【勝手に】仮面ライダー龍騎EPSODEFONAL【補完】

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587訪問者(1)
「ゴロちゃん?遅くなったけど今から帰るわ。
うん、気をつけるよ。じゃあね」

仕事がこんなに長びくとは思わなかった。
嫌なクライアントだよ、いくら金払いがいいとはいえ。
午前0時をとっくに回ってる。まったく、今日は運が悪い。
とっとと帰ってゴロちゃんのお夜食をいただこう。
そう思って車を発進させた。

だが、日付が変わっても運の悪さはついてきた。
ヘッドライトの向こうの闇に突然、
淡い光を放つ巨大な人型が立ちはだかったのだ。
息を呑み、反射的にブレーキを踏み込む。
ライトに照らし出された頭部に無数の触手が
うごめいているのを見れば、人間でないことは明らかだった。
だが、妙だ。モンスターなら、必ず出現前に
接近音がするはずなのに・・・

急停止の衝撃をこらえて頭を上げると、
白く光る触手の一本が怪物の頭から伸びるのが見えた。
そのまま鞭のように振り上げられ、
眼前のフロントグラスに叩きつけられる。
ガラスを易々と突き破った触手を間一髪で避け、
左のドアを開けて道路に転げ込むと、
迫りくる幽霊じみた怪物に向かって土下座を始めた。
「俺が悪かった。許してくれ、この通りだ。な!」
土下座の効果かどうか、ともかく化物が立ち止まった。
その隙を逃さずがばっと跳ね起き、
ジャガーのフェンダーミラーにカードデッキをかざす。
「変身!」
588587:03/07/28 00:14 ID:Izjz6A28
帰還を書いた者です。
長々と書いた上に連投してしまってすみませんが、
まただいぶ落ちてきたし、何かカキコがあった方がいいかなーと思って
新しい話を作ってみました。読んでくださった方いたら、ありがとうございます。
&他にも新作ありましたら、どうぞupしてください。
(もちろん、586の話の途中でも全然構いません)

>>584
ありがとうございます。エピローグはかなり駆け足で書きましたが、
気に入ってもらえた部分があったら嬉しいです。

>>585
ありがとうございます。でも、各エピソードの並べ方が
あれでよかったのかどうかが今でも時々気になります(汗)
(401号室の実験がかなり後回しになってしまいましたし)

>>586
各ライダーのエピソードが追加されるという話を
どこかのスレで見ましたが、どんなものか気になりますよね・・・
589587:03/07/28 00:18 ID:Izjz6A28
忘れてたスマソ・・・ageておきます。
訪問者の続きは、また来週くらいになると思います。
590名無しより愛をこめて:03/07/28 12:59 ID:XM82SpOS
おお!新作だ新作だ!
これは北岡弁護士が主人公の物語なんでしょうか?
期待してますんでがんばってください!!
591ネ申山奇 ◆7gSIRO5h/g :03/07/29 04:36 ID:HOttaW79
このスレははじめて読みました。
オルタナ02に命を吹き込んでくれてありがとう。
昨年色々作ったコラの中でも一番思い入れがある奴なので、嬉しかった。
書いてくれた人によろしく伝えて下さい。
もし斉藤雄一が戦場に赴くなら「ただ、手塚のために…」
確かにこれしか理由は要らないよね。
「帰還」シリーズもイイ!みんな文章上手いなあ。
592589:03/08/02 03:33 ID:HBpmvwks
訪問者の続きをupします(まだ1コしかできてませんが)

>>590
読んでくださってありがとうございます、がんばります。
はい、北岡さんの話です・・・今のところ(汗)

>>591
読んでくださってありがとうございます。
「きみのため〜誰も知らないオルタナティブ02」も、
ぜひ再開してほしいですよね・・・
593訪問者(2):03/08/02 03:36 ID:HBpmvwks
ゾルダの姿になるが早いか、明かに驚いた様子で
こっちを見ている白い化物に向かってダッシュする。
悪かったな。こっちもただの人間じゃなかったのよ。

猛然と体当たりをかけた。
鎧のような装甲に覆われているにもかかわらず、
妙にぐにゃりとした感触の肩と胴に手をかけ、
渾身の力を込めて引きずり寄せようとする。
だが。
「ぐあっ!」
一瞬後、関取に組みついた子供同然に、
ただし一切手加減なしではね飛ばされていた。
路面に叩きつけられて転がり、変身が解ける。

まいったな、やっぱり接近戦はダメだわ俺。
車のところまで引き寄せて、ボディからミラーワールドに
引きずり込んで決着をつけてやろうと思ったんだが。
せめて、マグナバイザーだけでもこっちで
使えればいいのに・・・神崎士郎も気がきかないよ。

痛みをこらえて頭を上げると、
白いタコを載せたような頭を持つ怪物がじっと見下ろしていた。
触手の群れの奥から、鬼火のように青く光る目で。

「妙な技を見せてくれたな・・・」
いきなりすぐそばで声がしたのでぎょっとする。
俺が倒れているすぐそばの路面に、
痩せた神経質そうな男の裸の上半身が映っていた。
ちょうど白い化物の影のように。
そいつがしゃべっているのだ。
594オルタナ02作者代理人:03/08/02 21:24 ID:aRnXIPti
お久しぶりです。第1部完成直後、作者が山陰から地元に帰ってきましたので引っ越しとかで忙しくてしばらくネットカフェにも行けなかったそうです。
第2部は一応出来ているのですが、まだオフラインの方でしか発表していないので近いうちにアップします。
※ちなみに、オフライン=同人誌の方は第1部、第2部とも夏コミに出す予定です。

>>591 ネ申山奇 ◆7gSIRO5h/gさま
おお、あなただったんですか!<02コラ作者
あの画像を作者に見せた時、真っ先に「この設定で話を書きたい!…でもまず作った人の許可が無いとダメだよね…」と言ってたんですよ。
結局許可をもらう前に載せちゃったんですが…スミマセン
作者にはちゃんと報告しますのでよろしくお願いします。
595訪問者(3):03/08/04 01:36 ID:UyZUo7nL
これではっきりした。
こいつはミラーワールドのモンスターじゃない。
だが、それならどこから来た?
俺の疑問などにお構いなく、男の影は
意味不明のことをしゃべり続ける。
「だがお前の変容は、あくまで一時的なものにすぎないようだ。
私が見た限りでは、お前のデバイスは装着者の素質とは
何の関連も持たない。つまりお前はしょせん非力な人間にすぎない。
ということは、オルフェノクの素質を持っている可能性もあるわけだ。
それならば−−」

化物の両肩からひとつずつ生えた太い触手の片方が、
ゆらりと浮かび上がった。
冗談じゃない、ライダーバトルでならまだしも
こんなタコ野郎のせいで命を落すなんて・・・
そうだ。もう一度変身してミラーワールドへ逃げよう。
だがスーツの懐に素早く右手を入れた瞬間、
奴の顔の下から伸びた細い触手が飛んできた。
打たれた手首に痺れが走り、カードデッキから離れる。

「そのデバイスは、後で解析させてもらう−−
研究所に戻れればの話だが。だが戻れないとしても
たいした問題ではない。この世界でも、
仲間を増やすことはできそうだからな」

路上の影が不気味に笑うと同時に、
化物の肩の触手が跳ねて身体に巻きついた。
吸盤をびっしりつけた先端が迫ってくる。
左胸をめがけて。
596訪問者(4):03/08/04 01:38 ID:UyZUo7nL
心臓を貫かれる前に身体が砕ける。
薄れゆく意識の中でそう思ったほど、
触手で締め上げる力は強烈だった・・・が。

「先生!」
なじみ深い声がした次の瞬間身体が自由になり、
道路に倒れ込む。

「サンキュ、ゴロちゃん」
動悸とめまいにふらつきながらも身体を起こし、
俺に背を向けて手刀を構えた男の脇に立った。
時々思うんだけど−−もしもゴロちゃんが
ライダーになってたら、俺はもうとっくに
この世とおさらばしてたかもな。
俺が変身してもかなわなかった化物に、
生身で跳び蹴りを入れて怯ませるんだから。

「心配になって迎えに来たんです・・・
浅倉に待ち伏せでもされたんじゃないかって」
化物を見据えたまま構えを崩さず、ゴロちゃんが答える。
「ま、浅倉よりは扱いやすいと思うけどね、
こいつの方が・・・うわっ!」
ゴロちゃんの身体がいきなり地上から3メートルほども
浮いたと思うと、目の前にすっ飛んできた。
太い触手につかみ上げられた後、俺に向かって
投げつけられたのだ。

「ちょうどいい、2人まとめて試してやる−−
オルフェノクの素質があるかどうかをな」
路面に映った男が、また酷薄な笑みを浮かべた。
597訪問者(5):03/08/04 01:41 ID:UyZUo7nL
「・・・・・・オルフェノク、って何よ?」
大粒の水滴が、血と土埃に汚れた顔を打った。
一つ、また一つと。
そういえば天気予報で言ってたな、
夜半過ぎに天気が崩れるって。
ゴロちゃんともども倒れたまま、全身バラバラに
なったかのような痛みに呻くしかない状況で、
我ながら呑気に思い出す。

「人間を超えた存在だ。俺のようにな」
男の影から発される声が、得意げに響いた。
「俺も以前はただのひ弱な人間だった。
だがある日別のオルフェノクに襲われ、
新たなオルフェノクとして甦ることができた。
そしてお前たちに見せた通りの力を手に入れたのだ。
だからおとなしくしているがいい。
運がよければ、お前たちも我々の仲間になれる。
運が無ければここで死ぬだけだ−−お前の下の奴同様にな」
「下?」
そういえば、顔や手を汚したこの灰のようなものは何だ?
道路に溜まった土埃じゃないのか・・・

うつ伏せのまま胸の下を探った手に、
何か固いものが当たった。
引き出して、わずかな街灯の明かりで見る。
「!!」
黒縁のメガネだった。
打撲の痛みも忘れて身体を起こすと、
半ば灰に埋もれた腕時計とアタッシェケースが見えた。
そして、ぼろぼろになった背広らしきものも・・・
598訪問者(6):03/08/04 01:44 ID:UyZUo7nL
「先生・・・」
振り向くと、額から血を流したゴロちゃんが
膝を突いて起きあがるところだった。
傍らに転がった何かを拾い上げ、俺に見せる。
灰だらけだったが、すぐわかった。
某有名玩具専門店の紙袋だ。
中身はきれいにラッピングされた箱だった。
リボンの間に、小さなカードが挟んである。こう読めた。

「おそくなってごめんね
たんじょうびおめでとう     パパより」

無言でカードを見つめるゴロちゃんの表情には、
いつにも増して凄みがあった。
だけどそれは傷が痛むせいじゃなさそうだ。
今も、この先の家のどれかで待っているのだろうか。
誕生日を迎えたばかりの幼い息子か娘が、帰りの遅い父を・・・

化物男が悦に入って語りつづけるのが、
激しくなってきた雨音の向こうから聞こえる。
「どのみち、お前は不治の病に侵されているのだろう?
俺にはわかる。オルフェノクとして甦ることができれば
今の朽ちかけた肉体の代りに、不死同然の身体と
力を手に入れられるのだぞ。試してみる価値はあるだろうが?」
青白く光る触手が、また闇の中から浮かび上がった。

名も知らぬ男の灰にまみれたダブルのスーツを、
降りしきる雨がさらに台無しにしていく。
だがいつのまにか、そしてどういうわけか、
その下の俺の身体からは一切の痛みが消えていた。
599訪問者(7):03/08/04 01:48 ID:UyZUo7nL
「なるほどねえ。
おまえらが人を襲うのは殺すためじゃなく、
仲間を増やすためってわけか・・・
せっかくだけど遠慮しとくわ。
永遠の命なら、自分で戦って手に入れるからさ。
そうでなくても、おまえみたいな醜い姿−−
おるへのく、だっけか?−−になってまで、
不死になったってしょうがない。
せっかく眉目秀麗な俺がさ・・・ゴロちゃんだってそうだろ?」
「貴様!」
激怒するタコ野郎を見て、口の端に笑みが浮かぶのが分かった。
あっさり挑発に乗ってくれちゃって。
「今だ!」
俺に向かって青白い触手が飛んだまさにその時、
ゴロちゃんが跳ね起きてダッシュした。
放置されたジャガーの運転席に向かって。
やはり、俺の意図をちゃんと察していた。
同時にカードデッキを取り出す。
灰に雨水が混ざってぐちゃぐちゃになりはじめた
路面を転がり、伸びてきた触手を避けながら、
できたばかりの小さな水溜りに緑の板をかざした。
「変身!」
再びゾルダになった瞬間、猛スピードで発進した
ジャガーのボディが身体をかすめていく。
そして、どん、という鈍い音。
ジャガーが白い化物をボンネットにはね上げたのだ。
間髪入れず車に駆け寄り、予想もしなかった事態に
なすすべもなく暴れる化物の肩から伸びた
二本の触手をぐいとひっつかむと、ガラス窓から
一気にダイブした−−ミラーワールドへ。
600訪問者(8):03/08/04 01:51 ID:UyZUo7nL
スマートブレイン本社は、
かつてない緊急事態に見舞われていた。
巨大な社屋ビル内外の窓という窓、鏡という鏡に突然、
コートを着た長身の男の姿が現れたからだ。
「俺の世界に干渉するな」
そう言いながら。
男の出現と同時に、ビル中の鏡面から
得体のしれない耳障りな音が響き始めた。

社長室に隣接するロビーの豪華なソファの上で、
耳を塞いでうずくまるスマートレディ。
少し時間がたって、音が止んだかどうか
確かめようと恐る恐る顔を上げる。
が、すぐに悲鳴を上げてまたソファに縮こまった。
再び耳を塞ぎ、そして今度は目までぎゅっとつぶって。
音が止んでいないばかりか、どこからともなく
落ちてきた無数の金色の羽根が部屋中を
舞っているのに気づいたからだ。

さすがに、隣りの社長室にいる3人に動揺は見られなかった。
もっともそのうち2人は、ありあまるほどの
闘志と殺気をみなぎらせていたが。
都内一円を見渡せる広々とした窓に映り込んで、
こちらと対峙するコート姿の男に向かって。
だが彼の目には入らないようだった。
ムカデに似た姿の怪人も、エビに似た姿の女怪も。
「俺の作った世界への干渉を止めろ。今すぐに」
それだけ言った。
執務机の椅子に悠然と腰掛けて自分を見つめ返す、
スマートブレインの頂点に立つ男に向かって。
601600:03/08/04 02:21 ID:JrGNp+Cs
訪問者の続きができたのでupします。

>>594
お久しぶりです、オルタナ02の続きどうぞよろしくです。


(訪問者補足)
作中で出したオルフェノクは「オクトパスオルフェノク」ということになりますが・・・
この先ファイズ本編で同名のオルフェが出てきたらすみませぬ(汗)
(映画版についても同様です)
アギトのタコロードの脱色バージョンを思い浮かべて書きました(安直)
602名無しより愛をこめて:03/08/04 10:15 ID:MS1nhgrU
(・∀・)イイ!
603ネ申山奇 ◆7gSIRO5h/g :03/08/05 01:01 ID:o319wjU1
>>594
期待しています。とお伝えください。

>>601
「訪問者」面白い!うまく555世界と繋げるなあ…(感心)
604名無しより愛をこめて:03/08/08 09:09 ID:OANj/ECM
うまくいえませんが、「訪問者」読んでてドキドキします。
続き待ってます
605訪問者(9):03/08/11 01:27 ID:Ukin0LbU
「今までこの部屋には多くの者が来た・・・
人間も、そうでないものも。
だが鏡の中から来たのはあなたが初めてです。
それと、あなたが連れてきたあの怪物も」

