指輪物語の翻訳について語るスレです
ブッシュマンの事か?
ユリイカ4月臨時増刊号より
前略
天沢 さっきから一ついおうと思っていたのは、この『指輪物語」の特徴の一つは,
地名や人名の独特の魅力、良さですよね。歌なんかでも、人名の羅列でできてるような
歌がありますね。そこでの、たとえば人名の「r」や「l」の響かせ方がトールキンは
非常にうまい。アルウェン、エオウィンといった女性の名前とか、またアラゴルン
みたいないかにも無精らしい名前とかも自然で巧妙です。地名も、美しい森や
恐ろしい山といった場所の名前を実にそれらしく美しく付けています。
これは『指輪物語』の大きな特徴あり、魅力であり、またある種のマイナス面でも
あるわけです。なにか響きの美しさでもって、流していくというところがある。
井辻 あまり実体については触れない部分はありますよね。
やはり言語学者であったということですね。
天沢 人物の場合も、人の名前を美しく造形するということが彼の本領であって、
顔貌とか特徴をイメージとして出すのではなく、
音で代用したのではないかと思うんですね。
井辻 そうですね。音の響きや香りによって、こういうパーソナリティーだということを
伝えようとしていますね。その辺は小説的でなく物語的で、ゴラム=ゴクリというのも
まさにそのようなものですね。
天沢 あれは、瀬田さんの邦訳だとゴクリなんですけど、ゴラムだといけなかったんですかね(笑)。
井辻 私も、ゴクリと言うと、外に出ていく音なので、ゴラムと内に呑み込む音のほうが
どちらかと言うと良かったような気がします。
天沢 それに限らず、これは田中明子さんが手をいれた新版でだいぶ戻していますけど、
意味で訳すか音で訳すかという問題がいくつかありますよね。もちろん、音と共に
意味がそこに入っている場合はそれも訳したいということを役者は考えるわけですけど、
いま言ったように音の美しさをトールキンは原文で狙っているわけですから、
それを意味として日本語にしてしまうことにはちょっと抵抗がある。
井辻 「粥村」とか「堀窪」とかね(笑)。最初に、翻訳書が出て読んだ時に、
違う話を読んでいるような気になりました(笑)。ホビット庄が日本の村みたいに
なっていて、「吉四六さん」とか日本むかしばなしを読んでいるような気がして(笑)。
天沢 「粥村」はいまは「ブリー村」に戻しましたね。
かといって、全部戻してはいないですね。
井辻 単純な昔話的地名の「ロンリー・マウンテン」とか「ヘルムズ・ディープ」とか
どうしていいかわからないですよね。とりあえず「ヘルムズ峡谷」とかなっていますけど。
天沢 逆に、日本の作品を英語、フランス語にする時も、役者たちはいろいろ考えるみたいで、
たとえば宮沢賢治の「どんぐりと山猫」という童話がありますけど、
あの主人公はかねた一郎というわけですね。僕の知っているフランス人が訳した訳では、
「一郎」をそのまま「イチロー」と訳すとあまりにも意味がないというので、
「タロー」としたんです。「タロー」だとまだマシだと言うんですね。
それから「かねた」を「金田」という、まさに意味で訳して「シャン・ドール」と
したわけです。「champ」は田んぼとかそういう意味で、「d'or」は黄金のという
意味ですね。だから「かねた一郎」が「タロー・シャン・ドール」となるわけです(笑)。
ですから、まあ、翻訳者にとっては、難しいところではあるんですけどね。
(あまさわ たいじろう ・詩人/フランス文学)
(いつじ あけみ・歌人/児童文学)
アリオッホ!
>>3-4 この人らはトールキンの翻訳に際しての指定を知らないんだろうか……?
7 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/08(日) 21:58:28
俺原書読んだことないけど邦訳本と映画の雰囲気ってかなり違うよね?
サムとかスゲー訛ってるし、ボロミアとかギムリとかはやけにいい子ちゃんだし、
あと、全体的に古めかしい感じがある
あれって邦訳がおかしいの?それとも原書もあんな感じなの?
8 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/08(日) 23:48:46
世紀の駄作。
誤訳の宝庫。
信者涙目w
>>7 当然邦訳がおかしい。
サムは原作ではフツーにしゃべってる。
あんな変ななまり方してません(笑)
サムは普通にしゃべってねえべ。
イギリス人じゃないから詳しくはわからんが、あれは労働者階級か
田舎もんの喋り方だべ。
あれは百姓言葉です。
サムとフロドの主従関係をはっきりさせるためのものです。
日本人はイギリスの階級制度に疎いからわざと、あえてああいう訳し方を
したんです。
原書は古めかしい言葉遣いに翻訳調の文章だよ。
指輪で覚えた英語で現代イギリス人に話しかけると
変な顔されるよw
とにかく「馳夫」とかダサすぎる
これのせいで読む気が失せる
固有名詞を訳すか? 普通・・・?
