おまいら短編SF書いてください

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「私はいまでもあなた愛しています、でも、いっしょにいればきっとお互いを傷つけあうのでしょう。
 だから、いまここで別れましょう。それであなたを愛せるのなら」
「僕はいまでも君が好き。いつまでも添い遂げたかった。でも、それももうだめなんだろう。
 だから、ここでいま別れよう、それはとても寂しいことだけど・・・・。」
「「私と僕はいつまでも、一度愛し合った伴侶として記憶します、楽しかった想い出や悲しかった想い出とともに。」」

いま、ここに二人の男女が別れを迎えた。きっと同じ理由で世界中の恋人たちが離別している。
理由をこれから説明しよう。

彼らが学生くらいの頃にその画期的な発明は世に放たれた、
それまでも、また、それからも画期的な発明はあったが、この発明の画期的なところはそれが男女兼用の避妊薬であった、ということにあった。
ドイツの製薬会社の発表によれば、これはとある研究のデリバテブとして偶然、発見されたものだとのことだった。
新型避妊薬αとその解除薬β、
この二つはそれまでのあらゆる人口抑制に失敗してきた人間への福音として、大々的に喧伝された。
国連機関もこれを推奨、後進国は必要のため、先進国は快楽のために求め続けた。
別れた男女が大人になる頃には当然のように用いられるようになる。
多少の疑念はあっても。いったいなにが起こったか?それは次のレスに続く。
おかしなことが起こり始めたのは、これらが普及してまもなくである。
まず、インドで4本の腕を持つ子供が生まれ、クリシュナ神の降臨として崇め称えられた。
中国では角と尻尾を持つ獣人が生まれ、黒排子と呼ばれ恐れられた。
アフリカでは半身半獣、つまり4本蹄足の子供が生まれた。
EU圏では少なくとも遡ること三世代は白人の夫妻の間から、アボリジニーの子が生まれ、微笑ましい騒ぎを引き起こす。
アメリカでは特にこれらすべての異常に加えて、三つ目の子供が生まれたが、直後にカルト教団がまた集団自決をしたため、あまり注目されなかった。
そして、日本でも数こそ少なかったが同じ問題が起こった。
彼ら奇形児たちはしばらくは『ミュータント』、と呼ばれていたが、事実が判明してからは、『クローン』と呼ばれることになる。
事実の判明は他の場合と同じく、アングラサイトからの密告で始まったのであった。
新型避妊薬には恐るべき実験が隠されていたのだ。が、この続きは次のレスに続く。
現在のクローン技術の問題点はその確実性にある。
特定の精子と特定に卵子の結合においてであってもその生存確率の低さは
実に我々の理解以上のものがあるが、これがために個体としての生存の高さを維持できているのである。
それが精子以外のDNAを用いるクローン技術では何をかいわんやというモノだ。
この問題に対してどのような技術がクローンを可能にするのだろう?

新型避妊薬を巡る事件は、実にこの回答の一つであった。
この避妊薬の仕組みは、服用した個体の精子や卵子の生成途上でDNAのかく乱を起こし、これによる不結合を利用するものである。
解除薬は血液からとれる元々のDNAを利用して器官で扱われるDNAを元に戻す、というフレコミであった。
が、それは真っ赤な嘘であった。
実は避妊薬αは、設計したDNAのとおりの胎児を作るよう、受精卵をプログラムするモノであったのだ。
解除薬はその結合のための補助結合子の付与に過ぎないのである。
この新薬の使用者は、引き起こした科学者の意図したDNA改変実験の被験者に過ぎず、ただの器であった。
奇形の子ども達が”クローン”または、『取替えっ子』などと呼ばれたのこのためである。
避妊薬の販売が禁止され、解除薬の値段が高騰したのは当然である。
冒頭の男女が子供を作ろうと考えたのは、この事件の直前であった。がその話は次のレスに続く。
互いに愛し合い、そして妊娠、出産と、ごく普通の家庭でごく普通の男女がごく普通に経験すべき慶事。
この男女にとってただ一つ違っていたのは、生まれてきた子どもに、真っ白な翼があったことであった。
生まれて24時間でまず蝿蚊のごときメディアの砲列に晒され、その後の24時間は科学者の好奇の目に晒され、
これらすべての騒ぎに翻弄された男女は、さだめし暴風雨のような騒ぎからお互いを守ろうとする。
だが、必死になればなるほどに、お互いの愛情は銅のように冷え、鈍い色に染まっていくのを感じていく。
その熱狂すらも、三日目の夕方、奇跡の子の死亡した瞬間に吹き消えた。生後60時間の命であった。

この新型避妊薬の機能を考えてみれば、この事実はつまり、この男女の組み合わせにおいては何度やっても同じ結果しか起こらないということである。

この事件はお互いの心に恐怖しか与えなくなっていた。
この事件以後、男女は夜毎にお互いを慰め、怒り、罵りあい、最後にはいつも抱き合いながら泣くのだった。
だが、決して愛し合わなかった。決して。
こうして二人は別れた。女はその後結婚しなかった、男は拾い子を育て上げて死んだという。

この話はこれで終わりだ。
最後に、クローンたちの生存率はとある統計では今でも5%未満だそうである。