教祖様の本を読め。
SFよりすごいぞ
>>120 パクルのも案外難しい。プロット丸写しというわけにもいかないだろうし。
>>121 想定の範囲内だ。
>>122 教祖様の本は怖くて読めない。
そんなわけで、宇宙の大規模構造が隣の宇宙の大規模構造と戦う話を考えた。
主人公は、宇宙の大規模構造の攻撃として、連鎖銀河砲の引き金を引くのだが。
というわけで、新しいアイデアを出すのはもう無理だということで落ち着いて、
新しいプロットを考え出すことになりました。
ヴァン・ヴォクトが好きなので、
1、追われて逃げる
2、味方が敵だった。さらに逃げる。
3、宇宙的きっかけにたどりつく。
4、宇宙的きっかけが作動して、権力のあり方が変わる。
のような話をつくることになりました。
もはや、ここはおれのメモ帳だ。
なぜ、逃げるか。
1、中央権力に虐待されているから。
中央権力とは、
1、第一植民世代(光の王のパクリ)
2、専門主義化しすぎた科学者(宇宙船ビーグル号のパクリ)
3、楽園を維持するための擬似宗教(猫のゆりかごのパクリ)
4、世界同時革命に成功した共産主義者(なんとなくディックのパクリ)
いちばんパクリ度の低い4に決定。
世界同時革命が成功した共産主義と戦うことになりました。(今さらかよ)
やっぱり、共産主義では今さら感が強いので、
5、日本を破産させ、国家の破産を楽しむというシナリオを操る日本の影の支配者
と戦うことにしました。(急にオリジナルになる)
西暦2080年、日本の国債残高は8000兆円になり、歳入の99%を国債の利子の返済に当てていた。
日本が破産することが確定した現在、今から財政再建を企む政治団体は国家に追われていた。
なんだか、つまらなそうな話なので、やっぱりやめる。
18番目のスターブレイカー月影は、教団の異端審問にかけられ殺され、19番目のスターブレイカー霧影がその意思を受け継いだ。
戦いを挑むものは皆死ぬといわれた1205番目のターンダイバー赤毛を倒したのは、4895番目のターンダイバー灰目だった。
二人が出会う時、物語が始まる。(猫の地球儀をパクることにした)
完全生産管理体制が確立した未来、コンピュータの配線に蚊が一匹、飛びついて焼け焦げて死んだ。
それによりコンピュータにわずかばかりのミスが発生して、本来、カクテルバーテンダーとなるはずだった女は、
書類整理係として製造されてしまう。間違ってつくられた彼女は、書類整理など、どこにもするところのない中央世界を追い払われ、
忘れ去られた古の都に送還される。(クラウンタウンの死婦人をパクることにした)
どうせ、一生暇だ。一大SFファンタジー大作をつくることにしよう。
人類圏を支配する王たちの星々は、生命工学を駆使して、他の多くの星々を奴隷化していた。
生まれた時から支配される側にある奴隷のなかに、
王たちの権力を手にすることのできる王の静脈紋をもった男が流れ着いていた。
今にも死にそうなその男は、王たちに命を狙われるが。
王たちは不死、生命工学は人類を完全管理して一生を計画表どおりにすごさせる。
物語の途中で、惑星が崩壊する。恒星は超新星化して、ブラックホールの雨が降る。
超銀河団が崩壊して、宇宙の大規模構造に異変が起きる。
男は残像をつくり、残像に行動させることで死を免れ、無数の残像のどれが本体かわからない。
時間移動が行われており、登場人物は実はたったの三人。あとは時間移動で重複している。
ヒットする作品のポイントは優しい話だと思う。
なんとか、頑張って、優しい話を考える。
1、みんなの犠牲になって死ぬ話。しかも、実は生きていた。
2、影でみんなのために頑張っている話。
3、みんなの痛みを代わりに受けているやつ。
こんな感じかな。自分が優しいやつではないので、あんまり思いつかない。
これをもとに話を考える。
130 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2007/10/16(火) 01:38:30
竜退治のベタな話を書きたくなったのだが、誰かネタを提供してくれないだろうか。
いちおうSF的な設定があり、竜はその中で出てくる。
131 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2007/10/16(火) 05:48:35
90くらいからつまらなくなったな。
〉〉1はいつ帰ってくるんだ。
このスレで議論が行われたことなんて一度もねえよ。
1もあきれて帰ったんだろう。
133 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2008/03/03(月) 21:02:21
ちょっと創作のメモ帳に使わせてもらうよ。
時代
王朝の交代を管理する役所があった。その役所は、大和朝廷時代から日本に存在し、
王朝が交代するたびに、日本の支配者に、日本の支配者である証を継承させてきたのだった。
江戸時代が終わり、帝国時代に変わる時、将軍徳川慶喜から明治天皇に日本の支配者である証
「縄文棍棒」が手渡された。王朝の交代を管理する役所は「縄文棍棒」が明治天皇の手に渡った
時点で、日本の支配権は明治政府にあると見きわめ、真の日本の歴史を記した縄文書記に、
日本の支配権は徳川より天子に渡されたと書き加えた。
そのまま、縄文棍棒は天皇に継承され、第二次世界大戦の敗戦をうけて、
昭和天皇から時の総理大臣鈴木貫太郎に手渡された。これによって、王朝の交代を管理する役所は
日本の支配者は天皇から総理大臣に移ったと判断し、帝国時代を終え、民主時代を始めた。
縄文棍棒は、秘かに、歴代総理大臣に継承されることとなった。ついでに、ふれておくと、
縄文棍棒がアメリカ人の手に渡ったことは一度もない。よって、日本の支配権は、占領下にあっても
