【勝手に】仮面ライダー龍騎EPSODEFONAL【補完】

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217名無しより愛をこめて
ミラーワールドと現実世界との境界は消え、モンスターが街に溢れ返る。
真司と蓮は、人々を守る為に変身し、契約モンスターに跨り、モンスターの大群に向かっていく。
絶望的な戦いだということは、二人とも分かっていた。
しかし、それでも二人は生きる為に戦う。
ドラグランザーの火球が焼き払い、龍騎がシュートベントで群れを撃ち抜く。
ダークレイダーの竜巻が吹き飛ばし、ナイトは接近する個体を斬り払っていく。
モンスターの群体心理が二人を群れの脅威と認識して、最優先襲撃対象として群がる。
龍騎はモンスターが街の人々から離れていくのを横目で確認しつつ、新たな群れに向けてメテオバレットを放つ。
密集したモンスターがダース単位で蒸発していくが、一方で次々と個体が集結してくる。
「城戸!」
ナイトの声に振り返ると同時に、背後に迫っていたモンスターが縦一線に両断された。
「うおっ?」
「背中に気をつけるんだな!」
驚きの声を上げる龍騎だったが、次の瞬間にはナイトの上方から降下していた個体を打ち抜いていた。
「蓮、お前もな!」
連携しつつモンスターと戦う二人だったが、無限の如く湧き出てくる相手に対し、次第に疲弊していった。
一瞬の隙をつかれ、攻撃を受けたナイトがダークレイダーの背から叩き落とされる。
「蓮!」
叫んだ直後、龍騎もまたドラグランザーの背から落とされ、地表に叩きつけられた。
体がコンクリートにめり込み、もがく二人の周囲に続々とモンスターが群がってくる。
湧き上がる黒い絶望が、心と視界を染め上げる。
218名無しより愛をこめて:02/11/26 20:21 ID:NoPdfzY/
「くっ…」
龍騎の口から諦めの言葉が出ようとした刹那、力強い雄叫びが空間を引き裂いた。
「ライダーーーッきりもみシュー−ートッ!」
龍騎とナイトを取り囲んでいた群れの一角が高空へと舞い上がり、更に群れの全体が竜巻に巻き込まれるかのように
空へと弾き飛ばされていく。
空中で掻き回されるモンスターの群れは、互いに衝突し合い、猛スピードと自らの質量によって潰されていく。
次々と上空で起こる爆発。
突然の出来事に呆然となる龍騎とナイト。
そこへ、一つの人影がゆっくりと歩み寄ってくる。
異形の姿、しかしそれは、モンスターなどではなく、むしろ…。
「あ、あんたは…」
龍騎の問いかけに対し、その者は穏やかな声で答えた。
「仮面ライダー…」

「ラ…ライダー…」

自分達に近い姿をした異形の者の返答に、龍騎の視界が再び曇る。
ライダー同士の忌々しい戦いの記憶が、心に蘇ってくる

先刻のダメージからどうにか立ち直ったナイトもまた、同じ思いを胸に、口を開く。
「まだ俺達以外にもライダーがいたとはな…。お前も…戦う、つもりか」
二人とは対照的に、仮面ライダーと名乗った男は、さも当然のことのように応えた。
「ああ、当然だ。人々を脅かす存在と戦うのは、“俺達“仮面ライダーの使命だからな」
219名無しより愛をこめて:02/11/26 20:22 ID:NoPdfzY/
男の言葉に、二人は驚愕した。
「ど、どういう事だよ!俺達…仮面ライダーは戦って、殺しあうのが宿命じゃ…!」
「なるほど…そういう事か」
驚きを隠せない龍騎に対して、ナイトは冷静に事態を理解し、語りだした。
「ガキの頃、聞いたことがある。人間を襲う怪人共をバイクで薙ぎ払う、髑髏の仮面をつけたライダーの話をな…。実際に見たと言う奴もいたが、ホラだとタカをくくっていたんだが…」
ナイトの話に触発されたのか、龍騎もせきをきったかのように話し始めた。
「俺も聞いたことある…!確か悪の組織に改造されたんだとかいう…えっと、ショッカ−だったか、ゴルゴムだったか…。あ、ゴルゴムは実際にいたしなあ…」
一人言のように話し続ける龍騎を尻目に、ナイトは“仮面ライダー“に視線を向けていた。
「あんたは、俺達とは別のライダーってことか…」
「君達の事情は良く知らんが、そういう事なのだろう」
「それにあんた、さっき“俺達“と言ったな。つまり…」
「そうだ」

そこまで言って、“仮面ライダー“は空を仰いだ。
「今も世界のどこかで、俺の仲間は…仮面ライダー達は戦っている」
そして、再び龍騎とナイトに向き直る。
「俺や…君達のようにな」

