テッド・チャン

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527ミステリ板住人 ◆qzqKe0UO2g
テッドちゃんの「あなたの人生の物語」を読破しました。
まあ、グレッグの作品よりは読みやすく一般性があるようには思うけど、
特別に面白いという感じはしないな。
以下、各作品ごとに簡単な講評を行ってみたい。
共通して言えるのは、タイトルが見たまんまでしょーもないこと。
これではインパクトを欠くことこの上ない。
そこでインパクトがあるオリジナルの邦題を付すことにした。

・ 「天空の回路」(「バビロンの塔」を改題)
オチはメビウスの輪?バビロンの塔の内部の描写が読ませどころか。
既に過去ログで同じことを書いている人がいるが、普段ちまちましたミステリを
読んでいると、SFらしいスケールの大きさに富むこういう話に魅了される部分は
ある。しかし実態はオチ以外は古代ネタのファンタジーに過ぎないという感もある。
・ 「超人への道」(「理解」を改題)
スキャナーズネタをテッド風に処理しただけの作品というのは、過去ログガイシュツであり、
今さら指摘するまでもない。
迫力があるようでいて、特筆するような斬新さは見当たらないのが難か。
異常なまでにアイデンティティの問題にこだわるグレッグがこの素材で書いたとしたら、
もっと鬼気迫る作品に仕上がったかと思う。
・ 「ある愛の終り ゼロで割る」(「セロで割る」を改題)
過去ログを読むとこの作品を正しく読解出来ていない者が多いようである。
短編で数学ネタを真正面から取り上げた異色作。
ただし作品のメーンテーマは、男女の別れをゼロで割るという数学上の処理に例えて、
その不可解さを描くことにある。
テッドはアイビーリーグとはいえ、ブラウン大学の学部卒に過ぎない。
エリートは有名大学の修士卒以上が当たり前のアメリカでは学歴コンプほど
こういう作品を書きたがる気もする。コンプレックスの裏返しなんだよね。
528ミステリ板住人 ◆qzqKe0UO2g :03/10/29 23:40
・ 「未来への道標」(「あなたの人生の物語」を改題)
間接的とはいえファーストコンタクトにより超能力を得た女性学者の物語。
ヒロインは未来を確知しながら、時空を越えて生きていると読むのが正しい。
表題作にしてはタイトルが最低だし、内容的にも特筆すべきものは無い。
・「言霊」(「七十二文字」を改題)
「ザ・フランケンシュタインスレッド」のスレ立て人でもある私は結構こういうあざとい
作品が好きである。SFヲタのみならず、ホラーヲタにも受けそうな作品かと思う。
ラストが月並なハッピーエンドなのが難。
主人公をもっとマッドサイエンティストぽいキャラに設定した方が面白い作品になったと
思う。
・ 「未来論文1号」(「人類科学の進化」を改題)
ヲチも何もないSS(SSに必ずしもヲチは必須ではないが)。
特に論考の対象にするような作品ではない。
・ 「地獄への道」(「地獄とは神の不在なり」を改題)
中国人の手になる作品にしては、結局キリスト教的価値観を脱し切れていない作品の
ように思う。天使降臨が災害のように描かれているのが面白い以外は、日本人が楽し
・「美」(「顔の美醜についてードキュメンタリー」を改題)
収録作品中、日本人が読んで一番楽しめる作品。そういった点では普遍的なテーマを
描いていると言える。
赤ん坊でさえ武人を好む傾向があること、小説家、アーティスト等のルックスには無関係な
職業の場合にも力量に大きな差が無ければ、美人に仕事が集中すること等は良く知られた
ところかと思う。この辺の感覚を巧く突いた作品、ただし格別のオチがあるわけでもなく、
そのあたりを不満に感じるムキもあるやもしれない。