美術監督だった成田亨さんに、ウルトラマンのデザインの基本をうかがったことがある。
「いろんなことを思い浮かべてデザインを考えましたよ。でも、何枚かのスケッチをして、
ぼくが基本にしたのはキリコの絵画にみられる卵型の顔とギリシア彫刻にみられる
アルカイック・スマイルの統合でしたね。『レッドマン』の段階では神話的なものが頭にあって、
木に竹をついだようなスケッチになっていたのですが、シュール・レアリズムへの飛躍が肝心なんだ、
とキリコにヒントを得て、いまみなさんが愛してくれてるウルトラマンのかたちを描いたのです」
ウルトラマンの基本形は、ようやくこうやってかたちになった。
「ウルトラマンの造形というのは、そういう点ではかなりシュールでしょう」
と、成田さんの話はつづいた。
「時間を超越した目を、ウルトラマンにはもたせたかったんですよ。そして、全身の皮膚感との
つりあいに苦心しましたね。仮面でもなく、宇宙マスクでもない、かたちとして納得させられるものに
たどり着くまで悩んだんです」
ウルトラマンは、役を演じる人間が中に入る、いわゆる縫いぐるみだ。異形のものを活躍させるとき、
この縫いぐるみによる手法は基本でもある。
メタリックな宇宙金属をイメエジさせてほしい・・・・・・、という拵井プロデューサーの要求と、
人間がはいって演技するときのしなやかさを調和させるのがむずかしかったようだ。
全体の色調としての銀と赤は、ブルー・バックの合成のとき、ヌケがいいということで決められた。
そして、縫いぐるみの素材としては、怪獣などに使われるラテックスではなく、はじめてウエットスーツが使われた。
(実相寺昭雄著「ウルトラマンのできるまで」筑摩書房刊・P26〜27)
*原文ママ。ただしプロデューサーのカコイ氏は、文字が変換できなかったので「拵」で代用。正しくは「木存」。
*成田氏の発言中の“宇宙マスク”とは宇宙服のヘルメットのことと推測される。