際限なく増え続けるモンスターは、再び龍騎達に迫っていた。
身構える、三人のライダー。
「俺はあんたみたいに聖人君子でも、ヒーローでもない」
「俺だってそうさ。ただ、大切なものを守りたいから戦う」
ナイトの言葉、“仮面ライダー“の答え。
「俺も…守りたいから戦う!今はそれだけで良い!」
「そうだ!」
龍騎の言葉、“仮面ライダー“の答え。
それを最後に、三人はモンスターの大群に向かけて突っ込んでいった。
220名無しより愛をこめて:02/11/26 20:24 ID:NoPdfzY/
三人のライダーが力を合わせても、何一つ状況は変わらないでいた。
倒しても倒してもそれを上回る形で、どこからかモンスターが排出されてくるのだ。それでも、諦めはしない。
「くっ、こいつら…一体どこから…」
モンスターの群れを、また一つ焼き払う龍騎。
続いて、今まさにモンスターが這い出ようとする鏡を狙うが、一瞬、鏡の向こうに見慣れない空間があることに気付く。
「あれは…?」
『あれはコアミラー…』
「!?」
龍騎とナイトの思考に、あるはずのない声が響いた。それは、女性の…つい先刻に死んだはずの、神崎由衣の声だった。
「由衣ちゃん!?」
「由衣!?」
鏡の中に、神崎由衣の姿があった。
『コアミラーはミラーワールドの中枢核。私の思いを形に…モンスターを生み出す源なの…。あれを壊せば、ミラーワールドは消える…』
話しながらも、鏡の中の由衣の姿は次第に消えていく。
由衣の名を叫び、鏡に接近しようとする龍騎とナイトだが、モンスターに阻まれる。
『私はミラーワールドに残った、神崎由衣の虚像。でも、その存在ももう消える…』
完全に消滅する、由衣の姿。
『真司くん…蓮…お願い…ミラーワールドを閉じて…もう、誰も悲ませないで…』
その言葉を最後に、声は消えた。
立ち止まる、龍騎とナイト。
「蓮…」
龍騎が声をかけるが、ナイトは微動だにしない。
ミラーワールドを消せば、モンスターは二度と現れないだろう。また、同時にそれは、蓮や真司がライダーとしての力を失うことを意味する。ライダーでなければ、蓮の願いは叶えられない。
だが…。
一人、モンスターの群がる鏡に向けて歩き出す龍騎。
しかし、ナイトがそれを追い越していった。
擦れ違い様、ナイトの呟きが聞こえた。
「行くぞ…」
「…おう!」
走り出す、二人。
221名無しより愛をこめて:02/11/26 20:25 ID:NoPdfzY/
モンスターと戦いながら、鏡に向かっていく二人と鏡の向こうの空間を見比べて、
“仮面ライダー“はその意図を読み取った。
鏡への血路を開くべく、“仮面ライダー“は愛機の名を叫んだ。
「来ォい、サイクロン!」
彼方から、モンスターの群れを引き裂き、白いマシンが“仮面ライダー“の下へと駆け抜けてくる。
「トォ!」
サイクロンと呼ばれたマシンに飛び乗り、“仮面ライダー“がナイトと龍騎を追い越して、
鏡を守るモンスター達を吹き飛ばしていく。
鏡の中から、巨大なクモのモンスターが現れ、サイクロンの進路を阻むが、構わずに突っ込む。
「サイクロンクラァァァァシュッ!」
サイクロンとモンスターは正面衝突を起こし、大爆発が起こる。モンスターの破片と共に宙を舞いながら、“仮面ライダー“は叫ぶ。
「行けェ!」
サイクロンの跡を追うように、龍騎とナイトが駆ける。
『ファイナルベント』
各々のバイザーにカードを装填。舞い降りる契約モンスターがバイクへと変型し、龍騎とナイトはそれに跨り、
鏡の奥へと、その更に奥のコアミラーへと突っ込んでいく。

戦い、傷つけあう意味などないと信じていた。それでも、戦う矛盾に苦しみながら。
仮面ライダー龍騎

何を犠牲にしても構わないと誓った。それでも、誰かを傷つけてしまう事に苦しんでいた。
仮面ライダーナイト

もう、誰かが悲しむのは嫌だ。これ以上、自分と同じ人間が増えるは嫌だ。
だから今、戦いを終わらせる!

「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」」
二人の声が重なり合い、コアミラーは粉々に砕け散る。
全てのモンスターが、鏡という鏡全てが、割れて消えていく。
長い悪夢が、消えていく…。
222名無しより愛をこめて:02/11/26 20:26 ID:NoPdfzY/
戦いが終わり、平穏が訪れた世界で、三人の男が立ち並んでいた。
城戸真司、秋山蓮、本郷猛。
「秋山君、君の恋人だが、なんとかなるかも知れない」
「世話に…なるな…」
あの戦いのあと、真司と蓮はライダーの力を失ったが、“仮面ライダー“本郷猛の助力により、
蓮の願いは叶いつつある。
「それでは、俺は先に失礼するよ」
本郷はバイクに乗り、その場を去っていった。
蓮もまた、無言で立ち去ろうとするが、真司はそれを呼び止めた。
「蓮」
真司に背を向けたまま、蓮は立ち止まる。
「蓮…またな」
暫くして、蓮は小さく呟いた。
「ああ…」
それぞれ反対の方向へ、真司と蓮は歩いていく。
別々の道、同じ明日へと。