小説は人に読まれてなんぼ。
というわけで、今からオリジナルのSF小説を書きます。
感想を、なんでもいいんで、書き込んでくれるとうれしいです。
将来的にはディーン・R・クーンツみたいな、面白くて稼げる作家になりたいです。
それでは応援よろしくお願いします。タイトルは「大宇宙の群狼」です。
>>2
リュウ・カズマが二十日振りにコールドスリープから目覚め、コクピットルームに
入って来ると、シートに一人で座っていた若い女が振り向き、すっと立ち上がって微笑んだ。
「気分はどうですか、ボス」
リュウは女の姿を眺めながら、髪をボリボリと掻くと、
「体の表面はヒーターで暖まったが・・・中の方がまだ溶けてないようだ」
「いつものようにコーヒーをお入れします。合成ですからご満足頂けるか分かりませんが」
女は席を立つと、脇の出口ドアからしなやかな足取りで出て行く。リュウは最前列のシートまで行くと、
重力シートにどっかと腰を下ろした。前一面に張り巡らされた、ミサイルでも穴の空くことのない、
超硬質クリスタルガラスの向こうには、漆黒の宇宙の大深淵が広がっている。リュウは若干の眩暈を覚えながら、
その光景を眺めた。冷凍睡眠後の数時間は軽度の記憶喪失や時系列観念の混乱が生じる。脳細胞が目覚めきってないために
起こる障害なのだが、リュウは十数年前の水兵に成り立ての頃の感覚を蘇らせていた。
まだ十代だった頃、配属された宇宙巡航艦ではこの深淵に恐怖に似た戦慄を覚えたものだった。しかし今では、
すっかり日常の光景となっている。
女は戻って来ると、リュウの横に立ち、銀色のトレイに乗せたカップを差し出した。
「ありがとう、愛梨」
リュウは受け取ると、コーヒーを口から流し込んだ。熱い液体が舌の先から食道、胃へと伝わって、冷たい臓器を温めていく。
注目してもらいたいのはわかるけど、プロの作家でなければ、
抱負を語って宣伝した時点でモチベーションを半分くらい使っちゃって
書く気にならなくなるか、書けても腰砕けになるかのどっちかだから、
黙って書いたほうがいいよ。
いわゆる作家志望者をいろいろ見ての印象です。
>>1 自分でWebPage作って、そこへのリンク、程度で勘弁してくれや。
リュウはコーヒーでほっと一息つくと、トレイを胸に抱いて傍らに控える女を眺めた。
ゴールドの船内服を着た「愛梨」と呼ばれた女は、地球人の年齢でいえば24、5歳くらいの若さに
見える。しかし実際には、一年前に工場で産声を上げたばかりだった。セラミック製のシャシーを
柔らかな人口皮膚で覆ったアンドロイド。それもただのアンドロイドではなく、特殊任務用の
オーダーメイドだった。その値段はちょっとした小型宇宙艇数隻分に匹敵する。
リュウは地球連邦政府の秘密工作員だが、工作員には必ずサポート役のアンドロイドが一体
支給されていた。彼、彼女らは主人であるエージェントの命令に絶対服従し、最高の働きをすることを
使命付けられていた。その頭部にはマイクロ・スーパー・コンピューターが積まれ、危機に際しては
その論理回路をフル回転させる。力や肉体の強度は普通の人間と変わらないが、運動神経はオリンピック選手並みで、
非常に俊敏な動きをした。エネルギーは外部からの充電式だが、内蔵電池は非常に優秀で、普通の作業ならエネルギー補給なしで、
一ヶ月は稼動出来る。
愛梨はそうした内の一体で、最新式だった。
もうちょっと書かせて。お願い。
典型的な設定バカの文章。読む気にならないよ・・・(号泣
実はリュウは一年くらい前までは別のアンドロイドを使っていた。同じく女性タイプで、
工作員になった当初から三年余りも共に過ごしていた。リュウは非常に気に入っていたので、
新型が出ても替えようとはしなかったのだが、半年前に設備課にせっつかれ、やむを得ず
交換を了解したのだ。ちなみに前のアンドロイドをリュウはセックス用に自宅に引き取れないかと
交渉したのだが、担当官に物凄い剣幕でまくし立てられ、有無を言わさず取り上げられた。
今そのアンドロイドはすべての記憶を消去され、事務方で働いてるはずだ。
そんな経緯があったものの、リュウはこの愛梨も気に入っていた。リュウがそうであるように、
愛梨も日本人型に設定されていた。背は170センチくらいの長身で、頭の先からつま先まで
スラリと均整の取れた肢体は、胸や腰のボリュームを強調していた。
肌は抜けるように白く、滑らかである。顔は非常な美形で、二重の大きな目と美しい瞳が印象的だ。
表情は清楚な佇まいを見せており、良家の子女風だが、唇に浮かべた笑みは何とも艶やかで、
匂い立つような色香を発していた。
リュウは愛梨の肩から背中に流れる長い黒髪を見て、それに顔を埋めたい衝動にかられた。が、
すぐに思い直す。抱くのは体力が回復してからでいい、時間は充分過ぎるほどある。
愛梨はじっと顔を見詰めてくるリュウを見て、怪訝そうに尋ねた。
「どうかされましたか?」
リュウは下心丸出しの目付きをすると手を伸ばし、愛梨の腰骨の張った豊かな尻を
撫でた。愛梨はチラとその手を見たが、すぐにリュウの顔に視線を戻す。その表情に
戸惑いの色は欠片もない。愛梨の頭脳には反抗心など設定されていない。あるのは
主人に対する完全な服従を遂行するためのプログラムだけだった。
リュウは手を離すと、欠伸をしつつ、
「別に・・・何か異状は?」
「本部からは通常の定期交信のみです。その中身で気になる内容が」
リュウは内心で舌打ちをする。
「面倒事か」
「バラス星付近の宙域で民間船が攻撃されました。約一週間前ですが」
「海賊か」
「そのようです。千人乗りの客船だそうですが、巡航中に襲撃されました。
死傷者は五百名以上。かなり荒っぽい手口だったそうです」
リュウはつまらなそうに愛梨の報告に耳を傾けている。海賊という、中世に栄えた闇の文化が、
この25世紀の宇宙時代に再び黄金時代を迎えようとしていた。前世紀に開発されたワープ機関は
人類に光速を超え、他の恒星系に行くことを可能とさせた。そしてこの百年余りの内に、
人類の生存圏は銀河系全体へと広がったのだ。
人類は銀河の海に飛び出して行く過程において、数々の知的生命体と出会い、
交流していった。大小の貿易船が貨物を積んで星々の間を飛び交い、直径何万光年
にも及ぶ、想像を絶するような巨大な経済共栄圏が成立した。そして同時にその富を狙う
アウトローの群れも増殖し始める。彼らは広大な宇宙の闇の領域に潜み、狼の牙を研いでいた。
一匹狼の海賊から、何千隻にも及ぶマフィア的な一大勢力まで、あらゆるレベルで
宇宙海賊の跳梁はとどまるところを知らなかった。各星系政府は軍や警備隊の武力による制圧を
目指したが、結局イタチごっこの態を様している。
以上は五歳の子供でも知ってる事柄だが、リュウにとっては現状では他人事だった。彼は地球政府の
職員であり、バラス星のではない。海賊が出たとして、それはバラス政府が対処すべき問題であって、
そもそもリュウに何かの権限が与えられてる訳ではないのだ。ただ、怪我人や漂流者が出た場合、宇宙協定によって
救助する義務はある。
「バラス星から何か要請は出てるのか」
「今のところ何も。大使館から打診もしたそうですが、丁重に断られたそうです」
「連中にも面子があるんだろう。いずれにせよ艦隊の仕事さ。俺一人じゃどうにもならんしな」
リュウは気楽な調子で笑った。
ちょっとセンスが古いけど、がんばれ>作者
あらゆる意味でノスタルジーを感じる・・。
愛梨は小首を傾げると、
「それでは予定航路には変更なしで?」
「必要ないだろ」
「了解しました」
「襲撃現場は近いのか」
「二日後に近辺を通過します」
「海賊に遭遇する可能性は」
「8.7パーセントです」
愛梨の電子頭脳が瞬時に数字をはじき出した。リュウは考えた。例え遭遇したとして、
この船に追い付ける海賊船など有り得ない。いずれにせよ何の心配もなかった。
リュウはカップを渡すと、
「とりあえずデータ室で資料を検討してみる。愛梨は引き続きモニターを続けてくれ。
機関に異状はないな」
「はい、ボス」
リュウは立ち上がると出口へ向かう。ふと思い出したように振り返ると、
「愛梨」
「何でしょう」
「一時間たったら、ベッドルームに来てくれ」
愛梨は従順な奴隷のようにうやうやしく頭を垂れた。
「了解しました」
リュウは口笛を吹きながら、出て行った。
>>11 ありがとうございます!!!!
すんませんが今日は疲れたのでここまで。
これからどんどん面白くなるんで応援よろしくお願いします。
つづく。
そしてその後、リュウと愛梨の姿を見たものはいない。
---------- 完 ----------
>作者
見るヤツは見てるもんだから、sageでやったほうがいいぞ。
完結したら上げるのが良いと思う。
>作者
がんばれ
17 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/10/02 01:49
1000までにおさまるのかい?
sage
もう作者も満足して来ないんじゃないか?
20 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/10/02 02:09
自分は一応プロの漫画原作者なのですが、
作者の頭の中にある情景を文章だけで他者に理解させるには
大変な努力と相応の技術がいります。
これは、最も基礎的なことで、文学的才能などとは別次元の
問題で、アイデア発想力やオリジナリティといったものは
更にこういった技術が最低限ある人に対して初めて評価の基準となります。
正直、「大宇宙の群狼」の作者の文章の水準は、他人に読んでもらう
レベルに達しているとは残念ながら到底思えません。
細かい点をあげると切りがないのですが、例えば
掻くのは髪ではなく頭でしょう。
また、「実はリュウは・・・」といきなり地の文にありますが
「実は・・」という言語は発話体ですが、誰が誰に対して発話してるのか?
などなど、ちゃんと見たらもっと酷いのだろうな・・と思わせます。
プロでも推敲に推敲を重ねて、やっと完成原稿を渡すもの。
リアルタイムで・・なんて我々でもおっかなくて出来ません。
その辺、考えられた方がよろしいのじゃないでしょうか。
恐らく10代か20代前半位の若い方だと思われますが、
小説表現やフィクションの創作、SFというジャンルを
少々甘くみておられるのではないでしょうか?
これでは、小説はおろか、漫画の原作シナリオとしてもいただけません。
蛇足ですが「大宇宙の群狼」というどうとでもとれるタイトル自体が
作者自身にこの先の設計図がないな・・・と思わせます。
タイトルは大事ですよ、意外と。
いいじゃねえか、ほっといてやれよ。
>>1への忠告だったら、上げて書くほどのことじゃねえだろ?