日本人の手にあったのである。
今、この縄文棍棒は、現在の総理大臣福田康夫の手にあるのである。
少年、東日乃丸(ひがし ひのまる)は民主時代の愚かさを嘆いていた。
「民主主義は堕落し、国民の士気を著しく低下させている。街にはニートがあふれ、
女たちは家事見習と称してニート同然の暮らしをしている。民主時代は終わるのだ。
革命を起こさなければならない。三権分立を討ち倒し、新時代を始めるんだ」
日乃丸の声を聞いて、西宮遥(にしみや はるか)はつれなそうに答えた。
「あんた、バカじゃないの。新時代って、どんな時代よ。あんたの空っぽな頭で、
民主主義より立派な政治が考えられるの」
日乃丸は答えた。
「考えられるよ、遥。ゲーム政治時代だ。総理大臣の選出をひとつのゲームにして、
ゲームの勝者がこの国の政治を動かすんだ。ゲームの面白さ、熱中度によって、
政治にはまり込む中毒者が続出するよ。ゲーム政治こそ、民主主義にとって代わる
新しい時代だ」
遥は答える。
「総理大臣を決めるゲームって、どんなゲームなの?」
「安全武器による戦争ゲームだ。これからは総理大臣の座を力づくで毎日、
一分一秒の油断もなく、守りつづけなくてはならないんだ。総理大臣争奪戦への
参加は当然、自由だ。日本人全員が、総理大臣の座をかけて争いつづける
安全武器による戦国時代が始まるんだ」
「そのゲーム政治時代の初代チャンピオンには誰がなるっていうの」
「当然、おれだよ」
日乃丸は答えた。
日乃丸と遥は、首相官邸に真っ昼間のなか、正面から堂々と進軍していった。
「待て。ここから先は立ち入り禁止だ」
警備員が止める。
「押し通る」
日乃丸が警備員を殴り飛ばした。
「なにい、こいつ正気か。いったい何のつもりだ」
「革命だよ。おれたち二人が日本に革命を起こす」
「革命だとお。バカな、ここをどこだと思っている。日本の政治の中枢、首相官邸だぞ」
「当然、知ってのことだ」
「公安を公安を呼べ。自衛隊にも連絡を。総理、今こそ、
革命家に対して自衛隊の出撃を命じください。我々では防ぎきれない、ぶお」
警備員はふっとんだ。
首相官邸には、福田康夫が待っていた。
「ふふふふふふ、革命の戦士よ。はたして、わたしまで手がとどきますかな」
福田康夫がいった。
日乃丸と遥は歩く。一人、また、一人と警備員がふっとんだ。
バラバラバラバラとヘリコプターの音がし、自衛隊員が降下してきた。
「自衛隊最高司令官総理大臣福田康夫の名において、革命の戦士に対し、集団自衛権の行使を命令する」
首相官邸に降下した自衛隊員が遥に向かって、銃を撃った。
バキッ。日乃丸がその弾丸をつかみとり、握りつぶす。
「面白れえ。やっと本気を出したみたいだな」
日乃丸がいった。
「何をいっているんです。わたしはまだ本気の20%も出してはいませんよ」
福田康夫が答えた。
日乃丸と遥が降りそそぐ弾丸の雨の中、福田康夫の手前五メートルまで近づいていた。
だが、日乃丸は、自分がそれ以上、福田康夫に近づけないことを知って、驚いた。
「どういうことだ」
「ふふふふふふ、わたしは七種類の結界によって、身を守られている。
日本の真の支配者とはそういうものなのですよ」
「あまい。気が乱れているぞ。この結界は、歪んでいる。踏み込める」
「なんですと。わたしの結界が歪んでいるということは、
日本国民の気が歪んでいることを意味する。これは由々しき問題だ。
どうやら、わたしが本気を出さなければならないようですな。
男、福田康夫が、己の拳でもってお相手いたしましょう」
福田康夫が日乃丸を殴ろうとした。しかし、紙一重で見切って、日乃丸はパンチをかわす。
日乃丸のカウンターが福田康夫をとらえた。ふっとぶ福田康夫。
「こんなものではないぞ。どうやら、わたしの真の姿を見せなければならないようですな」
福田康夫の体が裂け、中から一匹の怪物が姿を現した。
「どうやら、それが最後の手段のようだな。おまえは自分の切り札を先に見せてしまった。
それがおまえの敗因だ」
日乃丸は福田康夫だった怪物の体に腕を突っこんで、体の中から一本の棍棒をとりだした。
それは、日本の支配者の証、縄文棍棒だった。
王朝の交代を管理する役所は、縄文棍棒が福田康夫から東日乃丸の手に渡ったことを確かに確認した。
「これで、おまえの負けだ」
日乃丸は叫んだ。崩れる福田康夫だった怪物の体。時代が、変わろうとしていた。
縄文棍棒を手にした東日乃丸は、テレビの全番組緊急特番で革命の成功を宣言した。
「民主主義の時代は終わった。これからは、日本の支配権を力と力で奪い合うゲーム政治時代が始まる。
国会の解散を宣言する。首相官邸の崩壊を宣言する。最高裁判所の解体を宣言する。
文句があるなら、かかってこい。日本の支配権はおれの手の中にある。
誰でも、好きなやつが取りに来い」
緊急特番は二十度にわたって再放送された。日本国民全員が、新しい時代が始まったことを認識した。
その後、決起した日本国民の集団のいくつかと、東日乃丸は戦ったという。
東日乃丸は七十年にわたって縄文棍棒を守りきり、日本の支配者として七十年間、君臨した。
了
お題 フェアリー
起 妖精に会う。
承 妖精が困っているようなので、助けることにする。
転 妖精はいじめられっこの少年に光る花束を渡すことにしていたのだが、光る花束が枯れてしまう。
結 花束が枯れたのは妖精が花の蜜を飲んでしまい、花が精気を失ったから。主人公は花束がなくても、少年に励ましを与えて、終わる。
フェアリー
明るい快晴の真っ昼間、おれは元気に道を歩いていた。今日は日曜日。
一日中、時間が空いている。軽く古本屋にでも行って、立ち読みしにいこうと思っていた。
そんなおれの目の前に、何かきらきら光るものが見える。気のせいか。
