谷甲州総合−第二次外惑星動乱−

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「突撃、突撃」
「さっさと動け、畜生ども」

さわやかな朝の怒号が、変色したサンバイザーににこだまする。
カリストの地表の訓練施設に集うどぶねずみたちが、今日も人殺しのような
厳しい顔で、背の高い地形障害を乗り越えていく。
筋骨逞しい心身を包むのは、銀色の宇宙服。銃に被せたアルミホイルは
破らないように、白い生命維持パイプは引き抜かないように、急いで走るのがここでのたしなみ。
もちろん、制限時間内にクリアできないなどといった、練度の低い隊員など存在していようはずもない。

外惑星連合軍タナトス戦闘団。
西暦2098年編成のこの部隊は、もとは国境警備隊の隊員たちからつくられたという、
規律ある外惑星系陸戦部隊である。
木星引力圏内。開拓期の面影を未だに残しているカリストのこの地区で、ダンテ隊長に
見守られ、個人訓練から集団襲撃までの一貫教育がうけられる漢の園。
状況が移り変わり、元首が二回も改まった開戦間際の今日でさえ、
三ヶ月耐え続ければ、地獄育ちの純粋培養陸戦隊員が箱入りで出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重な訓練施設である。

りとぅん ばい ふぇるなんですちゅうさ