ある既婚者のひとりごと
結婚して早1年がすぎた。
確かに自動的に飯が出てきたり、着た服が洗濯されたりはするが、
私自身が自由に使える金は稼いできた額の1割以下。
独身のころと比べると、明らかに好きな雑誌を買ったり興味本位で
新しいものに手を出す機会が激減した。
居を構え一家の主として家族をささえていくのだから
俺には大人としてその責任をまっとうし妻や子どもを幸せにする義務があるのだろう。
女として枯れかけている女房の機嫌をとりながら、自我を抑え、
ただひたすら毎日労働しなくてはならない。その苦渋はあと30年以上続く。
自分が独身だったころ、既婚者がなんとなく羨ましくみえたこともあった。
「温かい生活」への幻想と憧れがあったのだろう。だが既婚者となってからは
独身者がなんとも羨ましく見えて仕方が無い。と同時に自分自身の人生に
対する浅はかな志向や判断、計画性の足りなさを酷く悔いた。
既婚者の常套句の一つ「年を取ってから一人は寂しい」。それは分かる。
だが私の母は50後半にして病死した。残された60の父は
かつて妻や我が子に囲まれてくらした思い出の一軒家で
一人暮らしている。子が独立しこれからは夫婦だけで・・・という矢先のこと。
そうかと思えば、父の知り合いに、生涯独身で通し先ごろ市役所勤務を
定年退職した元公務員がいる。十分な退職金と年金を手にし、今は
毎日ゴルフ三昧だそうだ。一軒家を所有し、クラウンに乗り、
数千万の預貯金を持つその人は、残りの人生を体がうごかなくなるまで
趣味とゴルフに費やし、その後は家を売って老人ホームに入居するんだそうだ。
みなさんも一人だから寂しい。家族が居れば楽しいなんて安直な考えはすてて
自分はどう生きたいのか、何をしたいのか、今一度自問されてみてはどうかと思う。