窓に向かって語りかける村上社長の表情は、
常と変わらず穏やかだった。
今しがた、社長の威信とオルフェノクとしての誇りの
両方を動揺させてもおかしくない映像を
見たばかりだったのだが。

「大変です!・・・エントランスの天井から、か、怪物が」
動転したセキュリティ担当者の声に続いて
社長室の監視モニターに映し出された、
本社ビル1階のエントランスホール。
巨大な吹き抜けを覆う総ガラス張りの天窓の下を
何かが飛び回っていた。
広壮な空間に咆哮を響き渡らせながら。
黒い大蛇−−いや、龍だ。
どちらにしても信じられない光景だった。

スマートブレインへの来訪者や末端関係者、
そして一般解放されたプロムナードを散策していた
市民たちが恐怖に顔を引きつらせ、
エントランスの床の上を逃げまどっている。

だが村上の顔が一瞬こわばり、
社長室に来ていた琢磨と冴子が激昂のあまり
オルフェノクの姿に化したのは、
その後の映像を見たからだった。
606訪問者(10):03/08/11 01:28 ID:Ukin0LbU
右往左往する人々に混じって、
明らかに憎悪をこめた眼差しで黒い龍を見つめる
人間たちがいた。正しくは、元人間たちが。

「いい度胸じゃねえか、スマートブレイン本社へ
殴り込みをかけるとは・・・」
「ファイズにもカイザにもまだ行き逢ってないし、
人間を襲うのにも少し飽きてきたところだ。
ちょうどよかったぜ」
映像が切り換わり、モニターに映し出された
ガラの悪そうな若者二人の姿が、たちまち変容する。
鋭い棘の生えた幅広い背ビレを持つ怪人と、
頭部前方に突き出た長い嘴のような突起を持つ怪人に。

そして次の瞬間、二体とも空中高く飛び上がった。
カジキマグロに似た怪人は尾ビレのある姿になり、
カワセミに似た怪人は翼状の両手を広げて。

空中を高速で泳ぐように移動しながら
魚怪人が細長い槍を構え、自分に気づいて
向かってくる龍めがけて思い切り投げる。
天窓の近くまで飛んでいった鳥怪人も同時に、
龍に鋭い嘴を向けて急降下を始めた。

槍が龍の胴を貫いて稲妻状の火花を散らし、
巨大な嘴が首の近くを突き破って衝撃波を送り込む。
これまでに何人もの人間を灰にしてきた時と同様に。
607訪問者(11):03/08/11 01:29 ID:Ukin0LbU
だが龍の流れるような動きは止まらない。
うるさそうに頭を振ると、長い尾を閃かせた。
少し離れた空中にいる魚怪人に向かって。

蝿のように叩き落されたオルフェノクの身体が、
エントランスの床に激突する。
床にめり込んで瓦礫の山を作りながらも
すぐに身体を起こし、再び遊泳形態になろうとする
セイルフィッシュオルフェノク。
その姿に向かって、上から龍がかっと口を開いた。
「ギャアアアアア!」
絶叫と共に黒い炎に包まれた身体から
青い炎が噴き出し、大量の灰になって崩れ落ちた。

「やりやがったな畜生!」
龍の首に嘴を食い込ませたまま仲間の最期を
見ていた鳥怪人が、頭をぐいと引いて龍から離れた。
そのまま両手を前へ突き出す。
「オルフェノクをなめるなよ」
言葉と同時に、青緑色の光線が翼の先から放たれた。
龍の頭部に向かって。
轟音と火花がはじけ、空中で長い体が反転する。
「やったか・・・?」
そう思った瞬間、鳥怪人の身体がメリメリと嫌な音をたてた。
反転後、怪人の下に回り込んで襲ってきた黒い龍の
巨大な顎に捕らえられたのだ。
断末魔の叫びはすぐに途絶えた。
噛み裂かれたキングフィッシャーオルフェノクの体が
青い炎に包まれ、龍の牙の間から灰となって流れ落ちた。
608訪問者(12):03/08/11 01:30 ID:Ukin0LbU
「・・・あなたの怪物のおかげで、
貴重なオルフェノクを2人も失いました。
戦士としての実力を持ち、仲間を増やすことにも
熱心だったので、ばかにならない損失です。
上の上は無理としても、中の上の資格は十分にあった。

ともかく、あなたが我々に対して
お怒りであることは嫌というほど分かりました。
ですから、まずはその理由を言っていただけますか?
干渉、とおっしゃいましたが、正直申し上げて
我々には何のことか皆目見当がつかないのです」

鏡の中の男が、嘲るような笑みを浮かべた。
「お前の側にいる奴らと同じ種類の奴が
俺の世界に侵入して、人間とライダーを襲った。
ミラーワールドに興味を持って詮索したのでなければ、
そんな真似はできないはずだ。
ライダーバトルを妨害する奴を放っておくわけにはいかない。
お前が奴らの元締めならば、今すぐに処置を講じろ。
さもないと−−」
言い終わらないうちに、男の背後から三体の影が躍り出た。
そのまま窓から出てきて社長室に降り立つ。
「貴様!」
センチピードオルフェノクが棘の鞭を振るった。
長く伸びた鞭の先をかわし切れなかったガルドミラージュが
ぎゃっと叫んで後ずさる。
それを見て、ガルドストームが目にも止まらぬ速さで
センチピードに向かって巨大な斧を投げつけた。
だが一瞬後、鋭い金属音とともに床に落ちる。
進み出たロブスターオルフェノクが装甲に包まれた
腕を振り上げ、一撃で叩き落したのだ。
609訪問者(13):03/08/11 01:31 ID:Ukin0LbU
ミラーモンスターとオルフェノクの凄惨な戦いが
始まるかと思われた瞬間。
「そのくらいにしておきませんか、お二人とも」
あくまで穏やかな声でそう言い置いてから、
村上が再びコートの男に向かって話しはじめた。

「あなたの今の言葉で、だいたいの事情が呑み込めました。
時間は取りませんので、少し説明させていただけますか?
わが社の研究所で開発に従事している者の中に、
特殊な感応力を持つオルフェノクがおりましてね・・・
最近その男が、鏡の向こうから来る微弱な「存在感」−−としか
説明できないものに興味を持ってしまったのが始まりでした。
私も報告を聞いて少々興味を持ったので必要な予算を
付けてやったのですが、それが間違いのもとだったようだ・・・

その「存在感」が何であるかを解明すべく研究を続けた結果、
つい先日その男の研究室で大爆発が起こったのです。
確かにひどい事故でしたが、私が気になったのはそれよりも、
その男が跡形も無く消えたことでした。
オルフェノクが死ねば灰が残る。だが現場からは、
一つまみの灰さえも検出されなかったのです。
いったいどういうことだ−−そう思って調べさせていたところへ、
あなたのいささか乱暴なご訪問を受けたというわけです」

胸の前で手を組み、慇懃かつ皮肉に微笑みながら
話し続ける社長を、コートの男が無表情に見つめ返す。
男の映った窓の前に佇むガルドサンダー以外の
モンスターは、いつのまにか社長室から消えていた。
二人のオルフェノクも不承不承ながら事態を
見守ることにしたらしく、執務机の脇に戻っている。
610訪問者(14):03/08/11 01:32 ID:Ukin0LbU
「あのオルフェノクは鏡を介して、あなたの創ったという世界へ
飛ばされてしまったのでしょう。そしてあちらで、あなたにとって
何らかの重要な意味をもつ者を襲った・・・
遺憾ながら、あの男があなたの世界に迷惑をかけたことは
間違いないようです。誠に申し訳ありません。しかし、わが社に
悪意はなかったということもご理解いただきたいのです」

「俺の要求は、おまえたちが二度とミラーワールドに
近づかないことだけだ。今度干渉すれば、
モンスターの大群をここに差し向ける。分かったか?」
鏡の中から陰々と響いてくる声に、村上は再度
笑みを浮かべてうなずいてみせた。
「承知しました。今後、二度とそのようなことは起こらないと
約束しましょう−−そうそう、ご迷惑をおかけした
オルフェノクの始末は、あなたにお任せします」

「いったいなんです、あの男は?」
「やられっぱなしでお帰りいただいていいのかしら、村上君?」
コートの男が窓から消えた後、琢磨と冴子が
人間体に戻ってさっそく不満をぶちまける。
その二人に背を向けたまま、
今は自分の顔だけが映り込んだ窓のそばに立ち、
外の風景を眺めながら答える村上。

「見たでしょう、あの男と、あの男の使役する怪物の力を。
奴の支配する世界へ招かれざる客として踏み込んだという
事実を知られた以上、ここは下手に出て機嫌を取るほうが
得策と判断したのですよ。
揉み消そうにも、鏡の向こうの出来事ではどうすることも
できませんしね・・・スマートブレインの力をもってしても。
611訪問者(15):03/08/11 01:34 ID:Ukin0LbU
それはそうと、壁に取り付けたサイコイメージモニターで
奴の思念をスキャンさせていたのですが、
いろいろと興味深いことが分かりましたよ。

あの男が創り出したのは、オルフェノク2名を葬り去った
モンスターとやらだけではないようです。
はっきりとは分かりませんが、
「カードデッキ」「契約」「最後の一人」
という言葉と映像らしいものが読み取れました。
どうやら、あの男の手になるバトルシステム及び
そのためのデバイスのことらしいですね。

それと、ある女の子のイメージが繰り返し検知されました。
よほど彼にとっては大事な存在らしい」

「なかなかいい趣味じゃないですか」
「ロリコン、それともシスコン。どちらにしてもね」
冷笑を浮かべるラッキークローバーの二人に構わず、
村上は言葉を続ける。

「彼の力をスマートブレインで使えれば、
いろいろと面白いことができそうだが−−
いかんせん、サラリーマンには向かなそうだ。
それに、あの男はもう死んでいる。その意味では
オルフェノクと似たような存在かもしれません・・・」
琢磨と冴子が露骨に嫌な顔をするのを見て、
人の悪そうな笑みを浮かべながら付け加える。
「鏡の中だけのね」
612訪問者(16):03/08/11 01:36 ID:Ukin0LbU
その時、社長室の扉が少し開いて、
スマートレディがおっかなびっくり顔を出した。
「しゃ、社長・・・」
「ああ、もう入ってきても大丈夫ですよ。
あの男なら帰りました」
鷹揚にうなずいてみせる村上に、
SBのイメージガールは意外なことを告げた。

「本社詰めのオルフェノク1人が行方不明?」
「はい・・・エントランスにいた警備員さんからの報告だと、
ついさっきあの黒いドラゴンが天井に入って消えたとき
変なことが起きたらしいんです。
なんか、こう、空間が一瞬歪んだような・・・
それでちょうどその時、仲間二人の仇を討つって言って、
オルフェノクになってドラゴンに攻撃しようとしてた子が
突然消えてしまったそうなんですぅ」
ため息をつくと、村上は革張りの椅子にどさりと腰をおろした。
「あの龍が帰る時、研究所で起こったのと
似たようなことが起きたんでしょう、きっと。
やれやれ・・・オルフェノク計4名ということですか、
今回の一件での損失は。まあ、しかたありません」

夜。河原の一隅におこした火の前に座って、
枯木の枝に刺して焼いた何かを貪り食う男。
かなり強い雨が降り始めていたが、あまり気にしていないようだった。
突然、火の向こうにコートを着た男が現れたことに気づいても、
やはりたいして驚いた様子は見せない。
「来い。戦わせてやる」
神崎を見上げてにたりと笑い、浅倉は枯れ枝ごと焼トカゲを差し出した。
「おまえも食うか?」
613612:03/08/11 02:10 ID:IAxM+FN5
訪問者の続きをupしました。

(お詫び)
来週の土日に用事が入ったため、続きのupは再来週になると思います。
申し訳ありませんが、しばらくお待ちください。


返事が遅くなってすみません>レスいただいた方々

>>602
ありがとうございます。とっても嬉しいです・・・

>>603
ありがとうございます。なかなか話を思いつかなかったので
ファイズ世界との組合せを考えたのですが、
楽しんでもらえたのでしたら本当によかったです。
(終るまではまだなんともいえませんが(汗))

>>604
ありがとうございます、そんな風に思っていただけるとは
すごく嬉しいです・・・また楽しんでもらえるように、
完成までがんばります。
614名無しより愛をこめて:03/08/11 14:21 ID:9edXhZBc
この後の555側と龍騎側がどうなっていくのか
とてもたのしみです。
期待してます、がんばってください。
615名無しより愛をこめて:03/08/12 01:20 ID:nRNjSsHz
>>612
「帰還」も素晴らしかったですが、「訪問者」も面白い!
ファイズ世界と違和感なく繋がっててすごい、としか言いようがありません。
続き楽しみにしています。
616名無しより愛をこめて:03/08/13 02:13 ID:U02rFmXm
キャビア鍋って?











誰か食ってみてよ。
報告待つ!
617名無しより愛をこめて:03/08/15 04:23 ID:7+zUOR2y
RDC観て実感。映画はあれで正解だったんや!
テレビよりオモシロイ!
618山崎 渉:03/08/15 12:09 ID:MpeIsNe5
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
619名無しより愛をこめて:03/08/16 05:10 ID:wvBtLpfE
  
620名無しより愛をこめて:03/08/17 02:01 ID:L8OQAI0A
どなたか王蛇と少女の際の浅倉の心境について書いていただけないでしょうか
あの話好きなんで
621名無しより愛をこめて:03/08/20 13:59 ID:VjoAbDuq
保守
622訪問者(17):03/08/23 14:15 ID:wKUoFi9N
村上社長は知らなかった。
黒い龍が帰る際に生じた空間歪曲の
巻き添えでミラーワールドへ飛ばされたのは、
1人のオルフェノクだけではなかった。
ファイズギアを使って変身することのできる、
今のところ唯一の人間もだったのだ。

「ふん。実験の直後に飛ばされた場所か・・・
そうか、お前のデバイスではここでしか戦えないと
いうわけだな。よかろう、かかってくるがいい。
これまでに、オルフェノクがファイズやカイザと
戦った時のデータと比較するための貴重な資料が
手に入る。状況が少し特殊すぎるがな」
ミラーワールドに引きずり込まれてなお不敵に
そう言い放つオクトパスオルフェノクに向かって、
少し離れた場所から嘲笑するゾルダ。

「悪いけど、俺はなるべく自分の力は使わない主義なんだ。
お前は学者崩れらしいから教えてやるけど、ここじゃ
生き物は存在できない。ライダーだって10分といられない。
しばらく待ってりゃ、お前は泡のように消えてくれるってわけ。
どっかからモンスターが来て、片付けてくれるかもしれないし。
お前がどうやって最初にミラーワールドに入ってどうやって
出たのかはわからないけどさ、たぶん今度は
出られないと思うよ、俺がまたひきずり出さない限り」
623訪問者(18):03/08/23 14:17 ID:wKUoFi9N
「なるほどな」
地面に落ちた人影が不気味に笑った。
何の動揺も見せずに。
「一度死んだ存在であるオルフェノクが、生物の存在できない
ミラーワールドとやらで果たして生き延びられるかどうか、
それも試してみる価値はありそうだ。
それに、もうひとつ知りたいこともできた。変身したお前が
ここでどのような死に方をするかだ。俺の手にかかってな」

「ああ、そうなの。今度こそようくわかったよ」
子供へのプレゼントのそばで灰になった父親の姿が、
ゾルダとなった北岡の目の前に再び浮かんでくる。

「お前にとっては、自分の命も人の命も
単なる実験材料に過ぎないってことがな。
一番むかつくんだよね、そういう奴見てると。
気が変わったよ−−お前は俺が倒す」
言うなり、手にしたマグナバイザーを
オルフェノクの青白い頭部に向かって発射するゾルダ。
金色の火花と鋭い音が散った。

だがオルフェノクは逃げもせず平然と立っている。
無数の触手が瞬時に頭の周りに持ち上がり、
残らず弾を叩き落したのだ。
「まさか、これが最強の武器というわけでもなかろう?」
蛸男が憎々しげに笑う。
次の瞬間、漏斗のようにすぼめられた口吻から
漆黒の巨大な流れが吐き出され、ゾルダに襲いかかった。
いかつい緑色の姿がたちまちねっとりした大量の
黒い物質に巻き込まれ、周りの闇と区別がつかなくなっていく。
624訪問者(19):03/08/23 14:18 ID:wKUoFi9N
どこだ、ここは?
誰もいない。真理も、啓太郎も、草加も。
そしてさっき現れたばかりのオルフェノクも。
だいいち、かんかん照りの昼下がりだったはずだ。
まさか、こんな夜になるまで気を失っていたのか、おれは?
だがそんな風になったことは今までなかった・・・
並のオルフェノクの一撃くらいでは。
もしかすると、急に周りが陽炎のようにゆらめいて
目眩がしたのも、オルフェノクの攻撃のせいじゃ
なかったのか?
畜生。何がなんだかさっぱりわかんねえ。

そう思ったとき、背後で鋭い音が響いた。
「!」
振り向いた巧の目に飛び込んできたのは、
闇の中で青白く光るオルフェノクが
目の前の人間を絡め取っている光景だった。
口から吐き出した黒いガムみたいなもので。
「今いくから、なんとかもちこたえろ」
そうつぶやくと巧は側に落ちていたベルトを掴み上げた。
ファイズフォンを取り出し、コードを打ち込む。
"Standing by..."