いや、気のせいなんかじゃない。たしかに、羽の生えた身長三十センチぐらいの小人が裸で空を飛んでいる。
「ええ、きみはいったい。裸? おっぱいも下も丸出しではないか」
「いやらしい目で見るなあ」
羽の生えた小人のコークスクリューパンチがおれの顔面をふっとばした。
痛みに耐え、おれは羽の生えた小人に話しかける。
「ごめん、ごめん、変な目で見て悪かったよ。それより、きみはいったいだれなんだ」
「あたし? あたしは妖精だよ」
そして、おれの妖精との遭遇が始まった。
古本屋に行くのはあきらめた。てくてくと妖精について歩いていく。
「もしもし、妖精さん。これから、どこに出かけるのですか」
「あたし? あたしはこれからいじめられっこの少年にこの光る花束を届けに行くのです」
妖精は得意げに話す。小人とはいえ、おっぱいとおしりが気になって仕方ない。
「いじめられっこの少年かあ。やっぱり、困ってる人を助けるのが妖精さんの仕事なの?」
「そういうことなのです。さあ、ついたです」
いいめられっこの少年は、コンビニの外に座りこんで、一人で黙って下を向いていた。
「この光る花束さえ渡せれば、少年は元気になるのです。さあ、これから、渡してくるのです」
妖精はそういって、少年に近づいていった。
しかし、少年に近づいた途端、光る花束がしおれて、急に枯れてしまった。
「大丈夫か、妖精さん」
「たいへんです。光る花束が枯れるということは、近くに邪な考えを持った輩がいるという証拠です」
「近くに邪な考えを持ったやつなんて、どこにも」
「なにをいっているかあ」
再び、妖精のコークスクリューパンチがおれの顔面をヒットした。
「へぶおっ、何をするんだ、妖精さん」
「なにおう。邪な考えを持った輩なんて、おまえに決まっているではないですかあ。
大事な光る花束を枯らしてしまって、その腐った性根を叩きなおしてくれるですう」
「妖精さん、そんなことをしている場合では。すぐ底に悩める少年がいるというのに」
おれがそういうと、妖精さんはぷりぷり怒って、答えた。
「まったく、その通りです。早く、もう一度、光る花束をとりにいってくるです」
そういって、妖精さんはどこかへ飛んでいってしまった。
おれはいじめられっこの少年の前にただ一人でとりのこされた。
「ねえ、きみ」
おれは少年に話しかけた。
少年が顔をあげる。
「何? いま、何か、そこにいたような気がしたけど」
「ああ、きみのことを心配している子がいただけだよ。
今日はちょっと都合が悪くなって、帰っちゃったけど」
「ふうん」
少年はそう聞くと、また下を向いてうつむいてしまった。
「あのさ、きみ、きみのことを気にかけてくれる人は必ずどこかにいるんだから、
気をしっかり持たなくちゃだめだよ。絶対に負けちゃダメだ。それで、少しづつ
友だちを増やしていけばいいんだ。きみのことを応援している妖精さんが一人、
いるんだからね」
「んん? なに。ううん」
「元気を出しなよ。きっと、いつかきみの前に現れるよ。おっぱいも下も丸出しなんだ」
おれはそういって、少年から離れていった。おれのことばが少年の励ましになったのかは
わからない。だが、きっと、次に妖精さんがやってきて、きっと少年に元気の出る光る花束を
プレゼントするのだろう。
了
嫌われ者
須藤明は人の精神エネルギーを吸収して、弾丸として撃ち出す兵器の開発に
成功した最初の科学者だった。まだ、歳は若く、二十三歳の奇才というべき
存在だった。
時の首相、各国の大統領、国連議長、世界平和団体のすべてが、須藤明に
その開発した弾丸兵器をもって敵と戦うことを依頼していた。須藤明は、その
弾丸兵器をソウルアタッカーと名づけ、人類の敵と戦うことを決意した。須藤
明の敵、それは地球外から襲ってきた亡霊のような宇宙人たちだった。
須藤明のソウルアタッカーは、人の精神エネルギーを吸収して燃料とする。
そのため、ソウルアタッカーに精神エネルギーを吸収された人は死んでしまう。
須藤明は、しかし、容赦なく、通行人の精神エネルギーを吸収して、ソウル
アタッカーを発射するのだった。
須藤明が街を歩く。人々はそれを見て、後ずさりして、遠ざかっていく。
「逃げろ。須藤明が来たぞ」
「うわあっ、殺されるう」
「とんでもねえ疫病神だ」
須藤明は逃げようとする群集に走っていって、足の遅い一人を捕まえ、
ソウルアタッカーの燃料とする。
「いけ」
須藤明が短く呟いた。と、同時にソウルアタッカーが発射される。
どごおおおおおん、と音がして、ビルの壁に弾丸が当たった。そして、
ビルの前に浮かんでいた宇宙人が体液を噴き出して、姿を現した。宇宙人
が姿を消して、潜伏していたのだ。
「うわああ、今度は宇宙人だあ」
「見ろ。まだ、死んじゃいねえぞ」
宇宙人は秘かに地球人をさらって、解剖手術をしていた。捕えられて、
生きて帰ったものはいない。時々、解剖手術をされて打ち捨てられた人体
が発見されるだけだ。
嫌われ者
真田加奈は嫌われていた。空気が読めないのに、でしゃばり出てきて、
何の解決にもならないことをモゴモゴいって、それで、みんなが真田加奈が
何をするのかを見ていると、「ごめん、あたしにはどうしたらいいかわからないから」
とかいって、意味のないいいわけを始めるからだ。そんなことをいうなら、
最初から出てくるなって話なのだ。それなのに、この前も、原田と山田が
喧嘩していたら、真田加奈がわって入ってきて、「あんたたち二人とも悪いのよ」
などと勝手に決めつけ、自分で解決したつもりになっているからだ。いっておくが、
原田が悪いのは、おれたちみんなわかっていたんだ。原田も山田も、原田が
悪いのはわかっていたんだ。それなのに、何も知らない真田加奈がでしゃばって
きて、二人とも悪いなんていいだして、命令口調で解決した気になってるから、
みんな真田加奈のことが嫌いだったのだ。