山田さんは、Mr. YamadaであってMr. Mountain Rice Fieldじゃないだろ
ストライダーはストライダーで、馳男とかもうアホかと
私は本好きであったが、何故か「指輪物語」は手にしたことがなく、
この不思議なファンタジーの世界に足を踏み入れたのは今回が初めて。
そのために、愛読者達が翻訳版の人名、地名、キャラクターの言葉遣いなど、
すべてに深い愛着を持っていて、それを尊重しないと、彼らから轟々と抗議の声が巻き起こることを、思い知った。
例えばビゴ・モーテンセンが扮するアラゴルン。彼にはSTRIDERという、通り名がある。
「大股で、サッサと歩く男」というイメージである。
翻訳本では、これが「馳夫」(はせお)という
日本語に訳されていて、愛読者の方々は、「馳夫さん!」と呼びかねないほど、
彼に親しみを感じている。
私も子供の頃、登場人物の名前が全て日本語化されているディッケンズの小説を
読んだ記憶がある。それが不思議に思われない時代だったのだ。
しかし今は発音どおりのカタカナが通用する時代。
(映画の題名まで、ときにはわけのわからないカタカナで公開されてますものね!)
若い映画ファンには、まず「馳夫」という名が読めるかどうか。
また突然、こういう日本名が字幕に出た場合の違和感……とまどい。
ここは結局、愛読者の方々に涙をのんでいただいて、「韋駄天」(いだてん。これも
若い方はあまり知らないだろう。「足の速い人」のことです)に「ストライダー」とルビを
ふることを妥協策としたのである。
w
まず「原作者から固有名詞も英語の部分は
全て現地語に訳せ。じゃないと翻訳は許さん」という
指示が出ていることを念頭に置いておけよ。
>>10 イギリスは訛がひどく、ベッカムとかもかなり訛ってるらしいが、サムもそんな感じなのか?
ちなみに俺は邦訳版しか読んでない
>>7 原作のギムリと映画のギムリは完全に別キャラ。
翻訳云々の問題ではない。
>>7 ボロミアはイギリス人がびっくりするほど古めかしい格調高い話し方。
これはボロミアに限らずゴンドール人全般に言えることで、
それというのもゴンドールは非常に古い国で西方語(当時の中つ国北西部の共通語)
の始原であるためで、古い口調でいまだ話されているわけだ。
一方のホビットは相当くだけた感じの西方語を話し、
そんなホビットがゴンドールでしゃべりまくることのおもしろさをトールキンは狙っているわけ。
だから、翻訳のボロミアとかの口調はあれでも緩すぎるぐらいで、
それこそ本格時代劇のような感じであったとしてもおかしくはない。
ギムリとかは、映画化に際してキャラクターが相当粗暴に変更されているが、
原作は礼儀正しくて繊細で美に対して雄弁なキャラクター。
口調に関してのみ言えば映画でもかなり丁寧な言葉使いをしていると聞く。
ドワーフが粗暴とされるようになったのは後世のファンタジーによるもので、
指輪物語のドワーフは決してそんなことはなく、概して仁義に高い紳士だ。
映画であのように変更されてのは、一つはお笑い要員がほしかったことと、
もう一つが最近のドワーフのイメージを逆輸入したからだろう。
サムに関しては散々既出だが、
一般大衆のホビットは下層階級めいた訛った喋り方をしていて、
その中でも一握りの上流階級のホビット、
フロドや、メリーや、ピピンといった人らが高等な喋り方をする。
トールキンは言語学者で言葉の感じの聞こえ方にこだわっていたのだから、
当然翻訳でもその違いを表さなければならない。
お読みになったのならばおわかりかと思うが、
標準語を話しているホビットは上記三人ぐらいのもので、
後のホビットはことごとく訛っていることにお気づきだろう。
>>14-16 何も知らないで文句を言っているようなのでお教えするが、
トールキンは翻訳に際して事細かな指示を残している。
エルフ語の発音や意味に始まり、各言語の扱い方、
作品で英語として現されている部分は意味を残して現地語に訳すべし、といったことを
というのも、指輪物語は、フロドらが書いた西境の赤表紙本の写本を
トールキンが発見して、現代英語に翻訳したという体裁をとっているため。