「変身!」
デバイスの装着と同時に赤い光が
強化スーツの全身に流れ、闇に輝き渡る。
"Complete!"

手をひとつ振ると、ファイズは猛然と駆け出した。
オルフェノクの方へ。
625624:03/08/23 14:36 ID:wKUoFi9N
訪問者の続きをupしました。お待たせしてすみませんでした。

レス下さった方々、保守してくださった方々、ありがとうございます。
申し訳ありませんが、お返事は次の回にさせてください・・・

(補)
タコの技が、やはりイカ先生と被ってしまいました(鬱)
(なるべく似ないようにしたいと思っていますが)
626名無しより愛をこめて:03/08/23 17:36 ID:nOhdKrPW
はたしてファイズの装甲はミラーワールドでいつまで持つのかがきになりますね。
627名無しより愛をこめて:03/08/25 13:25 ID:cO5QRoqs
先週このスレを見つけて、一気に全部読みました。
作者の皆さんの力量と、龍騎という作品に対する思い入れに、
敬服しました。本当に良いスレですね。

「訪問者」、文句なしに面白いです!
神崎士郎がスマートブレイン社に出現するシーンでは、頭の中に
映像と音響が浮かび、思わず身震いしちゃうぐらい良かったです。
また、龍騎ワールドでは「神崎士郎」「神崎」という固有名詞がでて
いるのに、ファイズ側の世界では「長身の男」「鏡の中の男」という
ような表現になっているのも、芸が細かいですね。

続きを心から楽しみにしていますので、頑張ってください!。
帰途の途中、蓮は終始無言のままだった。容態を気遣った真司や優衣が話しかけても、
返事をせず、後部座席に横たわったまま、天井を睨みつけていた。
きっと、あの青年のことを考えているのだろう、と真司は思った。
手塚の墓を訪れては、花束を捧げてくれていた彼の『昔の知り合い』だというあの青年―――
ミラーワールドではライアと同じ色の強化スーツを纏い、複数のモンスターに対して驚くほど流麗な剣技を誇りながら、
現実世界の彼は、女性と見間違うほど華奢で色が白く、静かな物腰の男だった。
『病院には、必ず行って。僕みたいになりたくないなら、ね』
失血の為に意識を失いかける程の重傷を負いながら、病院には行きたくない、と突っぱねる蓮に、
彼はそれまでの優しげな風貌と口調とを厳しいものに変えて、己が右腕を見せた。
あるべき筈の、肘から先の部分が無い、その右腕を。
「綺麗なひとだったね……」
不意に、助手席の優衣がぽつりと呟く。どうやら優衣も彼のことを考えていたらしかった。
「でも…寂しいッていうか…凄く悲しい瞳をしてたね……
何だか…とっても大切なものを失ってしまった、みたいな……」
「…うん」
大切なもの。それは、右腕だったのだろうか。それとも、もっと他の、別の何かなのだろうか。
「嫌だな…私…あんな瞳をした人、もう見たくないよ……」
「優衣ちゃん」
「もし、本当に、その香川って人が言ってた様に…ミラーワールドを閉じることが出来るなら……
あの人にも、他の誰にも、あんな悲しい瞳をさせなくて済むんだよね……?」
優衣の兄・士郎が造り出したミラーワールド―――そこから次々と現れ出るモンスター達が、
本来ならば全く無関係な人間を苦しめている。
誰にも平等にある筈の、幸せになる権利を奪い、悲しませている。
恋人を生命の危険に晒されている蓮、親友を失った手塚、
己が欲望の為にその手を他人の血に染め、自らの命を失くした仮面ライダーシザース=須藤雅史と
仮面ライダーガイ=芝浦淳、そして、あの青年。
優衣が知るだけでもそれほどの数の人間が犠牲になっているのだ。ミラーワールドの為に、士郎の所為で。
「いっぱい他人を傷つけて…悲しませて、辛い思いをさせて…
そうまでして、お兄ちゃんは何をしようとしてるの?分かんないよ…私には、分かんない……ッ……!」
俯いた優衣の細い肩が揺れ、膝の上で握りしめた手に、涙の雫がパタパタと音を立てて零れ落ちた。
不器用な自分には、こんな時、優衣にかけてやれる言葉が咄嗟には出てこない。
己の不甲斐なさと悔しさに真司は唇を噛み締める。
(許せねえよ、神崎…優衣ちゃんにまでこんな思いさせて…絶ッ対、許せねえ……ッ……!)
許せる筈がない。許されていい理由がない。
たとえ、どんな事情があろうとも、誰にも他人を傷つける資格など無いのだから。

3人を乗せたクルマが、海沿いの道路の緩やかなカーヴを曲がって、見えなくなる。
その時、陽炎の揺らめきとともに、路上に人影が浮かび上がった。
長い裾を引くベージュのコートに身を包んだその人影は、走り去るクルマを見送りながら、
低く掠れた声で呟いた。
「お前は何も知らなくていい……お前は俺が守ってやる……優衣……」
630名無しより愛をこめて:03/08/27 20:01 ID:2pxp6zz6
(・∀・)イイ!
久しぶりの続きupですね。
この後どうなっていくのかがとても楽しみです!
がんばってください。
631名無しより愛をこめて:03/08/29 17:38 ID:wD7cUkQK
保守
632名無しより愛をこめて:03/08/31 08:55 ID:iWf6mUpe
保守
633名無しより愛をこめて:03/08/31 09:27 ID:klL9F2lB
540 名前:名無しさん@4周年 投稿日:2003/08/29(金) 16:32 ID:xyyWsSsD
在日チョンの言い分。
「日本人と同じ権利をよこせ。自分達がここにいるのは日本人のせいだろ!」
チョンが、ブチ切れてます
(TVの動画)
http://up.isp.2ch.net/up/1f8f5e4ae3b4.asf
永久保存版です

この人の言っている意味がわかりません。
誰か教えてください。お願いします。

詳しくは、こちらで
http://www.geocities.co.jp/Milano-Kotto/1518/

634訪問者(20):03/09/01 00:56 ID:KPCj/2/U
化物の口元から伸びる黒い物質で十重二十重に巻かれ、
巨大な紡錘形と化したゾルダの身体がどさりと倒れる。
オルフェノクが頭部を後ろに引いたのだ。
「さて、死に様を見せてもらおうか」
冷酷な言葉と共に、頭から生えたすべての触手がぐねぐねと
動き始め、胸の前で一本の極太の綱状に撚り合わされた。

「私のエネルギーを心臓から注入されるのでなく、
外から浴びた人間は、想像を絶する苦痛を味わってから
絶命することになるだろう・・・以前研究所でサルを使って
実験した結果から類推する他はないがな。
オルフェノクを愚弄した人間にはふさわしい最期だ」
暗い地面に映った男の顔がサディスティックな笑いに
歪むと同時に、触手の束の先端が青く輝き始めた。

だが一瞬後。
「ぐっ!?」
触手がバラバラにほどけ、青い光が拡散して消える。
背後から跳躍し、頭上から脚を蹴り出した者の
強烈な一撃に蛸怪人がよろめいたためだった。
赤い光のラインを身体の表面に浮き出させ、
闇の中で金色に浮かび上がる顔を持つ者の一撃に・・・

そして同じ時。
「シュートベント」
音声に続いて、地面に転がった紡錘形の表面を
縦に切り裂くように閃光が走った。内部から。
黒い物質が四方に弾け飛んで溶け去った後、
異常に大きな上半身を持つ人影が立ち上がる。
ギガキャノンを肩に載せたゾルダだった。
635訪問者(21):03/09/01 00:57 ID:KPCj/2/U
やれやれ。タコの墨に絡め取られる直前に、
両腕をカードデッキの側まで降ろしておいてよかったよ。
それでも、簀巻きにされてからカードを引き抜いて
バイザーに装填するのは一苦労だったけどな。
−−にしても、あいつはいったい何だ?
新手のライダーにしては、ベルトの位置に
カードデッキらしいものが見当たらない。
神崎からも、あいつのようなタイプがいるという話は
聞いていないし。まさか、モンスター?
そうだとしても、あいつがタコ野郎を襲ってくれたおかげで
脱出の時間を稼げたことは間違いなさそうだ。

「ファイズか・・・」
宿敵の放つ蹴りを次々とかわしながら、オルフェノクが笑った。
正確には、地面に映った男が。
「こんなところで会えるとは思わなかったぞ。
どうやらお前も飛ばされて来たらしいな」
飛ばされた?何のことだ。
それにこいつは、さっき現れたオルフェノクとは別の奴だ。
巧が不審を抱いた一瞬に隙ができた。
太い触手がびゅっと風を切り、胴が薙ぎ払われる。
そのまましたたか地面に叩きつけられた。
「っ!」
幸い変身は解けなかったが、起きあがる前に
蛸怪人が黒く粘るものをファイズに吐きかけた。
畜生、動きを封じられる!
さっき被害者を絡め取ったのと同じものに・・・
そういえばあいつは無事なのか?
自分の危機も忘れ、遅まきながら巧がそう思った時。
耳元で轟音が響いた。
636訪問者(22):03/09/01 01:00 ID:KPCj/2/U
「シュートベント」
ギガランチャーを発射した瞬間、タコ野郎が吹っ飛んだ。
新参の奴に向かって吐き出された黒い物質も蒸発する。
助けてもいい奴かどうかはまだわからないけど、
一応俺も助けてもらったわけだし、借りは返しとこう。
そう思ってたら、新参者がふらつきながら立ち上がった。
俺に向けた金色の顔の辺りから、こんな言葉が聞こえてくる。
「おまえ・・・人間じゃないのか」

おいおい。礼を言うより先にその台詞はないだろ。
だいたい自分はどうなんだよ。しゃべれるってことは、
少なくともモンスターじゃないらしいが。
そう言おうとした時、目の前をさっと黒い影がかすめた。
続いて反対方向からきた別の影が、甲高い声で鳴きながら
槍のようなものを胸のあたりにガツンとぶつけてくる。

モンスターだ。それも一匹じゃない。
俺と新参者、それにタコ野郎の周りにいつのまにか
群れでしのびより、襲撃の機会をうかがっていたらしい。
闇夜の中でも様々な形や色の奴がいるのが見て取れるが、
大きな角が生えてて、やたらと高くジャンプしながら
襲いかかってくるのはどいつも同じだ。
数は多いがまとめてファイナルベントで片付ければ済むだろう。

だが今は、それより先にやるべきことがある。
今度こそあいつの息の根を止めなければ。
637訪問者(23):03/09/01 01:01 ID:KPCj/2/U
なんだ、あいつは?
緑色のメカニックな身体。両手で支えた巨大なバズーカ砲。
自力で黒い物質から脱出し、オルフェノクに互角の
攻撃をしかけ、助けようとした俺を逆に窮地から救った。
とてもただの人間とは思えない。が、オルフェノクにも見えない。
それなら・・・まだ別のベルトがあったってことか?
真理や草加や流星塾の奴らはこいつのことを知ってるのか?
「おい、お前!」
混乱する巧に向かって、緑色の人型が呼びかける。
「助けてくれたのはありがたいけど、あいつは俺が倒す。
ちょっとした因縁があってな。お前はこいつらを始末してくれ」
「こいつらって・・・」
問いかけた途端、横から飛び蹴りを食らった。続いて背後からも。
いつのまにか多数のガゼルがファイズを取り囲んでいた。
一匹の加えるダメージはそれほどでもないが、
多数でジャンプしながら蹴りや手にした武器でしつこく
攻撃してくる上に、どの個体も恐ろしく動きが速いので
反撃の隙を捉えにくい。

慣れない世界と敵に戸惑いながらも、ファイズが
モンスターの攻撃のクセを捉えるのに時間はかからなかった。
「はぁっ!」
左から躍るように回転して跳んできたギガゼールが
脚を狙ってハサミのような剣を水平に薙ぐのを
かわして跳躍し、逆に相手のねじれた角を蹴りで薙ぎ払う。
キィッと悲鳴を上げて頭から倒れるモンスターに
ニ撃目を加える間もなく、奇声と共に頭上から
ネガゼールが襲いかかってきた。
振り下ろされる鋭い刃のついた両腕を片腕でブロックしながら、
湾曲した角の下の顔面に拳を叩き込む・・・
638訪問者(24):03/09/01 01:03 ID:KPCj/2/U
「俺だよ、お前の相手は」
ギガランチャーのダメージから早々と立ち直り、
まとわりついてくるガゼルモンスターを片端から触手で
巻き上げては地面に叩きつけているオルフェノクに、
ゾルダが再びマグナバイザーを突きつける。
「なら、なぜ早く倒さん?」
相変わらず嘲笑まじりの声とともに、蛸怪人の触手から
輪のように丸まった角を持つガゼルの身体が
弾丸のように放たれ、ゾルダを地に打ち倒した。
「変身しても、人間の時と変わらず弱いお前に何ができる?
さっきの武器も大きさだけが取柄のようだしな。
その銃にカードを入れて武器を呼び出すシステムは興味深いが。
今この雑魚どもとファイズを倒したら構ってやるから、
おとなしくそこで待ってい・・・」
「ファイナルベント」
闇に野太い咆哮が響き渡った。

「俺の値踏みは、こいつを見てからにした方がいいと思うよ−−
見たあともそのご立派な頭が残っていたらの話だがな」
ガゼルの身体をはねのけて立ち上がったゾルダが、
カードを装填したバイザーをセットした。
暗い地の底から昇ってきたマグナギガの巨体に。

突然現れた鋼鉄の城のような怪物を見て
さすがに言葉を失う蛸怪人に向かって、
緑の巨牛の装甲が一斉に開いた。
次の瞬間、そこから真昼のような光がほとばしる。
無数の弾丸とビームが放たれ、闇に色とりどりの
軌跡を描きながらオルフェノクに襲いかかった。
639訪問者(25):03/09/01 01:04 ID:KPCj/2/U
自分めがけて飛び降りてくるオメガゼールに気づき、
手を広げて思い切り跳躍するファイズ。
上空で右脚を振り上げ、向かい合った怪物の胸を蹴り飛ばす。
着地すると、後ろでモンスターの体がどさりと落ちる音がした。
だが、きいきいと声を上げながら向かってくる
レイヨウたちの姿はいっこうに減っていない。
一体こいつら、何匹いやがるんだ。きりがないぜ・・・
ガゼル共の執拗な攻撃に業を煮やし、ファイズが左手首を上げた。
アクセルメモリーを右手で引き抜き、ファイズドライバーへ。