それで、真田加奈の悪口を男子便所の壁に紙を張って、みんなで書き殴ったんだ。
「バカ」「死ね」「ウンコブス」「地獄に落ちろ」とか、いっぱいいっぱい書いて
あった。おれも「クラスいちキモイ」と書いてやった。それで、真田加奈を無視する
連盟をつくって、真田加奈をみんなで無視していたんだ。おれも真田加奈を無視する
連盟に入っていたんだ。クラスの女子も、男子便所に悪口を書きに来ていた。
そんな時、クラスでもう一つのいじめが起こった。狙われたのは、おれだ。
原田たち、五人の男子に囲まれて、お金をたかられた。おれは泣いていた。
「返してくれよ」といっても、返してくれなかった。おれは怖くて、悔しくって、
泣きつづけていた。
そこへ、真田加奈がやってきた。「どうしたの、あなたたち」といって入ってきた。
「うわあ、触るな。近寄るなよ、真田加奈」みんな真田加奈を嫌った。
「関係ねえだろ、向こう行けや」原田が怒鳴った。それでも、真田加奈は行かなかった。
「泣いてるじゃない、川田くん。ねえ、みんなあ、川田くんが泣いてるよお」と
真田加奈がいったのだった。おれは、そんな大声で、おれの恥をさらすなよと
思った。だけど、いったんだ。
「あいつらが、おれの1500円とったんだ」
「ええ、それは、そういうときは」
真田加奈はいつものように、結局、何も決めれずに、モゴモゴしていた。
それから、どれくらいの時間がたったのかわからない。おれはずっと下を
向いて、立ちつくしていた。
気がつくと、真田加奈が五人の男子を相手に喧嘩していた。クラスの他の誰もおれを
助けてはくれなかった。そして、真田加奈は泣きながらも、おれの1500円を
とり返してくれたのだ。
おれは走った。走って、男子便所までいった。そして、真田加奈の悪口を書いた
紙切れを破り捨てた。びりびりに破いた。
おれは、真田加奈は頭は悪いが、悪いやつじゃないと心から思った。
了
野中英次作「未来町内会」完結に寄せて
おれの趣味はマンガを立ち読みすることだ。それ以外に趣味はない。時々、
立ち読みできなかったマンガの単行本を買ったりするけど、四大週刊誌などは
立ち読みですましている。出版社のみなさん、漫画家のみなさん、もう、何年
も立ち読みですいません。おれは読んだマンガに相当するだけの金額をマンガ
界に支払っていないのは確実です。おれは無料でマンガを読みつづける邪魔な
読者のひとりにすぎません。でも、時々は単行本を買っているので、許してく
ださい。
そんな、おれだが、最近、マンガ界に起きた一大事件について、いたく深い
衝撃を受けている。この事件は、おれの愛するマンガ界にとって、とてつもな
く大きな損失をもたらすものであり、マンガ界全体の面白さ放出度を著しく停
滞させるものだと思われる。マンガを愛するおれにとって(立ち読み読者では
あるが)、この事件に非常に深い関心を寄せている。
この事件は、そろそろ長い歴史をもつにいたってきたマンガ史にとてつもな
い印象を与えて、記録されるであろう大事件であり、全国多くのマンガ読者の
気力を奪い、大きな挫折感を味あわせるであろうことはまちがいない。
「最近、面白いマンガねえなあ」
というのは、齢三十歳になるおれが中学生の頃から聞きつづけてきたことば
であり、それでもみんな夢中になってマンガを読んでいるのであり、愚かな一
般大衆に面白いマンガがないと思わせながら、実はマンガ界が面白いマンガを
どこかでつくりつづけているのは、もう、揺るぎのない事実であると思われる。
その中でも、最近の面白いマンガとして、全国の読者に大きな影響と熱狂的な
注目を集めていたであろうとある作品に起きたできごとについて、おれはここ
に書き記そうと思うのだ。
訂正 題名 ここ一週間におけるマンガ界の大事件について
その大事件とは、もう誰もが知っているであろう某週間マンガ雑誌における
隠れた看板漫画であったあの歴史的大作の完結である。ここまでいえば、もう
なんのことだかわからない者は、この漫画大国である日本には一人としていま
い。情報の伝達の早い漫画愛好家たちで、この大事件はものすごい速度で全国
に広まっていったと思われ、全国で完結の喜びともう来週からこの漫画を読め
ないという悲しみで、喜びの涙と悲しみの涙の両方がとめどもなく流されてい
ったことだろうと思う。歴史的名作漫画の完結は、漫画愛好家に大きな困惑を
もって迎えられるものであり、嬉しいのか悲しいのかもわからない涙の果てに
は、ただ「作者よ、ありがとう」とのことばが胸の中で高まるのを感じるのみ
である。
その、マンガ界におきた歴史的大事件とは、もう、ここまでいってわからな
いものはひとりもいないであろう。そう、誰しもが喜び跳びついて真っ先にそ
のページを探し、むさぼり読んでいたあの名作漫画の突然の最終回の到来であ
る。
なんと、週間少年マガジンに連載されていた野中英次の「未来町内会」が今
週、突然、最終回を迎えたのである。おれは悲しい。これから、どの漫画を楽
しみにマガジンを読めばいいんだ。もう「未来町内会」が読めないなんて。
おれは悲しみを癒すために、友人にこの話を持ちかけた。
「おいおいおいおい、聞いてくれよ。読んだか、今週のマガジン。びっくりだ
よなあ」
友人は答えた。
「ああ、マガジン読んだけど、何かあったか」
「何って、大事件があったじゃないか。びっくりだよ。おれはショックで読ん
でから欝だよ」
「大事件って、何かあったかあ。いつもどおりだろ」
「バカヤロウ。あの『未来町内会』が完結しただろうがあ」
「悪いけど、おれ、マガジンは『はじめの一歩』と『賭博覇王伝零』しか読ま
ないから」
おれは友人のことばにショックを受け、しばし意識を失うかと思った。
こいつ、ひょっとしてマガジン読者のくせに、『未来町内会』を知らない?
