今日読んだSF/FT/HRの感想 6冊目

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459ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
有川浩「海の底」      3点
2005年の刊行時には前作「空の中」に続いてSFヲタを熱狂させた作だが、
とあるファンジンの「レガリスタン、萌え!萌え!」「漏れだけのエビラキター!」等
のアホなSFヲタの投稿を熟読すると、あらためて失笑を禁じ得ないものがある。
それはともあれ、過去のSF、パニック作品が完全にスルーして来た生存者に婦女子が
混じっていた場合に当然起こり得るべき問題(生理)について、
詳細な斬り込みを見せた点は女性作家の特性が活きているとは言える。
この点に限らず、60年代米国製B級SF映画や東宝怪獣映画を想起させるような
横須賀に襲来した巨大化したザリガニ(サガミレガリス)と警察&自衛隊の攻防戦よりも、
潜水艦内(避難先)における少年・少女たちと乗員2名の間に繰り広げられる
人間ドラマの方により焦点を置いて書かれているが、
(終盤の自衛隊出動によりレガリスはあっさりと駆逐されてしまう)
エンタメとして読んだ場合にはこの点をいかに評価するかであろう。
そもそも、レガリス巨大化の因が生息環境の変化(栄養の無制限化)によるものと
している点がトンデモであり、SFとして読んだ場合には科学的考証がこの1点のみと
いうのも弱い。
さらには、肝心の人間ドラマにしても、ジュブナイルという制約はあるのであろうが、
子供、潜水艦乗り、ネット利用者、警察・防衛関係者等々、メーンな登場人物全てに
共通する性善説的人間観は、リアルな状況を思うに綺麗事過ぎるという感が強い。
例えば、ネット利用者ひとつ見ても、2ちゃんねらーの極悪・アホっぷりを見れば、
その現実の一端が了解されようかと思う。