クトゥルフ/クトゥルー/Cthulhu -タイタス・九ロウ-
無数のおぞましくのたうつ不定形。
そのひとつ、薄暗い色の個体が傍らを漂う若い個体に取り付いた。穴を開け、
自分の断片を送り込む。食い荒らしている。別の方向―あり得ない角度から接
近するもうひとつ。細い金色の針が伸びて若い個体を突き刺す。先の個体から
侵入した断片を突き刺している。針は伸びたり縮んだり―
―おまえは――――触れた――
――開くのだ―――門を―
同僚たちが見おろしている。
目を開くと、一斉に安堵の色を浮かべた。
隕石に衝突したなんて、それこそ天文学的な事故だ。幸運と丈夫な機体のおか
げで助かったのだ。
皆が驚くのも構わずに起き上がる。
もうひとつの隕石が湖に落ちるのを見た。放射性物質の可能性がある。すぐに
取水を中止すべきだ。
嘘がすらすらと口をついて出る。いや、嘘は一箇所だけだ、構うまい。
あれは放射性物質なんかじゃない。はるかにたちの悪いものだ。
異次元の色彩。まもなく湖は不気味な光を放ち始めるだろう。水は汚染される。
水を飲むものも皆。
そしてやがて、手の届く限りの生命を吸い尽くしたとき、そいつは姿を現す。
そのとき。
「門」を開け。「あれ」はそう言った。湖の怪物が現れたとき、門を開け。そう
すればその門から出て、怪物を滅ぼしてやると。これから来るものたちもその
度に滅ぼしてやると。
そうだ。これから来るものたち。若い個体に侵入した断片。
あれはこの宇宙だ。我々の宇宙。喰い荒らされ、突き刺される宇宙。
手の中にある物体に目を落とす。この地上のものではない物体。異界の鍵。
これが無かったら、気絶している間の悪夢だと思い込めたかもしれない。
これを分析すれば。いや、狂人と思われるのがオチだ。あるいはもっと悪いこ
とになるかもしれない。なまじ狂った想像力に恵まれた組織だ、人間扱いされ
なくなるかも。これは誰にも見せてはならない。それに。
「あれ」の言った言葉。
――おまえが「門」なのだ――
名状できない理由って難しー。こんなに説明的なのってw。
ちょうど「異次元の色彩」読んでたので、ちょっと入れてみた。