亜光速宇宙船団で銀河を渡り、各星系に情報をもたらす事で資源を
入手、旅を続ける船団があった
時には来訪した星系の住民とトラブルとなる事もあり、彼らの船団は
高度に武装化されており、その組織も軍事化されていた
故に彼らは「軍団」と自称していた
しかし、彼らは知らなかった
亜光速で銀河を押し渡り、相対論効果によって遅れた時間を通り過ぎて
きた彼らとは異なり、星系に生きる住民達は十数世紀進んだ科学技術を
得ており、銀河系の星々を超光速の通信網が繋いでいるという事実を
軍団がもたらす情報は星系住民に取って数十年遅れの陳腐なネタであり
彼らが誇る「銀河系最強の兵器」も、発展した星系の防衛システムの前
では無力な存在に過ぎなかった
だが、星系住民は軍団のもたらす情報をありがたがる振りをして、軍団へ
航海に必要な資源を「施し」た
星系住民にとって、軍団は新知識をもたらす来訪者ではなく古い伝統を
伝える技芸の伝承者、保護すべき旧時代の残滓だった
軍団が星系を発進した後、星系政府は軍団が次に目指した星系の政府に
通達を発した
「本日オールト雲を抜けました.途中で事故がなければ、そちらへの
到着は27年後の予定です」
「そうですか、では一年前から歓迎の準備をせねばなりませんな」
そう、軍団のアイデンティティを守り伝統を保護するため、彼らが滞在する
期間中は通常電波等による通信からは超光速通信技術に関する情報を
一切排除する必要があったのだ
オールト雲の彼方から無人哨戒艇が超光速通信で星系を去っていく軍団の
姿を送ってきた
莫大な太陽エネルギーを消費して製造された貴重な反物質燃料が光子ロケットの
燦めきとなって軍団の宇宙船を加速する
軍団がもたらした貴重な情報の対価として恭しく引き渡された、その反物質が
実は高位次元を利用して非常に低エネルギーな代価で入手された安価な
ものでしか無いことを軍団はしらない
そして、彼らの情報も等しく無価値であることを
星系政府代表は、憐れみと蔑みのこもった声でつぶやいた
「銀河乞食軍団が行く」