"Complete!"
胸部装甲がはね上がり、全身を走る赤いラインが
脈打ちながら強烈な銀色に変わってゆく。
縦に分割線の入った円形の顔面も、金色から真紅に変わる。
"Start up."
「てあっ!」
左腕のカウンターの数字が超高速で下降を始めると同時に、
ファイズは再び跳躍した。
周りのモンスター達が、滑稽なほど緩慢な動作で
飛んだり跳ねたりしているのが見える。
その一体一体に向かって、次々と紅い光がポイントされていった。
一瞬のうちに。
紅く輝く円錐が闇に出現するたびに、奇怪な絶叫や悲鳴が上がる。
オレンジ色の爆発炎がそれに続き、さらに闇を駆逐していく。

"Time out."
ファイズが再度地に降り立った時、周囲にはもはや
一匹のガゼルモンスターも見当たらなかった。
だが息をつく間はなかった。
凄まじい爆風と衝撃が背後から襲ってきたのだ。
640639:03/09/01 01:05 ID:KPCj/2/U
訪問者の続きをupします。
読んでくださったみなさん、本当にありがとうございます。
もう少し先がありますので、頑張って書きます。

遅くなってすみませんが、いただいたレスへのお返事です。

>>621, >>631, >>632
保守どうもありがとうございます。

>>614
龍騎側にも555側にも魅力的なキャラクターがたくさんいるので
それを生かして楽しんでもらえる話ができればいいなーと思ってます。
(でもバランスを取るのが難しいですね)

>>615
北岡先生vsオルフェノクという組み合せはかなり自然に
でてきたので、読む人から見ても違和感がないのでしたら、
とても嬉しいです。

>>626
今のところ、ご都合主義的にもたせてます・・・
スマートブレインと、ソルメタルの性能を信じて(汗)

>>627
スマートブレイン本社ビルの窓に神崎士郎がびっしり映ったら
結構迫力ありそうだと思って書いたので(どっちかというと
神崎嫌スレネタですね・・・)、映像や音を思い浮かべて
もらったのでしたらとても嬉しいです。
ファイズ側の描写で神崎の名前を出さなかったのは、
なるべくファイズ世界の人の視点で書こうとしてのことでした。
641639:03/09/01 01:06 ID:KPCj/2/U
>>628-629
オルタナ02の続き、お疲れ様です。
士郎兄さんも出てきて嬉しいです。雄一君の活躍も楽しみですね・・・
642名無しより愛をこめて:03/09/01 15:33 ID:YC9m4ZHf
訪問者のつづき、戦闘シーンがかっこいいですね!
このあとふたりがどうなるのかが気になります。
今後ともがんばってください。
643名無しより愛をこめて:03/09/01 23:26 ID:xHiHN99o
最近知ったけれど、面白い。皆さんの続き楽しみにしています。
保守。
644名無しより愛をこめて:03/09/06 23:58 ID:A4n4Sny7
「訪問者」
龍騎世界とファイズ世界が違和感無く融合して、キャラ達が共闘する姿は鳥肌物です。
バトルシーンもメリハリが合って面白く、続きがとても楽しみです。

「きみのため〜」
このシリーズは好きなので再開は嬉しいです。頑張ってください。応援しています。
645訪問者(26):03/09/08 01:37 ID:rMgDR3v0
蛸怪人を中心に巨大な炎の球が生じ、
四方を呑み込んで膨れ上がる。
少しだけ遅れて、ミラーワールドの地と空気を
震わせながら爆発音が轟き渡った。

しばらくしてマグナギガの陰から出ると、
オルフェノクの立っていた場所を見た。
だが何も見つけられなかった。
ひと山の灰と、ひっそり燃える青い炎以外には。

これで、罪もない人間がモンスター以外の
怪物に命を奪われる心配はなくなったわけだ・・・
そう思って取りあえず俺がほっとしかけた時、
左の方で呻き声がした。
ああ。そういえばもう一人いたんだっけ、
いきなり現れた得体の知れない奴が。

声のした方を向くと、予想通りあの金色の
顔をした奴が倒れているのが見えた。
エンドオブワールドのあおりを食らったらしい。
気の毒したけど、その程度で致命的なダメージを
受けるような奴とも思えないし、ま、大丈夫だろ。
あれだけ跳ねていたモンスター共が跡形もなく
消えてるところをみると、こいつが本当に
全部片付けてくれたらしいし。
いったいどんな技を使ったんだ?

だが次の瞬間、新参者の外見が変わった。
無機的な電子音とともに、若い男の姿へ。
646訪問者(27):03/09/08 01:38 ID:rMgDR3v0
おい、やっぱりこいつもライダーなのか?
城戸や死んだ芝浦よりまだ年下のようだが・・・
もしそうなら今度はこいつと闘うことになる。
少々気が重いが、仕方ない。

が、なんとか立ちあがってこちらへ歩いてくる若者を
注意して観察してみても、どうしても13人のうちの
1人とは思えなかった。

右手に持った携帯のようなものは確か、
変身してる間ベルトに固定されていたっけ。
あれを操作して着脱することで変身を
コントロールしているらしいが、どう見たって
カードデッキとは違うだろ、やっぱり。
契約モンスターの紋章らしいものも付いてないし。

それに、左手に下げたあの大きなベルト。
カードデッキを持って鏡に向かえばベルトが
出てくるタイプの変身方法じゃないらしい。
つまり、鏡の中で戦うライダーじゃないってことだ。
そもそも俺を見て「人間じゃないのか」なんて言ったり、
今ここで変身を解いたりすること自体、
あいつがミラーワールドやライダーについて
何も知らない証拠だよな。

少しほっとした時、相手が声をかけてきた。
「おい、あんた−−ここがどこか教えてくれ」
647訪問者(28):03/09/08 01:39 ID:rMgDR3v0
ったく、最近の若いもんは。
「・・・お前、もっと他に言うことあるだろ?危ないところを
助けていただいてありがとうございました、とかさ」
「それはお互いさまだろう」
俺とマグナギガの1メートルほど前まで来て足を止めると、
若者はにこりともせずにそう言い返した。
俺の仮面の上を真横に走るスリットのあたりを
無遠慮に見つめながら。

どうだ、この可愛げのかけらもない態度と
やたら挑戦的な眼差しは・・・
まあいい、教えてやるか。俺は大人なんだしな。
「ここはミラーワールドだよ。鏡の中の世界だ」
「ミラー・・・ワールド?」
眉間に皺を寄せてから、はっとしたように若造が
俺の後ろを見る。タコ野郎の残骸に気づいたらしい。
「・・・あのオルフェノクはお前が倒したんだな?」
「そういうこと。今度はこっちにも質問させろよ。
おまえ、オルフェノクとは敵同士なんだな?」

どうにも虫の好かない野郎だな。助けられたとはいえ。
だいたい何で変身を解除して顔を見せない?
ファイズとはかなり違うものの、やはり自分同様
戦闘スーツを着けているらしい緑の男をうさんくさげに
見上げながらも、巧は答えた。
「ああ。オルフェノクが人を襲うから、ファイズに変身して
戦ってるんだ。さっきもオルフェノクが現れたから
変身しようとしたら、急にこんなところへ来ちまって・・・
そういえば、お前!オルフェノクのこと知ってて戦ったんなら
流星塾の奴か?お前にもベルトが送られてきたのかよ?」
648訪問者(29):03/09/08 01:41 ID:rMgDR3v0
目の前に大きく盛り上がった鋼鉄の肩が、
わずかにすくめられたように見えた。
「お前の話はさっぱりわからないけどさ、
オルフェノクのことなら、あのタコ野郎が
自分からべらべら喋ったから知ったんだよ。
あいつがお前の世界から来たらしいこともな。
とにかくこっちは、お前があのけたくそ悪い
オルフェノクと戦ってるってことが分かれば十分だ」

結花やピザ屋の主人のことがちらりと脳裏をかすめ、
かどのある言葉が巧の口をついて出た。
「人の心を持ったオルフェノクだっているんだぜ、おっさん」
「おっさ・・・!」
「それより、"俺の世界"ってのはどういう・・・うおっ!?」
言葉の途中で、自分の身体全体から無数の粒子が
立ち昇り始めているのに気づいて巧が驚愕の叫びをあげる。
「言い忘れてたけどな」
緑の男がことさら意地の悪い口調で言うのが聞こえた。
「人間は長いことミラーワールドにはいられない。
いればそういうことになる。俺の装備はミラーワールドで
戦うために作られてるから、少しはもつのさ」

確かあのタコ野郎が言ってたよな、
こっちの世界でも仲間を増やせるとかどうとかって。
よくわからんが、あいつとこの若造の話を総合すると
こういうことらしい−−こいつは、俺のいる世界とは
別の世界に住んでいて、人間を襲うオルフェノクと戦ってる。
で、ミラーワールドを挟んでこいつと俺の世界の間で何か
トラブルがあったせいで、タコ野郎とこいつが
ここまで飛ばされてきた、と。トラブルの始末は、どうせ
神崎がつけてくれるんだろうが・・・そう遠くないうちに。
649訪問者(30):03/09/08 01:44 ID:rMgDR3v0
にしても、おっさんだ?
言ってくれるじゃないの青二才。
俺はまだ30になったばかりだ、
この格好からは分からんだろうがな・・・

その時。ゾルダにも巧にも聞こえた。
ミラーワールドの闇のどこかから、かすかな
呼び声のようなものが渡ってくるのを。
そして巧には分かった。
それが自分の名を呼ぶ真理と啓太郎の声だということが。
「あいつら・・・そうだ!おい、あんたなら知ってるだろう、
ここから出る方法を教えてくれ!早く行かないと
あいつらが殺されちまうんだよ、オルフェノクに!」
教えてやるとも、おっさん呼ばわりしたことを謝ったらな。
その性格じゃ、言われたって絶対謝らんだろうが・・・
だからとっととミラーワールドの塵になるがいい。
大人気なくもゾルダがそんなことを思ったとき。
「うぐぁっ!」
巧の身体が突然宙に浮いた。
不意に背後から現れた、不気味に白く光る姿に
羽交い締めにされたのだ。
剛毛の上に甲冑をつけた、ヒグマの姿のオルフェノクに。
巧の左腕に、鋭い爪のついた分厚い掌が食い込む。
苦痛の叫びとともに、ベルトが手から離れて地に転がった。

「まさか、この俺がファイズのベルトを奪い返せるとは
思わなかったぜ・・・こんなところまで連れて来られたのも
悪くねえな、あの龍のせいで」
グリズリーオルフェノクの横に落ちる長髪の若者の影が、
そう言って凶悪な笑いを浮かべた。
650649:03/09/08 01:45 ID:rMgDR3v0
訪問者の続きをupします。

前回分を読んでくださったみなさん、
本当にありがとうございます。
いただいた感想へのレスです。

>>642
ファイズならやはり肉弾戦が似合いそうだし、
アクセルフォームも使ってみたいと思ったので、
戦闘シーンで楽しんでもらえたのでしたらとても嬉しいです。

>>643
読んでもらって嬉しいです、
また楽しんでもらえるようにがんばります。

>>644
ファイズと龍騎両方の世界を楽しんでもらえたら嬉しいです。
でも今回upした分を書いてるときは「こんな関係で
本当に共闘といえるのか?」と自分で思いました(汗)。
651ネ申山奇 ◆7gSIRO5h/g :03/09/08 11:57 ID:ytTZa/hV
おお!オルタナ02の続きが!今後の展開期待してます。
「訪問者」も思わずコラを作りたくなる展開で楽しみ・・・
652650:03/09/15 00:13 ID:PHODatSA
これから訪問者の続きをupします。今回で最後ですが、
長くなってしまったので、先にレスです。

>>651
ありがとうございます。訪問者の続きが面白いかどうかは
わかりませんが、気に入っていただける所があれば嬉しいです。
ネ申山奇さんの色々なコラもがんばってください。
653訪問者(31):03/09/15 00:14 ID:PHODatSA
「さっき爆発の音と衝撃で目が覚めて、知らない場所に
いるとわかった時はどうなるかと思ったけどよ・・・
お前らのそばに飛ばされたのはラッキーだったな。
話は全部聞かせてもらったぜ。
おかげでここがどこだか分かった上に、
ベルトを手に入れて元の世界に戻れる方法も
聞き出せるってわけだ。おい、そこの!」
なにが「そこの」だ、クマ野郎。
こいつに比べたら、こいつが捕まえてる若造の方が
まだ礼儀正しいし好感が持てるってもんだ。
新たなオルフェノクの出現に一瞬虚を突かれたものの、
すぐにバイザーを毛むくじゃらの頭に突きつけたゾルダが
心中で毒づく。

だがその時、再度巧が激痛に耐えかねて叫んだ。
熊怪人が、片手でファイズのベルトを拾い上げながら
もう一方の手の爪を巧の首に食い込ませ始めたのだ。
「元の世界に戻る方法を教えろ。さっさとしないと、
こいつの首が落ちるぜ。俺を撃とうなんて気を
起こしても同じだ」
「バカか、お前?」
ゾルダが嘲るように言った。
「そいつと俺は何の関係もない。殺したきゃ勝手に
首をもいで、さっさとお前も消滅するんだな」
「へえ、そうかよ?なら」
「・・・やめろ!」

失神寸前で首周りの圧迫をゆるめられた巧が
意外そうにゾルダの方を見る。
が、次の瞬間苦痛も忘れて息を呑んだ。
654訪問者(32):03/09/15 00:16 ID:PHODatSA
「はは、どっちにすんだよ?俺あんまリ気が長くね・・・」
「うぉああぁっ!!」

図に乗ったオルフェノクの言葉が断ち切られた。
野獣じみた叫びと、背後にある家のガラス窓の表面から
飛び出してきた紫色の姿によって。
金色の太い剣が豪快な金属音と共に甲冑の肩に振り下ろされた。
怒りと驚きの唸りをあげて熊がよろめく。
その拍子に羽交い締めが解け、ベルトがまた地に落とされる。
ゾルダはそのチャンスを逃さなかった。
すかさず駆け寄って、地面に倒れかける巧を
腕で受け止め、ベルトも拾い上げる。
「おい、気を失ってる場合じゃないだろ。
帰れるのは今しかない。行くぞ!」

まさか、浅倉に助けられるとはな。
俺じゃなくクマ野郎に襲いかかったってことは、
偶然鉢合わせたわけじゃなさそうだ。
たぶん神崎にけしかけられたんだろう−−
こっちに侵入したおかしな奴らを始末しろって。
年中イライラを持て余してるあいつにとっちゃ、
願ってもない餌ってわけだ。あのクマも気の毒に。

