今日読んだSF/FT/HRの感想 7冊目

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730ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
スタニスワフ・レム「大失敗」               2点
SF界における世界的なマエストロの遺作長編。
タイトルからしてネタばれであり、
惑星クウィンタにおける人類のファースト・コンタクト失敗の経緯を
「漏れの科学的知識と哲学観の全てをぶち込んで書いてみますた」といった類の
やや自己満足的、オナニーの匂いがする作であり、読むのはかなりしんどいものがある。
「ソラリス」「砂漠の惑星」等の60年代全盛期のスタ作品は、テーマの深遠性のわりには
コンパクトに纏まったサスペンスフルなストーリーが特徴であり、エンタメとして読んでも一級品であったことを思えば、クルーのひとりに神父まで登場して神学論争風の議論
(特に日本人には苦手なもの)さえ繰り広げられる展開は頂けないものがあると
言わざるを得ない。
SF界のマエストロというスタンスにとどまらず、文化人としてのステータスまで得た
晩年のスタにとっては、最早、読者に面白く読ませるとか、本を多く売るといった事は
アウト・オブ・眼中であり、自己の主張・文学的実験の呈示のみが意図されていたので
あろうか。(コレクション刊行にあたって、スタは日本における自作の部数を見て、
日本の読者に対する賛辞を述べている)
例えば、アホなSFオタ(院のオーバードクターあたり)が、
仮に私のところにこのような作を持ち込み原稿として持参した場合には、
「甘ったれるな!オナニーはひとりで煎餅蒲団の中でやっていろ!」の一言で叩き返して
いたかと思う。
ところで、クウィンタ星人の正体は、訳者あとがきで引用されているスタの言に
例示されている知性を持つ粘土OR知恵ある偽昆虫OR微生物あたりがアンサーに
ならざるを得ないのであろうか。