今日読んだSF/FT/HRの感想 3冊目

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750ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
ロバート・J・ソウヤー「ターミナル・エクスペリメント」  4点
前にSFヲタから紹介されたソウヤーの「ゴールデン・フリース」は、
ミステリ板の住人である私には面白かった。
昔ながらのハル(*近所の婆さんの本名ではない)ネタのバリエーションながら、
地球は既に滅亡していたというオチは十分に効いており、主人公が幼児期の
性的ドメスティックバイオレンスのトラウマに悩まされていたという真相も、
極めて現代的であった。
本作の主人公ホブスンも、妻に不倫されて思わず泣き出してしまうような
人間的な弱さを持った理科系ヲタな人物である。
(ソウヤー作品の登場人物は、超人ではないので、豹皮の服を着た半裸の美女を片手に
抱えながら、レイガンを乱射するような主人公が大活躍する与太作品を読み馴れた
SFヲタには、きついものがあるやもしれぬ)
ヲタはろくなことをしないという定説に従って、「魂」の科学的確認という偉業(?)
を成したホブスンが、次に試みたのが、サイバー空間に自己の3つの仮装人格を
作り出すというトンデモな実験。
実験は成功したが、ホブスンが心良く思わない人物が次々と殺害されてゆく…
女刑事(ヴァンダイン作品の名探偵にちなんだネーミングか?)が、サイバー空間で
仮想人格を追跡してゆくという「攻殻機動隊」とか好きなヲタには、感涙もののシーン
もある。そして、最も自己を反映した仮装人格が犯人だったというオチが、
なんともシニカルである。思うに、
後年のグレッグ・イーガンの「順列都市」のメーンアイデアは、
完全に本作のパックンチョである。
カナダで書かれた作品なら、オーストラリアでパックンチョしても大丈夫だとでも思った
のであろうか?
もし俺がグレッグの担当で、「順列都市」のゲラに目を通していたとしたら、
「甘ったれるな!俺の目が節穴だとでも思っているのか!」とグレッグを
一喝していたかと思う。