890 :
ミステリ板住人 ◆22RAaWR.nE :
半村 良「産霊山秘録」 4点
泉鏡花賞受賞のボリューム感溢れる作だが、
現時点での評点はこんなもんでいいのじゃなかろうか。
本能寺の変、関ヶ原の戦い、明治維新、そして2次大戦後の戦後体制の確立等に至る日本史を左右した出来事の裏には、古代から皇室を影で支えながら君臨していたヒ一族(神の後裔、
ゆえにタイムトラベルやテレポテーション等の超能力がある)が存在していたのだとさというお話。
終盤の昭和戦後篇は、ほとんど「晴れた空」の世界である(w
(作者の戦後体験が後のこの作品で結実したとも言い得る)
天皇の人間宣言に対する真っ向批判が、危なくも凄くも珍しい。
著者の伝奇SFの代表作にして、大部なものだが、意外にもその後の伝説シリーズの売りの
ひとつともなるサービスのエロシーンは殆ど無い。(飛稚の両親(父は猿飛)のそれぐらいか)
エロ目当てのアホなSFオタは期待外れ大で涙目とか(w
891 :
ミステリ板住人 ◆22RAaWR.nE :2009/06/27(土) 10:50:05
光瀬 龍「たそがれに還る」 6点
現代的視点で読めば、ちょい甘め評価との批判を受けるやもしれぬが、
スペースものハードSFの面白さを備えた古典と言い得るかと思う。
メタボライザー(代謝調節装置)、トーキー(携帯電話機)等、
作中における小道具の発想を見ても、著者が優れたSF作家なことを実感させるものあり。
ラストは太陽系が巨大ガス星雲に飲み込まれてまうことを示唆してエンドとなるが、
これも遠未来の的確な予想でないと言い切れるだろうか?
軽い冗談に過ぎぬが、主人公の調査局員シロウズを岸部四郎図とかしたら、笑えたやもしれぬ。
だけど、既に姓名の区別は稀有になった世界という基本設定だけどね。
いずれにしろ、近所の縁日で買った光線銃のトーイを得意気に乱射してスペースコブラを
気取っているような、近年増殖中のアホなSFにこそ突き付けて読ませたい作ではある。
この作者(以下「リュウ」と略す)や前回紹介した堀晃(以下「ホリー」と略す)が、
日本SF界のトップになって活躍していれば、業界自体の局面も変わったやもしれぬ。
共に本格を目指し過ぎて、文体等の小説としてのコクを欠く面があるのが痛かったかも。
御三家や直木賞作家半村良、平井和正等には、それぞれに小説としての巧さがあるのである。