コンタクト / カール・セーガン 

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62名無しは無慈悲な夜の女王
映画版で何気に書いたけど、転載。
読み直したらやっぱ面白い。

618 名前:名無シネマ@上映中 投稿日:2003/01/29(水) 14:18 ID:fjktsuUO
原作について私見を書く。

小説のほうがリアルである、と書いている人が多いが
それはこの小説の一面しか見ていないと思う。
もちろん、内容の濃さ・完成度・思弁性と遥かに小説のほうが
上なのは事実だけれど、セーガンが書きたかったのは
ハードSFに絡みつくような2面性を持った「神話」である。

どこまで本気だったかは解らないが彼が20世紀の「神話」を
創りたかった事は、小説のプロットで容易に見て取れる。
バビルの塔やモーゼのシナイ山行と対比させるとよくわかると思う。
上の2つを中心にして旧約聖書にあるプロットを数多く織り込んで
いるのではないか。

最終章「画家の署名」に出てくるπに隠されたメッセージについて
これがリアルでないなどと書かれたレスもあったが
これはさながら数千年前の人間達が
「海が二つに割れたって?そんな馬鹿なことあるわけないだろう」
と話すがごときことなのである。
セーガンが書きたかったのは、ただ20世紀の現代にあって
奇跡と思われるようなひとつの出来事というだけなのだから。

こうした意味では映画「コンタクト」製作にあたっては
深く宗教的でもある原作をどう薄めるかが脚本の焦点であったのでは
ないだろうか(セーガンは不満だったとも聞いた覚えがある)

むしろ、映画は原作に比べ大衆的なリアリズムを持っているのではないだろうか。