巧を支えながら住宅街の外れまで歩いてゆき、
車一台見当たらない幹線道路に踏み出すゾルダ。
その後ろから、相手の予想外の強さと凶暴さに
狼狽したオルフェノクの唸り声が追ってきた。
そして、奇妙に陽気な王蛇の声も。
「こいつを片付けたらお前の番だ、逃げるなよ北岡ぁ!」
655訪問者(33):03/09/15 00:17 ID:PHODatSA
「はいはい、どうぞごゆっくり」
そうつぶやくとゾルダは、傍らで咳込みながらも
ついてくる巧にベルトを手渡しながら聞いた。
「さっきの声はどのあたりから聞こえた?」
「おい、あいつを助けなくていいのかよ、あの紫の・・・」
「ばか、振り向くな!だいたい体が消えかかってるのに
なに人の心配してんだお前?」
はっとした表情になり、改めて耳を澄ます巧。
「そうだ、早くあいつらを・・・・・・あそこだ!」
指差す方を見ると、闇の中で白く輝く
ガラス張りの壁が見えた。コンビニだ。
もちろん人の気配はない。にもかかわらず、
「巧・・・・・・!」
「たっくーーーーん!」
雑誌の棚が見えるあたりから、確かに人の声が
聞こえてくる。
「お前、タクミっていうのか」
ガラスの前まで来るとゾルダが訊ねた。
「ああ。乾巧だ」
無愛想に答え、今度は巧が聞いた。
「二度目だな、あんたに助けてもらったのは。
よかったら名前を教えてくれないか?
それに、さっきは何で俺を助けようとした?
正直、お互いあまり馬が合うとも思えないが・・・」
「北岡秀一だ」
「もうひとつの方は答えないのか?」
「何で助けようとしたかって?さあな、強いて言えば
許せないからかもな、オルフェノクが・・・あのタコ野郎は
小さい子供のいる親父を灰にして、その灰の上に俺を叩きつけた。
運が良ければお前も仲間にしてやる、とかほざいてな」
656訪問者(34):03/09/15 00:18 ID:PHODatSA
巧の表情が険しくなるのを見て、ゾルダは付け加えた。
「人の心を持ったオルフェノクもいるって言ってたな、お前」
だが巧はゾルダに対して怒りを感じたのではなかった。今度は。
「ああ。一度そういうやつに助けられた。だから
すべてのオルフェノクを倒したいわけじゃない・・・だが、
人間が灰にされるのも見てきた。数え切れないほどな」
手の上に残った灰のざらついた感触が、
巧の両方の拳の内側で生々しく甦る。

「あいつらは夢を持ってる」
自分を呼び続ける声の聞こえてくるガラス窓を
見つめながら、巧は言った。
「俺にはない。だが、持ってる奴がその夢ごと灰に
されないために、オルフェノクと戦うことはできる。
・・・そういえばお前は、あのたくさんいた怪物を
倒すために戦ってるのか?あいつらも人を襲うのか?」
素っ気ないタメ口は変わらなかったが、巧の声の
調子からトゲがなくなっていることにゾルダは気付いた。
だが、なぜか質問に正面から答えることはできなかった。

「ま、確かにモンスターも鏡から出ちゃあ人を襲うけどな。
それが戦いの目的ってわけじゃない−−さて、始めるか」
言葉が終らないうちに、バイザーにカードが差し込まれる。
「アドベント」
咆哮とともに、さっき見た巨大な怪物がまた足元から
現れたのを見て思わず後ずさる巧に、ゾルダは言った。
「しっかり持ってろよ、そのベルト」
次の瞬間、マグナギガの左腕についた巨大な手の先が伸び、
巧のシャツの襟首を器用につまんで空中高く引き上げた。
657訪問者(35):03/09/15 00:20 ID:PHODatSA
「何すんだ、おい、北岡!どうするつもりだよ!」
猫の子のようにぶら下げられた巧が喚くのもかまわず、
マグナギガに合図するゾルダ。
「じゃあ、元気でな・・・乾だっけ?これからも
がんばってオルフェノクを倒してくれよ。
奴らが二度とこっちに入ってこないようにな」
言い終わると同時にマグナギガの左腕が大きく振られ、
アンダースローで思いきり巧を放った。ガラス窓に向かって。
ガラスの表面が液体のように波立ち、巧の身体を
呑み込んで、また元に戻った。

やれやれ、どうにか間に合った。
ついしょうもない話に夢中になっちまったが、
あやうく本当に消えるところだったよ、あいつ。
あいつの世界とやらもちょっと見てみたかったし、
送って行ってやろうかとも思ったが、今度は俺が
あっちから帰れなくなっても困るからな。
さあ、今度こそ我が家へ帰ろう。そろそろ俺も
時間切れだし。ゴロちゃん、大丈夫かな・・・

どっと疲れが出てきたのを感じながら、ゾルダは
夜のミラーワールドを歩きだした。別の鏡を探して。

その背を、がっしりした白い姿がじっと見送っていた。
腰のベルトには、トラに似た意匠の紋章のついた板。
ゾルダの姿が見えなくなると、それは音もなく
反対方向の闇へ歩み去っていった。
グリズリーオルフェノクと王蛇が格闘している場所のそばで
自分を待つ、二つの影に向かって。
658訪問者(36):03/09/15 00:22 ID:PHODatSA
どさり、という音に後ろを振り返った真理と啓太郎が
同時に叫ぶ。
「ああっ、たっくん!」
「どこ行ってたのよ巧!」
店の外に恐ろしい姿の怪物――オルフェノクが現れたのを見て、
客も従業員も1人残らず裏口から逃げ出した後のコンビニ。
そのガラスの壁にもたれかかるように、巧が座り込んでいた。
オルフェノクとの闘いのさなかに突然姿が消え、
さっきまでどこを探しても見つからなかったのに。
真昼の強烈な太陽と街路樹の作る濃い影が
巧の身体と、握り締めたベルトをまだらに染めている。

「・・・オルフェノクはどうした?」
騒々しくも懐かしい声に顔を上げ、心配そうな
二人の顔を確認すると巧は言った。
「とっくに片付けたさ、俺が」
冷ややかな声の方を向くと、草加が見下ろしていた。
顎をしゃくって示す先を見ると、確かに灰の山がある。
「そうか−−ならよかった」
急に疲れを感じ、またガラスにもたれて目を閉じる巧。
「ちょっと巧!?」
「だ、大丈夫?何があったの、ねえ、たっくん?」
「・・・頼むから、少し黙ってろ二人とも」
あることを思い出してはっと身体を起こし、両手を見る。
もう粒子は立ち昇っていなかった。

再び眠りに落ちる前に、巧はふと思った。
闘っていない時はどんな姿で何をしてるんだろう、
あの北岡って奴・・・俺より結構年上のようだったが。
659訪問者(37):03/09/15 00:23 ID:PHODatSA
「ファイナルベント」
剣で打ちのめされた末に容赦無い蹴りを食らい、
ついに地に倒れながらも牙を剥き続ける
熊怪人に向かって、紫のライダーが跳んだ。
コブラモンスターの毒液を背負って。
高速の蹴りを続けざまに浴びて、
オルフェノクが断末魔の悲鳴を上げる。
「……ふん」
突然青い炎を噴いて崩れ落ちた相手を少しの間眺めると、
面白くもなさそうに残った灰を蹴散らす王蛇。
が、突然何かを思い出したように顔を上げる。
「そうだ、あいつだ」
灰の上で淋しく揺れる青い炎を踏み消すと、
紫のライダーはミラーワールドの闇へ消えていった。

「先生・・・」
「どうやらこれで完全にいなくなったようですね、
他の時間軸からの侵入者は」
「ですが、我々の知り得た限りでは、でしょう」
「まだいたとしても、神崎くんが取り除くと思うな。
あいつら、ライダーバトルには邪魔だし」
「あいつの話はするな!」
「まあ落ち着きなさい、仲村君。東條君の言う通りですよ。
あの男なら、黙っていても邪魔者は排除するでしょう。
いずれにしても我々の最優先事項は、オルタナティブの
能力を完璧に仕上げることです。
660訪問者(38):03/09/15 00:24 ID:PHODatSA
しかしその意味で実に幸運な偶然でしたね、
あのオルタナティブに似たフォームの侵入者の技を
今夜観察することができたのは・・・
少なくともあの加速系の技は、我々も是非取り入れましょう」
「ミラーワールドの夜に慣れることも必要だと思ったから、
今夜の演習を提案したんです、僕」
「何が言いたい、東條?」
「別に・・・突っかかるのはやめてほしいかも」
「喧嘩はやめなさい、二人とも。とにかく帰ったら、
一刻も早く開発計画を立てなければ−−」

なおも話し続けながら、丸みを帯びた頭部と
スレンダーなボディを持つダークカラーのライダー2体と、
仮面ライダータイガの姿はほどなく闇に溶けていった。

「あああ。これだけになっちゃったよ、
俺のモンスター・・・ちぇ、ついてないな今夜は」
ファイズのアクセルクリムゾンから辛うじて逃れた
3体のガゼルモンスターを従え、ぼやきながら
闇の中から現れた褐色のライダー。
頭と肩に、合わせて6本もの太くねじれた角を付けている。
「神崎の教えてくれたゾルダってやつはともかく、
あの変な白いモンスターと丸顔のライダーみたいな
奴になんか、ちょっかい出させるんじゃなかったかな。
あいつらライダーバトルには関係ないみたいだし、
損しちゃったよ・・・ま、いいや。神崎も俺のモンスターは
補充が効くって言ってたし、そのうちまた増えるだろ。
数が多いだけが取柄だもんな、こいつら−−でも」
一瞬立ち直ったように見えたが、またため息をつく。
661訪問者(39):03/09/15 00:28 ID:PHODatSA
「どうせなら1体でもいいから、大きくて強いやつが
よかったなあ。ゾルダのモンスターみたいに。
ああ、いいなあ、先にライダーになった奴は・・・」
大げさに嘆息し、角の生えた肩を落してから、また
迷路のように複雑なスリットの入った顔をぱっと上げる。
「でも一番遅くライダーになったってことは、
他のやつらを一番よく観察できるってことだよな。
もうしばらくいろんなバトルを見て情報を集めるか。
で、一番強い奴を見極めたら売り込み攻勢あるのみ。
決めた!これでいこう」
ひとしきり思ったことを口に出すと気が晴れたのか、
契約モンスターと合わせたように軽快な足取りで、
仮面ライダーインペラーは闇に同化していった…

ミラーワールドの闇に沈む大きな屋敷。
その一室に置かれたソファに、異世界から戻った
神崎士郎が身じろぎもしないで座っている。
閉じられていた眼が不意に開いた。
「やっと消えたか。オルフェノクとかいう奴らも、
あの世界でのライダーらしい男も・・・」
それから思い出したように付け加える。
「ガゼルも大量に消えたな」
立ち上がると、コートの裾を閃かせながら階段を登って
二階へ行き、一番奥の部屋のドアを開けた。
不気味な鳴き声がいっせいに湧き上がる。
ミラーワールドに存在するすべてのモンスターたちが、
部屋中にひしめき合っていた。
何度ライダーに倒されても、彼らは甦ることができる。
部屋の隅に置かれたスケッチブックに挟まれた、
士郎と優衣が描いた彼らの絵さえあれば…
662訪問者(40):03/09/15 00:30 ID:PHODatSA
「行け」
士郎が命令すると、無数のモンスターの中から
ガゼルばかりが次々と飛び出し始めた。
そのまま部屋の窓を開け、次々と庭に飛び降りる。
キイキイ鳴きながら屋敷の外に出ていくガゼルの群れを
窓から見下ろして、士郎がつぶやく。
「侵入者のおかげで若干歴史に影響が出たか…
だが今タイムベントを発動すれば、侵入時に生じた
時空の歪みが拡大する恐れがある。
放っておくより仕方あるまい。
いずれにしても、戦いのペースが遅すぎる。
誕生日までもうあまり時間がない。
少し、ライダー達に脅しをかける必要があるな」

ゴロちゃんは、あの場所でずっと俺を待っていてくれた。
哀れな姿になったジャガーと一緒に。
幸いにもエンジンは動いてくれたので、ゴロちゃんの
運転で事務所に帰ると、ベッドにばったり倒れ込んだ。
これで不運もおしまいだろう−−そう思いながら。

だが。
朝食後まだ眠いのを我慢して執務机に向かい、
仕事をしていると、電話が鳴った。
「おい。これからそっちへ行くぜ。戦えよ」
相手の声を聞いたとたん、いっぺんに目が覚めた。
俺の不運は朝日が昇っても続いていたのだ。
663訪問者(41):03/09/15 00:31 ID:PHODatSA
「浅倉・・・!」
おおかた、通勤途中の不運なサラリーマンでも
殴り倒して奪った携帯からかけてるんだろう。
「昨日のやつはすぐ灰になった。
手応えがなさすぎてイライラするんだよ…」
「よかったな」
そう言うなり切った。

その後、しばらくは平和に秋の1日が過ぎていった。
神崎が訪れた時以外は。
ふとキーボードから目を上げると、玄関に通じる
階段の上にあいつが立っていた。何かと思ったら、
「戦いを続けるつもりがあるのか」だの「医者に言われた
期限はあとどれくらいだ」だの、さんざん嫌味を垂れてから
帰っていった……まったく、鬱陶しいにもほどがあるよ。

だが、午後になって急に体調が悪くなった。
おまけに浅倉が本当にやってきた。事務所の庭に。
ふと窓の外を見ると、室内の俺に向かって
紫のカードデッキをちらつかせている奴と目が合った。
ゴロちゃんも奴の気配を察したようだったが、
結局その日、あいつは俺たちの前には現れなかった。
その夜、俺は気付いた。
ゴロちゃんが、次の日俺を連れて事務所から
一時的に退避する決心をしたらしいことに。
俺には何も言わなかったが、いつもよりかなり
念入りに車の手入れをしてるから、何となくわかった。
だが俺は俺で別の手を考えていた。
そんなに戦いたいんなら相手をしてやるよ、浅倉。
ただし俺流のやり方でな・・・
664訪問者(42):03/09/15 00:32 ID:PHODatSA
その翌々日。俺の計略は見事に成功した。
浅倉に待ち伏せされたのを逆手に取って
鏡の無い場所へ誘い出し、警官隊に逮捕させたのだ。

だが、今度こそ不運が終ると思ったのは間違いだった。
結局オルフェノクに襲われたあの日から、
俺は呪われ続けているらしい。
せっかく捕まえた浅倉はまんまと逃走した。二度も。
この期に及んで、新しいライダーも2人現れた。
どっちもろくでもない若造だ。
英雄になるとかほざいて令子さんを殺そうとしたり、
よりによってこの俺を札束で釣ろうとしたり・・・
とどめに、病気が予想外の早さで進行しているときた。

今ごろどうしているだろう、あの乾巧は。
やはりオルフェノクと戦っているのだろうか、
夢を持つ人間を守るために…
「お前は、怪物を倒すために戦ってるのか?」
俺が乾のその質問にちゃんと答えられなかったのは、
あいつはおそらく理解できないだろうと思ったからだ。
自分の望みを叶えるために、他のライダーと
殺し合うなんてことは・・・
夢、か。
「無理な夢は見ない方がいい」
東條に向かって言った俺の言葉は
俺自身にも当てはまるのかもしれない。
永遠の命なんて、無理な夢そのものだからな。
665訪問者(43):03/09/15 00:34 ID:PHODatSA
もしかしたら俺の不運は、俺が思ってもいなかった時に
始まったのかもしれない・・・
オルフェノクに会った時でもなく、
不治の病にかかったことが分かった時でもなく、
カードデッキを受け取って無理な夢を
叶えようとしはじめた時から。

いっそのこと、俺も令子さんやゴロちゃんを守るために
モンスターと戦うだけにすれば、少しは運が向いてくるかな。
ってそれじゃ、城戸のバカがやろうとしてることと一緒か・・・
妙なもんだな。
外見も性格も全然似ていないが、
乾と城戸が信じるものは似ているような気がする。

いずれにしても、あいつに会うことができたと思えば、
あの日偶然オルフェノクに襲われたのも
そう不運とはいえないかもしれないな・・・
もう二度と会うことはないとしても。
END
666665:03/09/15 01:42 ID:o1EusHVU
訪問者を読んでくださった方々、どうもありがとうございました。