トールキンはこの際に、西方語を固有名詞に至るまで全て英語に訳して、
ローハン語は古英語に訳し、エルフ語は訳さずそのままにしたと述べている。
何故かといえば、そうすることでホビットにとってなじみのある言語である西方語=英語と、
その他の言語との因果関係や対比を明確にしようとしたから。
例えばローハン語は、ホビットが大昔に話していた言葉と関連があって、
当時のホビット(メリーやピピン)でも所々に理解できる言葉があった。
だから、似た関連性がある古英語をローハン語と置き換えたわけだ。これが因果関係。
対比としては、エルフ語で、ホビットにとって等しく聞きなれない言葉であるから、
訳さないことで英語圏人にとってもなじみのない言葉であるということを演出した。
エルフ語はトールキンが美しさを重視して発明した言語だから、
粗暴な英語と華麗なエルフ語を対比させることで、エルフの美しさをも演出したのだろう。
つづき。
ここまで読めばおわかりかと思うが、トールキンは言葉の聞こえ方の違いをとても重視していた。
もし、翻訳に際して英語で書かれた部分の固有名詞を現地語に翻訳せず音訳したとしたら、
トールキンが図った各言語との対比が、まったく意味をなさなくなってしまう。
「馳夫」であれば、それは我々にとって耳慣れ意味のわかる言語であり、
まさにホビットらが感じたのと同じ印象を感じることができるが、
「ストライダー」であればそれはその他のエルフ語と同じ、耳慣れない言葉になってしまう。
だからトールキンは、
「英語で書かれている部分は固有名詞を含めてすべて現地語に訳し、
その他の言葉で書かれている部分は意味が判明しているいないに関わらず
すべて翻訳しないように」
と指示を出しているわけ。
ただ固有名詞を「ダークロード」だの英語モドキにしときゃファンタジーだなどという、
最近の傾向のファンタジーとは、指輪物語は歴史も重みもまったく違う。
そういう安易な発想に慣れた頭で指輪物語を評価しないほうがいい。
以上のことを踏まえて、
>>15はまだ文句があるのなら言えばいいし、
>>14は教授の指示に従った上で馳夫以上にいい訳があるのなら、提示すればいい。
何事にもより、批判というのはその対象をよく知ってから行うべきものであって、
よく知りもしないで批判するなどというのは言語道断であることを理解すべきだ。
ついでに言うと、
>>4などで述べられている粥村→ブリー村への変更だが、
ブリーは粥という意味を持つとともに丘という意味を持ったダブルネーミング。
旧訳では一方の意味しかとらえていない翻訳であり、
かつ粥と丘が同居する意味の語が日本語にはなかったため、
止む無く音訳という形で修正された。
決して井辻天沢が言うような英語かぶれの観点から音訳にされたのではない。
そもそも「馳」という字の意味すら、今の子には通じないんだろうな。
自分は邦訳→原書の順で読んだから瀬田訳が違和感あるとは思わなかったが、
原書→邦訳で読んだら違和感あったのかなあと思う時があるな
まあどんな本でも原書→邦訳でよんだら違和感あって当然だろうが
>>22 >「馳夫」であれば、それは我々にとって耳慣れ意味のわかる言語であり、
>まさにホビットらが感じたのと同じ印象を感じることができるが、
>「ストライダー」であればそれはその他のエルフ語と同じ、耳慣れない言葉になってしまう。
今(というか西暦2001年以降ぐらい)に読む層を考えると1行目のほうが耳慣れない気がするけど
ぶっちゃけSFやらファンタジーやら読み慣れていると、馳せ夫のほうが異国語だよなあ
現地語も60年もたてば変化するんだぜ。まあ指輪物語も今昔物語同様に古典ということなんだろうな
ストライダーと聴いて
大股歩きでずかずか進む人と言う感じがして
身分高い人に対して言うには非常に失礼な
人間っぽくない渾名
という雰囲気をつかめるほど日本語は変化したのか、ほー。
馳夫はちょっと人間らしすぎるけどな。
これに限らず翻訳は難しい。
どうやっても意図が完全に伝わらないことを理解していない日本人が多い。
例えば源氏物語を英訳するようなもの。
な? 外人に何が分かる、って気持ちになるだろ?