まさか、そんなことがあるのか。立ち読みしかしないおれは、たいていの
漫画を読み飛ばしているのだが、そのおれが毎週かかさずに読んでいた漫画
のひとつなんだぞ。
「おまえ、『未来町内会』を知らないのか。あのなあ、今週、突然、何の前
触れもなく最終回を迎えたんだぞ。全国の読者がきっと悲しみの涙でくれて
いるはずなんだ」
「あのさあ、『未来町内会』のことはよく知らないが、それって打ち切りじゃ
ないのか。まあ、マガジンからまたゴミ漫画がひとつ消えたんだ。いいこと
じゃないか」
「バカヤロウ。打ち切りのわけあるかあ。あの野中英次が打ち切りなんてこ
とがあるわけないじゃないかあ。壮大な構想のもとに練られた計画的な最終
回に決まってるだろ。この突然の最終回は、のなーの計算されたドッキリの
ひとつなんだよ。なぜ、おまえにはそれがわからないんだあ」
「まあ、落ち着けよ。おまえ。おれにとっては、『未来町内会』が終わろう
と始まろうと、別にどうでもいいことだからよ」
「ふざけるなあ。いいか、よく聞け。さすがののなーも、最終回にはやはり
救世主を中心にもってきたな。さすがに読者の需要を見きわめた適切な判断
だ。よく、おれたちの気持ちをわかっているといえる。おれは救世主が平田
教に勧誘された時、これからどうなるんだろうって、はらはらして読んでい
たもんだ。それが、のなーは、のなーは、のなーは最終回に自分で巻末コメ
ントを書いているんだぞ」
「だから、落ち着けよ。それから、のなーって何だよ。意味わかんねえよ」
おれは血の気が引くかと思った。
「のなーっていえば、野中英次の愛称に決まっているだろ」
「あいつ、あんなマイナー作家のくせに愛称なんてあったのか。くだらねえ」
おれは、おれはこの憤りをどこにぶつけたらいい。こいつは漫画のことなん
て、何にもわかっちゃいない。
おれは、おれは最後にひとこといいたい。野中英次よ、感動をありがとう。
野中英次作『未来町内会』完結に寄せて。
了
半官
1 「romanesque ou romantique」二重でメタな構造は悪くないと思った。
だが、読んでいてさして面白いと思わず。なんか、ごちゃごちゃしていて
読みづらかった。
bQ「ここ一週間における漫画界の大事件について」流れるような文章、
引き込まれるような内容。さすが、おれ。すばらしいのひとこと。いちばん、
お題のマンガということにとらわれている作品だと思った。普段、マンガの
ような小説を書いているため、マンガというお題を出されると、逆に困るということか。
bR「Andy」アメコミに詳しい人なのだろうか。レッドという事件にさして
衝撃を受けなかったため、評価は低い。たいして感慨を受けなかった。マンガを
大事にするAndyを描くのに、その理由の深さがぬるいと思った。
bS「誇り高きその名は、一輪のサルビア」サルビアが素敵なキャラ。そのひとことに
つきる。僕は魅力不足。だから、サルビアとのやりとりに深さを感じなかった。
bT「色の無い彼女」発想が面白い。マンガのお題で幽霊さんが出てくるとは思わなかった。
結末をもっと具体的に書き、ハッピーエンドをより盛りあげた方らさらに面白かったと思う。
bU「ウィリー・ニリー・ヒーローズ」主人公の正体がわからないシュールな話。そこは
面白い。ただ、結末が弱く、読後感はぬるい。
bV「レン」序盤の自分の書いた絵に話しかけてしまうようなのは苦手。
生理的嫌悪感を感じる。だが、結末の暴走して拡散していくところはよかった。
読後感としては、まずまず面白いである。
bW「引っ越しと浜地鳥」特に感銘を受けなかった。カテーンが印象深い。
bX「8行小説〜学園編」「まったいら」と「通学風景2」で笑った。
bP0「嗜好」一行目がセリフなのにカッコがついていないから、
序盤の内容を理解するのに、時間がかかってしまった。おっぱいを押し当てら
れた男は俺ではないわけね。ホモオチは腐女子的でマンガ的展開なのかもしれ
ないが、面白いとは思わなかった。
bP1「けみょーん」ギャグ漫画家の名前田中田けーじという適当な名前が
よかった。それ以外に、感想はなし。作者の代わりにつづきを描けばいいんだ
という結論にまったく共感できなかったからであろう。
bP2「哀しい檻」怪奇現象に迫力が乏しく、楽しめなかった。
bP3「それでも俺はやってない」主人公の変な理屈が面白かった。ただ、
窓ガラスを割ったところで終わってしまうのはもったいない。もう少しつづきが
あるとよかった。漫画的な展開を信じる主人公と現実との間にもうひとオチ
ついたであろう。
bP4「リリリア先生の個人授業」最初の「楽に休め」がいちばん面白かった。笑えた。
ノリは好きなのだが、知らない作品については感想を持つことができず、おいてきぼりに
された気分で、あまり楽しめなかった。
bP5「思春期のラクガキ」よく人物が描けてる。結末がよかった。
bP6「希望を見つけた人の話」話の前ふりとしては面白かったが、その後の
展開が、呪われてしまった人の話だけで、うまくいった人の話がないのが残念だった。
そのため、話全体がわかりにくかった。
bP7「冷静と情熱の愛だ」発想は意外性にとんでいる。が、結末がいまいち理解できない。
白紙のマンガがドラゴンボール27巻を産み落としたのだろうか。どちらにしろ、
あまり面白い結末ではなかった。
bP8「エリカ」エリカ、可哀相だな。感動は薄いな。
bP9「彼らは僕のかけがえのないモノ」おれも物書きのはしくれとして気持ちはわかる。
しかし、感動はうすいな。
bQ0「今田アキの呼び方」いいね。普通の恋愛ものだ。
bQ1「エロマンガみたいな恋したい」面白い。欲をいえば、最後の妄想でオナニーしていた
という展開は余分だ。削除した方がいい。主人公は岡崎の妄想するような生活を実際に
していたというオチにした方が面白かった。
bQ2「『ウパウパ』の世界ができるまで」なかなか面白い。にやりとしながら読んだ。