「大いなる助走」で主人公が書いた小説のタイトルが「大企業の郡狼」だったな。
書いても売れないよ
売る予定なら、2chで連載するワケなかろう。
2ちゃんで小説を書こうという時点で、酷評されることは目に見えてたな。
ここじゃ、仮にすごい傑作を書いたって、けなす人間はけなすよ。
20さんみたいな、真面目な意見を書いてくれる人がいただけでもめっけもんだ。
いい勉強したと思って、精進せいや。>1
まぁ
>>1が下げでやるなら、別に構わんのではなかろうか。
どうせこの板人少ないし。
リュウは暗いデータ室で一人、スクリーンに見入っていた。スクリーンにはバラス星系における
宇宙海賊の勢力分布図が映し出されている。バラスは比較的文明の進んだ国家で、銀河連盟の加盟国の中では
列強と呼んでも良い地位にある。その政策は保守的で中央集権的な色合いが強い。従属する移民惑星に対して
高圧的な態度を取ることが多く、各所で軋轢が絶えなかった。追い詰められた抵抗勢力が資金源の窮乏から
海賊行為に及ぶというのはよくある話である。
リュウは彼らの装備や武器を検討したが、どれも旧式で案ずるに及ばずとの結論を出した。
リュウの乗る宇宙船は銀河に名高い地球製の最新鋭機であり、彼ら旧式機が束になってかかって来ても
相手になるものではない。
実際、リュウの乗り込んでる機体は銀河全体を見回しても追随するもののないほど
優秀なものだった。乗船「ファイアーバード」は、七階建てのビルを横にしたくらいの大きさで、
本来は魚雷艇、あるいは高速重爆撃機といった分類になる。全体としては角張った本体と分厚い水平翼、
そして角のように突き出した二本の尾翼、兼アンテナ塔によって構成されている。装甲は極めて厚く、
ちょっとした移動トーチカと言っても通用した。外装は鮮やかな白と赤に塗られ、機関は
馬力のあるプラズマエンジン、小回りは利かないが、一撃離脱式の戦法では無敵と言って良い。
さらに超光速用ワープエンジン、加えて重力推進も可能だった。
武装は四連装パルスレーザーの自動砲塔が二基、そして極めつけは下腹に抱いた
大口径プロトンビーム砲だった。それは軽巡クラスなら一撃で屠る威力を持つ。これだけの機体を
助手込みでたった二名でコントロール出来、しかも居住性も最高というのだから、どれほどの
優秀さか知れるものだった。この機体をもってすれば、いかに兇悪な海賊の群れといえども、
歯の立つはずもないだろう。
リュウは海賊については問題にするまでもないと思い、ボタンを押すと画面を切り替えた。
スクリーンには替わって、最終目的地である惑星「デンドロビウム」の全体図が映し出される。
「デンドロビウム」は辺境宇宙にある、ちっぽけな小石のような惑星である。原住民の文明度は
極めて低く、野蛮人と言っても良いようなレベルだった。最近、地球人の探検家によって新たに発見
されたのだが、地球政府はこの星をどのように扱うか本格的に検討し始めた。植民地にするには
いかんせん距離が遠過ぎる。そこで、現地に原住民による惑星政府を作らせ、それを随時支援するという
形を取ることとなった。ついては、「デンドロビウム」における各部族勢力のどれを支援すべきか、
また利用出来る資源はあるかなどの調査を行う必要がある。
リュウはその先陣の役割だった。
リュウは原住民であるという昆虫型人間の写真を見ながら、これから何十年にも渡って
繰り広げられるだろう、「デンドロビウム」における血腥い争乱に思いを馳せた。文明国が
未開発国に介入を行うと、原住民は必ず不幸な目を見ることになる。部族同士が権力を奪い合い、
血で血を洗う抗争を繰り広げるのだ。国土は荒廃し、進歩は何百年も遅れる。戦乱によって
罪もない民衆が殺され、大勢の難民が生まれるのだ。
しかしリュウにはどうしようもなかった。この広い宇宙には基本的に法、秩序など無かった。
あるのは強者同士による弱者を収奪するための「取り決め」だけである。もちろん連盟には
人道を守る旨の協定はあったが、実際には何の効力も持たず、列強のやりたい放題の様相を呈していた。
リュウは十数年に及ぶ宇宙生活において、結局自分の身を守るのは自分しかいないという風に
悟っていた。誰に文句をつけても仕様がない、招いた結果の責任は自分で取れ。これは
国や惑星のレベルでも同じだった。
リュウはつまらぬ考えを取り除くかのように手を顔の前で振り払った。デンドロビウムの運命は
連中自身で掴み取ればいい、俺は俺の仕事をするだけだ。
「・・・ツケはいつか払うさ。なあ」
リュウは誰ともなく呟いた。リュウの頭の中に、ある過去の情景が浮かんだ。
血塗れの若い男の顔。頭に包帯を巻いたその若者は、訴えかけるような目でこちらを見ている。
リュウは無感動にその幻を眺めた。そしてぼんやりと、まだ脳が溶け切ってないようだな、と思った。
今日はもう落ちなければならないので、ここまでで。どうも状況説明が長引いて
なかなかドラマに入りませんが、もう少し辛抱してお付き合いのほどを。
>>20 プロの方の意見が聞けるなんて光栄です。おっしゃってることは全くもってその通り
なので頭が痛いです。文章の基礎技術に関しては、僕も書きながら「ここ、何か変だよなあ」
と思いつつも、じゃあどこがどう変なのかという段になると、そこで頭がフリーズしてしまいます。
その種の事を書きながら学んでいければなあと思ってます。とりあえず僕の大目標として、
「キチンと完結させる」というのが第一位としてありますので、今は勢いとモチベーションを
大事にしようと思ってます。
>>15 たまには上げるかも
>>16 ありがとう
>>17 原稿用紙で言うと200くらいの予定です
>>25 精進します
>>22 図星です
つづく。
ぐだぐだナレーション入れてないで、とっとと愛梨たんとのセクースシーンに移れや。
リュウはベッドルームで激しく愛梨と愛し合った。愛梨は元よりそのような目的のために
造られた人工の美女であり、その美貌は計算し尽くされた完璧なものだった。愛梨の白くしなやかな肢体が
シーツの上で悶える度に、リュウの欲情はクライマックスに向けて加速して行く。
リュウは愛梨のピリピリと電気を帯びた唇と舌を味わい、挑発的に盛り上がった二つの丸い胸を
揉みしだいた。愛梨は目を閉じて大きな喘ぎ声を上げ続け、その清楚で美しい顔は激しい快楽に歪んだが、
彼女の頭脳には快楽の概念はインプットされていないため、それはあくまで男を楽しませるための演技でしか
なかった。しかし演技としてもそのプログラムは完璧であり、しかも回数を重ねる度にコンピューターは
学習を繰り返し、より主人に合った反応を示すようになっていくのだった。
リュウは忠実な女アンドロイドのボディを充分に楽しんだ。そして愛梨のしなやかな身体を
きつく抱き締めると、中で果てた。
通信が入ったのは、その行為に及んだ数時間後だった。リュウがシャワーを浴び、下着姿でくつろいでいると、
インターコムを通じて愛梨の声がした。
「ボス、緊急です。ブリッジにお越し下さい」
リュウはソファから素早く立ち上がると、インターコムに向かう。
「緊急?」
「バラスの巡航艦です。停船を命じています」
リュウは半裸の姿のまま、ブリッジに急いだ。
ブリッジでは愛梨がコントロールパネルに向かって作業をしている。数時間前のベッドの上での
乱れぶりが嘘のような、冷静な仕事ぶりだった。無論、愛梨の電子頭脳に羞恥心など組み込まれてるはずもない。
リュウが入って来ると、愛梨はサッと立ち上がった。
「ボス、入電です」
「バラスか。内容は」
「停船して臨検を受けるようにと。先ほど前方の空間に突然ワープアウトして来ました。
かなり強硬です。二十分後に接触します」
モニタースクリーンには索敵センサーに捉えられた艦影が映し出されている。
「まだ公海上のはずだが。回避も許さないのか」
「そうです。砲撃も辞さない構えです」
リュウは考えた。今回のデンドロビウム行きに関してはデリケートな問題を孕んでいるため、
各国政府には知らせていない。新たな惑星が発見された場合、その占有権は発見した人間の
属する国のものとなるという条約の取り決めはあるが、実際にはスムーズにいった試しはなく、
必ず近隣諸国の横槍が入る。それに対抗するためには、他国に気付かれる前に前もって
既成事実を作ってしまうのが一番だった。そのため地球政府も、新惑星が発見されたという
事実すらもひた隠しにしていたのである。
よってリュウたちの行動が怪しまれるのは当然としても、この対応はいかにも神経質で不自然に過ぎる。
砲撃をチラつかせるというのは、明らかに尋常ではなかった。
リュウはモニタースクリーンを凝視しながら呟いた。
「何かあるな・・・」
愛梨はじっとリュウを見詰めている。
「・・・全速離脱という手もあるが、ここら一帯はバラスの勢力圏だ。下手したら連中すべてを
敵に回すことになる。包囲網の中で俺たち一隻なんて事になったら、洒落にならん」
「可能性は充分あります」
「今後のこともあるし、穏便に済ませたい。臨検を受けよう。通信してくれ」
「了解」
「ドッキング準備。俺は秘密資料を処理して来る」
言うと、リュウは外へ飛び出して行く。通路を歩きながら、海賊襲撃の件と今回の厳しい対応
との関連性について考えを巡らした。その時、リュウは不意に背筋に悪寒を感じると、
非常に悪い事が起きるような予感を抱いた。何かが始まろうとしている。でも何が?
運命の船が刻々と近付いて来ていた。
リュウは「ファイアーバード」の機関を完全に停止させ、巡航艦の到着を待った。しばらくすると
巡航艦が、ブリッジのガラスを通して肉眼で視認出来るほどの距離まで近付いて来た。バラスの重巡は、
全身に棘を生やかしたような、特徴のある禍々しい姿を暗闇の中から露わにすると、露骨に砲塔を
こちらに向けて威嚇しつつ、ゆっくりと正面から接近して来る。リュウはその所作を向こうの恐怖の現れと見た。
バラス側にしても、地球の最新鋭機の力は充分に理解している。向こうも怖いのだ。地球人はそれほどまでに
全宇宙からその実力を恐れと尊敬の念を持って見られてるのである。
ブリッジにビープ音が響き、投影スクリーンにバラス人の姿が大映しとなった。
「こちらはバラス宇宙艦隊所属、巡航艦「ラーマ」号。艦長のアーカムだ。貴艦の所属を述べられたし」
自動翻訳機を通したノイズの多い言葉が伝わってくる。リュウが隣に座った愛梨にうなずきかけると、
愛梨は打ち合わせ通りに話し始めた。
「こちら地球政府施設調査部所属、調査船「ホワイトラビット」。乗員はリュウ・カズマ博士と
助手の二名。乗船を許可します。指示されたし」
「了解した。公海上であることは承知してるが、こちらも少々事情があってな。出来れば
任意ということでお願いしたい」
スクリーンのバラス人は冷徹な調子で言った。その四つある眼が鋭く光る。
バラス人はいわゆる爬虫類タイプのヒューマノイドで、身長は非常に高く2メートルは普通で、
種族によっては3メートルを越す場合もある。アーカムと名乗った艦長は鱗に覆われた逞しい体躯を
制服で包み、ガッチリとした顎と、口内には鋭い鋸状の歯をずらりと並べ、虹彩のない4つの
紫色に光る眼を持っていた。顔の両端からは象の耳のような扇状の器官が広がっている。
リュウは改めて素手で戦える相手ではないなと感じた。
巡航艦「ラーマ」号はファイアーバードとすれ違うようにして、舷側に横付けした。続いて
巡航艦の横腹から透明なガラスのチューブが突き出し、ゆっくりファイアーバードの方に伸びて行くと
エアロックに接続した。それを見てリュウは出迎えのため、ブリッジを出て行った。
エアロックに来たリュウは小窓から外を覗いた。見ると、ガラスチューブの中を宇宙服とヘルメットを被り、
手にブラスターを所持したバラス人の大男たちが連なって渡って来る。ブリッジでは愛梨がバラス人の到着を
確認した上で、扉のロックを解いた。シュッという音と共に二重扉の外側が開く。リュウが耳を澄ますと、
外側から内扉をノックする音が響いた。リュウは壁のレバーを押し下げた。
瞬間、扉の隙間からピンク色の蒸気が勢いよく流入して来た。圧力に押されたリュウは
面食らってよろけ、異様な匂いに咳き込んだ。異状を察知したブリッジからインターコムを通じて
愛梨の声が響く。
「ボス!大丈夫ですか!」
バラス人たちは平然と入って来ると、先頭にいた巨躯の一人がヘルメットのスピーカーを通じて
野太い声を発した。
「心配無用だ。毒ガスではない。病原菌に感染しないよう念のため消毒させてもらった」
リュウは煙にむせ返り、涙をボロボロ流しながら悪態をついた。
「先に言え、クソ。人ん家に邪魔しといていきなりこれか」
バラス人は高笑いすると、ヘルメットを脱いだ。
先頭のバラス人がヘルメットを脱いだ。巨大な顎部の間から鋭い歯の連なりがギラリとのぞき、
金色の光る五つの眼が一斉にリュウを睨む。どうやらこの男が隊長らしい。その姿は白亜紀に生きたという
ティラノサウルスを連想させた。
隊長は牙をむき出して笑うと、
「免疫力には種族によって大きな差がある。ガタイの大きな俺たちでも一発でお陀仏になることだって
あるんだ。注意せんとな」
他の隊員たちも次々にヘルメットを取り、異形の姿を露わにする。隊長はリュウの間近に鼻面を寄せると
ジロジロと眺め回し、
「いつ見ても地球人ってのは邪悪な面ツキをしてるな。不細工もいいとこだ」
他のバラス人たちが一斉に馬鹿にしたような笑いを漏らす。リュウはそれはこっちの台詞だと思いながらも、
今のところは逆らわない方が無難だと判断した。
リュウは二、三歩後退りすると言った。
「一体これは何の真似だ。説明する義務があると思うが?」
バラスの隊長は鼻で笑うと、
「説明?貴様こそこんな辺鄙な所で何やってる。正規のルートから大きく外れてるぞ。
大体、施設調査部だか何だか知らないが、そんなタワゴト、俺が信じてると思うか?」
リュウは黙り込んだ。隊長は五つの眼を同時にギラリと光らせると、
「海賊騒ぎについては先刻承知だと思うが、大使館を通じて地球側の支援は一切必要ないと
通達した。これは国内問題だ。口出しは止してもらおう」
「大きく出たな。なら公海上での、この無法な振る舞いはどう説明する?こっちはこれでも
地球政府の出先なんだぞ」
「何だったら戦争でもするか?俺は一向に構わんぞ」
バラスの隊員の一人が敬礼をして、一歩前に出た。
「バイアス隊長、ご指示を!」
「俺はブリッジに向かう。他の者は各班に分かれて船内を捜索しろ」
「了解!」
「別に荒らす気はない。仕事が済めばさっさと引き上げるさ。さあ、ブリッジに案内
してもらおうか」
バイアスと呼ばれた隊長は促すようにリュウの肩口をポンと叩いた。軽くしたにも関わらず、
リュウは反対側の壁まで吹っ飛ばされそうになったが、何とかバランスを持ち直すと、
渋々といった様子でバラス人を先導して歩き始めた。
そろそろ、放置するか…。
半日以上過ぎた頃、臨検を終えたファイアーバードはバラスの巡航艦に先導されて、低速で
航行していた。リュウが固辞したにも関わらず、バラスの艦長は断固として域外までの随行を主張した。
結局、バラス側の言い分が通り、連れ立っての出発となった。
船内には十人ほどのバラスの兵隊が残留し、各所に配置されている。その露骨な威圧ぶりに
リュウは内心怒りを覚えたが、所詮多勢に無勢だった。ブリッジではリュウと愛梨の後ろで、
バラスの隊長のバイアスがどっかりとシートに腰を下ろしていた。
リュウは憮然とした顔で言い放つ。
「銃口を下げろ。俺たちは囚人じゃない」
バイアスの横に立つ若い兵隊がブラスターの銃口をリュウたちの背中に向けている。
バイアスは顎をしゃくると告げた。
「下ろせ」
若い兵隊は堅い表情で、
「しかし」
「命令だ」
兵隊は眼前の地球人を憎しみのこもった目で睨むと、ブラスターを担え銃の姿勢に持ち替えた。
「こいつの兄貴はガルーダ星の戦闘で死んだ。地球人の奇襲に遭ってな」
バイアスは言った。
「セムだけじゃない。他にも似たような例はいくらもある。まあそういう訳で、地球人には色々と
複雑な思いがあるということだ」
リュウは口をつぐんだ。それから、
「だから何をされても我慢しろと?それにガルーダには俺の知り合いもいた。みんな死んだよ」
「そうか。種族こそ違え、お互い生身の人間に変わりはない。どうしたって憎しみは残る。
それが戦争だ。仕方のないことさ」
バイアスは穏やかに話した。
リュウは前方に目をやるとガラスを通して、先行するバラスの巡航艦を見た。巡航艦ラーマは
巨大な棘を幾つも突き出した、独特の禍々しいシルエットをしている。外装は紫で、角のようなビーム砲塔が数十基
外壁に張り付いていた。そして尾部の巨大なエンジンノズルからは噴射炎が断続的に放たれていた。