向こうもそういう思いをこちらに抱いているわけで、それはお互い真実なわけだ。
ですます調が、バカにされてるような気がする。
でした。
でした。
でした。
小学生の遠足の日記かよw
>>27 ファンタジー読みなれててもストライダーのニュアンスがわかる人は少ないだろ
つーかファンタジーを読みなれてることとストライダーの意味が分かることとは関係ない気が
ある意味正しいと言えなくもない>小学生の遠足の日記
よく聞くですます調が嫌ってのが俺には理解できん。
そんな些細なこと気にしてて本が読めるのか?て思う。
あの口調だからこそ映える描写もあるだろうし。(角笛なのです、とか)
原文の雰囲気にそぐわない、ってんならまだわかるけどさ。
ホビット(=体格もオツムも小学生並み)の遠足の回想録だろ
>>33 原文の雰囲気にそぐわないんだろ
特に戦闘の場面とかでまったりしてしまうのがちょっとなあ
序盤はですます調でもまあいいんだけど
極論承知で、
「春はあけぼの」と「春って夜明けがサイコーよねっ!」と
どちらで読みたいかという議論と言えなくもない。
取っつきやすいのは後者かもしれないが、時代の空気とか、格調とか、を伝える前者を切り捨てるわけにはいかないと。
>>28,31
でもさ、「馳夫」って日本語というか日本の日常で使う言葉じゃないだろ(平成時代では、明治大正とかは知らん)
言葉じゃないというより通常意味をもたせて使える言葉じゃなくて、「造語」だよね?
翻訳を読んでいるってわかっているんだから、「造語」を見たらもとの「英文」はどうなっているって考えないか?
いや、考えない人は翻訳のよしあしなんて考えないんだろうけどさ
そもそもストライダーにしても馳夫にしても通り名とか渾名、通称のなんだろうけど
日本語にはあんまりなじまない風習だと思うんだが・・・日本だとだいたいその手のって地名か本名を略した言葉が多いよね
ありがちな翻訳で「ちび」って渾名(通り名?通称?よくわかんね)が本人はガタイのでかいマッチョって設定は
けっこうあるけど、日本でそういうあだ名のつけ方しないよね?
まあだからどう変えればいいかってのは思いつけないんで「ストライダー」のままってのがまだましなように感じるんだけどさ
>>36 >時代の空気とか、格調とか、を伝える前者を切り捨てるわけにはいかないと。
それを古典というのですよ
娯楽としてより教養として、楽しむ以前に知識が問われたなら
好奇心以外に満たされるものはなくなってしまいます
>>37 「ストライダー」だと日本人が読んだとき異国語と感じるから
何が何でも日本語にはしろ。
あちらこちら大またで歩き回ってる怪しい奴的侮蔑ニュアンスの
あだ名と言うと「不審者さん」とか?
股夫
>>37 それを言うなら、「ストライダー」だって造語だが。
「はせを」が松尾芭蕉の宿帳記載の名でもあると知っていると、
掛詞の面白さににやりとできる。
中つ国の後の歴史家はテレコンタール王朝の意味を調べて目を丸くするのかもしれないなとか。
言葉に凝る人の文章は、こだわって読み解くといつまでたっても発見がつきない。
新訳に反対はしないが、そのニュアンスやこだわりまで含めて訳出できる「日本語を操る」技量のある訳者の出現を期待する。
原文で読めって言う問題ではなくね。
原文で読めない人、読まない人にも、元の文の面白さを知ってほしいから。
>「ストライダー」だって造語だが
>「ストライダー」だって造語だが
>「ストライダー」だって造語だが
えっっ!!!???
>>37 わざわざ音訳して原作者の意図損ねるよりは
造語でも日本語で意味通じさしたほうが何倍もいいだろうよ
つーか、単に直訳するだけなら中学生でもできるような気が
日本の慣用句などに当てはめたり、固有名詞は固有名詞として扱ってこそ訳者の意味があると思うんだが
自分にしてみりゃいくら固有名詞でも
「キングダム海」とか「グレイタワーズ山脈」とか「ダークネス海峡」とか、
まったく意味を翻訳しない最近(この例はそう最近でもないが)の傾向のほうが信じられん。
あきれを通り越して怒りを覚える。
上のほうで固有名詞の問題を日本人名の「山田」になぞらえている人がいるが、
日本人で「山田」を文字通り「山・田んぼ」という意味ではっきりと捉えている人がどれだけいるか?
多くの場合、「山田」は意識の上でも「山田」という単体の独立した単語として普段は捉えられているのであって、
わざわざ意識して意味を分解しない限り「山・田んぼ」を意味する語とは考えないだろう?
