クトゥルーを色々教えてくだされ

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188名無しは無慈悲な夜の女王
遅レスですが >>156さんの、

> そもそもあれはクトゥルーとよむことでよいの?
> 発音できないという設定はわかるが(必要上の)日本語表記として。
> ク・リトル・リトルじゃないだろうことはわかるのですが(w
に回答です。というか「回答」という名の、ここぞとばかりの知ったかぶり
だったりします。

じつは生前のラヴクラフトに直接「あれ何て発音するんですか?」と尋ねた
勇気あるナイスガイがおりました。
ドナルド・ワンドレイ。ラヴクラフトの熱心なファンで、のちにダーレスに
協力してアーカムハウスにも関わっています (同社のラヴクラフト単行本の
校訂をやったのも彼らしい) 怪奇小説の創作もあります。
さて、未だ十代、大学生だった頃にワンドレイは夏の休暇を利用して、ヒッチ
ハイクではるばるプロヴィデンスへ、憧れの作家ラヴクラフトを訪問しに行き
ます。
ラヴクラフトといえば誰もが知る手紙魔でファンレターにも律儀に返信して
いたといいますが、直接会うのは好まなかったようです。書斎で静かに読書
をしたり執筆したりするのが性に合っていたのでしょうね。ダーレスやロバー
ト・ブロックでさえ生前の彼には直接会ってはいないというくらいですから、
ワンドレイは数少ない例外の一人です。

その日二人はその夜遅くまで談笑していました。するうちにワンドレイはふと、
以前からの疑問を思い出し、興ざめかもしれないけれどひとつ訪ねてみること
にしました。

「ミスター・ラヴクラフト。ひとつお尋ねしたいことがあるのですが」
「何かね、なんでも聞いてくれたまえ」と、ラヴクラフトはにこやかに応え
ました。
「それではお尋ねしますが、貴方の作品に出てくるあの "Cthulhu" は
 いったいどう発音するのでしょうか?」
189名無しは無慈悲な夜の女王:02/09/04 21:50
すると、ラヴクラフトの顔からさあっと笑みが引いて、急に彼は真面目な顔
つきになってしばらく考え込んでしまいました。お互いしばらく黙りこくって
いましたが、その締まった表情に不安をおぼえたワンドレイが耐え切れず何か
言いかけたとき、おもむろにラヴクラフトは、重々しい、だけれどもしっかり
とした口調でこう断言しました。
「ク・リトル・リトルだ」

さあワンドレイは驚きました。というよりも呆気にとられたといったほうが
いいかもしれません。その両方が入り混じった何とも形容しがたい変な心持
ちであったことでしょう。しばしたじろいだ後に、やっと聞き返します。
「えっ!? どうしてそんな発音なのですか?」
「それは異世界の住人がそう発音しているからだよ、ワンドレイ君」
厳かな表情で静かにラヴクラフトは言い切ったのです。
190名無しは無慈悲な夜の女王:02/09/04 21:51
この逸話は荒俣宏がひじょうに気に入るところとなりました。「いかにも
ラヴクラフトらしい衒学ぶりだと思ったので」荒俣は国書刊行会から出し
た編訳書の邦題を『ク・リトル・リトル神話集』としました。しかしなが
ら私見では、 "リトル" ではやっぱり "小さい(little)" と混同しそうで
まぎらわしい。"リトゥー" くらいが良かったように思っています。
※衒学: せんがく。ペダントリー。奇を衒うようにして、学を衒ってみせる事

またこの逸話は研究家仁賀克雄も「ミステリマガジン」や「宇宙船」で何度
か紹介されているので目にされた方も多いでしょう。仁賀氏の推理はこう。
きっとそりゃからかわれたんだよって。ラヴクラフトはあれでけっこう陽気
で冗談好きだったと親族や友人が証言しています (しかし "あれで" と言われ
てしまうラヴクラフト可哀想...) 。プロヴィデンス郊外へ皆なでピクニック
へ行くことだってあったとか。だからきっと、自分の年若いファンであるワン
ドレイをちょっとばかりからかってみたのさ、と。

さぁ貴方はどう思いますか?
>188,189,190
>さぁ貴方はどう思いますか?
 とりあえず、「文章が長い!!」