書いているうちに、何だかファイズ本編が大変なことに
なってきてビクーリしてました。
最初はゾルダとオルフェノクだけの戦いにしようかと思ってましたが、
「どうせならファイズの主役陣も」「それなら今まで書いたSSの中で
あまり出さなかった龍騎ライダーも」「いっそ龍騎33話以降の
補完ということに」と膨らんでいきました(汗)
あまり破綻してないとよいのですが・・・
667名無しより愛をこめて:03/09/15 09:47 ID:c0Dst/ap
>>666
乙です。
「訪問者」、面白く拝見しました。

龍騎世界側の主人公が、
真司でも蓮でもなく北岡だというところがイイですね。
実際、自分で言っているほど悪人になり切れてない
という矛盾を抱えてる彼のキャラが生きてます。
668名無しより愛をこめて:03/09/15 09:57 ID:RaIY+UHu
>>666
おつかれさまでした。訪問者、最後まで楽しませていただきました。
最終回は、ちょっと詰め込みすぎの感はありましたが、とても
面白かったです。
オルタナティブのアクセルベントがファイズのアクセルフォームを
参考にして開発された、というアイデアも面白いですね。

今後も666さんの作品を楽しみにしていますので、次回作も頑張って
くださいね。
669666:03/09/18 01:01 ID:gNNBS47K
>>667
ありがとうございます。面白いと思っていただけたなら、
すごく嬉しいです。自分で書いているときは
意識しませんでしたが、「永遠の命」を手に入れて
人間の心を捨てた「悪のオルフェノク」と、
永遠の命を求めながら人間の心を捨てられない
北岡を対比させると、話を作りやすいのかもしれませんね。

>>668
ありがとうございます。私も、もう少しすっきり
まとめられたらよかったなと思います。
それでも、ラストまで楽しんでいただけたなら
ほんとに嬉しいです・・・
アクセルフォーム→アクセルベントの所は、香川先生だったら
絶対できそうだと思って入れました。
次回は・・・いいネタが見つかりましたら(汗)
670名無しより愛をこめて:03/09/21 01:49 ID:fwEFeo9v
「訪問者」の完成、お疲れ様でした。

龍騎世界とファイズ世界の競演が自然に描かれていて楽しかったです。
村上社長の言葉に含みがあるのが気に掛りますが
怒れるゲームマスターの前では、さすがのオルフェノク達もたじたじな所が
人ならざる者よりもっと人ならざる者として神崎の不気味さを際立たせてますね。

北岡と巧のやりとりにはニヤっとさせられ、2人の立場や生き方の違いを出して
その上での軽い共感を描いていたのが良い感じでした。
北岡達だけでなく、龍騎サイド・ファイズサイドのキャラ達が
きっちり活躍していたのもファンとして嬉しかったです。

北岡が巧の影響を何時の間にか受けていたりする所も含め
この思いがけない「訪問者」達との接触が、
実は後あとまで龍騎世界に影響を与えていたというオチは秀逸でした。
671669:03/09/23 02:20 ID:tCpP7UdR
>>670
詳しい感想をありがとうございます。
神崎がファイズ世界に出現する場面&北岡と巧の交流は
この話の中でも特に書いてみたかったので、すごく嬉しいです。

神崎の方はそれほど迷わずに書けましたが、
北岡と巧については、共感と呼べるところまでもっていくのが
かなり難しかったので、楽しんでもらえたならほんとによかったです。
真司の影響を受けつつある北岡が、巧の戦う理由を知って
心を動かされないはずがないという気はしたのですが・・・
(しかし、たっくんがオルフェノクになったことを知ったら
先生はどう思うんでしょう(汗))

結末部分については、初めは考えていませんでしたが
龍騎サイドとファイズサイドのバランスを取ろうと
書いているうちにあのようになりました。
巧が帰ってからの話が少し冗長になった気がしますが、
オチが面白くなっているとしたらよかったです・・・
672邪神の唄(1):03/09/28 13:48 ID:I3yCCOvC
 −−−唄は無い。
 彼の為の唄は無い。
 其の哀しき魂に捧げられるべき、綺麗な唄は
何処にも無い。
 在るのは呪詛と苦悶の悲鳴だけ−−−

 『お兄ちゃん』
 最後に見たのは、幼い泣き顔。
 此の胸の、儚い珠玉。
 幸せに、ただ、幸せに。
 何処に居ても、どんなになっても、ただ、
それだけを願って居た。
 幸せに、ただ、幸せに−−−
673邪神の唄(2):03/09/28 13:57 ID:I3yCCOvC
 荒涼たる鏡の世界の創造主として君臨しながら、
彼は待つ。
 他に与えることは出来ても、かの魂に其れを
与えることの叶わぬ己を呪い、蔑みながら。
 『戦え……』
 偽りの甘美な響きに包まれた、破滅の唄を
口ずさみながら。
 其の唄に酔い痴れる、哀れな愚者達の運命を
弄びながら。
 
 此の手に代わって、彼女に其れを与えて呉れる
存在(もの)の顕現を。

 −−−もうすぐだ、もうすぐだよ、優衣。

 其の日を夢見て、邪神は微笑う。
 
 其れが叶わぬ願いだと、今は知る由も無く。
674名無しより愛をこめて:03/09/28 21:16 ID:GJ5i4T7s
>>672-673
新作乙です。何度も邪神にまでなっても、結局は望みを叶えられなかった
神崎士郎の孤独と哀しさがとても印象に残る詩ですね・・・
675名無しより愛をこめて:03/10/01 20:22 ID:OTkv9Hqn
そういやこのスレ1周年超えてたんだな・・・
676名無しより愛をこめて:03/10/07 00:19 ID:R/x4sH8g
残りはあと42KBか・・。2〜3作品分はまだ余裕ありそうだけど。
677名無しより愛をこめて:03/10/08 23:28 ID:4/zAlCBd
ベージ
678 :03/10/13 23:29 ID:OeTVHXhw
679名無しより愛をこめて:03/10/17 21:59 ID:X2hcx7uF
ホシュ
680名無しより愛をこめて:03/10/22 09:42 ID:kHSB2Rl7
新しいスレ作ったほうがいいんでねーの???
681名無しより愛をこめて:03/10/22 20:09 ID:kxFV3Ya1
ふむ、まだ300以上のこっているのにか?
682名無しより愛をこめて:03/10/26 04:30 ID:6qxqmyMy
>>681
スレ容量の問題。500kb越えたらほぼ赤信号。
683名無しより愛をこめて:03/10/26 22:57 ID:iDbmtCVS
>>680
同意。
684名無しより愛をこめて:03/10/28 21:41 ID:obQhtXZv
なんかYahoo!MoviesのYahoo! ユーザーランキング
上位にいるぞ。

何がおきたんだ??
685名無しより愛をこめて:03/10/28 22:08 ID:dlRJ8oEw
>684
これか?今現在、Yahoo!ユーザーランキングでFEの評価が2位だね
ttp://movies.yahoo.co.jp/m1?ty=rs&id=139124
DVDから後を追ってる人達に再評価されてるのかな?

せっかくの朗報だけど、ここは映画スレじゃないから
本スレの方に書き込んでおくよ
686685:03/10/28 22:28 ID:dlRJ8oEw
良く見たら去年で評価が止まってるな
それでもまだ2位をキープしてるのは驚きだ
687名無しより愛をこめて:03/11/04 10:35 ID:EWkjxcAp
新作を期待しています。
688 :03/11/06 01:24 ID:uQ+/TaLd
689名無しより愛をこめて:03/11/08 19:23 ID:eNV1CkJi
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│☆☆☆☆☆☆☆―おいらの胸の心の愛 ―☆☆☆☆☆☆☆│
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│☆                             ▼▼▼▼    ☆│
│☆    本日 PM 3:00 開演   場所 空地      ・__・    ☆│
│☆             来ないやつは殺す    〇      ☆│
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└─────────────────────────┘
690名無しより愛をこめて:03/11/12 22:15 ID:GRe3ojXP
┌─────────────────────────┐
│☆☆☆☆☆☆☆―将軍様の胸の心の愛―☆☆☆☆☆☆☆│
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│☆         ┗┛  ┗┛  ┗┛    ┗┻┻━┛       ☆│
│☆                             ξ~⌒~、~⌒,~ヽ .☆│
│☆  明日PM 3:00 開演 場所 平壌   .(6ξ--―●-●| ..☆│
│☆                 来ないやつは拉致.ヽ     ) ‥ ) ☆│
│☆                             \  ー=_ノ. ☆│
│☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆│
└─────────────────────────┘
691名無しより愛をこめて:03/11/18 19:24 ID:WGVZURZY
続きまだ?
692名無しより愛をこめて:03/11/25 11:26 ID:0aAzuyQp
続き待ち
693名無しより愛をこめて:03/12/01 21:52 ID:P7TBYEia
新スレたてたいけど、パート何?
スレタイどーすりゃいい??
694  :03/12/05 01:40 ID:wwXxZCy/
 
695名無しより愛をこめて:03/12/12 02:28 ID:EK5uW8B8
待ってるよ
696名無しより愛をこめて:03/12/17 01:48 ID:xr4PjISL
 
697Evergreen (1):03/12/19 02:13 ID:BoMcdKPc
何故だろう。
きれいに飾り付けられたクリスマスツリーを見ると、
急に切なくなるのは。

金色のイルミネーションに浮びあがる夕方の街でも
ひときわ目立つ、色とりどりの星やボールを
いっぱいにつけた巨大なモミの木。
その前を足早に通りすぎながら、目のあたりを
ジャケットの袖でぐいとこすった。

まったくどうかしてるよな。
ツリーや飾りを見ると、ひとりでに涙が出てくるなんて。
何の理由も思い当たらないのに・・・

おかげで編集長からさんざんからかわれる羽目になった。
定時後、OREジャーナル総出で、令子さんが知り合いから
もらったという白いツリーを飾り付けていた時のことだ。
「真司、おまえまさか、ツリー見て泣いてんの?
そおかそぉか、今年もついに彼女ができなかったんだっけなお前。
よし、イブは俺がとことん付き合ってやるから心配すんな!」
「ち、違いますってば!そりゃ彼女がいないのは事実ですけど・・・」
「い〜ってことよ!おい島田にめぐみ、イブはおまえらも付き合え」
「なんですかそれ!」
「えーなんであたしが?!」
数の少ない天使のオーナメントをどこに付けるかで
もめていた島田さんとめぐみさんが、憤然として向き直る。
「呑むんなら人数は多い方がいいに決まってるだろ。
どうせおまえらだって今年も男できなかったんだろうし・・・」

その後の惨劇に巻き込まれる前に、事務所を抜け出した。
698Evergreen (2):03/12/19 02:17 ID:BoMcdKPc
定時後に何の予定があるわけでもなく、
あとはアパートに帰るだけのはずだった。
だけど、なぜか真っ直ぐ帰る気にはなれなかった。
仕方なしにスクーターを降りて、にぎわう街に踏み出してみる。
とたんに後悔した。今の時期にふさわしく、
どっちを向こうがクリスマス一色だったからだ。
街灯や街路樹に絡みついた色とりどりの電飾、
ビルの上でぼうっと光る巨大なサンタの風船、そして・・・
有名デパートの入り口にそびえ立つクリスマスツリー。

やばい。また涙が出てきた。
涙と一緒に決まって浮んでくる、
映画の一箇所を切り取ったみたいなイメージと一緒に。

ツリーを手際よく飾り付けていく女の子。
枝先のワイヤーを直したりしてる姿は、とても楽しそうだ。
俺に気付いて見上げた顔も、明るく笑ってる。
だけど、もうひとつ吊るそうとオーナメントを取り、
ツリーの上の方に伸ばした手からは・・・
細かい粒子のようなものが立ち昇っている。
俺の表情に気付くと、女の子はことさら明るくこう言う。
「私、大丈夫だから。ほんとに」
そしてその言葉を聞くたびに俺は、
何ともいえずやり切れない気持ちになる−−

イメージの中の女の子と自分がどんな関係にあるのかも、
何故その女の子の手から粒子が立ち昇っているのかも、
そして何故やり切れない気持ちになるのかも、まったく分からない。
ただクリスマスツリーを見るたびに同じイメージが浮び、涙が流れる。
本当にどうしちゃったんだろう、俺・・・
699698:03/12/19 02:23 ID:BoMcdKPc
面白いかどうかわからない話ですが、保守も兼ねて
書き始めました。(クリスマス前に終わればいいのですが・・・)

帰還や訪問者のように長くはならないと思いますが、
スレ容量も考えて1度に1、2レスずつ、不定期に
upしていくことにします。
読んでくださった方、いたらありがとうございます。
700名無しより愛をこめて:03/12/19 11:19 ID:cOJHuWYE
読んだノシ
まだ続きがあるってことですよね、楽しみにしてます
701名無しより愛をこめて:03/12/19 13:58 ID:cN5BNmiw
>>697
久々の新作、
!!キタワァキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* キタワァ!!!!!

続きを楽しみにしていますね!
702名無しより愛をこめて:03/12/21 01:32 ID:+MuTxybN
きたー
703Evergreen (3):03/12/21 01:45 ID:blk/HE/T
うつむき加減で光の街を歩き続ける俺の耳に、
ある音が入り込んできた。
なんだ、この嫌な響きは?
耳を細い針で貫かれるような・・・
立ち止まって周囲を見まわしたが、雑踏の中に
同じような反応をみせている人間はいない。
”どこを見ている。俺はここだ”
だしぬけに、今度は顔のすぐ横で嘲るような声がした。
「!」
ぎょっとして顔を上げ、右を見る。
ポインセチアで飾られたショーウィンドウに
映り込んだ男が、こっちを見返してにやりと笑った。

”そう。お前だよ、俺は”
そう言って、窓に映った俺は青いジャケットの片側を探った。
黒い板のようなものを取り出し、俺の前にかざしてみせる。
”感謝するよ。お前が力を与えてくれたおかげで、
またそっちへ出ていける・・・今度こそ勝ち残るためにな”
言葉と同時に、紋様のようなものが板の中央に浮びあがってきた。

耳を刺すような音が耐え難いまでに高まってくる。
そして。
闇に映えるイルミネーションのひとつひとつを震わせ、
凄まじい咆哮が響き渡った。
ウィンドウの表面から突然現れ、ビルの間の空めざして
駆け上がった巨大な黒龍の咆哮が。

目の前で起こったことを受け入れられず、両手で頭を抱えて
ウィンドウの前から逃げ出した俺の絶叫をかき消しながら。
704Evergreen (4):03/12/21 01:51 ID:blk/HE/T
”どうした、俺はお前を助けにきたんだぞ?
不甲斐ないお前自身の代わりにな・・・”

嘲るような声が追ってくる。自分自身の声が。
黒い龍の咆哮、それに耳を刺す音と一緒になって。

”お前に取りついた悲しみを鎮める方法はひとつだけ−−
この俺、つまりお前自身があの娘に新しい命を与え、
この新しい世界に甦らせてやることだけだ。

お前があの娘を思い出して涙を流しさえすれば、
その悲しみがすべてのライダーと契約モンスターを
次々と覚醒させる−−最後にお前が龍騎として覚醒するまで。

その時こそ、俺はお前と完全に一体化して
最強のライダーとなり、他のライダーどもと闘って倒し、
神崎優衣に新しい命を与えることができるのだ。
神崎士郎がかつて望んだように。
この世界でのあいつは、幼い妹を見捨てて
自分が生き残ることを選んだ、ただの薄汚れた
男でしかないがな・・・

そうだ。お前の悲しみは、お前がそれを
味わい尽くした時にやっと消滅するというわけさ。
俺とドラグブラッカーがこうして覚醒した今、
それもそう遠いことではない。

だからもっともっと涙を流すがいい−−
そして目覚めるがいい、一刻も早くな!
705704:03/12/21 02:01 ID:blk/HE/T
Evergreenの続きをupしました。