「山田」は「山・田んぼ」ではなく「そういう固有名詞」として頭に入ってくる。
そういった、単語に意味はあるが、普段その意味を特別意識しないで用いられている類の固有名詞は、
たしかにそのまま直訳するのは妥当ではないかもしれないとは思う。
例えばニューヨークは「新ヨーク公町」って意味だったと思うが、
アメリカ人はそのような意味としては捉えておらず、
「ニューヨーク」という語そのままで街の名称として捉えているという意味で、
ニューヨークを「新ヨーク公町」と直訳するのは確かに間違いだろう。
しかし、語の意味が聞く人の頭に意識される類の固有名詞に関して言えばこの限りではないと思う。
例えば前述の「グレイタワーズ山脈」などは、
英語圏の人は「ニューヨーク」というような独立した単語としては聞いていないはずだ。
ほぼ間違いなく「灰色の塔群の山脈」というような意味を意識して聞いているはず。
またそう名づけた作者も、「灰色の塔群の山脈」を意味して名づけたはずだ。
であるならば、それを「グレイタワーズ山脈」と意味を翻訳しないで音訳するのは、
はたして妥当なことか?
この場合、固有名詞にも二種類あって、
(仮に意味があっても)普段は語の意味が意識されない固有名詞Aと、
意味があり、かつその意味が読者(あるいは命名者)に意識される固有名詞Bがある。
前者は翻訳しなくとも構わないが、後者は翻訳すべきだと思う。
固有名詞だからといってその全てを翻訳しないでカタカナ表記するのは、
それは単なる翻訳者の怠慢でしかないと思う。
翻訳者の仕事は、意味を直訳することでも、
ましてや固有名詞を全部カタカナにして放り投げることでもない。
作者の意図を伝え、かつ書かれた言語圏の人が読むのと同じ印象を、
できうる限り忠実に翻訳した言語圏の人に伝えることではないのか。
「山田」を「Mr. Mountain Rice Field」と翻訳したのでは、
現地の人の印象を伝えたことにならないという意味で誤訳(あるいは妥当でない訳)であるが、
同様に「the Gray towers Mountains」を「グレイタワーズ山脈」と翻訳したのでは、
同様に現地の人の印象を伝えたことにならないという意味で誤訳(あるいは妥当でない)だと思う。
同じことがストライダー云々についても言える。
「Strider」と聞いた時、英語圏の人はその意味まで頭に意識されるはずであり、
また、実際のその意味に基づいて命名された通称だ。
もしこれを「ストライダー」と翻訳せずカタカナ表記にしたのでは、
英語圏の人が感じるその「意味」を日本人が同じように感じることができない。
「意味のある語」が「意味のわからない外国語」になってしまう。
そういうわけで、たとえ固有名詞だろうが上で述べたようなBタイプ(勝手な分類)
は翻訳すべきだと思う。
「固有名詞だから翻訳すべきじゃない」なんてのはただの思考停止だ。
ま、上二つは自分の勝手な思想なので別に従わない人がいても一向に構わないし、
異論があったり間違いが指摘さたりもして当然だが、
だとしても『指輪物語』に関してのみ言えば原作者トールキンの断固とした指示があるわけで、
原作者の意図を無視するほどの正当性があり、
かつ原作者が説明している根拠を押し返すほどの根拠でもない限り、
「英語の固有名詞は翻訳しない」というスタンスは絶対的に誤りであって、
「英語の固有名詞も翻訳する」スタンスが絶対的に正しいということに変わりはないわけだが。
(じゃあなんで長々と自論を展開したのかといえば、
さも当然であるかのように語られる「固有名詞非翻訳主義」を、
当然と思ってない奴もいるよ、それが誤りだと思ってる奴もいるよ、
ってことを示したかったから)
「中つ国のキメラ構造 ファンタジーの固有名詞をめぐって」(『翻訳の世界』1996年2月号での井辻朱美氏より)
自分こそ「指輪の王」(ルビ:ロード・オブ・ザ・リングス)の最大の理解者だと自認していた、
日本の多くのトールキ(ニ)アンが仰天し――そしておそらくは激昂したのは、74年に
邦訳本「指輪物語」が出たときであったろう。
「馳夫」とはいったいなんだ? 枝垂川や裂け谷はまだいい。だが、中つ国とは、白が丘
大堀町とは、はだか山丘陵とは。はたまた飛蔭につらぬき丸とは。そして「ゴクリ」とは!
野伏などという聞き慣れぬ雅語の飛び石にもけつまづきながら、原書派の読者はこの奇妙な
瀬田「指輪」の王国をよろよろと横断していったのであった。
井辻さんも結構ファンタジーを訳しているようだが、
井辻訳信者っているのか?
