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「小沢です。お待たせしました」
挨拶とともに入室した小沢に、どことなく不満げな視線を向けたのは、
先に到着し、彼を待っていた2名の人物である。
「小沢さんの出した檄文を読ませていただきました」
口を開いたのは、社民党党首の福島だった。
それだけ言って、手元に用意した選挙情勢分析の資料に視線を落とす。
福島の表情は、小沢の情勢判断にどうしても納得できぬと言いたげである。
その意を汲み取ってか、もう一人の出席者である綿貫が発言を次いだ。
「なかなか興味深い分析だった。
しかし、慎重に過ぎていささか消極的ではないかな」
「そうでしょうか」
小沢はごく冷静な口調で応じたが、同じ選挙を戦う盟友に対して、
やや礼を欠いた態度であったかもしれない。2人は気づかなかったようだが。
「小沢さんが書いている通り、確かに負けがたい情勢だとは思いますわ。
でも、負けないだけでは意味がないでしょう。勝たなくてはなりません。
私たちは、自民公明の弱いものいじめ政権を、三党で包囲しています。
しかも敵の二倍の支持率で、です。これだけ大勝の要件を備えて、
なぜ今さら、負けない算段をしなければいけないのでしょうか?」
「ですが、まだ包囲網が完成したわけではありません」