漫画家の楽屋ネタは大好きだ。しかし、最後の創造主様たちが作品を待っているというのは、
この漫画をもとに世界をつくっている創造主が実在するということなのだろうか。
それなら、それで面白く、そうでなくても別にかまわないが、最後の一行がわかりにくかった。
禁じられた恋
遠い遠い未来、ある惑星の小さな島に、争いつづける二つの名家があった。その名家の名は、チョウヒ家とリョフ家。
ある時、チョウヒ家とリョフ家の間に一時休戦の使者が行きかった頃、チョウヒ家の幼い長子ヨクトクは、町外れの丘で
椅子に座って休んでいる二人連れの貴族に出会った。一人はヨクトクと同じくらいに幼い女の子で、もう一人の女はその
幼い女の子の従者のようであった。
幼い男児であるヨクトクは、一目見て、その女の子に心を奪われてしまった。なんと、美しい姫なのだろうか。ヨクト
クは今まで生きてきた中で、チョウヒ家の中にこれほど美しい女の子がいるのを見たことがなかった。見かけない子だ。
チョウヒ家の者ではないのだろうか。もし、チョウヒ家の家来の家の者であったなら、なんとしてでも、妃に迎えたい。
幼いヨクトクは、一目見ただけでそこまで策謀をめぐらした。それほどの美しさがその女の子にはあった。どこか弱弱し
く、それでいて決してそれに負けないように立つ凛とした美しさが、儚さの中にまぎれて垣間見えるのだった。
「おい、そこの女。名を何という」
ヨクトクは六人の従者を率いながら、二人の貴婦人に話しかけた。
ここは町外れの人里離れた丘の休憩所。管理するものもなく、ただ、雨除けの屋根と机と椅子だけが置かれた無人の休
憩所。今は、戦争の中断された緊張感漂う停戦協定の時。停戦中とはいえ、いついかなる時、無法者が襲いかかってくる
かもしれぬ。そんな、静けさと寂しさの漂う戦争の終わったひと時の休息の時間。
「おい、そこの女。名だ。名を申せ。おれはお主の名が知りたいのだ」
ヨクトクは臆することなく、女の子に名を聞いた。ヨクトクはチョウヒ家の後継者として、こうと決めたら頑として譲
らない一本気の強い性格であった。また、ヨクトクは自分が高い身分にあることをよく心得ており、たいていの者に気丈
高にふるまっても許されることに気づいていた。むしろ、誰に対しても気丈高にふるまうことの方が、みなに喜ばれるこ
とを知っていた。だから、この女に対しても、自分のが偉いのだという態度をとり、決して控えるところがなかった。
だが、幼いその女は答えなかった。
代わりに、二十代であろう従者の女が答えた。
「無礼な。貴婦人に対して、いきなりどこの者とも知れぬものが名をたずねるなど、礼儀知らずでございましょう」
それを聞いて、ヨクトクの従者のものが口走った。
「無礼はどちらの方だ。この方をどなたと心得る」
女の従者も負けてはいなかった。
「どこのお方か存じ上げませんが、礼儀を知らぬ者に申し上げる名などもってはおりません。名を聞いたら、びっくりす
るのはそちらの方でございますよ」
従者同士で意地の張り合いがあった。
「名を聞いて驚くような臆病な者はここには一人もおらん。名を名のれと申しわたされたのなら、名を申せばよいのだ」
すると、幼い女がいった。
「わたしは名をたずねられるのは、ずいぶん久しぶりのことでございます。あなたがわたしの名をたずねられた
代わりに、わたしからもひとつ質問したいことがございます。それにお答えいただいてよろしいでございましょ
うか」
幼い女はヨクトクの従者たちに威嚇されても、まったく臆することはなかったようだった。
女の答えを聞いて、ヨクトクが答えた。
「よい。何なりと申せ。おれがどんな質問にも答えてやろう。その代わり、お主は名と、住んでいる場所を教え
るのだ。それで、五分の取引としよう。さあ、申せ。おれに聞きたいこととは何だ」
幼い女は、きりっとした澄んだ声で誰にもはばかることなく問を発した。
「それではうかがいます。次の戦は、いつ始まりましょう。そして、この星の争いが終わるのはいつのことにな
りましょう。あなたはそれを終わらせるために何ができるのでしょう」
幼い女の問いに、ヨクトクは少し驚いて答えた。
「バカをいうな。おれを誰だと思っている。次の戦がいつ始まるなど、下々の者に簡単に明かすわけにはいかぬ。
それに、ひとつの質問といっておきながら、ずいぶんとたくさん聞いてくるのだな。この星から争いが終わるこ
とはない。戦いつづけることが、この星の宿命なのだ。何百年か後、チョウヒ家が天下を制し、その時、この争
いは終わるであろう。三つ目の質問は何だったかな。争いを終わらせるために、おれに何ができるかということ
だったな。そうだな。おれは勝つ。おれはあらゆる戦闘に勝ち、たった一人になろうとも、戦いつづけ、リョフ
家の者どもを皆殺しにしてくれる。おれ一人の手で、リョフ家の者を皆殺しにしてやろう。ああ、前言を撤回す
る。この星の争いは何百年もつづかぬ。せいぜい、十年のうちに争いは終わるであろう。それは、おれがリョフ
家の者を皆殺しにすることによって、果たされるであろう」
秋の少し涼しい風が吹いていた。
「あははははは、あなたの小さな手で、天下無双のリョフ家の者に一人でも傷をつけられるというの。面白いお
方。あははははは。ごめんなさい。つい、おかしくって、笑ってしまったわ」
「くそっ、忌々しい娘だ。名だ。約束どおり、お主の名を申せ」
ヨクトクは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら問いつめた。
「いいでしょう。お答えいたしましょう」
「これ、姫さま」
「よい。わらわの名はホウセンと申します。以後、お見お知りいただきますよう」
「ホウセン、よい名だ」
「あら、リョフ家では、ホウセンは本来、男の名でございます。父上はわたしに男のように勇ましくと願って
おいでです」
男の名と聞いて、ヨクトクは少し怪訝なそぶりをした。あんなに美しいのに、男の名とは。