リュウはバラス人が乗り込む直前に、愛梨が引き出してみせたデータから、その船が主星バラスの
直属艦隊の一隻であることを割り出していた。つまり通常、星系の外縁で起きた事件などに関与しないはずの
中央の兵力が、なぜか今回に限って派遣されて来たということである。それも大事件ならともかく、
たかが海賊騒ぎによって。
「そして、あのアーカムという艦長もただの巡航艦の一艦長にはとどまりません。系図によると彼は
バラスの現大統領の女婿に当たります。つまりアーカムは軍籍にありながら、大統領の身内として、
非公式な特使のような地位にあるのです」
愛梨は豊富なデータベースから解説をした。リュウは黙って聞いていたが、
「つまり今度の海賊騒ぎは、大統領が直接乗り出してくるほどの重大事ということか。間違いなく裏があるな。
問題は客船が何を積んでいたかだが。人か、物か」
「あるいは襲撃者がただの海賊ではなかったということも考えられます」
とにかく情報が少な過ぎて、何を言っても当て推量にしかならなかった。いずれにせよ
リュウ一人で何とかなりそうなヤマではないことだけは確かである。レポートを提出してから
本部で内偵の緻密な計画を立てた方が良いだろう。抜け駆けするほどにはリュウは野心家ではない。
文章が説明臭くて読みづらい。
下手な設定資料を読んでるような気分だYO
愛梨がモニタースクリーンを見ながら声を発した。
「遷移点を確認。中型です。到達まであと三十分」
「ワープポイントまでは随行する。着いたらどこへなと跳んで二度と戻ってくるな」
バイアスは素っ気無く告げた。
「遠くにジャンプしたと見せかけて、近くに降りるなどというつまらぬ考えは起こすなよ。
次元レーダーで飛跡を追ってるからな。ノコノコ戻って来たら今度こそ終りだ」
バイアスは手刀でその太い首を水平に切って見せる。リュウは馬鹿馬鹿しそうに笑うと、
「疑り深い奴だ。いっそのこと地球までついて来たらどうだ?最近じゃ世代も入れ替わって
エイリアンへの偏見も薄れてきた。以前よりは住みやすいぞ」
「図に乗るな、地球人!貴様らノッペラボーなど、永遠に地の底を這いずり回ってれば
良かったんだ!」
若いセムが激して言った。
「バラスの力を侮るなよ。貴様らが木の上で果物をかじってた頃には、バラスは既に
宇宙の大半を支配していた。バラスがその気になれば地球などひとたまりもないということを
覚えとけ」
地球人も余程嫌われたものだな、とリュウは思った。確かに宇宙種族としては新参者のはずが、
わずか百年余りで銀河で五指に入るほどの勢力に成り上がってしまったのだから、風当たりは強い。
ちなみに「ノッペラボー」というのは異星人が地球人を呼ぶ際の蔑称で、顔に凹凸が少ないという
意味だ。確かにバラスやその他のエイリアンに比べれば、顔の造りは淡白といえるかも知れない。
そうこうしてる間に船は遷移点に到着しつつあった。
泣くなよ。
ところで文章の視点は主人公みたいだから
「リュウ」のところは一人称になってる方が読みやすいような気もする。
遷移点、通称「ワープポイント」は、宇宙空間において重力波の影響が極めて少なく、
さざ波程度にしか起きてない宙域を指す。このような安定した空間面からは宇宙船は比較的
ワープ空間に入りやすい。そしてその座標は日々刻々と動いている。
遷移点は一回ワープに使うと、永久に消滅してしまう。宇宙にはこの種のポイントが泡のように
沸いて出る場所があり、それは大抵恒星の重力に作用されない、外宇宙に多く見られた。そして
そしてそのような場所は「宇宙の高速道路」の入り口として多くの宇宙種族に重宝がられている。
もっともリュウが今接近しているのはそのような大きな「穴」ではなく、もっと小規模で偶発的な
ものだった。
リュウが引き返してからの迂回航路について考えを巡らしていたその時、愛梨が声を出した。
「ボス。信号です」
「ん?向こうさんから何か言ってきたか?」
リュウは窓ガラスの向こうの巡航艦に目をやった。愛梨は首を振ると、
「バラスではありません。救難信号です。SOSを断続的に刻んでいます」
「救難信号?」
リュウはシートから身を起こした。バラス人も互いに顔を見合わせる。
>>47 実は開始するに当たってどっちにしようか迷ったんですが・・・
「変だわ」
愛梨が訝しげに呟いた。冷静なアンドロイドであるはずの愛梨が、こんな声を出すのは珍しい。
「どうした。第三者からなんだろう」
「第三者には間違いないのですが、その発信源が問題です」
「発信源?どこだ」
「それが『ここ』なんです。このエリアのほぼ中心から発信されてます」
リュウはキョトンとした顔になった。しばらくして、
「『ここ』?そうは言っても、このエリアには俺たち二隻しかいないはずだが」
愛梨はリュウを見ると、無言で首を振って見せる。リュウはバラス人の方に振り向くと、
「他にも艦船は来てるのか。合流の予定は」
バイアスは黙り込んだ。やがて口を開くと、
「いや。ラーマに関しては、基本的に単独行動を取っている」
リュウはバイアスの異形のマスクに現れた微妙な表情の変化を見逃さなかった。しかしそれには触れず、
再び愛梨に向き直ると、
「計器の故障の可能性は」
「可能性は限りなくゼロに近いですが、検査します・・・いえ、違います」
愛梨は断定的な口調で、
「計器の故障ではありません。信号波が次第に強くなってます。ただ、レーダーには
艦影は映ってません」
リュウは無駄とは知りつつも、ガラス越しに周囲を見回した。しかし闇に閉ざされた宇宙空間には
他の船の姿は影も形もない。
その時、ブリッジに警報ブザーが鳴り響いた。愛梨が急いでパネルを操作する。
「遷移点に反応!何者かがワープアウトして来ます」
愛梨は驚きの表情を浮かべると、前方を見た。
「SOS信号はワープホールからです!」
リュウは正面を見た。巡航艦の真正面に当たる虚空に突如、火の玉のような光が現れる。
光は急激に拡大していくと、目も開けてられないほどの閃光の渦を巻き起こした。リュウは
ピンクやブルーの光に全身を照らされながら叫ぶ。
「緊急回避!衝撃に備えろ!」
「ホールが開く。来ます!」
次の瞬間、光の渦の中から突き破るようにして、一本の光り輝くビームの矢が発射された。
光の矢は一直線に巡航艦に進むと、その艦橋タワーに命中した。激しい爆発光が巻き起こった。
ファイアーバードのブリッジではバラス人が弾かれたように立ち上がった。巡航艦ラーマの第一艦橋が
激しく燃え上がっている。リュウは歯噛みしながらそれを見ると、愛梨を振り返り、
「状況は!」
「攻撃です。ホール内に機影!」
続いて、光り輝くワープホールの中から、三つの火の鳥のような影が飛び出した!
つづく
53 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/10/05 22:20
あらゆるネーミングセンスが古い気がするが、まぁそれはそれで統一されてるので
良いような…。
それより、今時のロボ子がパネルを操作ってのもなんだかなぁ。
地の文に!がつくのが漏れ的にはどうももにょる……。
遷移点は使い捨て、ってのが、今後ストーリーに絡んでくるなら中々ナイスなアイデアだと思う。
無関係なら単なる設定厨。いや、既に充分設定厨ではあるけどさ。
ラディン「おい!テレビ見てみ」
部下 「どうしたんす?」
ラディン「アメリカのビルにヒコーキ突入やって」
部下 「うわ!ホンマや!」
ラディン「ひどいな・・・まるで映画観てるみたいやな」
部下 「これで戦争にでもなったら世界はどうなるんでしょう」
ラディン「わからん・・・しかしアメリカは犯人を絶対許さんやろな」
部下 「・・・」
ラディン「ん?どした?」
部下 「これ、テレビ映ってるの師匠ちゃいますの?」
ラディン「なになに、アメリカはテロの首謀者をオサマ・ビン・ラディン
と断定・・・」
部下 「・・・」
ラディン「・・・」
ラディン&部下「ぬぅぅぅぅぅあにににににぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
ラディン「知らん知らん知らん!俺知らんでーーー!!!!」
部下 「落ち着いてください!師匠!!」
ラディン「なんで俺が犯人やねん!どうやったらそうなるねん!!」
部下 「だから言うたじゃないですか!日頃から過激な発言は控えてくださいって!」
ラディン「ちょっと言うてみただけやん!まさか本気にするなんて思ってへんわ!」
部下 「とりあえず落ち着きましょう、まだ師匠が犯人と決まったわけじゃないですから」
ラディン「ふー、そうやな、なんかの間違いかもしれんしな」
部下 「そうですよーそれに大国アメリカがそんな大人げ無いことするわけないじゃないすか」
ラディン「そうや、仮にもブッシュは一国一城の大統領や話せばわかってくれるやろ」
部下 「そうですよー今まで過激なことばかり言ってごめんなさいって言えば許してくれますよ」
ラディン「そうやな、今回はとりあえずあやまっとこか」
部下2 「師匠!!ブッシュが師匠捕まえる言うてますよ!!しかも死んでても生きてても!」
ラディン&部下「ブッシュキレれてるよ!!!」
>>51 光り輝くワープホールの中から火の鳥のような影が飛び出した。三羽の火の鳥は巡航艦に突っ込んで来ると、
船首手前でヒラリと身を翻し、四方に展開した。それからその内の一機は大きく旋回すると、鈍重な巡航艦の
尻に回り込む。そして腹に抱いた魚雷に点火すると、すかさず発射した。流線型の魚雷はロケット炎を噴射しながら
まっしぐらに巡航艦に突き進むと、巨大な噴射ノズルに飛び込み、エンジンルームの中心まで突き刺さった。
そして数秒のタイムラグの後、遅発信管によって魚雷は大爆発を起こした。無数の超高速の破片が一瞬で
バラス人のクルーを薙ぎ倒し、船内構造物をグシャグシャに破壊した。
他の二機は巡航艦を通り過ぎると、まっすぐファイアーバードに向かってくる。その機体は一世代前の旧式宇宙機で、
ブーメランのような形をしていた。ブーメラン機はレーザー機銃を乱射しながら、急接近して来る。
バラス人はリュウの背後に駆け寄ると叫んだ。
「何してる、迎撃しろ!」
リュウは操縦桿を握り締めると、ブーストペダルを蹴っ飛ばすように踏み込んだ。別に加勢する義理はないが、
向かって来る以上、戦わざるを得ない。
ファイアーバードの尾部から、巨大なプラズマ炎が吐き出された。
ファイアーバードの尾部から巨大なプラズマ炎が吐き出された。
リュウたちの乗る鋼鉄の塊は、推進剤の猛烈な圧力に押され、驚くべき反応の良さで
スタートダッシュをかける。リュウは叩き付けられるような衝撃を受けると、強烈なGで全身を
シートに押さえ付けられた。愛梨も歯を食いしばりながらしなやかな身体をシートに張り付かせ、
巨躯のバラス人たちも船内各所で後方へ吹っ飛ばされた。さしものバイアスもシートのヘッドレストに
かじりつくので精一杯のようである。
ファイアーバードはブーメラン機に猛進すると、敵の発するレーザーを全身に浴びながら、超高速で
すれ違った。あっという間に敵機が遥か後方へ置き去りにされていく。
リュウはスピードを緩めると叫んだ。
「レーザーを喰らった!損害は!」
愛梨は素早くディスプレイを確認すると、
「問題ありません。装甲の表面を焼いただけです」
二機のブーメラン機はスピードを落とすと、宇宙空間でピタリと静止した。それから静かに回転して
向きを変えると、再びエンジンを噴射させ、ファイアーバードを追い始めた。リュウはそれを見ると
舌打ちをして言った。
「身のほど知らずが。調子に乗ると痛い目に遭うぞ」
リュウはエンジンを逆噴射させると、ファイアーバードの動きを静止させた。それからボタンを押すと、
船体上部と下部にそれぞれ付いている小さな蓋を開放させた。すると穴の中から四連装のレーザー機銃塔が二基、
滑らかな動きでせり上がって来る。機銃塔はその首をクルリと振り向け後方に狙いを合わせると、レーザー砲の火を噴いた。
高出力のレーザーが遥か後方で敵機を捉え、その内の一機が一瞬にして青白い炎に包まれて木っ端微塵に粉砕された。
僚機は至近距離でその破片を浴びると、煙を吐きながらフラフラと傷付いた機体を必死で上昇させていく。しかし
冷酷なレーザー機銃はそれを見逃さず、火器管制システムによって割り出された的確な射線を送ると、
蝿を叩き落すようにして息の根を止めた。
その時、ブリッジでセムが唸った。
「ラーマが!」
巡航艦ラーマは全身を炎に包まれながら、不気味な煙をもくもくと吐き出し喘いでいた。各銃座がそれぞれ
各々勝手に射撃を繰り返しているのが、軍艦の悲痛な断末魔の叫びのようにさえ見えた。
その地獄絵図を背景にして、巡航艦の死神となった最後のブーメラン機のシルエットが不気味に浮き上がっている。
死神は一仕事終えて、ジッと宇宙空間に留まってその身を休めながら、静かにファイアーバードの方を窺っている。
愛梨はそのシルエットを見詰めながら言った。
「SOSはあの機体からです」
リュウは、してやられた、と思った。ワープアウト直前にSOSを発し、相手を惑わせておいてから、
通常空間に飛び出しざま奇襲をかける。これは劣勢のゲリラが大兵力に対する時の有効な戦法だった。
ラーマは装備は充実してるが、どちらかと言えば首都防衛のために温存されていた兵力で、場数を踏んでない
ところがある。そういった経験不足な艦に対して、ゲリラの戦法がものの見事にはまってしまったのだ。
愛梨はディスプレイを見ながら、
「信号が変わりました。メッセージを送っています」
リュウはブーメラン機を睨みながら、
「何と言ってる」
愛梨はリュウを見ると少しためらった様子を見せた。リュウはニヤリと笑うと、
「原文ママでいいぞ」
愛梨はディスプレイに目を落とすと、通信文を読み上げた。
「『クソッタレのバラスめ。裏切り者のケツにぶち込んでやった。くたばれトカゲ野郎』」
リュウはバラス人を振り返った。バイアスは牙を剥き出して獰猛な唸り声を上げながら、
今にもガラスを突き破って敵機に襲い掛からんばかりの形相をしている。
ブーメラン機はユルリと向きを変えると、急発進して去って行こうとする。リュウは冷たく笑うと、
「逃がすか。拷問でも何でもして、洗いざらい吐かせてやる」
リュウは重力制御でもって船の向きを変えると、ペダルを押そうとした。しかしその時、バイアスの
巨大な手がリュウの肩を掴んだ。バイアスは口を開くと、
「放っておけ」
「?」
「バラスの仇はバラスが取る。地球人の手は借りん」
リュウは物凄い握力で肩を締め上げられて呻くと、バイアスの顔を見上げた。その五つの眼は押し殺した
怒りに爛々と輝いている。バイアスは続けて、
「それより救助が先だ。船を寄せろ」
リュウはガラスの向こうで燃え上がる巡航艦とバイアスの顔を見比べると、
「まさか!本気じゃないだろうな」
巡航艦の乗員は恐らく千を下るまい。それだけの人員を収容できるスペースなど、この小型艦に
あるはずもなかった。非情かも知れないが、見捨てるしかないだろう。リュウは言った。
「寄せたら共倒れになるぞ」
バイアスは苦渋に満ちた口調で、
「艦長だけでもお救いする」
「もう手遅れだ。あきらめろ」
バイアスは無言で腰のホルスターに手をやると、レイガンを引き抜いた。そして銀色に光る銃口を
リュウの首筋に押し付ける。
「忌ま忌ましいべム公め。船首を戻せ!」
バイアスは眼を血走らせ、牙を剥き出して迫った。リュウは脂汗を流すと、チラリと隣りの愛梨に目で合図する。
愛梨はその意図を悟ると、シートの下部に付いたボタンに素早く手を伸ばした。ここら辺は阿吽の呼吸だった。
ボタンが押された瞬間、ブリッジのダクトからグリーンのガスが一気に噴出し、一瞬で室内を満たした。
バラス人は不意を突かれると、ガスを吸い込んで激しく咳き込んだ。催眠ガスが速やかに巨大な肉体の隅々まで浸透すると、
エイリアンは轟音を立てて床に倒れた。
リュウは素早く床の蓋を開くと、非常用ガスマスクを顔に被った。そして振り返ると、意識を失って倒れている
バラス人二人を眺めた。同じような光景が船内の各所で見られてるはずだった。船内を隈なく満たしたガスは
船を巨人の兵隊たちから完全に開放したのだ。
リュウは愛梨に向き直ると、
「敵は?」
愛梨はマスクも付けずに、平然とガスの中で作業をしている。
「追尾不能です。完全に振り切られました」
ガラスの向こうの宇宙空間の闇では、炎と煙に包まれた巡航艦ラーマが巨体をよじらせながら、
最期の時を迎えようとしていた。
>>53 >>54 >>55 率直な意見、非情にためになります。これからもズバズバ言ってくだされば助かります。
「面白い」ってなんだろう・・・鬱だ
つづく
なんとなく古いんだよねーーー。
レンズマンの時代みたいな感じなの。あなた年いくつ?
