《総合》戦闘妖精・雪風 B-14 〜永久未完装置〜
-アニメ化されると聞いたとき、どのように思われましたか?
「それまでも話はいくつもあったので、そのひとつとして『また来たか』という程度に聴いていたんです。
その後、バンダイビジュアルのプロデューサー・杉山潔氏から『こちらの熱意を知っていただきたいので、
ぜひお会いしたい』という申し入れがあった。
そこで、いくつかのけっこうきびしいと自分でも思える注文を出したんです。
すると、杉山さんは、『やります!』と(笑)。後は全てをお任せしているので、それ以降は口出しをしていません」
-注文とはどういうものだったのですか?
「まずは飛行機を飛行機らしく描いてほしかった。飛行機らしく飛ばすためのリサーチをきちんとやって、
半端な関わり方ではなく、旅客機でもいいから近くに行って触ってみてください、ということです。
そう言ったところ、スタッフは実際に小松基地へ行くことになった(笑)。
次に軍隊賛美にならないこと。さっきも言ったように戦闘機ですから人殺しの道具で、それが単純にすばらしい、
というものにだけはしてほしくなかったんです。
そして最後はリン・ジャクスンの視点を入れてください、ということですね」
-リン・ジャクスンの視点、というのはどういうことなんですか?
「あの世界から一歩引いた客観的な視点がほしかったんです。
僕としても作品世界に自分自身が捕らわれるのが嫌なんです。
どこかで客観的に見ていたい、という欲求があり、何を書く時でももうひとりの自分が必ずいる。
常に客観的な視点を残して、自分がやっていることをひとつ上のレベルから観ていたい。
だから、そういう視点を入れてほしかった。
単純にジャムと闘う描写だけではなく、あの闘いが現実の我々にとってどうなのか、
あの物語世界の地球人にとってどうなのか、ということを客観的な立場から観る視点をいれて下さい、
という意味だったんです。だから、僕がお願いしたかったのは、リン・ジャクスンそのものを出してほしい、
ということではなかったんです。ですけど、真っ正面から受け止めてもらえたみたいですね(笑)」
-最終的に、映像化を承諾された理由をお聞かせ下さい。
「もうひとつ原作者としてできることは何か、と考えた時、
やはり雪風好きの一人としてチャチな『雪風』は見たくなかった。
『NO!』と言えるのは原作者だけなので安易に許可はできない。
『やれるものならやってみろ!』という気分で注文を出したけど、それでも『やります!』ということだったので
『いけるな』と。けっこうお金もかけてもらえるようだったし(笑)。クオリティというものは予算の多寡で決まるので、
優秀なプロデューサーがどれだけお金を集めてこられるかが勝負、ということがありますよね。
でも、どんなにお金があっても、飛行機の爽快感といったことがわかっていなければ、変な作品になってしまう。
この点、杉山さんなら大丈夫だと思いました。
僕は『OKです』と言った時点で原作者としての役割は終わったと思っているんです。
ですから、こういうインタビューも場違いなのかもしれませんね(笑)」
-今後、アニメ化された作品にどのようなことを期待されますか?
「僕はアニメに関して素人だし、映像には映像のやり方があると思うんです。
ですから、原作にはないエピソードでもうまく使えるのなら取り入れてください、とお任せしています。
巷には勘違いされている方もいるようですが、神林は監修など一切していません(笑)。
でも、結果としてカッコいいものがあがってきましたよね。
飯田さんや大倉さんといったスタッフに恵まれたと思います。
結局、同世代的に生きてきて、15年経ってから『グッドラック』を読んで、ホッとするところがあったのかもしれない。
僕と同じように年をとってきた人にとって『グッドラック』はとても腑に落ちる話だったんではないでしょうかね。
前回のライナーのインタビューで飯田さんが『グッドラック』があってこそ、
ということを言ってもらえたのが嬉しかったですね」
-今後のご予定は?
「現在、関わっているものを順番に片づけていくという感じです。長いスパンでの予定は特にないんです。
その時々に関心があることを見つけて書いていく。そういう書き方しかできないんですよね。
『雪風』に関しては、実力があれば第3部を書いてみたいですね。ただ、それは僕が納得できるような書き方なり、
コアになるものが掴めればの話。『グッドラック』が書けたのは『雪風』がよかったので続編を書いてほしい、
という要望を無視できなかったから。ファンのために書いているのではないと言っているけど、
やはり書いたものを多くの人が応援してくれている、と思うから書けるんです。だから15年もかかったけど、
ファンの皆さんの期待やプレッシャーのお陰で書けたんだと思います。
第3部は皆さんを裏切り、驚かすものにしたいですね」
-最後に、ファンの方へメッセージを。
「とにかく、映像版は驚くべき結末になるに違いないでしょう。これから話数が進むにしたがって、
映像版なりの物語が発展すると思うので、僕もファンの一人として楽しみにしているので、
皆さんも楽しみにしていて下さい。また、スタッフの皆さんにエールを送っていただきたい。
僕としては原作にあまりこだわらずに映像版を観てほしいですね。原作と映像化された作品は別ですから、
映像は映像として楽しんだらいかがでしょうか。何しろ僕はほぼ完成した時点でのビデオをもらった時に
『カッコいい!』と思いながら何度も繰り返し観てしまいました(笑)」