瀬田訳とか安田訳とかには信者がいるって聞いたり、読んだりするけれど。
>もしこれを「ストライダー」と翻訳せずカタカナ表記にしたのでは、
>英語圏の人が感じるその「意味」を日本人が同じように感じることができない。
>「意味のある語」が「意味のわからない外国語」になってしまう。
ちょっと記憶があいまいなんだけど、なぜ「馳夫orストライダー」と呼ばれるか
宿屋の主人が簡単に説明してたよね
中学生ぐらいなら、その説明+ストライダーで意味のある語になると思うんだが
馳夫だと、あの説明がなかったらなんじゃこりゃだと思うんだけど
そういや野伏せりってのも個人的にはほとんど強盗集団って感覚があったよなあ、いやたぶん私が間違っているんだろうけど
読んだときは 翻訳に苦労しているんだなorそういうふうにしか見られていない集団なのか ってちょっと考え込んだ
あれの原文というか英単語は何なのかどなたか教えていただけないですか
>51
Rangerだったと思う
ありがとう
Rangerって負のニュアンスもあったのか。結構嫌われていたというか避けられていたよね・・・
He is one of the wandering folk--Rangers we call them.
気になって原書見てきた。たぶんここが踊る子馬亭での初出。
バタバー親父がフロドに尋ねられて答えるところ。
親父が胡散臭がってるのは「流離う者」だからじゃないかな。
「流離う者の一人、レンジャーと呼んでいます」だから。
基本的に根無し草は犯罪者集団と同一視されて
怪しがられるのが一般的な中世の感覚。
固有名詞を訳さなかった場合の「指輪の王〜指輪の仲間」より
「あそこに聳えるのはバラジンバル、すなわちレッドホーン、無慈悲なるカラズラスです。
その向こうにあるのはシルバータインとクラウディーヘッドすなわち白きケレブディルと
灰色のファヌイゾル、われらの言葉でいえばジラク=ジギルとブンドゥシャスゥルです。
あそこでミスティーマウンテンは二つに分かれその両方の腕にかかえられるように横たわる
のが、われらには忘れることのできぬ深い影の谷間、アザヌルビザールすなわちディムリル
デール、エルフのナンドゥヒリオンと呼ぶところです。」
>>48 どうやら本気でトールキンの指示を知らないらしいな、この人は。
あるいはハナから原作者の指示なんて聞き入れる気がないのか…
こんな人がトールキンの理解者を気取るなんて…
戸棚と同じような老害な気がしてきた。
>>50 説明聞いて「なるほどだから馳夫か」と思うのと、
説明聞いて「じゃあストライダーってのはそういう感じの意味なんだろうなぁ」
と推測するのとじゃ、天と地ほどの差があるだろう。
いくら意味を推測できたところで
「ストライダー」という語はどう理屈をこねくりまわしたとしても
日本人にとっては外国語でしかない。
「ホビットにとっての自国語と外国語の対比」を
「読者にとっての自国語と外国語の対比」
として演出することの望んだトールキンの意図を汲むには、
「ストライダー」ではどうしたって失格であることは明白。
それこそ自分で訳してみりゃいいのにな。
「ホビットの冒険」だけなら分量も手頃だろ。
僕チン訳の二の舞にはならないと思うんだぜ?
いや「トールキンによる指輪物語の図像世界」とか翻訳してたんだな!
さすがだYO!
「なるほどだから馳夫か」
結局すなおにそう思えるか、そこでおいおいと思うかの個人の感覚の問題なんだな
「ホビットにとっての自国語と外国語の対比」と 「読者にとっての自国語と外国語の対比」
すくなくとも俺にとって「馳夫」は外国語というか使っている文字が似ている漢文同然の
普段使う言葉ではなかったということだ
ついでだもうひとつ
>トールキンの意図を汲むには
結局、翻訳にたいしてのトールキンの意図(自国語と母国語の対比)は
現行の翻訳では成功しなかったということだよね、成功していればこんなスレは存在しない
どんなに高尚な意図や思想があっても読者に理解されなければ空回りで終わる
どんな翻訳であろうと100%原作の雰囲気なんて再現できるわけでもないんだし
原作読め!というわけではない、訳すほうも読むほうも不完全を承知しているべきだということ
>61
トールキンの指示ってのはあくまで翻訳者が踏まえるべき指示であって、
読者が指輪物語本編を読んで汲み取るような内容じゃないだろ。
だが本編しか読まない読者でもエルフ語と日常の言葉が入り乱れた文章や
その翻訳について議論したくなるのは当たり前。だから指輪の翻訳について
スレが立つのは必然だが、それは作者の翻訳の際の意図がどうこう以前の話だ。
(ラ行がどうとか瀬田訳がああだとか)勝手な理想を掲げて空回りしてるのは、
作者や訳者じゃなくて周囲の連中のほうだろ。
つーか折角エルフ語と現代英語と織り混ぜた作品書いたのに、スレも立たないような
翻訳されたら教授だって泣いちゃうじゃん。
井辻って、ホントは原書で読んでないんじゃない?