>>700, >>701, >>702
読んでくださってありがとうございます、すごく嬉しいです・・・
結末までがんばります。
706Evergreen (5):03/12/21 23:00 ID:2svNLYZz
「雄一か。
悪いが、今日は行けなくなった。
お前も家から出ない方がいい−−
いや、絶対に出るな。ああ、そういうことだ。
コンクールが近いんだったな。手にケガなんかするなよ。
そうか、ならいい。じゃあな」

携帯をジャケットの内側にしまうと、
先ほどまで小さな店を開いていた路上を後にして、
青年は夜の街を歩きだした。
本当ならあと1時間ほど占い客を待ってから店を畳み、
親友と待ち合わせた場所へ出かけるはずだった。
だが事情が変わった。不吉な方向へ。
少し前に、あの耳を刺すような音を聞いてしまった時から。


砕けたガラス。中身をぶちまけてひっくり返った生ゴミのバケツ。
血まみれの身体を丸めて唸っている三下、チンピラ、
そして凶悪そうな若者たち。
普段は他人から被害を受けるより与える側に回る方が
多いたぐいの人間たちなのがせめてもの救いだった−−
男の通った後に累々と転がっているのが。

「畜生・・・浅倉の野郎、なんだって急に暴れだしやがったんだ」
「イライラしてる時に近づきさえしなけりゃいいんだが・・・
そのイライラが今日はえらく急にきやがったらしいからな。くそ、いてぇ」
「まさかあいつ、ついに粉に手を出したんじゃあ・・・
「何だこの音は、俺をイラつかせるなあっ!」って喚いてるのが
聞こえたんだけどよ、あいつが鉄パイプ持ってこっち来る時に。
幻聴ってやばいんじゃね?」
707Evergreen (6):03/12/21 23:05 ID:2svNLYZz
イルミネーションの華やかな方角を指して歩き続けながら
思いに沈む、占い師の青年。

あの音は自分にだけ聞こえたのだろうか。
聞こえた瞬間はっとして目の前の往来を見渡したが、
おかしな音を聞きつけたような素振りを見せる通行人はなかった。
それでも音は消えるどころか、次第に大きくなってきた。
自分の中で急速に広がりはじめたヴィジョンと共に・・・

降りしきる雪の中、突然黒い影に襲われて地面に倒れる雄一。

「手塚・・・ 手塚・・・    手塚っ!」
何故か倒れている自分を抱えて、必死に名前を呼び続ける若者。

2つのヴィジョンが完全に像を結んだ瞬間、青年には分かった。
それぞれの意味ではなく、自分が今からしなくてはならないことが。
ひとつは雄一が、今夜絶対に街へ出ないようにすること。
そしてもうひとつは・・・
自分の名を呼んでいた若者に会うこと。
彼に会わなければ、何か取り返しのつかないことが起こる。
自分だけでなく彼自身にも、そしてこの世界全体にさえも。
そんな気がした。

友の能力を知る雄一は理由を聞きもせずに
予定の変更を承諾し、外出しないことを約束した。
問題は若者の方だ。いったいどこにいるのだろう。
それに何となく、初めて見る顔ではないような気がする。
だとしたらいつ、どこで会ったのか−−
708名無しより愛をこめて:03/12/23 00:15 ID:+wf37Yrj
新作キタ━━(*゚∀゚*)━━━!!
ちょこちょこスレ覗いてて良かった。
いつもながらぐいっと引き込まれる展開で続きがとても楽しみです。
がんがって下さい。
709名無しより愛をこめて:03/12/25 01:21 ID:QeTxbPzE
ガンバッテー
710707:03/12/25 03:55 ID:767o+Aqp
Evergreenの続きをupします。すみませんがまだ未完なので、
結局クリスマスまでには間に合いませんでした。残念。

>>708
ありがとうございます。私も、できれば覗いて楽しんでもらえる話にしたいなーと
思っていますので、がんがります。

>>709
ありがとうございます、がんばります!
711Evergreen (7):03/12/25 03:58 ID:767o+Aqp
黒い龍と共に生じた異様な音は片時も止むことなく、
イルミネーションに輝く都会全体に広がっていった。

音が聞こえたのは、限られたわずかな人間たちだけだったが・・・

都心の一流ホテル最上階。
壁一面を使ったガラス窓の前に立ち、
うつろな表情で豪奢な夜景を眺めているスーツ姿の青年。
何もかもがつまらなかった。自分を見下す人間ばかりの
学校も、自分に無関心な人間ばかりの家の中も。
もちろん、父親が主催するこのパーティ会場も。
ここには「芝浦の御曹司」という自分の肩書きに
媚びへつらう人間しかいない。

だがその耳を刺すような音が聞こえた瞬間、
倦怠感を押しのけて奇妙な「記憶」が浮かんできた。
ずっと昔の俺は、こんなじゃなかったはずだ。
少なくとも、鋼の鎧を着けて闘っている時は・・・
そう思った時、今度は野獣の吼えるような声が聞こえた。
すぐ目の前のガラスの中から。
驚いて目を凝らすと、役員やその取巻き連中の群がる
テーブルの映り込みの向こうに、獣とも人とも
つかない姿が見えてきた。
低く下げた鼻面に載った巨大な角。鉤爪のついた両手。
とてつもなく頑丈そうな金属質の皮膚・・・

「面白くなってきたじゃん」
年の割に幼い顔に、やっと笑みが浮んだ。
たちの悪いいたずらを思いついた時のように。
712Evergreen (8):03/12/25 04:02 ID:767o+Aqp
「先生!しっかりしてください!」
瀟洒な自宅兼オフィスで突然目まいに襲われて
倒れた弁護士に向かって、秘書の男が懸命に呼びかける。

「ああ、大丈夫だからゴロちゃん・・・でもやっぱり、
検査さぼらない方がよかったかな?」
つとめて呑気そうに答えたものの、北岡は不安に苛まれていた。
最近、立ちくらみの回数が増えたような気はしてたんだが。
もしかしてかなりやばいのかな、俺・・・
でも、まだ死にたくないな。せっかくイブは約束取りつけたんだし。
死ぬ?冗談じゃない、なんでこの俺が死ななきゃならないのよ。
どんなことをしたって生き延びてやるさ。

それにしても、さっきからキンキン鳴ってるこの音は何だ?
ゴロちゃんには聞こえてないみたいだけど・・・

二人とも気づかなかった。執務机の背後にある大窓に、
長い角を持つ巨大な影がぼんやりと浮んでいることに。


街灯もまばらな暗い道を、とぼとぼと歩く青年。
大学からの帰りだった。
抑えつけた怒りと不満が、心の底で泡立っている。

田宮君も西本君も小川さんも、全然わかってない。
香川先生だって「東條君の言い分も分かります」とか
言ってたけど、結局はみんなの言うことしか
聞いてないじゃないか。きっと、僕を丸め込もうとしてるんだ。
そうとしか思えない・・・
713Evergreen (9):03/12/25 04:06 ID:767o+Aqp
でも、一番腹が立つのは仲村君だよ。
わざわざ先生に、僕の失敗を告げ口するような真似を
したんだから。その上、僕が抗議の意味で黙って
仲村君の顔を見たら「逆恨みはよせ!」なんて
すごんで見せたりした。本当に、嫌な奴。

いっそ、みんな、死んでしまえばいいのに。

怒りと屈辱感の虜になった青年には聞こえなかった。
自分の周りに響き渡る、甲高く不快な音が。

そして、今しがた通りすぎた街灯の脇に付いている
カーブミラーに映った獣人が、両手に生えた巨大な爪を
誇示しながら凄まじい吼え声をあげるのが。


夜の公園。街灯に照らされた池の水に、
冬の木立が映り込んでいる。
冷たいベンチに腰掛け、1時間近くもじっとしたままだった
娘が膝の上のバッグを開け、畳んだ便箋を取り出した。
何度も読んだためか、折り目の部分から破れかかっている。

「美穂へ。

そろそろ、父さんと母さんのところへ行かなければなりません。
でもあなたを1人で残していくのが一番心残りです。
なるべく早くいい人を見つけて、新しい家族をつくりなさい。
そうすれば、ひとりぼっちじゃなくなるでしょ?
お姉ちゃんだって、美穂と、美穂の血を受け継いだ
子供たちの中でずっと生きていけるから」
714Evergreen (10):03/12/25 04:09 ID:767o+Aqp
お姉ちゃん。どうして何も言ってくれなかったの?
父さんと母さんがいなくなった時から、辛いことや
悲しいことは何もあたしに言わないで、いつも無理して。
病気になったことまで、入院する直前まであたしには
隠してて、その挙句に突然逝ってしまうなんて・・・
こんなに短い遺言だけ枕元に残して。

それに家族を作るなんて無理だよ。
あたし、男なんて信じられない。
お姉ちゃんだって、いっぱいだまされたじゃない。
あたしにはお姉ちゃんがいればいい。
だからお願い、生き返ってきて・・・

そう思ったとたん、目の前の池の水が盛り上がった。
翼の下に首を入れて眠っていたカモたちが、
驚いてけたたましく鳴きながら飛び立つ。

ベンチから立とうとして立てないまま、
娘はただ呆けたように見つめていた。
池の中から飛沫を上げて現れた何かが、
夜空ヘ向かって一直線に飛んでいくのを。
「この池・・・白鳥なんて、いなかったよね?」
怯えたような呟きに答えたのは、まだ波立っている水の面と
周囲の木立に響き渡る、耳を刺すような音だけだった。
715Evergreen (11):03/12/25 04:12 ID:767o+Aqp
確かに俺は清廉潔白な地方公務員とはいえない。
それは認める。だがだからと言って、
このまま一生ゆすられ続けるつもりはない。

一度報酬額を上げてやると、加賀はほどなく
次の上乗せを要求してきた。
「寝言はよせ」と言ってやったら、野郎、
下卑た笑いを浮かべて眼鏡を直しながら
こうほざいたものだ。
「須藤さん。あたしのお願いを聞いてくれないと
後悔することになりますよ?」
後悔? どういうことだ。
「あたしが今あんたとやってる仕事の裏には、
ある組織の幹部が絡んでる。名前を聞けば
あんただって一発で分かる大物だ。そうそう、
小竹署のお偉いさんとも仲がいいんだとよ」
なんだと・・・?
「あんたが値上げを渋ったり、この仕事から
手を引こうなんて思ったら、その大物と
小竹署のお偉いさん、つまりあんたの上司が
黙っちゃいないってことさ。刑事の職を失うくらいなら
まだいいが、でかい重りを脚にくくりつけられて
東京湾に沈んだりしたかないだろ?まだ若いんだしな」

やつらみんな、最初からグルだったのだ。
そして俺は知らないうちに上司に嵌められ、利用され、
一生を闇に塗り込められつつあるというわけだった。
716Evergreen (12):03/12/26 01:24 ID:MOMmbcha
塗り込められる?ふざけるな。
俺が、あいつらを殺して塗り込めてやる。
加賀の小汚い古道具屋の壁にでも・・・

暗くなったというのに灯りもつけず、
外回り用の黒いコートを羽織ったまま
冷たい怒りに身体を震わせる男の周囲で、
異様な音が響き始めていた。
そしてアパートのベランダに通じるガラス窓には、
いつのまにか何かが映り込んでいた。
夕陽のような金色をした巨大なハサミを振り上げて
威嚇するような仕草を見せる、カニに似た怪物だった。


都内を見下ろす高層ビルのワンフロアを使った
豪勢な部屋に、たった一人で座る男。
憤怒と苦悶に歪んだ表情は、少し前に丁重な礼を
述べて出ていった男とその部下達のせいだった。

この高見沢グループを買収だと?
テレビで派手なCMを垂れ流すだけで、海のものとも
山のものともつかない新興企業のくせに・・・
しかもトップ自ら乗り込んでくるとはどういう了見だ。

「いい度胸だな、え、社長さんよ?おととい来やがれ!」
俺の嘲笑と恫喝にも顔色ひとつ変えず、胸の悪くなるような
愛想笑いと皮肉で応じたのはあいつが初めてだった。
「社長同士会った方が話は早い。そう思ったまでですよ。
それに、高見沢の総帥はとても気さくなお人柄だ−−
そのように聞いていましたのでね。どうやら噂は本当だったらしい」
717Evergreen (13):03/12/26 01:31 ID:MOMmbcha
答える代わりに俺は指を鳴らした。
間髪いれず、隣室から6名の黒服がなだれ込んでくる。
「おととい来やがれっていってんだよ、青二才。
社長だろうがなんだろうが知ったこっちゃねえ、
これ以上居座るなら痛い目に会うぜ」
わざとらしくため息をつくと、奴は部下達の方を向いた。
「仕方がない、見せて差し上げなさい」
上司の言葉と同時に、二人の屈強な男の身体が変化し始めた。
灰色で、ゴテゴテと飾りのついた姿に。
やたらでかい武者人形のようにも見える。
次の瞬間その頭から白い触手のようなものが飛び出し、
黒服どもの口や鼻に入りこんだ。

気がつくと絨緞の上に灰の山が6つできていた。
俺の耳に、青二才の声が聞こえてくる。
「返答の期限は1週間です。考える必要もないでしょうが・・・
では、これで失礼いたします。お忙しいところ私のような
若輩者のために時間を割いていただき、感謝しております」

警察はおろか、カネもヤクザも閣僚も役に立たない。
相手は化け物の支配する企業だ。
畜生、力さえあれば。
化け物に対抗できるような力が、俺にも・・・

いつのまにか、部屋中に不気味な音が響き始めていた。
机の上で頭を抱えて歯を食いしばる男の真上で、
豪華なシャンデリアがきらめいている。
男の背後の広い窓に映ったもうひとつのシャンデリアには、
長く巻いた尾と奇怪な形の脚を持つ緑色の怪物が張りついていた。
718名無しより愛をこめて:03/12/26 10:35 ID:tWIePpf0
オールスターキャストになりつつあるうえに、
村上シャチョーまで登場とは、ますます
続きが楽しみです!

