大きな声で言えませんが・・・・     

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173Miss名無しさん
無  題
(宮崎洋子 二六歳)

私を生んでくれた女(ひと)は朝鮮人だった
女が私を妊んだところは敗戦国日本
女はチョゴリとチマに身を包み、日本国にめまいを感じた
女はチョゴリとチマに身を包み、朝鮮語しか話せなかった
私を生んでくれた女(ひと)は朝鮮人だった

私が成長するにつれて女はカタコトの日本語を話せた
何故かそれは朝鮮語なまりの日本語
私の口からは日本語しか出てこなかった
日本人としての日本語、ごく上品な日本語
私の身を包むのは、赤いキモノに白いタビ
私の口からは日本人としての日本語
私を生んでくれた女(ひと)は朝鮮人だった

私が二十歳の頃、その女は死んだ
女はチョゴリとチマに身を包み、いやしい朝鮮語なまりの日本語
死ぬまでいやしい朝鮮女
死ぬまで顔の皺は深くて黒い
私を生んでくれた女(ひと)は朝鮮人だった

私がお嫁にいく頃、私の口からは日本語しか出てこなかった
私の身体からは日本の香りしか匂わなかった
上品な香りしか匂わなかった
私を娶った男は私と同じ香りがした
私を娶った男は上品な日本語が話せた
私に子供が出来る頃、何故か私の口から朝鮮語なまりの日本語
何故か私の身体にはいやしい匂い
私を生んでくれた女(ひと)は朝鮮人だった

私の子供が赤いリボンを結ぶ頃
私の顔には深く黒い皺
女はチョゴリとチマに身を包み、コトバをなくして横たわる
私を生んでくれた女(ひと)は朝鮮人だった
私を妊んだ場所は敗戦国日本