響鬼の音撃、その正体は『ソリトン』すなわち『孤立波』ではないだろうか?
ソリトンとはエネルギーが集中し、形を変える事なく伝播する波のこと。ソリタリーウェーブとも言われる。
縄の一方の端を持ち、波打つように振ると、その波の形が縄のもう一方の端まで伝わっていく現象や、津波をイメージしていただければわかりやすいかな?
ソリトンとは究めてエネルギー伝播効率が良い波であり、更にそのエネルギーはごく狭い範囲に集中するので、エネルギーの密度は必然的に大きなものとなる。
響鬼の音撃は、このソリトンを音楽にのせて目標に叩き込む事で、固有振動数を同調させて破壊する。
そういった攻撃ではないだろうか?
なお、固有振動数とは外側からかけられる力のない、その物体にとって自然な周期の振動、揺れのことを言う。
外側から力(エネルギー)を加える周期が、この固有振動数に近いものであればあるほど、力はより効果的に伝わり、揺れ幅は大きくなる。
更に外側からの力を加える周期を物体の固有振動数と完全に同調させると、共鳴(共振)が発生し、エネルギーが最も効率よく伝播される。
しかし、このように物体に力を加えても、その物体は一様に揺れるわけではない。部分部分によりその揺れは異なり、したがって力はどこか一部に集中することになる。
そのような状態で振動が繰り返されれば、その力が物体を破壊するほど強いものでなくとも、その物体が破壊されてしまうことがある。
これは疲労破壊と呼ばれ、その物体の強度に比べ、加える力が比較的弱くても、その物体を破壊することができる。
音撃は以上のような原理をもって特定の物体に対して、疲労破壊を誘発する脅威の攻撃ではないかと考えられる。
ぶっちゃけた話、分子構造さえ把握しておけば、この攻撃で破壊できない物質は理論上存在しない。
だが、恐るべき性質を誇るソリタリーウェーブも無敵というわけではない。
エネルギーの波、すなわち振動であるがゆえの防御手段が存在する。振動による相殺である。
防御側から同様にエネルギー振動を発生させれば(この際、周波数は同調させなくても良い)、水面の生じた波がぶつかり合って打ち消されるように、ソリタリーウェーブは無効化される。
無効化されないまでも振動を乱され効果を著しく失ってしまう。
また、防御側から発したエネルギー振動がきわめて強いものであった場合、ソリタリーウェーブはかき消され、逆に防御側の発したエネルギー衝撃波が響鬼を襲うことになる。
音撃は本来、遠距離から放つ技らしいが、響鬼があえて接近戦に挑むのも、零距離からソリタリーウェーブを叩き込む事で、敵の防御を困難にしているのではないかと私は推測している。
仮面ライダーが実体ある存在である以上、この音撃は非常に効果ある攻撃ではないだろうか?
また、バダン首領に代表されるエネルギー集合体に対しても、非常に高出力の音撃を叩き込めば、先に書いたように互いを相殺しあい、最後には消滅させる事が出来ると考えられる。
もっとも、響鬼の音撃がそれだけ持続できればの話である
長文、御容赦