>>60 ま、馳夫という翻訳にたいして異論があってもいいだろう。
実際のところ、翻訳として妥当でかつ教授の指示にさえ従っていれば、
「馳夫」でも「股男」でも「アメンボ」でも「アシタカ」でもいいわけで、
それは単に個人の好みの問題で絶対的な正しさも誤りもない。
だが「ストライダー」ではどう転んだってダメだってことだ。
>>61 本気で現行邦訳が完全無欠だと思ってる人はこのスレにはいないと思うよ。
ただその代案にもっと不完全なもの出されたから反論してるだけで(俺の場合)。
このスレに原書読んだことある人何人ぐらいいる?
ホビットならある
指輪とかシルマリルは読んでない
古森あたりまでなら読んだ
68 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/16(月) 03:12:48
エルフ語でなら読んだ
トールキンの翻訳の手引きは基本的にヨーロッパ言語に翻訳するための
手引きだから、西方語を漢字文化圏で訳した場合、どういう文体になるかは
想像の範囲外だったと思う。井辻朱実のいうキメラ構造というのは、トールキンの
指示通りに訳したら、そうならざるを得ない必然ではあるんだよね。
たしかに大堀町とかはだか山丘陵、飛蔭につらぬき丸とか、日本語としてこなれ過ぎていて、
ヨーロッパの古い地縁的イメージと日本の文化とがチャンポンになってしまい、最初に
原書で読んでいたら、これは戸惑うだろうっていうのは想像はできる。
逆に中国語みたく、音まで漢字を当てる言語だと、日本語訳ほどキメラには
ならないんじゃないかな。
音訳じゃダメだって言われてるんだから
中国語でもやっぱおかしいと思うが。
フロドたちの名前が訳されなかったのは
瀬田氏がトールキンに連絡とって
「どうしても日本語ではキャラの名前を訳すと変だ」と
説得してキャラの名前だけは音訳のままで
認めてもらったんだよな。
>>70 ソースプリーズ
って訳してるやん>馳夫、堀家その他
馳夫は通称だろ。名前じゃない。
本来ならフロド→賢とかピピン→小林檎とか
訳さなければならないが訳さずに音訳してるだろ。
Frodoって訳せって指示あったっけ・・・?
>>70 >>69は、意味に“加えて”音まで訳す、といってるんだよ。
音訳“しか”しないと言ってるんじゃない。
意味の上に音も訳せるのであれば、
それだけ原文のイメージをより伝えられるということだから、理想的な方法といえる。
意味と音を重ねてる邦訳の例だとShire→庄とか。
>>73 はっきりとした指示は多分ないと思うが、
フロドという語も(フロドに限らずだが)西方語から英語へ翻訳されたものなので、
可能ならばできるだけ訳すべきだね。
可能じゃないのが多いから現在の形になったわけだけど。
いっそ中つ国じゃなくて中国にしてフロドも漢字の名前に訳したほうが違和感なかったかもなw
英語じゃないじゃん>フロド
英語では意味が無いでしょ
Mauraはホビットの言葉じゃ意味ないけど
ローハンとかの言葉なら「賢」って意味がある
英語ではFrodoは意味が無いけど
北欧語では「賢」って意味がある
実際にFrodeという名前の人もウジャウジャいる
「西方語から英語へ翻訳されたものなので
可能ならばできるだけ訳すべき」なの?
Nomenclature of The Lord of the Ringsには指示は無いな>Frodo
Bagginsは訳したほうが良さそうだから
袋屋フロドとかそういうふうにするべきだったな
あー、今日泊亜蘭が訳したら面白かったろうなぁ。
>>76 おっしゃるとおり、ゲルマン語の「賢い」という意味だが、
それをさらに英語風にしたもの。
厳密には「ゲルマン語に起源を持つ英語(風)」の名前。
ならば、可能なら同様に
「日本語ではもはや意味はないが意味があった古い言葉に由来する日本語」
にでも翻訳するのが、最良の方法というものだろう、 可 能 な ら 。
>>74でも述べたように可能じゃなかったから現在の形になったわけだけどね。
で、教授としても穿たないと意味を推察できない語だということで、
そこまでこだわらず音訳を許可したんだろう。
(無論、素直に翻訳の困難さを認めたという理由が主だろうが。
教授は日本語については専門外でコメントできる立場にないしね)
>瀬田氏がトールキンに連絡とって
瀬田貞二がトールキンに連絡をとって翻訳についてアドバイスを受けたって話は
初めて聞いた気がするんだが、後書きに書いてあるんだっけ?
