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ミステリ板住人 ◆22RAaWR.nE :
筒井康隆「ダンシング・ヴァニティ」 採点不能
世紀末の5年間(90年代後半頃)にはやや低迷した感があった鬼才筒井堂であるが、
新世紀に入るや「恐怖」(2001年)「ヘル」(2003年)「銀齢の果て」(2006年)
「巨船べラス・レトラス」(2007年)とエンタメとしても面白い作を連発、
まさに衰えを知らないものがあり、
「新世紀」への突入が筒井堂にとって作家としての回春剤となったかのような感がある。
本作は、あえてエンタメ性を捨て(ゆえに、タイトルから全盛期の超ドタバタぶりを期待すると
外すので注意)、
美術評論家であるおれ(渡真利)の日常を取り巻く絶え間ない反復と混迷・・・
かなりの読書人をも苦闘せしめるプルースト、ジョイス、フォークナー等の作に列なる
人間の記憶・意識の世界を筒井流のドタバタと嗜虐性をスパイスにして描いた作ゆえ、
難解、かつ、読み難いものとなっている。
物語終盤ではシミュレーション技術発達による虞犯罪というSF的ギミックは登場するものの、
(ミステリ的趣向としては、義息の元愛人殺しの犯人は渡真利の娘である妻の凱子だとわかる
ネタがあるが、犯行の詳細は無く作品の軽いスパイス程度)
「文学性」といったものには無縁なまま、宇宙船、レイガン、半裸の美女等々に
萌えなアホなSFオタが、果たしてこの作を読了し得るか否か、非常に気がかりではある。