数時間後、バラスの兵隊たちは船内の一室に集められていた。先刻、船内各所で見張りに立っていたバラス人たちは
ガスの注入によって揃って眠りにつかされていた。リュウと愛梨は彼らが意識を失ってる間に、強化鋼のワイヤーで
全員を縛り上げ、カートに乗せて一人一人運んでいった。それは大変な重労働を伴い、十一人全員を運び終わった時には、
リュウは通路に大の字に倒れ込んだものだった。やがてバラス人たちが意識を取り戻すと、リュウは彼らと再び対面した。
バラス人たちはリュウが自動ドアを開けて入って来ると、シンと静まって視線を向けた。リュウは全部で五十近くある
光る眼に見詰められ、全身が総毛立つのを覚えた。ワイヤーで縛ってあるとは言え、目の前にいるのは地球人の首など
片手で軽々と引っこ抜く怪力を持った、怪物の群れだった。リュウは内心の動揺を悟られないよう努めながら、先頭で胡座を
かいているバイアスを見詰めた。そして深く息をつくと、
「さて。何から始めればいいのか。色々あり過ぎて雲を掴むようなんだが」
バイアスは黙ったままリュウを見ている。胡座をかいているにも関わらず、その視線は立っているリュウの視線と
ほぼ同じ高さにあった。バイアスは素っ気無く言った。
「殺せ」
「悪いが今すぐ死なれちゃ困るんだ。聞きたいことが山ほどある」
バイアスは能面のような無表情を装っている。しかしその虹彩のない五つの眼は生来の獰猛な光を宿していた。
それはインパラを狙って身を潜める時のライオンの眼差しに似ていた。リュウは本能的に圧力を感じると、
それに押されるかのように口を開いた。
「巡航艦のことは残念だった。しかしああする以外方法はなかったはずだ」
「白々しくほざくな、下衆の地球人め。貴様に俺たちの気持ちが分かるか?千人の同胞を何もせず見殺しにした
気持ちが」
セムが唸った。
「彼らは長年苦楽を共にした仲間だった。この屈辱は永遠に忘れない。必ず奴らを銀河の果てまで追い詰めて、
皆殺しにしてやる」
リュウは黙って聞いていたが、やがて、
「奴らとは?」
セムは不意に口をつぐんだ。
「客船を襲ったという海賊のことか」
セムは横目でバイアスを窺った。しかしバイアスは何の躊躇もなく告げた。
「そうだ」
「何者なんだ」
「知ってどうする。口出し無用と言ったはずだ」
「悪いが、これからの俺たちの命に関わる話だ。情報は知っておかないとな」
リュウとバイアスの視線が激しく火花を散らす。やがてバイアスは口を開いた。
「『デューク』を知っているか?」
「『デューク』を知っているか」
バイアスは言った。リュウは眉をひそめると、
「知るも知らないもない。銀河一の海賊として名高い男だ。確か連盟本部で、特Aクラスの指名手配犯に
認定されてたはずだが」
「連盟だけではない。裏の世界からも莫大な賞金首をかけられている。それこそ小さな惑星なら一個くらい
買い取れるほどの額だ。奴はどの組織にも属さない一匹狼で、小勢力ながらマフィア共とも互角に渡り合い、
何度も煮え湯を飲ませている」
バイアスの五つの眼が鋭く細められる。
「奴の正体について知る者はほとんどいない。出身星系、種族、年齢、性別いずれも不明だ。知られてるのは
デューク(公爵)という気取った渾名だけだ」
リュウも職業柄、デュークについては多少の知識はある。とは言っても知ってるのは彼がこの数十年間に犯した
無数の襲撃事件の顛末だけだった。彼らが主に狙うのは多星籍企業の輸送船や、惑星政府の大金庫など、どれも
警備が厳重で容易にはいかない獲物ばかりである。それがデュークにかかると、いともあっけなく獲物がその手に
転がり落ちてしまうのだ。その犯行は常に司法当局の裏をかくもので、厳重な警備網のほんのわずかな間隙を突いて
行われ、その針の穴を通すような所業は芸術的とさえ言えた。余りにすべてを見越した計画ぶりから、
「彼は予知能力者ではないか」という噂さえ流れたほどである。
リュウは言った。
「そんな大物が、何の変哲もない一客船を襲った理由はなんだ。船には何を積んでいた」
「俺は陸戦隊の隊長とは言え、ただの一兵卒に過ぎん。お偉方なら何か知ってるかも知れないが、所詮蚊帳の外さ」
「妙な事も言ってたな。裏切り者とか」
「さあ。見当もつかん」
明らかに嘘を言ってる、とリュウは思った。しかしそれ以上追求するのを止めた。問い詰めたところで、
口を割る相手じゃない。
バイアスはぶっきらぼうに言った。
「知ってることは喋った。俺たちはこれからどうなる?エアロックから外に放り出されるのか」
リュウは見返すと、
「殺すつもりはない。どこか近くの惑星に降りてもらうことになる。救助は呼んでやるから安心しろ。
条件として今後俺たちの行動に一切干渉しないということだ」
「スパイめ」
セムが毒づいた。リュウはあえて肯定も否定もせず出て行った。
リュウはブリッジに入って来ると、愛梨の席に近寄った。
「巡航艦はどうなってる」
「センサーで熱源を走査してみましたが、火災に関しては一段落したようです。
ただし依然として不安定な状態は続いています」
ディスプレイにはサーモスタッドで巡航艦の温度変化が色分け表示されている。
「生存者は」
「生命反応はゼロ。全滅と見ていいでしょう。脱出者がいた形跡もありません。
恐らく魚雷が命中した際、破片が反応炉のシールドを突き破ったものと思われます。
その時、瞬間的に艦内は灼熱地獄となり、瞬時に乗員すべての命を奪ったのではないでしょうか」
リュウはガラスの向こうの宇宙空間でひっそりと静まり返っている巨大な残骸を見やった。それは
残酷な運命を迎えたバラスの千の兵員の骸を乗せた、誰に詣でられることもない墓標だった。
リュウの胸の中で良心がうずいた。しかしリュウは決してそれに拘泥することはない。その三十年余りの
過酷な人生を通じて、重要なのは考えることではなく、今やらなくてはならない事をうやることだ、と
リュウは骨の髄まで叩き込んでいた。後悔にくれるのはあの世に行ってからでも遅くない、それよりも
現実は待ってくれないのだ。
愛梨は横でリュウの横顔を見詰めている。リュウは顎を撫でると、言った。
「乗り移ろう」
「え?」
「巡航艦にだ。何かの手がかりが掴めるかも知れない」
愛梨は大きく目を見開いた。
>>65 歳は・・・
一応二十代ですが・・・
つづく
どーもロボ子が人間っぽ過ぎる気がするな。
慌てた口調になったり歯を食いしばったり。
ヤバクなればなるほど、表情みたいな人間
との円滑なコミュニケーションの為の演出
処理をする余裕が無くなって、無表情に
なりそうな感じがするのだけど。
なんか、ただのスーパー雌奴隷にしかみえん。
73 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/10/13 04:19
正直、まだ続いていたとは驚きだ。
74 :
知ったかぶりでし:01/10/13 05:23
台詞がありふれたものっぽい。もうひとひねりした表現がほしい。
>>「さて。何から始めればいいのか。色々あり過ぎて雲を掴むようなんだが」
この場合、雲を掴むような・・・という表現は適切ではないとおもいます。
せっかく作者が下げ進行にしてるのにageるなよ。
ここ、おもしろいね。みんなのツッコミが(笑
77 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/10/15 05:50
まだ続いてたのか・・・・。
毎回毎回出だしの文章がリュウは、リュウは・・・・
ってなってるのに気づかない?
キホンだろキホン。
あとさー宇宙海賊とか安易にいってるけど
それって共通語ですか?
ありもんばっかしでやってるから古いしありきたりなんだよ。
ネーミングセンスからして既に才能ないんだから
もうやめれ。
ほんでも自分には小説書く才能あるんだ!と思うんだったら
新人賞にでも送ってきちんと評価を受ければよかろう。
はっきりそう言われる度胸がないから、こんなとこでやっとるんだろ?
あとSF以外の小説も読めよ。
文章下手過ぎ。
「乗り移ろう」
「え?」
「巡航艦にだ。何か手がかりが掴めるかも知れない」
愛梨は目を大きく見開いた。それから首を横に振ると、
「危険です。お止めになった方が」
「二次爆発の可能性は?」
「34パーセントです」
「微妙だな」
リュウは頭を掻くと、
「外部から衝撃が加わればドカンといくだろうが、それさえクリア出来れば、潜り込むのに問題はないだろう」
愛梨は主人の言うことを聞いていたが、やがて口を開くと、
「私は反対です。援軍を呼ぶべきです。もともと予定外のハプニングだったのですから」
「分かるが、このまま何もせず地球に引き返すというのもな。ここまで関わった以上、やれる範囲でやってみたい。
それにデュークに借りを返さないと」
リュウは目を光らせた。
「こっちも収まりがつかない」
愛梨は頷いて見せると、
「分かりました。それなら私が行きましょう。そのような役目はアンドロイドの私の方が適任です」
「愛梨にはここからナビゲートして欲しいんだ。情報を送るからここのシステムで分析頼む。危険があるようなら
すぐ退去する。いいな?」
愛梨は黙り込んだが、やがて翻意させるのは無理と悟ると、目を伏せて言った。
「了解しました」
リュウは愛梨の美しい横顔を見やった。気のせいか、その表情が曇ってるように見える。愛梨との付き合いは
一年余りになるが、最初の頃に比べると、女アンドロイドは随分と生身の人間らしく振舞うようになっていた。
余りに仕草や表情が自然で、外見だけで区別のつく者はいないだろう。
リュウは手を伸ばすと、愛梨のつややかな黒髪を撫でた。
「不満か?」
リュウは言った。愛梨はリュウに触れるに任せながら、静かな口調で、
「意見するのもパートナーの仕事です」
「・・・」
「私の使命は主人の生命を守り、いざという時には自分の身を投げ出すことです。私の頭脳にはそれしか
プログラムされていません。また、その事に何の疑いも持ちません。人間風に言うなら、そうすることに
『喜び』を感じるのです」
愛梨は顔を上げると、無表情で、
「主人に危険を回避するよう促すのは当然ですが、一度決まった以上はご命令に従います」
リュウは愛梨の頬に手を添えると、ゆっくり顔を振り向けさせた。愛梨は大きな黒い瞳でこちらを見上げている。
アンドロイドに感情なんてあるのだろうかと疑問を持ちつつも、リュウは優しく声をかけた。
「心配するな。すぐ戻って来る」
リュウは顔を接近させると、その唇を重ねた。愛梨はうっとりとした表情で、人口樹脂製の柔らかな唇の隙間から
甘い呻きを漏らす。いい女だ。リュウは改めて思った。
ファイアーバードは巡航艦の残骸から数百メートルまで接近すると、位置を固定した。
リュウは色鮮やかな真紅の宇宙服を着込むと、エアロックに入る。ヘルメットを被ると、壁の
モニターテレビを通じてブリッジの愛梨に合図を送る。愛梨は扉を開放した。
エアロック内の空気が吸い出されると同時に、リュウの体は勢い良く船外に飛び出した。リュウは
腰のレバーを操作して、バックパックに付いたノズルからガスを噴射させると、無重力状態の中、
泳ぐようにして姿勢を立て直し、体の正面を巡航艦に向けた。
リュウはヘルメット内の通信マイクを使うと、母船の愛梨に声をかけた。
「座標確認」
「問題なし」
「一時間ほどで戻る。帰ったらコーヒーを淹れてくれ」
愛梨の含み笑いが電波を通じて伝わってくると、リュウは白い歯を見せた。そして再びレバーを操作すると、
ノズルを噴射させた。
眼前に巡航艦の巨大な横腹が断崖のように迫ってくる。悪魔の城のような巡航艦は一見、さしたる
大きな損害を蒙ってないようにも見える。しかしよく見ると、外壁のあちこちに内側から破られた穴が
開いており、穴からは不気味な煙の筋が依然として立ち昇っていた。そして頭上の艦橋タワーは
先制攻撃のためにグシャグシャに破壊されていた。
リュウは目標にしていた穴に接近して行くと、奥の暗闇の中へ進み、巨鯨の体内へと消えて行った。
一方、ファイアーバードの一室。バラス人たちが閉じ込められてる部屋で、異変が起きつつあった。
バラスの巨人たちは手足を強化鋼ワイヤーで縛られ身動きの取れないまま、頭を突き合わせてヒソヒソと
相談事をしている。やがてその内の一人が他の者を制する素振りを見せ、皆の目がその一人に集中した。
比較的小柄な、と言ってもバラス人としてはという意味だが、小柄で腹の出たそのバラス人はゲップを
一度すると、精神を集中するように三つの目を閉じた。それから丸く盛り上がった腹をうねうねと波打たせると、
鋸状の歯が並んだ大きな口をカッと開き、呻き声を上げながら頭を上下に振り始めた。他のバラス人たちが
注目していると、男の喉の奥から白くて小さなものが伸び上がってくるのが見えた。手だ。白い手はバラス人の
下顎の歯に小さな指を引っ掛けると、さらに喉の奥から自らの本体を引きずり上げ、同様に白い小さな頭を
のぞかせた。バラス人は声を上げると、「それ」を床に吐き出した。
床に転がり落ちた「それ」は、伸張30センチくらいで、人の形をしていた。全身は白く、粘膜で覆われていて、
頭は全体の寸法からするとかなり大きめだった。顔の半分を占める大きな目は鮮やかな緑色で、その下に
小さな口と鼻の穴が申し訳程度についている。
白い小人は顔を上げると、自分を吐き出した宿主のバラス人を見上げた。腹の出たバラス人は非常に原始的な
言葉を使って、小人に話しかけている。小人は笛のような声を出すと、バラス人と何度か言葉を交わした。
