エウレカは言った。
「世界政府はその繁栄と成長の主要な源泉を、少数民族の血と累々たる屍の上に求め、更なる収奪と
犠牲を強制している。そうであるが故に帝国主義的世界政府国民である我々は平和で安全で豊かな
小市民生活を保障されているのだ。
帝国の手足となって無自覚に働くお前らの父さん爺さんの様な侵略に加担する帝国主義的労働者が、自らの
帝国主義的、反革命的、小市民的利害と生活を破壊、解体することなしに、プロレタリアートの階級独裁とか、
暴力革命とかを例えどれほど唱えても、それはまったくのペテンである。自らの生活をゆるぎない前提として
とらえ、自らの利害をさらに追及するための革命などは、全くの帝国主義的反革命である。一度、植民地
に於いて、反帝国闘争が帝国資産の没収と帝国侵略者への攻撃を開始すると、帝国労働者は帝国の
利益擁護=自らの小市民生活の安定、の隊列を組織するであろう」
ゲッコーステイトの皆は熱くなっていた。
あちこちで「異議なし!」の声が聞こえる。
「我々に残された手段はただ一つ。このLFO爆弾闘争による都市ゲリラ戦のみである。
これは法的、市民社会からも許容される闘いではなくして、法と市民社会からはみ出す闘い、つまり
非合法の闘い、を武装闘争として実体化することである。自らの体をはってこの緊急任務を完遂し、
反革命侵略、植民史を過去のものとして清算せねばならないのだ。
我々はそのために選ばれたメンバーである。我々は軍国主義者、植民地主義者、帝国主義イデオローグ、
同化主義者を抹殺し、新旧帝国主義、植民地主義企業への攻撃、財産没収などを主要な任務とした
ゲッコーステイトである!!」
今や全員の目に歓喜の涙が浮かんでいた。
つづく
エウレカは僕に言った。
「レントン、あなたお爺さんと今でも連絡取ってるの?」
「まさか!あんな帝国主義者と連絡なんて…とっくに縁は切ったよ」
その瞬間、エウレカの顔は般若の形相へと変わった。
「レントン、あなた何も分かってない!あなたゲリラでしょ!?日常生活において極端な秘密主義、閉鎖主義は
かえって墓穴を掘ることになるわ。表面上は全く普通の生活人であることに徹することよ!」
「…ごめん」
しかしエウレカの怒りは収まらないようだった。口の端からはあぶくとなったツバが出ていた。
「いーえ!分かってないわ!総括!総括!総括!」
エウレカの「総括」なる声を聞き、一斉に僕の周りをゲッコーステイトのメンバーが取り囲む。
「総括!」
全員がそう叫び僕を足や棒で滅多打ちにした。
「総括!」
すぐに僕の意識は遠のいた。
つづく