自作小説をのせるスレ

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158苦徒鬼神の洞窟
お初。面白くなるかどうかわからんがちょっと書いてみる。ウケたらレスが散々でも少し続くと思う。

「苦徒鬼神の洞窟」
1.珠恵(たまえ)
 真湖(まこ)の家は広く、そして古くて、大きな母屋の向こうには、
何でも大正時代から続くと言う土蔵がある。古くは豪商だったと言うが、
今は固定資産税の高さに泣く彼女の家で、ふとTVを見ながら話が弾んで、
今私達はその、古い土蔵の中にいた。
「お宝?」
「どーかなー・・・、なんだろ、巻物?」
埃臭いその土蔵の二階、光は小さな格子戸から少しのみ。そこで真湖から、
私は奇妙な巻物を渡されたが、当然古い書体で、題字は読めなかった。
「高波センセに見せたら解るかな?もしかして驚きの鑑定結果に?」
「成ったら面白いけど・・・何だろ?地図?」
真湖が期待のこもった声で言って、私は苦笑しつつともかく封を解きながら、
そこに記された、随分古い地図を見つめた。字が読めないから場所は解らない。
広げていくと、どうも洞窟の地図が続く。その先に、ふと読める文字があった。
「苦・・・徒・・・鬼、神? くときかみ?かな??」
「くときかみって何?」
「いや、私に聞かれてもこれ貴方の家のモノだし?」
「そんな事言われてもー。でももしかして願いを叶える神様とか?」
「なんで?」
「口説き神」
「いや、多分それは違うと思う」
彼女のコレは天然なのか計算なのか、時々悩むがともかく彼女の両親に許可を貰い、
私達はその次の日、その巻物を学校に持っていって、クラブのみんなに見せた。
話は弾んで、結局「コレは宝の地図だ」と、いつもの通り啓二(けいじ)は断言して、
ともかくコピーを取り、彼はそれを国語教師の高波先生に渡すべく出ていった。
「これでアレが温泉の地図だったら、ちょっと笑うな」
悟(さとる)はそう苦笑して、みんなで少し笑った。
159苦徒鬼神の洞窟:2006/04/20(木) 20:19:26
>>158
2.啓二(けいじ)
「言っとくけど、ここで落盤でもあったら俺達終わりだからな」
いつもの調子で悟は言って、後方の女性らを気遣いつつ後に続く。
洞穴探索としてはほぼ完璧な装備の自分に比べて、彼らのそれはまるで観光、
何故もっと重装備で来ないモノか?と思ったが、それは口には出せなかった。
「やっぱ二人には待ってて貰った方が良くなかったか?」
「えー二人だけ面白いことするなんてずるい」
「そう言う人も居るし?ここに”貴方一人”で埋まったら、むしろ喜劇よ?」
流石に、”一人で”ここまで来るのはちょっと俺でも嫌だ。携帯の時計を見る、
既に30分は歩いている。高波先生の話では「苦徒鬼神」、恐らくは土着の神、
多分真湖のご先祖達が信仰していた古い神様の祭壇が、この東京の外れにある、
小さな祠の下に続いていた洞窟の先にある。胸が高鳴るが、同時に不安も続く。
人一人が何とか通れる通路、どんどんと地下へと潜っていく。息苦しさも共に。
「・・・でも、ここへ”贄”を運んで捧げてたって事でしょ・・・なんか恐いな」
地図にはなんと、悟の言うように”本当に温泉の印が書いてあった”訳だが、
ふざけて入浴用具なんか用意してきた真湖も、流石にここまで来ると少し不安げだ。
それから、10分ほど経ったろうか、やがて少し広い空間に出る。ひんやりと、
少し空気が変わる感じがして、悟に促されるままにその方向へライトを照らす。
地底湖・・・では、無いらしい。川?とにかく流れている、ここが或いは?
「いや・・・少し違うな。地図じゃ祭壇はもう少し先だ。この川はこの地図が、
作られた後に出来たのかも・・・ちょっと待て?この川、渡る事に成るぞ?」
祭壇までは後は一直線だが、そこを川が跨いでいる。しかし、深さはそうない。
足膝位、水温もぬるま湯。想定外の事態だがここまで来て引き返すわけにも。
ともかくリーダーとして!俺は素足に成って足を入れた。女性らは不満げだが、
悟も入った所で渋々と素足に成る、ついライトで照らしてしまい珠恵に怒られる。
「いやーんスカート濡れちゃう・・・・あれ?」
真湖がふと声を上げて、水の中に手を入れた。ライトで照らすと、彼女は何か、
奇妙な、卵形をした・・・岩の様なモノを抱えていた。
160苦徒鬼神の洞窟:2006/04/20(木) 21:45:38
3.悟(さとる)
 生ぬるい川を渡り終えた僕らは、そこで少し休憩を取った。手ぬぐいで足を拭き、
再び靴を履く。見ると真湖はさっきの卵状の岩?を、バスタオルでくるんでいた。
「なんかかわいいしない?」
その感覚がちょっと解らない自分だったが、大事そうに抱える姿には無言で同意を、
ともかく握り飯を頬張っている啓二を横目に、地図を確認する。今までの感じだと、
それでも後100mは先がありそう。空間はかなり広くなっている、気になるのが、
・・・湿気だ、生ぬるい。この先に温泉がわき出していて、ならそこに祭壇がある、
地図の記載通りなのかも知れないが、生贄を捧げていた祭壇、嫌な予感が少しする。
「大丈夫だよ、壊したりしないから」
不意に真湖の呟きで、ギクリと振り返った。子供のようにその岩を抱えつつ彼女は、
まるで赤子をあやすような仕草で抱いていて、やがて自分の視線に気付いた。
「何?」
「あ・・・いや、何でもないけど、暑いね、少し」
「そーだねー、温泉近いのかなぁ?」
「まさか、あったらホントに入る気?」
「心配するな、俺達は覗いたりしないからっ!」
啓二にかまされた、珠恵の軽いツッコミの音の後、僕らは再び奥へと進んでやがて、
空間全体が湯気でもうもうとし始めて、ライトの光が反射してぼんやりとその広い、
地底湖と呼んで良いだろう、その広い熱湯の湖を僕らの前に現した。祭壇が見えて、
「・・・ここにいるの?珠恵ちゃん」
不意にまた、真湖が何か言って。珠恵が疑問の声を上げて、疑問の顔の真湖の前で、
啓二が地底湖をライトで照らしていると、そのうちお湯が、大きく跳ねる音がして。
啓二が照らしてしまって、でも自分も照らしていて。叫んだのは自分の方だったろう、
ともかく湯の中から現れて、目の前で巨大な触手をうねらせ、巨大な体躯を持ち上げ、
・・・多分それは自分らを見下ろしていた、イカの様な、ミミズの様な、とにかく、
それは大きすぎて、やがて聞こえてくる囁く様な笑い声に、自分は考えるのを止めた。
161名無しは無慈悲な夜の女王:2006/04/20(木) 21:48:13
>>160
この女卵石をどこから拾ったの?