それから渋々と言った様子で腰を上げると、壁へ向かって歩き始める。その先には、床近くに設定された
小さなダクトがあった。白い小人はバラスの大男たちの視線を背に浴びながら、ダクトの格子を器用に外すと、
その中にノロノロと潜り込んだ。そして奥へ奥へと進むと、先の闇へと姿を消して行った。
その頃、リュウは巡航艦の内部に潜入していた。船内のあらゆる設備は、体の大きなバラス人向けに、
サイズが大きく造られている。通路も広く取られていて、リュウは巨人の国に迷い込んだような
錯覚を覚えた。
リュウは人口重力の切れた無重力状態の通路を音もなく進んで行く。灯火が完全に消えてしまってる
ためか、一見、艦内は荒れてるようには見えず、致命的な破壊が行われたようには見えなかった。
しかし時折、通路の曲がり角の暗闇から、焼け焦げたバラス人の死体が流れて来て、リュウをギョッと
させた。バラス人の死体は完全に炭化していて、その真っ黒いグロテスクな様は、昔話に出て来る、
魔女が調理したイモリの黒焼きのようだった。リュウは悲鳴を飲み込んで動悸を激しくさせると、
気を取り直して奥へと進んだ。
しばらく行くと、正面にエレベーター口が見えて来た。扉は開いたままになっている。
リュウは前に立つと、中を覗き込んだ。籠はなく、正方形の暗い竪穴が船体を上下に貫いている。
リュウは遥か下層の闇を見通しながら、通信機を使った。
「愛梨、この下はどうなってる」
通信機を通じて愛梨の声が伝わってくる。
「走査してみましたが、反応がありません。その先の区画はあらゆるセンサーの検知波を跳ね返しています」
「思った通りだ。この下は集中防護区画だな」
リュウは唾を飲み込んだ。
「多分メインコンピューターもこの下だ。うまくいけば収穫が得られそうだぞ」
「可能性はあります」
「降りてみよう。しばらく通信が途切れるからそのつもりでいてくれ。二十分で戻る」
「お気をつけて」
リュウはエレベーターシャフトに入ると、下層の闇へゆっくりと降下していった。
ファイアーバードでは、虜囚のバラス人たちがジッと息を詰めて何かを待ちわびていた。しばらくすると、
どこからともなくカラン、コロンという金属音が序々に近付いて来た。耳を澄ませていると、音はどんどん
大きくなり、やがて壁のダクトから先程出て行った白い小人が再び顔を覗かせた。小人は出て来ると、穴に手を突っ込み
金属製の小さな物体を引っ張り出した。ハンドブラスターである。それはバラスの兵隊たちが武装解除された際に、
別室に装備をまとめて保管されていた内の一品だった。小人はダクトを通じてそれを持ち主に戻すという
重要な任務を見事にやり遂げたのである。
白い小人はハンドブラスターをバラス人の側まで引きずって行くと、抱えるようにして持ち上げ、腹の出た男の
手首に巻き付いたワイヤーに銃口を押し当てた。そして小人がトリガーを引くと、熱線がオレンジ色の火花を飛ばしながら
ワイヤーを断ち切った。
バラス人たちが歓喜の声を上げる中、男は小人から銃を受け取ると、足のワイヤーも切断して自由になる。そして立ち上がると
次々に仲間のワイヤーを切断していく。バラスの一個小隊11人は今や完全にその縛めを解かれ、本来の力を取り戻した。
腹の出た男はバイアスに恭しくハンドブラスターを手渡した。バイアスはグリップを力強く握ると、腕を前方に突き出し
部屋のドアの電磁ロック錠に狙いをつけ、トリガーを引いた。
>>72 一応こちらの「つもり」としては、読者が愛梨というキャラクターに感情移入するためには、
ある程度「人間的」である必要があるのではないかと考えました。最初は72さんのおっしゃるように
冷たい機械に徹しさせようと考えていたのですが、どうもリュウとの会話が味気ない情報伝達のみに
終始してしまって、退屈になってしまうのではという心配が出てきました。そこで驚いたり、
歯を食いしばったり等の生身な反応を出来るだけ入れてみようと思ったのです。
アンドロイドという設定からするとかなりおかしいのですが、「辻褄」と「感情移入」の二者択一で、
「感情移入」を選択してみました。ただ、72さんの指摘されたアンドロイドとしての匂いは完全に消さず
最低限のラインは守って行こうと思ってます。
(ちなみに今回については、愛梨の描写はより人間的になってます)
>>74 耳が痛いです。「ひねった台詞」を使ってみたいとは思ってるのですが、こればっかりはセンスが必要で。
僕の場合「ひねった」つもりが、ただの「クサイ」台詞、「寒い」台詞に化けることが多いんです。
「クサくて寒い」台詞を書くくらいなら、「ありきたりでストレート」の方がまだマシだという感じで
逃げに出てしまう。ですがやはりそこら辺は74さんのおっしゃる通り、頭を使う努力をせねば
と思ってます。
あと例文に関してですが、確かに変です。ただ、どう直せばいいかが分からない。
>>73 応援して下さい
>>75 いや・・・たまに上げて貰っても嬉しいですが・・・
>>76 突っ込みあった方が嬉しい
>>77 シビアな意見、ありがとうございます
つづく
ところで、ダッチワイフをしみじみ眺めるリュウたんってやっぱメカヘチですか?
漏れの想像では、腹違いの姉が12人程居て、生身の女性には辟易したものと…。
ブリッジに警報ブザーが鳴り響く。
愛梨はハッとして作業の手を止めると、パネルを操作してスクリーンを船内モニターに切り替えた。
スクリーンに映ったバラス人たちが通路を駆けて来る画像を見とめた次の瞬間には、ブリッジ後方の
自動ドアがシュッと開いていた。振り返ると、入り口にバイアスとその部下が傲然と立っている。
愛梨は反射的に操作台の下に置いてあるレイガンに手を伸ばした。それは完璧なタイミングだったが、
バイアスはそれをさらに上回るスピードでハンドブラスターの狙いを付け、トリガーを引いた。
オレンジ色の火線が空気中を走り、愛梨が素早く腕を上げようとした瞬間、その手に握られていたレイガンを
弾き飛ばした。レイガンは床に落ちると、溶岩のように、熱せられてブスブスと燻っている。
しかし、愛梨の次の判断も素早かった。愛梨は席からバネのように飛び出すと、手を伸ばし壁の重力スイッチに
タッチした。次の瞬間、機械音と共に人工重力が切れ、船内は無重力状態となる。
バラス人たちは不意を突かれてバランスを崩し、その場に浮き上がった。愛梨はそれを見逃さず、入り口に
ダッシュすると、バラス人に肩で体当たりした。バラスの大男たちは全員が巻き込まれるようにして、通路の壁まで
ゆっくりと吹っ飛んで行く。愛梨はその隙間を縫って通路に飛び出すと、通路の壁を蹴って、素早くジグザグに
進んで行く。
バイアスは大声で部下たちに怒鳴った。
「逃がすな!何かしてくる前にスイッチを切ってしまえ!」
バラスの兵隊たちは体勢を立て直すと、無重量状態の中、泳ぐように愛梨の後を追い始めた。
愛梨は通路を飛ぶように進んで行く。
前方に曲がり角が見えて来る。愛梨は無重量状態の中、両腕で膝を抱えると、体をくるりと前方に一回転させた。
そして両足をピンと伸ばすとそのまま前方の横壁につま先で着地し、さらに三角飛びの要領で壁を蹴ってコーナーを
回ろうとした。素晴らしい運動神経だった。
ところが角を曲がった瞬間、愛梨の目前に突如バラス人の巨大な体が壁となって現れた。あらかじめ待ち伏せをしていた
バラス人は両腕を突き出すと、止まれずに飛び込んで来た愛梨の胸元を突き飛ばした。愛梨の身体は吹っ飛んで行き、
向かいの壁にぶつかってバウンドする。バラス人は、ドッジボールのように跳ね返って来た愛梨の身体を、腕を大きく広げて待ち構え、
厚い胸で受け止めた。さらに太い腕で抱き締めるようにして掴まえようすると、愛梨は咄嗟にベルトのボタンを押し、
ゴールドの船内服をスルリと脱ぎ捨て、バラス人の懐から天井方向へとすり抜けた。抜け身の術にかかったバラス人は
大きく前方につんのめる。
愛梨はレオタード型のアンダーウェア一枚の姿になると、再び元来た道を戻り始める。しかし、後方から追いついて来たバラス人たちと
鉢合わせしそうになると、愛梨は立ち止まり、首を上に向けた。天井には、タラップ付きの竪穴の入り口が開いている。
愛梨はバラス人が飛びかかって来た刹那、両膝を素早く折り畳むと床を強く蹴り、竪穴を貫くようにして急上昇して行った。その先は
非常用エアロックのはずだった。
その時、ブリッジで船内モニターを見ていたセムが、壁の重力スイッチをオンにした。瞬間、船内に物の重さがよみがえる。
愛梨は空中で突然ピタリと静止すると、物凄い勢いで重力に引っ張られ、竪穴を真っ逆さまに落ちて行き、鋼鉄の床に背中から
叩き付けられた。
-----完-------
バラス人たちは倒れている愛梨を取り囲んだ。
愛梨は激しいダメージを受けて立ち上がれないでいる。弱々しく呻く愛梨を見下ろしながら
バラス人たちは頷き合うと、一斉に愛梨の身体に飛びかかった。
愛梨の長い両手両足を押さえ付けると、そのしなやかな肢体を包んだアンダーウェアを引き裂きにかかる。
レオタードが縦に裂け、その内側の、白く滑らかな肌がバラス人たちのギラギラ光る複眼の下にさらされた。
愛梨は背を弓なりにそらせ、盛り上がった美しいバストを突き出しながら、屠殺される寸前の家畜のように
全身を激しく動かして抵抗する。バラス人は暴れる愛梨に苛々しながら、
「スイッチはどこだ」
その鈎爪のついた、合わせて八本の指で女アンドロイドの身体のあちこちをまさぐったが、
それらしい突起、部分はない。その時、愛梨の長い脚がバラス人の顔をキックした。バラス人は呻くと、
六つの眼を血走らせて叫んだ。
「面倒臭え、首を引っこ抜いちまえ」
言うと、一人に愛梨の両肩を押さえさせ、その小さな頭をがっちりと掴まえた。
「面倒臭え、首を引っこ抜いちまえ!」
バラス人は叫ぶと、他の一人に愛梨の両肩を押さえさせ、その頭を両手でがっちりと掴まえた。
そのまま力まかせに縦方向に引っ張り上げる。愛梨は悲鳴を上げた。セラミック製の頚椎がゴキゴキと
破壊される音が響くと、愛梨はその大きな目をカッと見開く。次の瞬間、愛梨の首は胴体から物凄い勢いで
引っこ抜かれた。
愛梨の胴体は突如伊勢海老のように跳ね上がって、押さえていたバラス人たちを吹っ飛ばすと、
首がもげた部分の穴からセラミックフレームやコード類をはみ出させながら、その場に立ち上がり
狂ったバレリーナのように回転し出した。頭のない美女の胴体は、両手両足をバタつかせると、急に停止し、
そのまま勢い良く後方へ引っくり返った。そして床の上で背を弓なりにしてビクビクと痙攣すると、
ようやくにして静かになった。
バラス人はシンと静まり返った通路で肩で息をしながら、引っこ抜かれた愛梨の「生首」を見た。
「手こずらせやがって」
愛梨はその唇をわずかに開き、目は見開いたまま虚空を凝視している。その頭蓋骨の中に入った電子頭脳は、
もはや何も考えてはいない。愛梨の綺麗な顔は何の表情も浮かべず、自分の身に加えられた最悪の陵辱にも
何も感じるところはないようだった。
愛梨は凍り付いたデスマスクを保ったまま、ただ人形のように沈黙していた。
首を抜かれたら「ほよよー」とか喋って欲しかった。
97 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/10/23 03:40
-----完-------
>>1 つづきはぁ?ネタ切れか?
気長に待ってるからがんばれ。
愛梨が機能を停止したその頃、リュウは巡航艦のエレベーターシャフトの最下底に到着していた。
50メートルは降りたろうか、天を見上げると、遥か遠くに、入り口から差し込む星明りがぼんやりと
映って見える。
最下底では、深海のような暗闇の中、分厚い鋼鉄の扉が半開きになっていた。リュウは巨大な扉に近付くと
人間の力ではビクとも動かない重い扉の隙間に体をねじ入れた。
扉の内側に侵入すると、そこは暗いホールになっていた。床も壁も鏡面のように磨き上げられ、黒く底光り
していて、明らかに艦内の他の部分とは違う特別な造りになっている。いわゆる「集中防護区画」とは、その
艦の特に重要な機能中枢を外部からの攻撃から守るため、その部分の周りだけ特別に厚い壁で覆う方式であり、
いわば艦内シェルターのようなものだ。リュウはホールの高い天井を見上げると、厚さ数メートルはある、
滑らかな床板に歩を進めた。靴音がホール内に高く反響する。辺りはカタコンベのような、死の静寂に包まれていた。
リュウは無人のホールに歩を進めた。
正面の壁、リュウの顔の高さのあたりに、細いスリットのような穴が穿ってある。リュウは壁に近付いて
穴に顔を寄せると、ヘルメットのバイザー越しに視線を壁に這わせた。注意して見ると、スリットを中心にした
周囲に大きな長方形の形に、細い継ぎ目のような「筋」が引いてある。
リュウは拳骨を握ると、壁を軽く叩いた。それからヘルメット越しに反響を拾ったところ、継ぎ目の内と外で
明らかに音が違っている。間違いない。そこは精巧な造りの扉だった。そしてスリットは鍵穴である。壁の向こう側には
隠された空間が開けていて、そこにはメインコンピューターが控えているに違いない。
リュウはおもむろに腰のポケットから、長さ20センチ、厚さ5センチくらいの長方形の箱を取り出した。
銀色に光る金属製の箱は、一見どこにでもある携帯ラジオ機にしか見えない。
しかしこの「箱」にこそ、地球がわずか百年余りの内に宇宙の広大な領域を征服し、銀河の列強まで
上り詰めることを可能とさせた、その究極の秘密が隠されていたのである!