「わかりましたか。もし、次に会うことがありましたら、また、語り合いましょう。あなたが今のようにお話
できればよいのですが。あははははは」
「笑うな。おれはヨクトクだ。お主の住んでいるところも教えよ。それが約束だ」
「住んでいるところでございますか。それは、ほら、あの山を越えた所に建っているお城、カヒ城でございま
すわ」
それを聞いて、ヨクトクは面食らった。カヒ城はリョフ家の本家の居城ではないか。この女、リョフ家のも
のか。停戦協定で、チョウヒ家の者とリョフ家の者が入り乱れてはいるが、まさか、リョフ家の者だとは思っ
ていなかった。
禁じられた恋か。ヨクトクは思った。リョフ家の領土の女に恋をしたなどといったら、父上に激怒されるで
あろう。
だが、この女、美しい。強気な気立ても気に入った。
「これから、毎日、お主の家に遊びに行こう。待っていろ。おれはお主が気に入ったのだ」
「あら、あははははは。待っていますわ。もし、わたしに会えればですけれど」
そして、ホウセンは従者を伴って、どこへなりと歩いていってしまった。ヨクトクはその帰る姿を見送りな
がら、恋の炎を燃やしていたのだった。
次の日、いきなり停戦協定は破られた。チョウヒ家の後継者ヨクトクが、軍勢を率いて
カヒ城にまで押し寄せたからである。すわ、また戦か、とリョフ軍の兵隊たちはいっせいに城
に集結して、籠城戦の構えであった。
そこへ、一人、チョウヒ軍の総大将ヨクトクが大声を出して、呼びかけを行った。
「我は、チョウヒ家の後継者ヨクトクなり。リョフ家の下郎ども、よく聞け。おとなしく、城
にいるホウセンという名の娘のもとへ通せ。このヨクトクが約束どおり、逢引きにまいったぞ」
それを聞いて、リョフ軍の兵卒はいっせいに笑った。チョウヒ家の御曹司は頭がやられたら
しい。
「おい、チョウヒ家のバカ大将。ホウセンさまはリョフ家の一人娘であらせられるぞ。なんで、
お前なんかを相手にするか」
「なんだと。ホウセンが、リョフ家の後継者だと」
驚いたはヨクトク。あまりの驚きに、涙すら落とした。
「それ、かかれ。チョウヒ軍を率いるは愚将なり。攻め滅ぼしてやれ」
そして、リョフ軍が討って出た。リョフ軍の士気高く、チョウヒ軍は散々に斬って捨てられ
た。
「ヨクトクさま、我が軍は敗勢にございます。撤退して立て直しましょう」
「ならぬ。おれは今日、ホウセンに会わねばならんのだ」
そして、リョフ軍に蹂躙されたチョウヒ軍、残るはたった一人、ヨクトクのみとなった。
一人のヨクトクに相対するは、リョフ軍百万人。
「今こそ、約束を果たそう。ホウセンよ。このヨクトク、リョフ軍を皆殺しにし、ホウセンに
会いに行く」
ヨクトク、人を斬ること一万人。万不当の強さなり。リョフ軍はヨクトク一人に斬り刻まれ、
ついに、ヨクトクの城への侵入を許した。一人斬り進むヨクトクの前に、ついに現れたはホウ
セン。
「約束どおり会いに来るとは、愛苦しいお方。しかし、このホウセン、リョフ家の娘として、
チョウヒ家に嫁ぐわけにはいきません。わたしたちが戦い、この何百年とつづく戦を終わらせ
ましょう」
ヨクトクとホウセン、斬り合うこと数十合、戦いは互角かと思われたが、先に崩れたはホウ
セン。ヨクトク、その刃にて、ホウセンを斬り落とす。
「ああ、我はヨクトク。戦いに勝利せり。天下平定するも、望みのものは手に入らず」
了
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|←樹海|
. ̄.|| ̄ オワタ┗(^o^ )┓三
|| ┏┗ 三
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|←樹海|
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泣いてはならない
おれと加奈は地上二百階の高層ビルの一室にいた。おれの家族である、父、母、祖父ちゃん、祖母ちゃん、
姉、妹、弟も、この2LDKの一区画の中にいた。おれは加奈の背中に手をまわし、軽く抱き寄せていた。
絶体絶命だ。おれの家族と加奈は、どこかの軍隊に包囲され、この2LDKの区画の中に暗殺部隊が侵入
してきていた。
黒い覆面の戦闘服に身を包んだ者たちが部屋の中に侵入してきて、目の前でおれの父親の背中を長さ五十
センチはある針のようなもので刺した。
「ぐふっ」
父親が、血を流して倒れた。
おれたちは命を狙われている。どこかの国の政府の特殊部隊に。とても逃げられそうにない。日本政府は
助けてくれない。警察も自衛隊も当てにならない。このままでは、みんな、殺される。
「待て、待ってくれ」
おれは大声を出した。
部屋に侵入した特殊部隊は、無言でおれに近づいてくる。
「加奈の命だけは、加奈の命だけは助けてくれ。どんな条件でも飲む。だから、頼む」
おれはいった。
おれは必死だった。突然起きたできごとに、頭がついていけていなかった。
だから、その時、何が起きたのかもわからなかった。ただ、後になって思ったことは、その時、奇跡が起こっ
たのだということだった。奇跡、そう、奇跡だった。
特殊部隊の一人が、覆面を脱いで、いった。
「わかった。その女の命を助けてやろう。ただし、お前はこれから何があっても涙を流してはならない」
覆面の下にあった顔は、まだ若い二十代の男の顔だった。
えっ、なんだって。
おれはしばらく何をいわれたのかわからず、ぼうっとしていた。決して涙を流してはならないとは。
それで加奈は助かるのか。
おれはいったい何をいわれたのかもわからないまま、呆然としていた。相変わらず、加奈の背中に手をまわし
たまま。
覆面を脱いだ男は、再び覆面を付け、顔を隠した。すぐに、他の特殊部隊の者たちと見分けがつかなくなっ
た。
特殊部隊の男たちが歩いてくる。
特殊部隊の男が、姉の心臓を例の長さ五十センチぐらいある針で突き刺した。
