66 :
狂戦士:
「ここは……?」
言いようの無い違和感を感じ、シャドームーンは辺りを見回した。
特におかしいことは無いように見えるが、ごみ捨て場に廃棄された看板を見て、すぐに気がついた。
看板の文字が左右逆だ。よく見ればそれだけでなく、周りの景色まで先ほどと逆になっている。
まるで鏡に写したように。
「鏡……」
そう、先ほど鏡の中から何かが飛び出したかと思うと、自分をその中に引きずり込んだのだ。
シャドームーンは知らない。ここが現実世界と鏡一枚隔てた場所にある、『ミラーワールド』だと言うことを。
だが、彼にとってそんなことはどうでもよかった。すぐ近くにいいものを見つけたからだ。
先ほど自分を襲ったモンスター、メタルゲラスだ。それは今にも襲い掛かりそうな勢いで、シャドームーンを睨み付けている。
この世界のことなど何もわからない。それは目の前の猛獣についても同じことだ。
だが、ここには戦いがある。自分が先ほどから渇望していた戦いが。
それだけでシャドームーンには充分だった。
メタルゲラスがその鋼鉄の角を向け、戦車の如く突進してくる。
それを見据えたまま、両足を揃える。踵のレッグトリガーがガチリと音を立てた。
そして
「シャドーキック!!」
67 :
狂戦士:02/12/23 02:17 ID:yoxWyG4W
「シャドーキック!!」
王蛇がライドシューターから降りた瞬間、何か巨大な物が吹っ飛んできた。
「ぐっ!?」
とっさに身をかわし、回避に成功する。それは側にあったライドシューターに激突し、車体を破壊した。
砕けたライドシューターを無視し、先ほど吹っ飛んできた物に目を移す。自分の契約モンスター、メタルゲラスだ。しかもかなりのダメージを受けているようである。
吹っ飛ばされてきた方向に目を移すと、当然そこにはシャドームーンが居た。
「ほお……」
メタルゲラスは単純な馬力で言うなら、モンスターの中でもトップクラスにあたるはずだ。それをここまで追い詰めることができるとは、並大抵の力ではない。
「面白い……やはり楽しめそうだ……」
シャドームーンがカチャカチャとした足音を響かせ、ゆっくりと歩み寄ってくる。一見力無い動きだが、間合いに入れば瞬時に襲い掛かれる獰猛さを秘めていた。
王蛇がカードデッキから一枚のカードを抜き、ベノバイザーに装填した……いや、しようとしたとき。
「がああ……っ!!」
シャドームーンが突然地面に崩れ落ち、苦しそうな呻き声を上げる。理由はすぐにわかった。シャドームーンの銀の装甲が、空間に溶けるように霞んでいくのだ。
ライダーやモンスター以外の者が、ミラーワールドに入った時になるのと、同じ現象である。
68 :
狂戦士:02/12/23 02:18 ID:yoxWyG4W
「なんなんだお前……ライダーじゃなかったのか?」
ライダーでないなら、こいつは何なのか。それはまったくわからないが、放っておけばそのまま勝手に消えてしまうだろう。
久しぶりに面白い戦いができると思えば、こんなオチか。そう思うと、せっかく発散できそうだったイライラがふつふつと蘇ってきた。
「期待させやがって……イライラする!!」
再びデッキから別のカードを抜き、デッキに装填する。
『ファイナルベント』
紫の大蛇、ベノスネイカーが現れた。それを背にし、王蛇がジャンプする。
そしてベノスネイカーの放つエネルギーを受け取り、シャドームーンへと翔んだ。
何体ものモンスター、そしてライダーさえも葬ってきた必殺技、ベノクラッシュだ。
超高速の連続キックがシャドームーンを捕らえ、吹き飛ばした。
「がああああっ!!」
ビルの外壁に激突し、そのまままっさかさまに落ちる。万全の状態でくらっても大ダメージは免れないのだから、今の消滅しつつある体に耐えられるはずがない。受身も取れずに地面に激突し、動かなくなってしまった。
69 :
狂戦士:02/12/23 02:19 ID:yoxWyG4W
「ふん……勝手に消えろ」
そう吐き捨てた、王蛇の後ろで。
仰向けに倒れたまま、動くことのなくなったシャドームーンの体が消滅していく。
それを一瞥すると、王蛇は自分が入ってきた鏡へと向かった。戦う敵がいない以上、ミラーワールドなどに用は無い。さっさと元の世界に帰るだけだ。
そう思って鏡に入ろうとした時、なにか光り輝くものが鏡に映っているのを見つけた。
気になって夜空を見上げると、入る前にも見た満月が輝いていた。よく見れば月の影も逆になっているのだが、王蛇はそんな細かいとこまで気にするタイプではない。
すぐ視線を戻して、外の世界に戻ろうとした……が。
今度は別の光を見つけた。空ではなく、地面のほうだ。
「あん……?」
さすがに妙に思い、光の方向に目を移す。
そこには先ほど倒したシャドームーンの体があった。
光は彼から……いや、その腰にあるベルトから発せられていた。
王蛇は知らない。それがキングストーンという、神秘の力を秘めた輝石であることを。
そして今、ミラーワールドの満月の光を吸収したキンスグトーン、『月の石』は、新たなる力をシャドームーンに与えようとしていた。
そう、かって南光太郎をRXとして蘇らせたように。
全身に光を纏い、シャドームーンが起き上がる。
ミラーワールドの力を手にい入れた、新たなる世紀王……シャドームーン・ミラージュが。
全身を纏う白銀の装甲はより堅牢な物となり、その眼光はより鋭くなっている。全身から感じられる威圧感も今まで以上だ。
(なんだこいつ……城戸や秋山の『サバイブ』とかいうやつとも違うな)
やはり、何もわからない。ただひとつ言えるのは、まだ戦いは終わっていないということだ。
「……ハッ!!」
まだ戦える。そう思っただけで、王蛇はとてつもなく愉快な気分になった。
そして、それは目の前のシャドームーン・ミラージュも同じだ。
「戦いを……はじめるぞ」
「ああ……そうだな。第二ラウンドのはじまりだ」
ふたりの狂戦士の戦いが、再び始まろうとしていた……
70 :
6:02/12/23 02:23 ID:yoxWyG4W
シャドームーン・ミラージュ
シャドームーンがキングストーンにミラーワールドの月光を受け、パワーアップした姿。ミラーワールドに適応できるようになっただけでなく、基本能力も格段にアップしている。
必殺技はシャドーセイバーの強化版『ミラージュセイバー』、シャドーキックの強化版『ミラージュキック』である。
まだここまでです。次で終わらせるつもりですので、よろしくお願いします。
あと、「THE OTHER WORLD」さんのG7に影響されてオリジナル設定を入れてしまいました。お目汚しスマソ……