リュウの持ち出した「箱」は正式名称を、「特殊任務用携帯式超高速無限演算処理装置」と言い、
通称「万能キイ」と呼ばれている。また工作員の間では「魔法の杖(ロッド)」と呼ばれることも
多かった。
「万能キイ」はその名の通り、このありとあらゆる扉の鍵を解除し、またありとあらゆる種類の
コンピューターに侵入してしまう。その成功率は百パーセント以上を誇っていて、事実上万能キイの
ハッキングに対抗する手段はこの宇宙には存在しない。それは地球人がその歴史において何千年にも
渡って積み上げてきた崇高な英知の、最後の結晶とも言うべき品物だった。人類はこの箱を生み出す
ために、その文明を営んできたと言っても過言ではない。エジプトのピラミッドも、広島の原爆も、
全てはこの「万能キイ」を生み出すための伏線だったのだ。
少しでも事情を知る者であれば、地球人が有する最も恐るべき力は、何千隻にも及ぶ宇宙艦隊でも
なければ、銀河中からかき集めた気の遠くなるほどの莫大な富でもなく、この何の変哲もない小さな箱だと
答えるはずだ。なぜなら、万能キイの力によって銀河系の列強国の企みは全て筒抜けとなり、地球側は
常に先手先手を打つことが出来たのである。実際そのようにして、地球艦隊は何度も自軍の数十倍の兵力を
持つ強大な敵を打ち破り、撃滅してきたのだった。
地球政府関係者も万能キイの重要性は強烈に意識しており、その管理は厳正を極めていた。万能キイは
秘密工作員の中でも特に選ばれた優秀な者にしか所持を許されない。その箱には通しのシリアルナンバーが
刻まれていて、誰がどの番号の箱を持っているかは本部で常に把握されていた。ちなみにリュウのシリアルナンバーは
「0108」である。
万能キイにはニュートリノ式ビーコンが仕込まれていて、理論上は何万光年離れた場所に置き忘れられても
その位置を確認出来る。また外部から分解しようとすると、内蔵された小型原爆が爆発する仕組みになっていて、
その中身は完全なブラックボックスとなっていた。
このような厳重な管理の元に置かれている万能キイだが、それでも過去において、それを盗んだり、あるいは
仕組みを探ろうとしたりと言った試みが数々なされてきたことは言うまでもない。しかし、そのような試みをした者は
百パーセント以上の確率で抹殺された。しかもその制裁は犯人本人だけでなく、直接関係のない親類や知人にまで及んだ。
地球政府はこの件に関しては寛容を知らず、容赦がなかった。
リュウが手にしてる箱は、言わば地球人の血みどろの歴史のシンボルそのものだった。しかし今はそんなことは
全く意識していない。リュウの頭の中にあるのは、この便利な道具で目の前の扉を開けることだけしかなかった。
リュウは「箱」を壁に向かって突き出すと、側面についてるボタンを押した。すると箱の先端から二股の電極のようなものが
スルスルと伸びてくる。電極は壁のスリットに首を突っ込むと、青色に発光し始めた。ブーンという機械音が低く鳴り、
しばらく待つと、目の前の分厚い壁の中からガチャガチャと騒々しくメカが動く音が響いてきた。それから壁は低い唸りを
上げながら横にずれて行き、入り口を開放した。
何ともあっけない光景だった。リュウは隠し部屋に足を踏み入れた。
疲れた。ちょっと休憩。
リュウは隠し部屋に足を踏み入れた。
予想通り、そこは巡航艦の中央制御室であり、広い部屋の中央にはメインコンピューターが大木のように
そびえている。室内は非常灯の赤い光にぼんやりと照らされていて、コンピューター自体は予備電源によって
かろうじてその機能を保っていた。そのランプの明滅が、コンピューターが自分はまだ生きている事を、周りに
自己主張してるように見えた。
リュウはあたりを見回して、トラップが無いことを確認すると、コンピューターの操作台に近付いた。そして
台の前に立つと、パネルを操り、ディスプレイに記憶回路のマップを映し出していく。そして、ここからはどうしても
侵入出来ないという怪しいエリアを発見すると、再び万能キイを取り出し、操作盤のジャックに電極を差し込んだ。
先程よりは若干時間がかかったものの、それでも数十秒の内に、プログラムのロックは難なく解除される。万能キイの
働きぶりはまさに現代の「魔法使いの杖」そのものだった。
画面に楔形文字のようなバラス語が流れた。バラス語で「最高機密」と表示されると、やがて画面に一人のバラス人の姿が
映し出された。どうやらこの男がキーマンらしい。リュウは画面をのぞき込んだ。
画面に一人のバラス人の姿が映し出された。
手足の長い、スラリとした長身の男。地球人の目から見ると、鱗があったり、複眼であったり、
牙や鉤爪が生えてたりという異形の姿ではあったが、そのような種族の外見上の差異を超越して、
その物腰の柔らかさ、立ち居振舞いの紳士然とした立派さからは、普遍的な精神の高さ、強い意志を
感じさせる。男は学会らしき会場で、壇上に立ち、穏やかな口調、堂々とした態度で演説をしていた。
リュウはその姿に見覚えがあった。彼の名はポリーニ博士。愛梨が見せてくれたデータベースによると
彼はバラスにおける反体制派の代表的人物であり、穏健派だった。現在は国外に亡命、潜伏中であるらしい。
その知性と識見は銀河系でも随一と言われており、各国の学者、知識人から尊敬の念を持って見られている。
画面の中でポリーニ博士は聴衆から万雷の拍手を受けている。リュウはポリーニの、深い理知の光を
たたえた十三の眼に見詰められながら、万能キイのボタンを押すと、無限メモリーに秘密情報をインプットした。
船に帰って分析にかければ、重要な手掛かりになるのは間違いない。危険を冒して廃艦に潜入した甲斐があったと
いうものだ。
リュウは仕事を終えるとコンピューターに背を向け、部屋を後にした。無論、この時点では母船に異状が起きてる事など
知る由もない。
リュウはエレベーターシャフトを上昇して戻ると、入り口から顔を出し、通信機を使った。
「愛梨、聞こえるか」
返事はない。
「収穫があったぞ。どうした、愛梨?」
リュウは訝しげにヘルメットを叩いた。集中防護区画の厚い壁の外にはもう出てるので、電波が
届かないはずはない。通信機の故障かと首をひねると、リュウは通路に出て、元来た道を
戻り始めた。
リュウは侵入口の穴に辿り着くと、壁の外に広がる宇宙空間を見渡した。すると遠くの方から
ファイアーバードが、制動噴射をかけながら、ゆっくりと舷側をこちらへ寄せて来ようとしている
のが見えた。どうやらこちらの声は聞こえてたらしい。それにしてもリュウは、出て来る前に愛梨に、
爆発の危険から避けるため巡航艦からは離れていろと言い置いていたはずである。打ち合わせとは
違う行動を不思議に思うと、リュウは再びマイクを使った。
「愛梨、どうした。何があった」
しかし通信機は沈黙している。その間にもファイアーバードはリュウとの距離を縮めて来る。
百メートル、五十メートル・・・
するとファイアーバードの屋根についた蓋が不意に開き、中からパルスレーザー砲塔がせり上がって
きた。リュウがバイザーの中で目を見張ると、砲塔はクルリと首を振り、砲口をこちらに向け、
リュウに照準を合わせた!
リュウはレーザー砲に睨まれると、反射的に横に飛び退った。頭で考えるよりも前に、体の方が先に反応していた。
それは自身の生命を守るための、優れた動物的本能によるものだった。
高出力レーザーが火を噴く。至近距離から放たれた青白い光条は、寸前までリュウがその前に立っていた
鋼鉄の壁をチョコレートのように溶かし、一瞬にして艦の奥深くまで貫通した。リュウは衝撃で床に投げ出される。
鋼鉄の壁にドロリと大きな穴が空き、全体が紙のように燃え上がった。ファイアーバードの自動砲塔はキョロキョロと
首を振ってリュウの姿を再び視界に捉えると、今度は速射モードでレーザーガトリング砲を高速回転させた。一秒間に
数十発以上のスピードで光の弾丸が次々に撃ち出される。激しいマズルフラッシュに照らされながらリュウは、
瞬時の判断で腰のレバーをグイと引くと、ノズルを全開にしてガスを噴射させた。瞬間、リュウは一気に通路を端から端まで移動して行く。
しかしレーザー砲も素早くそれを追いかけた。レーザーは激しい火花を散らせて外壁を蜂の巣にしていきながら、間断なく一撃必殺の
殺人光線を送り続ける。リュウの背中に穴が開いたと思われた刹那、リュウは目前の曲がり角を回り込み、間一髪でレーザー光線から
身をかわした。
ファイアーバードは発砲を止めると、リュウを追って移動を開始した。
ファイアーバードは発砲を止めると、重力制御によるホバリングで、巡航艦の外壁に沿って横移動して行き、
追いすがって行く。
一方リュウは、曲がった所の通路を奥へ奥へと突き進んだ。ファイアーバードはその通路口の正面に出ると
リュウの背中に向かってレーザーを撃ち込んだ。しかしリュウも咄嗟に横壁の開いた船室(キャビン)の入り口に飛び込む。
青白いレーザーは獲物に身をかわされると、そのまま通路を直進し、突き当たりの壁に当たって弾けた。
リュウはヘルメットの中で荒く息をつきながら、キャビンの壁に背をピタリと貼り付け、ジッと動きを止めた。
その頭の中で思考が激しく回っている。攻撃? すると船は乗っ取られたということか? 愛梨はやられて
しまったのか? これからどうする? こっちは一人、向こうは屈強のバラス兵十一人に、最強の宇宙戦闘艇一隻。
勝ち目はあるのか?
船室内、リュウの目の前にバラスの黒焦げの死体が浮遊している。リュウはチラリと目をやると、片手でそれを引き寄せた。
そして船室の外を窺うと、死体を表通りに押し出す。黒焦げの死体が通路に流れ出た瞬間、青白いレーザーが嵐のように
飛んで来た。死体は一瞬で跡形も無く蒸発する。
すぐ脇でリュウはそれを目撃すると、カラカラの喉に唾を飲み込んだ。こうなりゃ我慢比べだ。そして腰のホルスターから
レイガンを抜いて体の前で構えると、背を壁にずり下ろしていき、床に尻をつけた。
長期戦になるのは目に見えていた。
>>96 しまった・・・
>>97 エロ小説、興味あるんで、その内覗いてみます
>>99 応援してくれる人が一人でもいてくれるというのは、本当に心強いです。ありがとう
今週は少し忙しくてあまり書けなかった
それにしても一週間で十三枚ぽっちというのも・・・うーん
つづく
・・・ていうか、文章読みづらいですか?イメージ、伝わってますでしょうか。そこらへんの所、聞かせて貰えればありがたいです
2ch的には改行幅が長いような気がするが。
半分にすると行数が増えてウザイかな。
で、リュウさんは何しに何処へ忍びこんだんですか?
がんばってるな〜と素直に思います。
が、これって直で書き込みですか? それとも別のところでまとめ書きしてからコピペ?
前の方で20さんが言ってましたけど、推敲しないと文章の上達は難しいと思いますよ。
文章ですが、いらない説明が多い気がします。もっと軽く出来ると思いますよ。
今、最初の壁にぶつかってます。大したプランも立てずに見切り発車したツケがジワジワと・・・
絵柄は見えてるのですが、それを支えるストーリーの辻褄合わせに苦労してます。
なんで、今週は悔しいですが進展なしです。週明けには何とかなりそうですが。
とにかく途中で投げることは絶対しないんで、数少ない読者の皆さん、もうちょっとお付き合い下さい。
よろしくお願いします。
>>112 >>113 お二方の意見をまとめると、やはり「文章が重い」ということになるんでしょうね。
当面の課題としたいと思います。
(リュウは地球政府の秘密工作員です。情報収集のため、異星人の宇宙戦艦に潜入しました)
115 :
犬宇宙の群狼 :01/11/03 01:22
宇宙戦艦が爆発四散したのはその時であった。
リュウとは別の地球政府秘密工作員の活躍の結果だ。
リュウは使い捨ての囮だったのだ。
もしもーし?
連載は終了ですか?
117 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/11/05 03:44
文章が重いってより、単調。
シナリオ読んでるみたい。直截的な物理情景描写ばっかなんだもん。
直前の「死体」の描写とか、「黒焦げの」としか描写してないじゃん。
これ、もっと装飾できるっしょ。蒸発するとこもしかり。
状況を見た目で説明してるだけだと飽きるよ。
これに作者か主人公の主観や感情を入れた文章にしないと。
もしかして、シナリオの勉強とかしてない?
オレも職業物書きなんだけど、シナリオ修行した後ってこんな感じの文章になっちゃう。
必要最小限のことしかかかなくなっちゃうんだよねえ。
全然ちがったらごめんね。
変なのが上がってるなあ。取りあえずsageでやってくれ。
>116 115は犬宇宙だよ。
以下、つっこみ。
>横に飛び退った 「飛び退った」は「後ろ」にしか使わんだろ。
レーザーガトリング砲?光の弾丸?マズルフラッシュ? 何じゃこれ?
レーザー砲台(銃座?)の回転より早く移動する主人公?
「曲がった所の通路」って今時翻訳でもつかわん「所」が何故ここに?
「レーザーは〜壁に当たって弾けた。」ってこのレーザーって
「一瞬にして艦の奥深くまで貫通」「外壁を蜂の巣」にするんじゃないの?
部屋の外から撃たれたら「長期戦になる」前に一瞬で終わるんじゃ?
「表通りに押し出す。」宇宙船の通路に「表通り」はないだろ…
「死体が浮遊している。」から無重力らしいが「背を壁にずり下ろしていき、床に尻をつけた。」
としたら反動はどうなる?
>電波が届かないはずはない。
おそらく金属製の宇宙船内部から外部に中継なしで電波が届くのか?
>制動噴射をかけながら 重力制御じゃないの?
>中からパルスレーザー砲塔がせり上がって 戦闘挺でなぜ砲塔を格納?
>学会らしき会場 で「現在は国外に亡命、潜伏中」の人間が演説?しかもそれが最高機密?
>あたりを見回して、トラップが無いことを確認 主人公は特殊な義眼でも付けているのか?
