今日読んだSF/FT/HRの感想 7冊目

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270ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
中 勘助「犬他一篇」        6点
表題作は「銀の匙」で著名な中の手による幻想ファンタジィである。
ストーリーはドリームというよりはまさにナイトメアそのもの、
犬に化身した2人の男女(醜いバラモンの僧と彼氏に邪恋された美しい百姓娘)の
愛欲の日々、この生地獄に人間の「性」が徹底して活写されてゆく。
バラモンの僧がアホな2ちゃんねらーまがいの色狂い、
呪法によりゾンビーまがい(?)を利用して恋敵であるイスラムの青年兵士を
倒す展開には驚いた。
なお、勘助と聞いて、「漏れだけの勘助キター!」と半狂乱となっているSFオタ
は即効で死ぬべきである。
(「風林火山」かヴォケ!)
なお、併録された「島守」は、「犬」とは対照的に、
作者の野尻湖弁天島における滞在経験を素材としたいかにも「銀の匙」の
著者らしいストイックな自然スケッチ風な作である。
271ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2 :2007/06/02(土) 19:13:15
筒井康隆「巨船ベラス・レトラス」  6点
筒井堂の最新作とはいえ、テーマ的にはこの板で紹介するのはどうかと思うが、
現代日本文壇の現状をネタとした思索小説としての「SF」とは言い得る。
現実と作中の人物が交錯する謎の巨船ベラス・レトラス(現代文壇のメタファーか)、
終盤には、作者である筒井堂本人まで登場するが、一番書きたかったのは、
自身の短編を巡る著作権侵害についての怒りではなかったのかと勘繰ってしまうくらい
この件に関する記述が詳細に過ぎる感はある。
(なお、作中人物中では「48億の妄想」を想起させる著作を持つしころ山が作者に
最も近似したキャラと思われる)
ラストで船首像となってしまう村雨澄子は、その良し悪しは別として(沈みゆく)文壇
の先端にあるということか。