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ミステリ板住人 ◆22RAaWR.nE :
ジュール・ヴェルヌ「月世界旅行」 3点
ジュールの代表作のひとつではあろうが、「地底旅行」や「海底二万哩」の
ようなSF仕立ての面白い冒険談を期待すると外されるものあり。
舞台が宇宙(テラ&ムーン間に過ぎないとはいえ)になると、
天衣無縫な作風を魅力とするジュールも代数や物理法則を持ち出し、
理屈をこねて、それらしく見せるしかなかったのであろう。
ゆえに、月に向かって砲弾の如くロケットを発射するという破天荒な基本設定
ながら、しばしの宇宙旅行と月探査のシーンではわけわからめな科学解説
(「薀蓄」というワードの方が適切か)が繰り出されことになり、
退屈極まりないものあり。地球への帰還シーンに至り、
やっとスリリングな展開になることはなるが・・・
荒涼たる月面の描写は、はるかに時代を下ったアポロ等が送って来た映像を
想起させるものがあり、違和感無し。
この辺の予測力プラス描写力は、さすがジュールやとは思うたな。
だけど、文字どおり宇宙の藻屑と化してしまう犬のサテリットは可哀想過ぎる。
非常に懸念されるのは、
19世紀に書かれた本書を読み、
真に受けてしまうアホなSFオタが存在しないかということ、
「この方法で月周回が可能なら、自力で空ぐらい飛べるはず」とか思い込み、
公園のジャングルジムの上から「スカーーーーーーーイ、ダーーーーーーイブ」とか絶叫しながら飛び降り、
新年早々から複雑骨折とか・・・(w