疲れた。この辺で止め。
ファイアーバードのブリッジでは、セムが重力シートに座り、操縦桿を握っていた。部屋には他に
バラス兵数人と、バイアスが中央で腕組みをして仁王立ちしている。
セムは三つの眼を鋭く細めて、計器類を確認している。その背に向かってバイアスが声をかけた。
「どうだ。バラスの船とは勝手が違うか」
セムはチラリとバイアスを見ると、
「操縦には何の問題もありません。むしろ・・・」
セムは口篭もる。間を空けると不承不承という感じで付け加えた。
「素晴らしくバランスがいい。ブレひとつありません」
セムは地球人の造った物を誉めるのが嫌で仕様がないといった風だったが、それでも率直に感想を
言った。バイアスは頷くと、
「この船は本国に持って帰る。技術省の役人どもに見せびらかしてやるさ。無能なくせにプライドだけは
高い、馬鹿な国粋主義者の鼻を折ってやる」
セムは黙り込む。彼自身、どちらかと言えば「馬鹿な国粋主義者」の方に、よりシンパシーを感じていた。
現実から目を背ける気はないが、その胸中は複雑である。
ブリッジのガラスを通して正面には、リュウが逃げ込んだ艦体中央に向かう通路の入り口が見えている。
奥の船室に身を潜めているらしく、動きは全くない。
バイアスは通路口をひと睨みすると、鋭い牙の並んだ口を開いて言った。
「上昇しろ」
セムは訝しげに尋ねる。
「地球人は?」
「捨てておけ。どのみち、どこへも逃げ出せはしないんだ」
セムは納得すると、シフトレバーを動かし、ペダルを踏んだ。ファイアーバードは滑らかに動き出すと、
ゆっくりと上昇を始めた。
ファイアーバードは巡航艦ラーマの艦橋タワーに沿って、ゆっくりと上昇して行った。そして悪魔の塔を
見下ろす位置まで昇りつめると、座標を固定した。
ブリッジにどよめきの声が上がった。船内各所で歩哨に立つバラス兵たちも、一斉に近くの窓に駆け寄り、
外を食い入るように眺める。
司令塔は完膚無きまでに破壊されていた。艦上構造物は高熱のビームによってドロドロに溶かされ、
崩れたソフトクリームのように周りに垂れ下がっている。敵機がワープ空間から飛び出しざまに放った、
先制の一撃によるものだった。
バイアスは低く唸った。その固く握った拳がブルブルと震えている。攻撃時、司令塔には艦長がいた。
死は瞬時に訪れ、苦痛を感じる暇もなかったろう。
「生命反応ゼロ」
セムが震える声で告げた。
「全滅です」
ブリッジは墓場のような静けさに包まれている。すると、どこか遠くの方でバラス人の叫び声が上がった。
それは巡航艦に乗り組んでいた友人を悼む、悲痛な叫びだった。
バイアスは司令塔の残骸を睨み付けている。その五つの眼が爛々と燃え上がっていた。
「・・・もういい。分かった」
バイアスは言った。その声音に恐ろしいほどの決意が込められている。バラス兵が見守る中、バイアスは
鋭く言い放った。
「船を沈める」
セムは振り返ると、驚いて言った。
「何と言われました?」
「船を沈めると言ったのだ、二度も言わせるな、セム! 作戦中だぞ!」
バイアスの怒気に満ちた野太い声が船内に響き渡った。
「船を沈めると言ったのだ、二度も言わせるな、セム! 作戦中だぞ!」
バイアスの怒気に満ちた野太い声が船内に響き渡った。一同はビクリと息を止める。セムは凍りついたが
しばらくしてから落ち着いた口調で尋ね直した。
「隊長、理由をお聞かせ下さい」
バイアスは若い副官を睨み付ける。しかし、しばらく考え直すと、やがてゆっくりと口を開いた。
「あれはバラスの最新鋭艦だ。このまま野晒しにしとく訳にはいかない。機密保持のため、沈める必要がある」
「分かりますが、せめて本国に連絡を」
バイアスはセムの言葉を遮ると言った。
「それが出来るものなら、とうにやってる。お前も分かってるはずだ」
セムは沈黙する。バイアスは強い口調で続ける。
「本国の将軍どもは皆、敵だ。現に今度の航海もしつこく目を付けられていた。クルーにスパイが潜んでいた
疑いもある。我々は大統領の密命を受けて行動している。こうなった以上、自分たちの意志と判断で任務を遂行
するしかない。例え千人が十人になってもだ」
バイアスは周りを見渡すと、断固とした口調で宣言する。
「皆も聞け! 今度の作戦が表沙汰になれば、バラス星系は大混乱に陥ることになる。そうなれば他国にその隙を
突かれ、バラスは滅びる。現に目ざとい地球人がさっそく手を打ってきたではないか。すべてケリがつくまでは
秘密が露見することがあってはならない!」
セムはガラスの外の廃艦を見ると、語気荒く言った。
「しかし! 母船を沈めるのは忍びありません!」
バイアスは静かに告げた。
「艦長が逆の立場だったとしても、まったく同じようにしたろう。攻撃準備。命令だ」
セムは操縦桿を強く握り締めると、しばらくして呻くように言った。
「了解」
バイアスが見守る中、セムは船の向きを変えると、ペダルを踏んだ。
リュウは暗い船室に身を潜めていた。先程まで動悸が痛いほど激しく鳴っていたのも、今はすっかり収まり、
その心もプロとしての冷静さを取り戻していた。レイガンを握り、背を鋼鉄の壁にもたせながら、油断なく
外の様子を窺っている。
あれから三十分も経ったろうか。バラスの兵隊が乗り込んでくる気配はまったくない。巨人の群れと一戦を
交えようと肚を決めていたリュウは、拍子抜けすると、そろりと通路に顔を覗かせた。通路口の方にファイアー
バードの姿がなくなっている。罠か? しかしそれにしては気配の欠片もない。
リュウは手首に巻いたリストウォッチをヘルメットのバイザーの前にかざすと、その横側に付いてるボタンを
押した。文字盤のガラス上にスクリーンが投影され、輝点が明滅し始める。それはファイアーバードに装備された
ビーコンの受信装置だった。この腕時計があれば、母船の位置はすぐに確認出来る。
ファイアーバードの位置を示す輝点は、リュウの位置を示す中心点からどんどん遠ざかって行く。置き去りに
するつもりか。リュウが思った時、輝点の動きは序々に遅くなると、やがて停止した。
リュウはそれを確認すると、体の前でレイガンを構え直し、船室から一歩踏み出した。そして壁に背を擦らせながら、
ゆっくりと外の方へと進んだ。
リュウは外郭通路に出ると、レーザーで溶けた壁の穴から外を覗いた。圧倒的な星空の中、目測で数千メートル
彼方の宇宙空間にファイアーバードらしき影が見える。影はジッと一点に留まったまま、動こうとしない。
リュウが固唾を飲んで見守っていると、やがて影に変化が起きた。影の中心でオレンジ色の光が瞬き始める。謎
の光は次第に光量を増していき、ついには影全体を飲み込むほどに成長した。
リュウはその光に見覚えがあった。そしてその意味を悟ると、全身から血の気が引いていくのを感じた。真っ白になった
頭の中を一つの単語が支配する。プロトンビーム。かつてリュウを幾多の危難から救った最強の切り札が、今は逆に
その主人の命を奪おうとしている。
禍禍しい光芒が周囲の空間を包み込んだ刹那、その中心からオレンジ色のビーム光線が発射された。それは巨艦をも
一撃で消滅させる、逃れようのない死の光だった。
本当はもう少しあがってますが、疲れたんで今日はここまで。
>>117 鋭い!!!!!!!!
実はシナリオライター志望でした。小説形態の物を書くのはこれが初めてなんで、
徐々に適応させねばと思ってます(流石プロ。恐るべき眼力・・・)
>>115 当たらずとも遠からずの展開になってしまった
>>116 終わらないんで、お付き合い下さい
>>118 >>119 >>120 猫さんの突っ込みについては、後日まとめて回答させて頂きます。ふっふっふ。
今週はもう一回は確実。
つづく
もうレスついてる、と思ったら次回予告か。
勘違いしてるようだから補足。
作者は読者の突っこみに対して回答出来ないんだよ。
読者に疑問を持たれた時点で、少なくともその読者とは、終わり。
読者に個別に説明して回るのかい?
だから「過去ログで記述済み。それを読み落としてる」以外の回答は無意味なんだよ。
設定説明より、推敲して再投稿するか、つっこみを無視するかした方が良いよ。
かくして、勇者バイアスの捨て身の大活躍により、
非道な政府の狡猾なる密偵、悪漢リュウは宇宙(そら)の藻屑と消えたのである。
だが、彼等勇敢なバラス戦士達の戦いは、まだ終わった訳ではない。
愛するバラスを守る為、吠えろ!バイアス!戦え!バイアス!
いけいけ僕等の宇宙戦士バイアス!
ファイアーバードは、下腹に抱いたプロトンビーム砲を発射した。
巨大な砲口からオレンジ色に輝く光の奔流が放出される。ビームは彗星のように尾を引きながら、巡航艦ラーマ目掛けて
一気に宇宙空間を突き進んだ。
リュウは呆然と光線の行方を目で追う。周囲が閃光に包まれたと思われた刹那、マグニチュード8以上はあろうかという
巨大な衝撃が艦体を襲った。プロトンビームが巡航艦の横腹のど真ん中に命中したのだ。瞬間、音速に近いスピードで
爆風が艦内を吹き抜ける。リュウは埃のように吹き飛ばされると、鋼鉄の壁にしたたかに頭を打ちつけた。
リュウはそのショックで我に返った。そして地鳴りを耳にしつつ、素早く状況判断をすると、IQ400の頭脳を高速回転させて
今後の方針を検討する。そして生き残るための唯一の方策を思い付くと、即、実行に移した。腰のレバーを握ると、バックパックの
ノズルを全開で噴射させる。ここまでがわずか一秒以内だった。
一方、プロトンビームは命中箇所を中心に艦体を原子レベルで反応させ、次々に核爆発を引き起こしていく。その連鎖反応によって
巡航艦の巨体は超高熱で沸騰し、ブクブクと泡立ち始める。全体はオレンジ色の光芒に包み込まれ、恒星のように輝いていた。
艦内でも全ての区画から激しい火の手が上がっている。リュウはオレンジ色の灼熱光に輝く長い通路を、壁や床に触れないように
全速力で突き進む。そのわずかに遅れて背後から、爆発炎の激しい渦が高速で追って来る。リュウは最初に侵入したエレベーター口に
飛び込むと、そのままブレーキもかけずに下層へ突進した。火炎流も同じくエレベーター口に侵入すると、獲物を追った。
リュウは最下底まで来ると逆噴射し、無重量状態で体を回転させた。そしてまたノズルを噴射すると、コンピューター室に
頭から飛び込む。わずかに遅れて、数千度の火炎の滝が竪穴の底に降って来る。火炎は床に当たって砕けると、向きを直角に変えた。
リュウは室内に着地すると、素早く扉の開閉ボタンを押した。炎の竜が猛然と部屋の軒をくぐろうとした瞬間、扉は間一髪で
入り口を塞いだ。火炎流は分厚い壁にぶち当たると、怒り狂ってホールで激しく渦を巻く。
リュウはシェルター室に逃げ込むと、暗い室内で後退りした。外から激しい爆発音と振動が立て続けに
襲ってくる。リュウはコンピューターの操作台に駆け寄ると、腰のポシェットから強化チューブを取り出し、
体を台にグルグルに縛り付けた。
リュウが腰を下ろした瞬間、床下から隕石に直撃されたような異常な衝撃が突き上げた。厚さ数メートル
はあるシェルターの床板にクレバスが走る。間を置かず周囲の壁にも、まるでパンケーキでも切るように、
次々にひび割れが浮かんだ。なにしろ核爆発の中心にいるのだ。壁が破れたら一巻の終わりである。リュウは
歯を食いしばって衝撃の連続に耐えた。室内の温度は急激に上昇していき、周囲は灼熱地獄となっていく。
そして数十秒後、これまでの爆発をすべて合体させたような、極めつけの一発が巡航艦を襲った。
リュウは死を覚悟した。
ファイアーバードは数千メートル離れた宇宙空間で、巡航艦ラーマの最期を見届けていた。巡航艦の巨体は
核爆発によってオレンジ色の炎に包まれている。そしてラーマはひときわ明るく輝くと、最後の大爆発を起こした。
激しい閃光と共に艦は四散し、周囲の宇宙空間に燃える破片を飛散させた。
ブリッジではバラス人たちがその一部始終を見守っていた。飛んで来た無数の破片がファイアーバードの船体に
ぶつかってカラカラと音を立てる。セムは呆然と爆発が止んだ後の虚空を眺めた。地球の小型艇はただの一撃で
軍艦一隻を跡形も無く消し去ってしまった。地球にはこのクラスの艦艇があと何百隻配備されているというのか。
バラスの持つ軍事力で本当に対抗出来るのか。
いつかそう遠くない未来に、地球人が全銀河を支配する時が来るかも知れない。セムはその事を自らが操縦する
異種族の機体を通じて痛感した。そうさせないためには銀河の列強が争いを止めて手を組み、早い内に地球を
叩き潰すことだろう。セムは改めて地球人が恐るべき敵であることを悟った。
一方バイアスは仁王立ちしたままガラスの外を睨んでいた。そして誰ともなく呟く。
「死者は安らかに眠れ。生者はやるべきことをやるさ」
バイアスはギラリと五つの眼を光らせる。
「そしてやるべき事はもう分かってる。何の心配もないという訳だ」
バラス人たちが一斉に隊長を注視する。バイアスは残忍な笑みを浮かべると言った。
「針路変更。これより海賊征伐に向かう。デュークとその一党を皆殺しにするのだ!」
バラス人たちは一斉に超音波のような声を発し始めた。それはバラスの伝統的な閧の声だった。船内が怪鳥音に
満たされると、セムは操縦桿を握り、ペダルを踏み込んだ。
プラズマエンジンが火を噴き、戦闘艇は発進した。
十一人の竜戦士をその背に乗せた火の鳥は、復讐の翼を大きく広げ、宇宙の大海原の上を
渡って行く。目指すは兇悪な海賊が巣食う、宇宙島の隠し砦。謎の首領「公爵」の首を斬り落とすため、
復讐者たちはいよいよ行軍を開始した。
無論、彼らはこれから自身に降りかかる恐るべき運命については、知る由もない。
周囲が暗闇に閉ざされている。
リュウはヘルメットの中で目を開いた。数分前まで絶えず激しい轟音と振動に見舞われていたのが嘘のように
広い室内は一転して静寂に包まれている。先ほどまで点灯していた非常灯は消えており、闇で数センチ先も
目視出来ない。リュウは体に巻き付けていたチューブを解くと、その場に立ち上がった。そして何も見えない
暗闇の中、ヘルメットに付属したサーチライトのスイッチを入れる。白い光線が闇を割り、周囲の状況を
浮かび上がらせた。
シェルター室は、崩壊寸前で何とか持ちこたえていた。厚さ数メートルはある頑丈な壁や床板は、核爆発
による外部からの衝撃で一面にヒビが入り、表面がボコボコと隆起している。部屋の中心にそびえるメイン
コンピューターも外部からの電力供給を絶たれ、完全に死んでしまっていた。もっとも爆心地のど真ん中に
いたことを思えば、この程度で済んでむしろ幸運と言えた。
リュウは出入り口に向かうと、重く分厚い扉に手を触れた。手袋を通して材質が熱を持ってるのが伝わって
くる。リュウは脇の開閉ボタンを押した。しかし扉は何の反応も示さない。エネルギーが無ければ動かないのは
当然だった。
リュウは扉の継ぎ目に指をねじ入れようとした。しかし継ぎ目はピッタリとくっ付いていて、わずかな隙間も
ない。それにどのみち何十トンもある扉が人間の力で動かせるはずはなかった。
リュウは室内を見回すと途方に暮れた。今やリュウは特別に頑丈な金庫の中に閉じ込められてしまったような
ものだった。機械にエネルギーが行き渡っていない以上、万能キイも役に立ちようがない。救援を呼ぼうにも
厚い壁が電波を跳ね返してしまう。
文字通り八方塞がりだ。あとはこの暗い箱の中で、ひからびて死ぬのを待つだけだった。
リュウは頑丈な金庫のようなシェルター室に閉じ込められてしまった。あとはひからびて死ぬのを
待つだけなのだろうか?