最初、サノマンが買収にきたのかと
思ったのは内緒だ(w
719717:03/12/26 21:38 ID:WGsxSkEs
Evergreenの続きをupします。

>>718
ありがとうございます。まさかオールスターになるとは自分でも最初
思っていませんでしたが、一応全て出せそうです。サノマンもこれから出てきます。
ただ申し訳ないのですが、ファイズの村上社長の出番は今回のみです…
720Evergreen (14):03/12/26 21:45 ID:WGsxSkEs
やれやれ。入ってくる車にも出てくる車にも、
金だけは腐るほど持ってそうな連中ばかりが乗ってる。
腐りかけてる分くらい、寒空の下で一生懸命他人様に
奉仕してる俺みたいな人間に回してくれよ・・・

夜になってさらに冷え込んできた駐車場の片隅で、
靴跡のついた万札を制服のポケットから取り出して
丁寧に皺を伸ばすと、バイトの青年はため息をついた。
「いくらヨイショしたって、今日はまだこれだけか。ちぇ」
だが、ついさっき誘導したイタリア車から出てきた
男女に気付くやいなや、青年の表情と声の調子は
素晴らしい速さで切り換わった。
「いってらっしゃいませーー!!」

自分の挨拶を完全に無視し、軽口を叩き合いながら
目の前を通り過ぎていく男女を見つめる青年の眼に、
一瞬暗く危険な影が差す。
が、2人の姿が消えるとすぐ大げさに息を吐き出した。
嫌な気分を吹き飛ばそうとするかのように。
「あーあ。いいなぁ〜」
そして、ことさら大きな声で独りごとを言いはじめる。
「親父にたてついたりするんじゃなかったかなあ。
見合い話ってのも、親父にタンカきった手前引っ込みが
つかなくなって結局蹴っちゃったし。
写真で見る限りじゃ、きれいな子だったのにな・・・ん?」
ふと何かを感じてあたりを見まわす。
「風の唸りか・・・しかしクリスマス前からこの調子じゃ、
イブはさらに腐れカップルで充満するんだろうなあ。
仮病使って休もうっと」
721Evergreen (15):03/12/26 22:02 ID:WGsxSkEs
だが青年が聞いたのは風の唸りなどではなかった。
駐車場全体から、というより駐車場内の車全体から
湧き出し、低い天井に反響している甲高い音だった。

気配を感じながら青年が認識できなかったものがまだある。
視線を外したとたん、周りにあるすべての車の窓やボディや
ミラーにずらりと並んで映った、無数の怪物たちだ。
色も体の大きさもまちまちだったが、二本足で立ち、
頭部に太く長い角があるという点では共通していた。


「優衣・・・・・・許してくれ・・・!」
いくら耳をふさいでも無駄だった。
刺すように甲高い音は、その男の内側から聞こえてきたからだ。
遠い昔男が妹を捨てた時、一緒に捨てたはるか彼方の国で、
しかも一握りの人間にしか聞こえていないはずなのに・・・
黒い髪に両手の指を食い込ませてのたうちまわる男を、
冷ややかに見下ろしている者がいた。
壁に掛けられた横長の油彩画を保護するガラスの表面から。
身体の左右に巨大な金色の翼を広げて仁王立ちになった、
いかめしい黄金のマスクをつけた男のように見えた。


そして。
「何故だ、優衣・・・何故またこの音が聞こえる」
都心に近い住宅街にある小さな喫茶店のカウンターに座る、
漆黒のレザーコートを着た若い男が蒼白な顔でつぶやく。
目の前に置かれた少年と少女の写真の表面に映り込んで
はばたく、コウモリに似た怪物を見つめながら。
722名無しより愛をこめて:03/12/27 00:25 ID:nHuyo84X
オモシロイ!!
シカモ作者タン、トッテモ気サクナ人ッポクテ良イ!!
723:03/12/27 14:01 ID:PnFbzCpH
スレの容量が480kを超えたので用心の為に次スレを立てておきました。
【勝手に】仮面ライダー龍騎R・D・C【補完2】
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1072498669/l50

「Evergreen」の作者様へ。作品はいつも楽しみにしています。
スレの容量が480kを超えた現在、
このままだと「Evergreen」の続きは次スレへ持ち越しになり分散する可能性があります。
一括保管を兼ねて、「Evergreen」(1)〜(15)を次スレにまとめて再掲させて頂きました。
承諾が事後になった事をお許し下さい。
724Evergreen作者:03/12/28 07:44 ID:CfzXzRHm
>>722
ありがとうございます、嬉しいです。

>シカモ作者タン、トッテモ気サクナ人ッポクテ良イ!!
うーむ・・・そうでしょうか?(汗)

>>723
>>1さん
新スレ立てお疲れ様です。その上に、
Evergreenの分散防止まで配慮してくださって、
本当にありがとうございます・。・゚(ノД`)゚・。・

>承諾が事後になった事をお許し下さい。
とんでもないです。こちらこそ、容量を考えながらupすると書いたのに
実際にはやみくもにupしてしまっていたので、申し訳ありません・・・

これからも楽しんでもらえるように、新スレを大事に使わせていただきます。
725名無しより愛をこめて:04/01/03 11:47 ID:W3ryJxr3
Evergreenの続きは次スレですね。
楽しみにしていますよ。
726724:04/01/05 00:33 ID:XX0A59Nq
>>725
読んでいただいて嬉しいです、ありがとうございます。
次スレで続きを書かせてもらっていますので、完結までがんばります。
727名無しより愛をこめて:04/01/08 03:06 ID:ZJyMpo5T
下がりすぎ、保守
728名無しより愛をこめて:04/01/14 23:57 ID:sGG0kUg3
保守
729名無しより愛をこめて:04/01/17 05:31 ID:sRr9vfIi
age
730名無しより愛をこめて:04/01/23 12:54 ID:z5uBD8KQ
sage
731名無しより愛をこめて:04/01/28 00:24 ID:x6m5Hp9v
age
732724:04/01/28 22:51 ID:W0ru8udT
>>727 - >>731
保守ありがとうございます。
ageの時に何かないと淋しいというのもあって、1つ話を作りました(完結済み)。

時期的にはTV版22話の真中当たりで、1レス30行ずつ、6回分あります。
1レスに収まる話にしようと思って始めましたがこんな結果に(鬱)
Evergreenの方でずっと真司と手塚を書いていたのに引きずられて、
やはりこの2人が中心の話になりました。

出来は何ともいえない上に、スレ容量がもつかどうかもわかりませんが、
とりあえずこれから1回分upします。続きは今のところ、このスレが
また下がってきた時に追加しようかと思っています。
もしも話の途中でスレがいっぱいになったら、次スレの「Evergreen」
が完結した後に改めてupさせていただくことを考えています。
(Evergreenもまだ完成してない上に、勝手をしてすみません・・・>1さん)
733初夏の廃屋(1/6):04/01/28 22:56 ID:W0ru8udT
「都内某所に実在する空き家にまつわる噂です。
叶えたい望みや、解決したい悩みを持つ人間が
そこにある古鏡の前に立ってそれを願うと、和服姿の
蒼白い顔の女が鏡の中に現れてこう言うそうです。
"望みを叶えてあげる・・・だから代りにお前の命を頂戴"
命を渡すことを約束すると女は消えます。
しばらくすると望みが本当に叶うんですが、
その後まもなく、願った当人は死ぬって話です。
場所は新宿区○○・・・」

なんだか神崎士郎の女版みたいだな。
神崎が何を考えてライダーの戦いを
仕組んだのかはわからないけどさ。
でもあいつよりはこの女の方がまだ良心的かもな。
まず望みを叶えてやってから約束の「報酬」を
受け取るんだから。他人の命を奪えなんて言わないし。

ともかく真司は、読者からメールで来たそのいかにも
ガセっぽい怪談話の取材を一も二もなく引き受けた。
「おい真司、令子が帰って来るまで待・・・」
「あー編集長俺ひとりで大丈夫っすから!」
神崎はともかく、鏡が絡んでるならモンスターが出てくる
かもしれないし、そうなったら変身して戦わなきゃいけない。
令子さんがいればモンスターに狙われるだろうし、
龍騎に変身したとこを見られるわけにはいかないもんな。

目的地に向かっていると、歩道から声をかけられた。
「城戸!」
ズーマーを停めて声のした方を見ると、
道端に占い台を出して営業中の手塚だった。
734名無しより愛をこめて:04/02/02 12:29 ID:O2yW83Pa
続きを楽しみに保守
735初夏の廃屋(2/6):04/02/02 21:38 ID:yNp6OeiF
「取材か」
「そう、神崎士郎みたいなやつが出るっていう場所の」
「何?」
真司のそばまでやってきて話を聞いた後、黙って
営業場所へ戻り、左手だけで台を片づけ始める手塚。
「おい・・・」
「俺も行く」

周囲を伸び放題の竹薮に囲まれた問題の空き家は、
怪談の舞台にふさわしい荒れ方だった。
「廃墟探訪の記事に切り替えた方がいいかなあ。うひゃっ!」
これで五度目くらいに腐った床板を踏み抜いて
悲鳴を上げた後、真司が不思議そうに横の手塚を見る。
「でもお前、なんで俺と一緒に来ようなんて・・・あっ!
もしかして占いで何か出たとか?」
「ああ。お前にトラブルが見えた」
「え。っておどかすなよ!」
「俺の占いは」
「当たるんだろ、分かったよもう、トラブルでも何でも来いってんだ」
ヤケ気味にぼやいて懐中電灯を前方へ向け直したとたん、
真司の足が止まった。
「手塚、あれ!」
TシャツにGパンの若者と赤いジャケット姿の青年が、
蜘蛛の巣まみれで破れ放題になった障子の陰から
こっちを見ている。
「鏡か・・・」
手塚が呟き、薄暗い廊下よりさらに暗い六畳間に
足を踏み入れる。真司も後から続く。
二人の姿を映し出していたのは、腐りかけた畳に鎮座した
埃だらけの鏡台の上で鈍い光を放つ、縦長の鏡だった。
736735:04/02/02 21:46 ID:yNp6OeiF
>>734
保守してくださってありがとうございます。アク禁の巻き添えに
なっていましたが、やっと今晩解除になったのでupできました。
737初夏の廃屋(3/6):04/02/07 03:14 ID:Eyad76uB
「はは、さすが怪奇ネタになるだけのことはある場所と
小道具だよな。なんかこう背筋が寒く」
やや引きつった笑みを浮かべた真司が言いかけた時。

「お前の望みを・・・」
細い声がした。確かに鏡の中から。
「!!」
目を見開き、ごくりとつばを飲み込む真司。

「望みを言ってごらん・・・なんでも叶えてあげるから・・・
お前の命とひきかえに・・・」
再び細く響いた声とともに、鏡の中に人の姿が現れた。
和服を着て、蒼白い顔をした若い女だった。

「その前に聞かせろ。お前自身の望みは何だ?」
手塚の声は冷静だった。
「私の望みはお前たちの望みを叶えること・・・」
鏡の中の女が艶然と笑う。
「な、ならなんで命をと、取るんだよ?」
今度は真司がどもりながらも問う。
「何かを得るために何かを代償に差し出すのは当たり前・・・」
「だからってなんで命まで!」
「それほどの覚悟を伴わぬ望みなど、叶えたとて仕方ない・・・」
手塚がまた何かを言おうとした時。
真司が大きく息を吸い込み、叫んだ。
「ならライダー同士の戦いを止めてくれ!」

一瞬の沈黙の後、女が答えた。なぜか声が震えている。
「それは・・・」
「何でもいいって言っただろ。戦いを止めてくれよ!」
738初夏の廃屋(4/6):04/02/12 00:01 ID:Bjl1zPJA
手塚さえ驚いたほどの気迫で真司がまた叫んだ後。
冷ややかだった女の表情が凶々しく変わり始めた。
「悔しい・・・よくもこの私に無理難題を・・・悔しい・・・!」
「逃げるぞ、城戸!」
鏡の鬼女に魅入られたように突っ立っている真司の
腕をつかんで叫ぶと、手塚が六畳間から走り出た。
そのまま一気に朽ちた縁側を飛び越え、
背丈まで雑草の伸びた庭へ飛び降りる。
直後、六畳間から怨念に満ちた絶叫が響き渡った。
そしてガラスの砕け散るような音も。

「ありがと、おかげで助かったよ。でも驚いたよな、
半ばガセだと思ってたのに・・・何だったんだろ、あの女」
空き家から出てバイクを置いた場所に向かう
二人の影が、道路に長く伸びている。
少しだけ涼しい風が吹き始めていた。

「おそらく、つくも神・・・古い道具から自然に生まれる
妖怪のたぐいだろう。それにあの家に住んでいた女の
怨霊が合体して、たちの悪い物の怪になったのかもしれない。
俺は拝み屋じゃないが、鏡台から強い妖気が漂ってくる
ことくらいは感じ取れた。あの家に人が住まなくなった
経緯を詳しく調べれば何か分かるかもしれない・・・だが」
手塚が突然立ち止まり、真司の方を向く。
「お前、あの女に望みを言ったな。なぜあんな無茶をした?
本当に命を取られるかもしれなかったんだぞ!」

「−−よくわかんないんだけどさ」
路上に落ちた自分の影を見つめながら、困ったように答える真司。
739朝倉さん:04/02/14 15:48 ID:5DQ7NKv4
    _,,----、
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          /.  `くヽ、  .ヽ、`゙''''i、    ,「
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        / _,-'"゙^  ̄'''ミ〜゙ヽ   \ ヽ__ ゙i、 ,,,,,,⊥  )
       シ'"        `  /i、   \   ̄` |  ゙l,  l゙    ,―-,,,,,,,、
      /               | \   \,,---へ,,,,,,彳 |‐''゙l,/    , i、
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  ̄''ヽ、         ,-!,,,-‐'″.,,i´   `-,、  .,,,ィ―ー,! .| .|  | /
     `ッ       ,/  ゙l,,,,-‐´      `ー'"` L_―ト | 、  _i´
     /     ,,r'     ゙l,,,,_            |___l | `゙″
,、    i     ,ィ′      |`゙"''―-,,,,,、    / ___l |
.゙ー-,,,,/\   /`ヽ      |      `゙゙'''―イ''´ l゙ .|
      `  ′        .|          ′

俺がいないと盛り上がらないだろ?なぁ?
740名無しより愛をこめて:04/02/19 13:09 ID:XZFrXevT
夏の続きに期待です
741初夏の廃屋(5/6):04/02/22 01:29 ID:zo4RWDYU
「本音が出ちゃったっていうか・・・ここ最近、ライダーの
戦いのことでずっと頭が爆発しそうだったんだ。
言ったろ、お前。ライダーになるのはそれに賭ける他に
どうしようもない人間ばかりだって。俺には背負っているものが
感じられないとも。そんな俺には戦いを止める資格なんて
ないんじゃないか、とか思ったりさ。
それに蓮は、恋人を助けるために戦ってる。
だからこの間言ったように、俺も戦おうってやっと決心した。
今できることはそれしかないって思ったから。
けどやっぱり−−戦いなんて止めたいんだ、俺。
だからもう物の怪でもなんでもいいから、止められるものなら
戦いを止めてくれ・・・そう思っちゃったのかもな。でも」
手塚の顔を見上げると、淋しそうに笑う。

「あの女、戦いを止めろっていったら悔しがってたよな。
無理難題を言ったって。望みが叶えられない以上、
俺の命だって取られることはないだろ。
お前の言うとおり、ライダーの運命はなかなか変わらないんだよ。
たとえ物の怪の力でも−−あ、それともまだ見える?俺のトラブル」
「・・・いや」
「そっか、よかった。あ〜それにしてもまいったな、取材は
大成功だったのに記事にできないなんて・・・でも、
本当のこと書いて編集長が心臓麻痺起こしても困るしなあ」

呑気にそう言って、夕陽を浴びながら先に歩いていく真司。
その背を見つめる手塚の顔が暗く翳っていたのは、
逆光のせいばかりではなかった。
742741:04/02/22 01:32 ID:zo4RWDYU
初夏の廃屋の続きをupしました。
>>740
読んでくださって、ありがとうございます。
743名無しより愛をこめて:04/02/23 11:10 ID:FRe9pLaE
早く続きがよみたい
744名無しより愛をこめて:04/02/28 21:33 ID:EDFv7zP4
ほしゅ
745初夏の廃屋(6/6):04/02/29 01:05 ID:ImzQ9T8T
真司が蓮と戦う決意を語った、花鶏での夜。
手塚の擦った一本のマッチは恐ろしい未来を告げた。
「次に消えるライダーは−−」
龍騎だということを。

そして今日、手塚が真司について空き家まで
来たのは、その運命を変えようとしてのことだった。
だが占いが告げたのは、今日のことではなかったようだ。
ならば何時なのだろう。
ライダー同士の戦いを止めたい。その一念だけで、
命を捨てることも辞さずに物の怪に向かって願いを叫び、
結果として物の怪を滅ぼしたほどの強さを秘めた若者が
消える運命にあるのは。
そう。命を捨てることも辞さずに。
「・・・雄一!」
立ち止まって包帯をした右手を見つめ、
左の拳を握り締める手塚。

俺は、あの夜の占いを必ず外してみせる。
たとえ命にかけても。

廃屋を覆う朽ちた雨戸に、風に揺れる無数の
竹の葉が当たってざわざわと音を立てる。
そしてあの六畳間でも、得体の知れない音が響き始めていた。
前の主が持っていた以上の妖気と悲しみに満ちた音が。
「戦え・・・」
鏡台の前に散らばった鏡の破片のひとつひとつに
映り込んだコートの男が、そう呟いた。

                     END