仮面ライダーシザースVol.2【私の勝ちですね…】

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590名無しより愛をこめて
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ボルは、シザースの…須藤の事をとても気に入っていた。
彼のためならば、ターゲットでもない人間を襲う事もやったし、
また単独でライダーに向かう事も苦にはならなかった。
だがボルは、それはあくまで一方的な考えだと思っていた。
自分がどう思おうと、須藤は契約によって自分を従え、命令しているに過ぎない。
ボルはそう考えていた。

その考えが間違っている事に気付くのは、あまりに遅すぎた。
その時とは、シザースの最期の時であった。

「け、契約が………ッ!」
シザースがうろたえた声を上げ、それを聞いたボルは、我が耳を疑った。
デッキを破壊されたライダーにとって、最も致命的な事は変身が解けてしまう事なのだ。
変身が解け、人間に戻ったライダーはミラーワールドで生きている事さえ出来ない。
しかも……もとの世界に戻る道さえ閉ざされてしまうのだ。
591名無しより愛をこめて:02/09/20 09:00 ID:1CW0y3XX
それなのに、シザースが咄嗟に心配したのは『契約』の事だった。
彼は、自分とボルキャンサーとの繋がりが絶たれてしまう事を恐れたのだ。

その一瞬でボルは、自分がいかに須藤に想われているかを知った。
我知らず、ボルは須藤を抱き締めていた。
須藤だけは死なせはすまいと。
………しかし、ボルの想いよりも更に、ミラーワールドの環境と運命は冷酷だった。
ライダーでなくなった須藤の身体がチリとなって消えてゆく。
もしボルに人間の身体があれば、間違いなく嗚咽と涙を漏らしていただろう。
残酷にもどんどんと『減ってゆく』須藤に、ボルは例えようも無い悲しみを感じていたのだから。

そして須藤は、ボルの腕の中で、完全に消滅した。

ボルはナイトに向き直った。
(この男だ。この男が私からシザースを奪い、殺したのだ)
まず、理解。そして、怒り。
初めて契約のためでなく、自分の意志で、それも今は亡きシザースの為に。

ボルはライダーと戦う事を決めたのだった。

ボルキャンサーが龍騎のドラゴンライダーキックによって散るのは、その僅か数分後の事である。