自分も初めて>トールキンに連絡
結局のところ、翻訳の問題ってのは、映画先に観てから邦訳読んだ人間の
違和感の問題でしかないような気もするなあ。
瀬田氏がトールキンと連絡取ってたって何かで読んだ気がするんだが・・・思い出せん
でも原著者と翻訳者が連絡取るなんて別に珍しい事ではないのでは?
瀬田氏の翻訳についての本かなんかじゃなかったっけ?
>>82 映画先に見てから原書みたら違和感なかったりするの?
86 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2008/06/20(金) 10:38:44
映画のサムがフロドにタメ口ってどうよ?
だよなぁ
使用人と雇主どころじゃなく、日本で言うなら江戸時代以降の側回りの者と武士みたいなもんだし
>>82 原書読んだこともなく、映画の製作発表前に邦訳読みましたが
違和感ありまくりでした
>>88 なんで原書読んだことも映画見たこともないのにないのに違和感あるんだよ
The Lord of the Rings自体に違和感があったってことか?
まず絵が少ない事に違和感がある?w
>>89 さんざん言い尽くされているみたいだけど「馳夫」に
あと、「つらぬき丸」、「じゅう」もかな。地名は気にならなかった
>>91 たとえばだが、それぞれがどういう日本語だったら個人的には良かったと思う?
だいたい剣の名前を日本語にするのに違和感。
しかも剣というより、船の名前みたいだし。
それとやっぱり、ですます調。
全体的にバカにされてる気がする。
>>92 ごめんね、「ストライダー」ってカタカナの方がましだったと思っている口なんで
主人公がスキーブってカタカナなのに残りのクラーの住人の名前が全部日本語だったような
違和感・・・といっても挿絵がないような本読んでいる人にはわからないかも
まあストライダーだってってのは映画見てから知ったんだが
>>93 鬼きり丸ってのは平安時代だっけ
なんか読み手自身の常識を現代日本基準で本を読むか中世ヨーロッパ基準にすべきか
はたまた日本の江戸?平安あたりの感覚で読むべきか・・・そういう違和感があるんだよね
>>93 剣に名前がついてるのはなにもおかしなことじゃないけど。
「丸」てのは船だけでなく刀の接尾としても一般的に用いられる語。
蜘蛛切丸とか小狐丸とか有名だけど知らない?
>>94 >なんか読み手自身の常識を現代日本基準で本を読むか中世ヨーロッパ基準にすべきか
>はたまた日本の江戸?平安あたりの感覚で読むべきか・・・そういう違和感があるんだよね
そういう文化とか空気とか時代感とかの違いを
言語の違いによって表現した本なんだけど。
>>95 刀(にかぎらず大切に思うものに)に「丸」をつけるのはかなり昔
刀の名前としては、刀工の名前で呼ばれるのが「普通」ってひともいる
ホビットの冒険は読んだことないんだけど(ノービットは読んだw)
つらぬき丸って誰が名前つけたの?
>>96 これはこのスレを読んでからの後つけの理由でもあるんだけど
>そういう文化とか空気とか時代感とかの違いを
これを出さないためにストライダーじゃなくて馳夫じゃないの?
文化の差を出すためにストライダーを馳夫って訳してるんだよ。
ストライダーはホビット達にとっては自国語。
エルフ達の喋る言葉やドワーフ語や西方語は
ホビット達にとって外国語だからカタカナで音訳する。
日本人が「ヴェルサイユ城」って聞いたら外国語の名前、
「白鷺城」って聞いたら日本語の名前って感じるだろ。
それと同じこと。
>>98 だから、自国語だから「馳夫」だというのはわかっているって
それも自国語の古語じゃなくて「普通に」使われる言葉なんでしょ
で、つらぬき丸はある意味、私にとっては古語なわけだ(なにせ刀の名前に丸だからね)
で由来も何もなしでいきなり「古語」で名づけられた名前が出てくると当惑するわけですよ
5,000年前から伝わる当家の家宝って前振りがあるならいいけど
じゃあなんて訳す?
これまでも色々と代案は出てるが
結局これと言った名訳は出てないしな。
50年前の作品だから今の人の感覚に合わせた翻訳はいいと思うが、
音訳だけはスタートラインにさえ立つ資格は無い。
スティングだとつっつき刀とか?
ストライダーは大股歩き野郎?