(旧敵に対して、むろん小泉は無原則に寛大であったわけではない。
彼にとってその日最後の公務は、野田聖子ら県連推薦当選者を面接することであった。
他の幹部たちが選挙後の特番や、連立対策の任にあたっていたため、総理の傍に
ある自民党幹部は武部幹事長だけであった。
県連推薦当選者たちに面接した小泉は、最初から侮蔑の意思をかくそうともしなかった。
傲然と、足を組んで、野田聖子以下数名の県連推薦当選者を見下した。
ぎこちなくひざまずいた彼女たちに、氷点をはるかに下回る声を投じる。)
小泉「卿らのためにさく時間は、予には貴重すぎる。ひとつだけ聞いておこう。
卿らが県連推薦を名乗った時、卿らの羞恥心はどの方角をむいていたのか」
(野田聖子は動揺と不安にサンドイッチされた顔をかろうじて銀髪の総理にむけたが
ダークブラウンの視線に対抗するのは容易ではなかった)
野田「我々が恥知らずな者だとでもおっしゃるのですか、総理」
小泉「それ以外のことを言ったように聞こえたら、予の言い方がわるいのだろうな」