★小松左京 第3巻★

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464名無しは無慈悲な夜の女王
http://www.ezaki-glico.com/release/20050120/index.html

大阪万博の太陽の塔は、当初、名前がなかった。
漠然と「太郎の塔」などと呼ばれていた。
開催前の企画会議、ついに大屋根を突き抜けてそびえる「塔」の精巧な模型が
岡本画伯、プロデューサー、テーマ委員らお歴々のいる前で披露された。
皆はその奇抜さに、感嘆の声をあげた。
しかし、である。サプテーマ委員になっていた某作家が、
トンデモないことを言い出したのである。
「なんか、これって見たことがありますな。
………そうや、石原慎太郎の『太陽の季節』で、勃起したペニスで
障子突き破るシーン。
そうやそうや、大屋根はまるで障子で、塔はナニや。
わははははははは、太陽の季節や!
シンボルタワーやなくて、チンボルタワーや!
わはははははは」
とはしゃぎだした。居合わせた人々は青ざめ、呆然とし、戦慄した。
岡本画伯が激怒し、模型をひっくりかえして出て行くと恐れたのである。
ところがである。超俗の人岡本は、「太陽の季節」と言う小説をしらなかった。
ただ、「太陽」と言う単語に、強烈に反応したのである。
「太陽の……季節? 太陽………ムムムッ、太陽か」
誰かが言った。
「そ、そうです、太陽です。この塔は、万博会場の中心、まさに太陽だ」
「そうだ、太陽です、太陽なんですよ」
「ムムムム、太陽、むむむむ、爆発する太陽」
「それですよ、太陽の塔、そうしましょう!」
と言った経緯(一部想像補完)で、「太陽の塔」と決まったのであった。

めでたしめでたし……