今日読んだSF/FT/HRの感想 6冊目

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520ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
筒井康隆「パプリカ」       6点
NHK少年ドラマ「タイムトラベラー」の原案「時をかける少女」に魅せられた読者
としては、この系統のシリアスなSF(科学的考証の程はひとまず置くとして(w )
が筒井堂作品の極一部しか占めないのは残念な感がある。
本作は七瀬シリーズと並び筒井シリアスSF路線を堪能出来る作、
斎藤美奈子嬢の解説にもあるとおり、二重構造の含みを持つ作であり、
第1部では脇役に過ぎないが、第2部の後半から唐突に活躍度を増す感がある
ラジオクラブというバーのマスター陣内とウェイター玖珂
の夢オチと解するのがストレートな読みであろうが、
(すると、いずれもどこかずれたキャラである登場人物たちの存在が腑に落ちるものは
あるのだ)まだ、何かあるようなないような、ここが本作の「肝」かと思う。
いずれにしろ、サイコミステリタッチの第1部から第2部における
筒井流のハチャメチャな大ドタバタ劇への変調は見事としか言いようがない。
一点、苦言を呈しておけば、断筆の因となった「無人警察」と同様な問題だが、
いかにもこの作者らしい過激さとは言えるものの、精神分裂病に関して一般に誤解を
招く表現が見られることである。
521ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2 :2007/02/10(土) 19:14:40
「午後の恐竜」   星新一        7点
定期的に星作品を読み直しているが、作者の時事性を排する基本方針が成功し、
その面白さは普遍性を持っていると言い得る。
この作品集には、短篇と言うても良いほどの比較的長めのSS11篇が収録されている。
大好評な全話講評行ってみよう!
「エデン改造計画」
エデンの園を想起させる惑星でのテレビ番組とTVCMの逆転現象、
(CM見たさについでに番組を見る)
しかし、いずれは地球と同じ文明社会(?)となるであろうことを示唆して終わる
シニカルな作。
テーマ性は現代のネット社会でも十分に通用するものがあって面白い。
「契約時代」
行き過ぎたコンプライアンス社会への諷刺として今でも通用するテーマ性を持つ作。
ただし、契約の急増で印刷屋は大儲けというオチはぺーパーレスが進行する現代では古く
なってしまった感がある。
「午後の恐竜」
恐竜の正体は、死に際した地球における全存在のパノラマ視現象であったという壮大な
オチが秀逸。表題作となっただけあって、収録作品中の最高傑作であろう。
「おれの一座」
夢の演出者というアイデアが面白い。
もっとお色気とバイオレンスを加味すれば筒井ワールドとも成り得る作である。
522ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2 :2007/02/10(土) 19:16:11
「幸運のベル」
保有していたベルが幸運のベルだったというオチが効いた一編。
「華やかな三つの願い」
デスノートのヒット等を念頭に置いて読むと、今でも楽しめる作。
悪魔がリーマンとなってしまうオチが楽し過ぎる。
「戦う人」
星作品らしくないディッシュ、ゼラズニイ等の作品世界を想起させるような
バイオレンス性に富む作。戦士であった老人が自殺を思いとどまるラストも意味深な
ものがある。
「理想的販売法」
面白いことは面白いのだが、優秀な企画開発部長が休職を命じられるオチは軽い落とし噺
程度の感じ。
「視線の流れ」
妖精らしきものは登場するものの、星作品らしからぬスレッサー風の現実的なオチを
迎える作。妖精もどきは主人公の妄想の産物?
「偏見」
女性死刑囚はろくろっ首。これだけのSS。
「狂的体質」
博士がハマグリになってしまうオチは漫画ちっく過ぎて、
作品集の最後を締める作としては頂けないものがある。
むしろカメレオン男、のどが性感帯になった男、核爆弾になった男等、
ストーリーの途中で出て来るアイデアの方が面白く、その後が気にかかるものがある。