今日読んだSF/FT/HRの感想 8冊目

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975ミステリ板住人 ◆22RAaWR.nE
ダン・シモンズ「ザ・テラー 極北の恐怖」               4点
あえてジャンル分けすれば冒険小説の要素が濃い作ではあるが、
「ハイペリオン」の作者でもあり、怪獣小説=ホラーの要素もあるので、
あえてこの板で紹介しておきたく思う。
フランクリン卿率いる北極探検隊遭難(全滅したと言われるが、本作ではテラー号艦長の
クロウジャーのみイヌイット娘に助けられてサバイバルする)という歴史的事実をネタに
迫り来る極寒、壊血病の蔓延、食料不足によるカニバリズム等々血生臭いリアルな描写が
積み重ねられると共にダン作品らしいホラー&ファンタジーの世界も展開されている。
ただし、食料不足、反乱等のリアルな問題の前に売り物であるはずの探検隊を襲う謎の
極北の怪物(イヌイット伝説に登場する怪物、この辺のファンタジックなオチがダンらしい)
の存在感がじょじょに薄れてゆく感があるのが惜しい。
また、主要登場人物の過去をハイペリオン・シリーズ等でもおなじみの濃厚なエロ描写有りの
色事等をまじえて挿入しているのは、スケベでアホなSFオタへのサービスの意図もあろうが、
話がやたら長くなる上に、肝心の冒険談のテンポが落ちるという弊害が見て取れるのも
頂けないものがある。
結果的にアリステア・マクリーンの「北極戦線」のような迫力ある冒険談、あるいは、
「影がゆく」の如きサスペンスフルなホラータッチの作等を期待すると、
長いわりに非常に中途半端な印象の作に終わっていると言い得る。
まあ、「イヌイット娘のエロキター!!」とか「イヌイット娘のエロまたキター!!」等々、
いちいちウインドーをオープンにして絶叫しているアホなSFオタの長い夜のための読物と
しては最適かもしれぬ(w
またその程度に評価しておけばよろしい作かと思う。