今日読んだSF/FT/HRの感想 7冊目

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17ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
掘 晃「バビロニア・ウェーブ」    4点
あらかじめタイトルのネタばれをしておくと、
全長5830光年の銀河系を垂直に貫くレーザー光速であり、
単純な概算でも光が片道進むだけで、古代バビロニア以前から出発している点に
由来するものである。
この人が「太陽風交点」でデビューした時は、阪大工学部卒というSF作家としては
申し分のない学歴でもあり、いずれは小松御大の遠未来ものの後継者となり、
特に小松作品には無い宇宙を舞台にした傑作長編(「さよならジュピター」もアレ
だったし…)をモノにするだけの力量の持主だと期待していた。
しかし、初長編にして、もっかのところの唯一の長編である本作の刊行までに
デビューから10年を要したうえに、デビュー当時からの科学的考証に偏重気味で
読み易さ等小説として配慮を欠く点は改善されておらず、
(この点で、同様なハードSF路線を取っていても、適度に萌えキャラを配したり、
お笑いを散りばめる小川一水は「SF」だけでなく「小説」創りにも長けていると言える)
SFとしてのグッドアイデア(反射鏡を利用し太陽系の涯てに発見されたレーザー光束、
通称バビロニア・ウェーブから地球へエネルギー供給する等)ながら、
理科系人間の語りにありがちな「なんだか面白そうな話だけどわかり難い」に終始して
しまっているのが残念ではある。