姉が死んだ。
姉はそのまま、力を失ったように下に落ち、特殊部隊の男の右手に支えられて、前のめりに倒れかかっていた。
おれはその事態にびっくりしていた。
だが、泣いてはいけない。
決して、涙を流してはいけないのだ。加奈が生き残るために。
「世界の存続のために、この一家を皆殺しにします」
特殊部隊の男がいった。
「態のいい生け贄だな。かまわん、許可する。その一家と、加奈という女を皆殺しにしたまえ」
通信機から発せられた電子音がいった。
じょ、冗談じゃない。なぜ、おれたちが死ななければいけないんだ。おれたちが何をした。
「おとなしくしていろ。そうすれば、楽にとどめをさしてやる」
特殊部隊の男がいう。
なぜだ。なぜ、こんなことになったんだ。
「おまえたちは後ろに下がっていろ。わしが時間を稼いでいる間に、なんとか電話で警察に助けを呼ぶんだ」
お祖父ちゃんがいった。そして、お祖父ちゃんは無謀にも特殊部隊の男に飛びかかった。お祖父ちゃんはすぐに関節技
をきめられ、床に投げ落とされた。
「加奈、後ろに下がっているんだ」
おれは加奈の前に立ちふさがって、特殊部隊の男たちを迎え撃とうとした。武器はない。素手だ。とっさにおれは近く
にあるワインの瓶を手にとった。こんなものでもないよりはマシだろう。おれは戦う気でいた。
すると、お祖母ちゃんが前に出た。
「智司や、下がっていなさい。死ぬのは年老いたものから順番です」
智司とはおれのことだ。
お祖父ちゃんは、特殊部隊の男にそのまま、銃で撃たれた。真っ赤な血がばっと飛んだ。お祖母ちゃんも特
殊部隊に向かって歩いていくと、頭を横から銃で撃たれて、頭から血が飛び出た。お祖母ちゃんが、
「何も悲しいことなどありません」
といった。すぐに、心臓に向かって、第二発が撃たれ、お祖母ちゃんにとどめがささった。
おれは携帯で警察に電話をしたが、
「また、あなたたちですか。いたずらもいい加減にしてください。警察の公務を妨害すると罰せられますよ」
と婦警さんが怒鳴るだけだった。警察の助けは期待できない。
妹が、
「お兄ちゃん、あたし、お兄ちゃんのことが好きだったの」
といって、特殊部隊の男に心臓を突き刺されて、息絶えた。
「うわああああ、みんなはおれが守るんだあ」
と、弟が突撃して、あっさりと返り討ちにあい、やはり、心臓を突き刺されて死んだ。
だが、涙は出ない。泣いてはいけないのだ。加奈はまだ生きている。
「実は、あなたたちはわたしの本当の子供じゃなかったの」
と、母がいい出し、ボロボロと泣いていた。
な、なんだって。本当の子供じゃなかっただって。じゃあ、おれの本当の母親は誰だ。姉や妹や弟の本当の
母親は誰だ。おれが激しく動揺している間に、母親は近くにある茶碗やコップを投げて抵抗し、特殊部隊に射
殺されて死んだ。
どういうことだ。だが、泣いてはいけない。涙を流さなければ、加奈は助かるんだから。
あっという間に、家族は殺されてしまった。何の理由かもわからず、理不尽に。国家の陰謀とかいう誰のた
めなのかもわからない権力のために。
おれは壁にぴったりと加奈を押しつけ、その加奈の前にそっと立ちふさがり、ワインの瓶をもって特殊部隊
に立ち向かおうとした。
特殊部隊の男たちは手加減するつもりはないようだった。あの約束が本当ならば、ここでおれが涙を流さず
に死ぬだけで、加奈は助かるのだ。戦う。それ以外に、選択肢はない。
おれが近づいてきた特殊部隊の男の頭にワインの瓶を振り下ろすと、特殊部隊は左手を振りあげてワインの
瓶を割った。おれのささやかな抵抗はあっけなく、無為に終わった。これからどうする。どうすれば、加奈を
助けられる。
おれが素手で特殊部隊に立ち向かおうとしたその時、身構えているおれの横を加奈がすり抜けた。
「智司が死ぬくらいなら、わたしが代わりに」
加奈はそういって、飛び出していった。特殊部隊の前に手を広げて、おれの前に立ちふさがる。
邪魔だよ。邪魔だよ、加奈。
ドスッ。鈍い音がして、特殊部隊の針が加奈の心臓を貫いた。
嘘だろ。なんで、加奈がおれをかばって。
おれは泣きそうになった。だが、涙を流さなかった。泣いてはいけない。泣かなければ、加奈は助かるんだ。
「ざまあみろだな」
特殊部隊の男がいった。
泣かなければ、加奈は助かるんだ。
特殊部隊の男は、とり出した巨大なナイフで、加奈の体をバラバラに切り刻んだ。
泣いてはいけない。
「次はお前の番だ」
特殊部隊の男は、巨大なナイフでおれに襲いかかってきた。
おれの体がズタズタにされる。おれの体もバラバラになって、その時、ひどい激痛がおれの全身をかけめぐった。
加奈も、加奈もこんな激痛を味わって死んでいったんだ。
嘘だろ。なんで、おれまで。
おれたちは無慈悲なまでに虐殺されて死んでいった。おれの意識は体をバラバラにされてもしばらく残っていた。
泣いてはいない。おれは涙を流さなかった。
そして、おれの意識は消えた。
「これで完了だ」
特殊部隊の男はいう。
そして、特殊部隊の男たちは引き上げていった。
一人だけ、特殊部隊の男が残った。そして、バラバラになった加奈の体に一滴の水を垂らした。
水が加奈の体にあたり、染みわたり、加奈の体が再生していった。
「あれ、わたしは」
加奈が生き返っていた。
おれの意識が一瞬、戻った。バラバラにされた生首の目玉で、生き返った加奈を見ていた。
よかった。あいつは約束を守ったんだ。加奈は生きている。
そう思った途端、おれの目から大粒の涙が一滴、こぼれ落ちた。
ぽとん。
それでも、生き返った加奈が死ぬことはなかった。
おれはすぐに意識が消え、死んだ。これでよかったんだ。
了
169 :
名無しは無慈悲な夜の女王:2008/07/04(金) 11:14:51
上げ
あげるな。
この作者がおれであることを知られるのはまずい。
知られたら、また何ていわれるか。
171 :
名無しは無慈悲な夜の女王:
誰もよまねーよ死ねよ長文野郎