたか。息を切らせる警部。
───と、背後からキチキチと軋む音。振り向くと、黒い外套の男。
両手を構え近付いてくる。手はミトンの様な黒い手袋。先が尖り黒光りしている。慄く警部。
「く・・・来るなっ!」銃を構える。制止も聞かない。男がバケツを蹴飛ばす。瞬間、銃声。
「警部!」部下の声。男の眉間から煙。打ち抜いたらしい。だが男は微動だにせず───
────首が、ズレて落ちた。陶器の様に砕ける。首無し男が、振り向いた。
足元の男の口だった部分は、歪み笑っていた。
「野村様・・・・・ですか?」編集室の入口。応対している雑誌記者。相手は初老の男。
「生憎編集長は今出払ってまして────」名詞を眺める。
『警視庁SRI第6分局 情報整理室 野村・・・・・・』「じゃあ、待たせて頂けませんかね」
はあ、と気の抜けた声の記者。と、廊下から騒がしい声。昼飯から編集長が帰って来た。
「・・・おお!野村サン!久しぶりじゃないか!」「や、暫らくぶり」「如何したんだ急にー」
何か事情が有るらしい。二人で階段を上がっていく。
すれ違い様、変人女が入って来た。「チャーす、どったのチョーさん?」
「来客。古い知り合いらしいけど」ふうん、と気の無い返事。「それよりさ、相談なんだけど」
・・・・・・・飯おごれ、だそうだ。こないだの代原の原稿料は如何した?
テナントビルの屋上。座り煙草を吸う二人。「────何年ぶりかな」
「5年ぶり、位か」「そんなに経つか。皆如何だ?シロー爺さんは元気か?」
「亡くなったよ、おととしな」「──ん、そうか」煙草の灰が落ちる。
最後までSRIへの公的資金投入に反対していたらしい。犬に真実は捕らえられん、だそうだ。
「爺さんらしいや。で、何の用だ?今日はまた」煙草を吸いきり、床に落とす。
「ある捜査に、協力してほしいんでな」
「おばちゃーん!特盛りネギチャーシュー!あ、餃子セットで」「オマエ、遠慮しろよ」
「まーまーまー」溜息一つ、新聞を広げる記者。一面に大きな見出し。──ああ、又か?
横から覗き込む変人女。「ふうん、これで何回目だっけ?」
『 怪 盗 首 無 し 男 羽田風人記念美術館に侵入』
320 :
第X話 黒い貝殻:2005/09/01(木) 00:19:35 ID:Cug9yNxG
怪盗『首無し男』。
此処最近、世界中を騒がせている謎の怪人である。
博物館、美術館、画廊、大学研究室、古美術商、個人宅に至るまで、ありとあらゆる所へ侵入。
美術工芸品を盗み出すのだ。神出鬼没、正体不明。只一つの特徴は────
首が無い。いや、一応侵入時は首が有るのだがいとも簡単に取れてしまうのだ。
ある時は自ら外したり、落としたり。首が180度廻って笑われたという報告もある。
そうして盗まれたモノは、これまで一度たりとも発見されていない。
「だが、コレは公表してないんだが────『首無し男』、コイツは予告状を出すんだ」
長い、50cm程の黒光りする貝殻。其れが美術品の傍に張り付いているという。
一体何故そんなモノを使うのか。全くもって判らない。
「『今回の件はSRIが出動したにも関わらず、大立ち回りの上取り逃がした』ふむぅ〜ん」
「お前、ちゃんと前向いて食えよ」「SRI、国主導になってからパッっとしないわね」
「止めろ、カレーラーメンの汁まけるだろが」「ンなもん食うのが悪いんでしょー」
乗り出してくる変人女。「むわ!止メ、まけるっ」
「如何だ、頼めるか」「ていうか、何でだ?何故一介の雑誌編集長の俺に頼む?」
沈黙。「──────牧サンの遺志、かな」「?」遠くを見る野村。
「今の警視庁SRI分局は最悪だ。能無ししか残ってない。俺みたいな、な」
入口へ歩き始める野村。「託してみたいんだよ。あの頃の俺達みたいな、民間組織にな」
「解かった。やってやるよ」背を向けながら手を振る野村。もう一本煙草を付ける編集長。
「────ああ、後な」大声で呼びかける、後姿。
「妙な謙遜なぞすんな。経験こそ貴重な才能だ」
きゅーきゅーきゅーっ!浅野温子だきゅー!