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ミステリ板住人 ◆22RAaWR.nE :
広瀬正「鏡の国のアリス」 2点
表題作の他に3短篇を収録。
この作家の代表作と言うてよい「マイナス・ゼロ」を読んだ時にも思うたのだが、
SF設定の面白さ(本作では左右真逆な鏡の世界)と小説としての魅力(本作では主人公の
青春恋愛談)の噛み合わせが巧くないのだ。
小松御大あたりはこの辺の緩急の使い方に抜群の技巧がある。
とにかく、鏡の原理を物理的に解説したくだりが長過ぎ、「売り」にしようとして逆にエンタメとして
大きな欠陥となってしまっている。
銭湯で2つの位相空間が交わり、異空間トラベルしてまうという面白アイデアで押せば、
SF小説としては十分、俺が担当していれば「三分の二のボリュームにして書き直して来い!」
と生原稿を叩き返していたやもしれぬ。
併録された3短篇に関しても軽く論評しておこう。
・「フォボスとディモス」
読後、シニカルなタイトルを実感させる作。
ただし、オチは見える(殺されたのが本物)、星新一先生ならSSでもっと巧く書き切るネタという
感がある。
・「遊覧バスは何を見た」
非SF。
漫画「三丁目の夕日」とか好きな向きにはたまらないノスタルジック、かつ、哀切なラストの作。
この作家は本当はこういう普通小説を書きたかったのではないか。
・「おねえさんはあそこに」
ちょっと泣かせるジュブナイル向きの作。だがその程度とも言い得る。
タイトルは「ハルオは宇宙人」とかした方が簡潔でわかり易いかと思う。