しかしリュウは冷静に頭を働かせる。どんな部屋であっても、人間が作った以上、出入り口が一つ
ということは有り得ない。設計士の立場にしてみれば、必ず非常口の一つや二つは確保しておくものだ。
リュウは改めて暗い室内を見渡した。しかしそれらしき穴は見当たらない。通風孔すら無いが、
それは当然で、もしあったら外部から高熱ガスが流入してきて、今頃リュウは蒸し焼きになっている。
リュウは床に這いつくばると、部屋の隅々までゆっくりと探索し始めた。焦っても状況が変わる訳では
ない。ここは腰を落ち着けてじっくり仕事にかかろうとリュウは思っていた。
三十分ほど経過した頃、リュウは意外に早く探し物を発見することが出来た。メインコンピューターの
裏側、フロア近くの壁の隅に、そこだけ色の薄い四角い枠が切ってある。リュウはその部分を拳骨で
叩いて音を確かめると、すぐ脇にも小さな蓋があるのに気付いた。取っ手が付いているので引き開けて
みると、開いた蓋の中には軸受けと、それとセットになった取り外し式の回転用ハンドルが備え付けて
ある。
リュウは重いハンドルを取り出すと、軸受けに差し込む。そしてハンドルを両手で握ると、渾身の
力を込めて回そうとした。しかしハンドルは回るどころか、壁と一体化した石像であるかのように微動
だにしない。とにかく全ての設備がバラス人の筋力を前提に設計されているのだ。ハンドルひとつですら
地球人の手には負えないのである。
リュウは顔を真っ赤にして頑張ったが、どうにもならない事を悟ると、荒く呼吸しながら立ち上がり、
もう一度周囲を見回した。巨大なコンピューターの裏側に、メンテナンス用の鉄製梯子が付いているのが
目に止まる。
リュウはそれを見るとニヤリと笑った。そして梯子を見上げながら、腰のホルスターに手を伸ばすと、
レイガンを抜いた。
リュウはメインコンピューターに付いている鉄製梯子を見上げると、腰のホルスターからレイガンを
抜いた。ダイヤルを回して集光率を最大に合わせる。そして連続照射モードを選択すると、梯子に近寄り、
銃口を鉄棒に接近させ、トリガーを引いた。レーザーが照射され、鉄棒が見る見る焼き切られていく。
リュウは踏み棒の端と端を切断すると、長さ1.5メートルほどの鉄棒を切り離した。そしてその鉄棒を
持って再び壁に戻ると、強化チューブを取り出し、鉄棒の先をハンドルに固く結わえ付ける。
リュウは長い鉄棒を抱くように持つと、そのまま全力で前に押し倒した。梃子の原理で増幅された力が
鉄棒を伝わり、固いハンドルはガクンと動いた。リュウは鉄棒を一回しすると、強化チューブを解き、
今度は直接ハンドルを握って回し始める。非常扉がズルズルと音を立てて横壁の中に引っ込んでいく。
汗だくになりながらリュウは扉を全開にし終えると、中を覗き込んだ。穴は四角い通路になって奥へ
伸びている。通路は少し進んだ所で横に折れていた。
リュウは中に足を踏み入れた。
リュウは壁に開いた非常口の中に足を踏み入れた。四角い穴は恐らくバラス人が這って進むことを前提に
サイズが切られているはずだが、体の小さな地球人なら中腰の姿勢で容易に歩いて行ける。
リュウは最初の角を曲がった。道は厚い壁の中を数メートル進んで、さらに外側に折れ曲がる。
リュウはもう一度角を曲がる。すると今度は正面に金属製の扉があって、そこで行き止まりになっていた。
だが、この扉の向こうに外界が開けてるのは間違いない。
リュウは扉に付いた取っ手を握って、縦に揺さぶってみる。しかし案の定、重い扉はびくともしない。
するとリュウはポケットから石鹸の固まりのような粘土状の物を取り出した。その一部を千切り取ると、
細く縄状に成形し、それを蓋の周囲に貼り付けていく。それは高性能プラスチック爆弾だった。
リュウはヘアピンのような時限信管を刺すと、早足で来た道を戻って行く。そして部屋に戻ると急いで
扉を閉め、腕時計を見ながら待ちに入った。しばらくして壁の中から低い爆発音が響いてきた。リュウは
それを耳にすると、扉を開けて再び中に進んだ。
リュウが戻って見ると、通路の先の扉は爆薬で吹き飛ばされ、四角い脱出口が開けていた。リュウは
安堵のため息をつくと、出口まで歩いて行く。そして左右の壁に両手を突いて体を支えると、外に身を
乗り出した。
外の光景を見て、リュウは愕然とした。
-----完-------
外の光景を見て、リュウは愕然とした。
出口の外には、いきなり大宇宙が開けていた。圧倒的な星空が、畏怖を覚えさせる底知れぬ迫力を伴って
リュウを包み込んでくる。神秘的な闇に睨まれ、リュウは凍り付いた。
集中防護区画を取り巻いていたはずの、巡航艦の何十万トンもの構造物はすべて跡形も無く消し飛んでしまっていた。
黒い墓石のような長方形のシェルター室だけを残して、その周囲の直径何十キロにも渡る空間には、粉微塵に吹き飛んだ
巡航艦の無数の残骸や廃材が渦を巻いて漂っている。それは小さな星雲のようにさえ見えた。
リュウは呆然と外の絶望的な情景を眺めた。今やリュウは、宇宙の大深淵のただ中に身ひとつで取り残されてしまったのだ!
(^_^)/がんばれ〜。
>>127(猫さん)
僕も作者が作品についてああだこうだ説明するのは反則だと思ってます。
実はこうやって作者が自分の肉声で喋ること自体、僕の中では抵抗があるんです。
作品だけが人の目に触れて、読者が「誰が書いてるのか知らないけど、この小説
滅茶苦茶面白いよね」みたいに感じるのが理想でしょう。
「疑問を持たれた時点で終わり」ってのはそういう意味では確かにそうなんですが、
本当に僕が目指してる路線てのは「ここの設定がおかしい」「ここの描写が変だ」
などと読者が思ったとして、「でも、そんな事どうでも良くなるくらい面白い」って
思わせる、つまり疑問を持たれても終わ「らない」終わ「らせない」作風だったりします。
インディ・ジョーンズはどうやって潜水艦に乗ってったんだ?!みたいな作品を
目指そうかなあなんて思っちょります。
だからって、別に設定を積極的に蔑ろにする気もないんですが。ただ理数系が弱いんで、
正確なSF考証は無理だと思います・・・
>>128 がんばる
>>129 バイアスの見せ場はもう頭の中に出来とります。今しばらくお待ちを。
>>138 まだプロローグが終わるか、終わらないかなんで・・・
つづく
だが、宇宙最大の科学者にして冒険家であるキャプテン・リュウの辞書に絶望という文字は無い。
生き残りの宇宙船乗りと力を合わせ、艦載機の残骸から宇宙船を組み上げる事に成功する。
問題は燃料の触媒となるカルシウム不足だが…勿論、船員を皆殺しにしてその骨から抽出したのは言うまでも無い。
かくして無事地球へと帰りついたリュウはその後、安穏とした余生を送ったという。
(´▽`)がんばれ〜。ってゆーか>142でホントに「完」だと思たYO!
145 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/11/10 21:59
そういえば、キャプテンフューチャーのアニメは丁度、
「宇宙囚人船の反乱」のところだね。
バイアスとセムのやり取りはベタだけど結構いい感じだと思う。
けど、リュウが出てくるあたりは状況がどうなってるのかよくわからなくなるよ。
視点があっちこっちに行きすぎかと。
でもだんだん良くなってると思うんでがんばって。
で、兄弟弟子のケンは何時出てくるんだ?
>>1は、よりにもよって2chで小説発表なんて、勇気がある。
オレなんかスレ立てるだけでビクビクだしね。
こういった小説を発表できるホームページはたくさんあるけど、
個々のホームページは、アクセス数がすくないから、
人目につく機会がすくないだろうしね。
>>148 けっこういっぱいいるぞ。>2chで小説
まあとりあえず作者さん、見てるからがんばって。
150 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/11/15 23:45
がんばれ!漏れもなんか書きたくなってきたYO!
最初は「ハァ?今時電子頭脳って……?」と思っていたが、これはこれで(・∀・)イイ!!
悔しいですが、今週は無しです。でも週明けには絶対です!
>>144 気長にお付き合い下さい
>>145 あの時代の、クラシックでベタベタなスペオペの雰囲気を甦らせたいです
>>146 リュウの場面は即物的な描写が多いからでしょう。キャラの性格が見えてこないから
感情移入出来なくて退屈になってしまう
>>147 ?
>>148 >>149 2chで書いてる人、結構います。触発されます
>>150 書き始めちゃえ!
(=゚ω゚)ノがんばれ〜。
ってか大宇宙=1はサイト作らないのか?
-------- 完 ----------
さるさる日記の創作日記でも登録すれば?
なんであんたら邪魔すんの?
おれは1の文章を楽しんでるんだよ。
(漂流一日目)
リュウは爆発した巡航艦の無数の破片の間を漂っていた。バックパックのノズルを時折噴射させ、
ゆっくりと宇宙空間を進んで行く。
プロトンビームの威力は想像を遥かに超えた凄まじさだった。あれだけの巨大艦であれば、例え
破壊されたとしても、ある程度は原形を留めているものだが、残されたのは人間の手でも動かせる
程度の小さな残骸ばかりである。先程の攻撃で、巡航艦は文字通り木っ端微塵に粉砕されてしまっ
たのだ。
リュウは広い空間にばらまかれた細かい破片の一つ一つを覗き込み、使えそうな機材はないかと
探し回る。それは大変な労力と集中力を伴ったが、リュウは粘り強く続けた。可能な限り遠くまで
行ってみたものの、結局鉄屑以上の物は見つけることは出来なかった。
リュウは目の前に浮遊している巨大な鉄板に近寄ると、その上に座り込んだ。ヘルメットの中で
疲れきった息をつきながら、喉の奥に唾を飲み込ませる。リュウの胃袋が激しい空腹感を訴えて始
めていた。しかしヘルメットが脱げない以上、食べ物を口に入れることは出来ない。
リュウは周囲の鉄屑の海をひとしきり見渡すと、ふらふらと立ち上がり、元来た方向へ泳ぐよう
にして引き返して行った。そしてその道すがら、自分の体の疲労具合を感じると、そう時間があり
余っている訳でもない事に気付いていた。
(漂流二日目)
宇宙の闇の中、焼け残った巨大なシェルター室が浮かんでいるその上に、豆粒ほどの小さな人影
が見える。リュウはシェルターの天井の上で胡座をかき、星明りの下でペンを握って、足許の床板
に絵を描いていた。線や図形がたくさん描かれたそれは、何かの設計図であるらしい。
リュウは腕組みをすると、設計図をじっくり見下ろした。そこに描かれていたのは、工具と呼べ
る物が溶接用のレイガン一丁しかないという状況で製作出来る、脱出用器具の唯一の可能性だった。
無論、乱暴なアイデアであることは誰の目にも明らかだ。普通の人が聞けば、「正気の沙汰じゃな
い」と言うだろう。その通りで、理屈の上では可能でも、本当に行なうなら相当の勇気と覚悟、そ
して何よりも運が必要だった。
リュウは計算機で成功率を弾き出そうとして、途中で止めた。それしか道がない中で、確率など
知っても意味はなかった。リュウは床板に寝っ転がると、上方で浮遊している破片の隙間から、満
天の星空を仰いだ。少年の頃、スラム街で野宿した夜の事がふと頭の中をよぎる。リュウはバイザ
ーの中でフフッと笑った。あの時代、たった一人ぼっちで、その日その日を食っていくのも必死だ
った。何度も生きるか、死ぬかの瀬戸際に立たされた。でも、こうして生きている。なあに、何と
かなるさ。
けだるい疲労感と空腹感の中、リュウは急激に深い眠りの底に落ちていった。そしていびきをか
きながら、とても楽しい夢を見た。
(漂流四日目)
リュウは担いでいた鉄骨をシェルター室の天井に置いた。あれからずっと材料集めで宇宙空間を
行ったり来たりし続けている。既にかなりの数の廃材が集まっていたが、まだまだ充分とは言えな
い。リュウが作ろうとしているのは、恐ろしく大きな設備なのだ。
リュウは疲れ切った体を休めると、腕時計に目をやった。文字盤のガラス上にビーコンの輝点が
明滅している。それは敵に奪われた母船、ファイアーバードの現在位置を示していた。そして、輝
点は三日目の昼から一ヶ所に留まって、ピクリとも動こうとしない。
リュウにとってそれは甚だ好都合な事だった。脱出器具の性質上、目標が固定されてる事は成功
の第一条件だった。ファイアーバードが何故そこに停泊しているかは分からない。しかし、現状で
はそこが一番手近な上陸地点であり、選択の余地はなかった。このバラス軍の重囲網の中では地球
の船を呼ぶのは不可能だし、救援が来たとして、その頃にはリュウは餓死しているだろう。結局、
何としても母船を取り返して、脱出するしかないのだ。
リュウはビーコンの光を見つめてる内に、愛梨の姿を思い浮かべていた。リュウの部下である忠実な
女アンドロイド。やはり彼女はバラス兵によって無惨に破壊されてしまったのだろうか。最後の夜、
ベッドの上で味わった愛梨の白く美しい肢体、そのしなやかな感触がありありと甦ってくる。
リュウの眼前に、愛梨の美しいマスクが幻となって迫ってきた。その唇には艶やかな微笑が浮かび、
匂い立つような色香を発している。愛梨の黒く大きな瞳に見詰められ、リュウは甘い陶酔に捕われる。
そして恍惚とした表情で幻の女に微笑み返す。
リュウはハッと我に返った。そしてこの数日間で初めて恐怖に近い感情を覚える。リュウは再び宇宙に
出て行きながら、冷静に考え、理解した。
今見た女は愛梨ではない。あれは「死」の誘いだ。
(漂流七日目)
何も口に入れてなくても、糞だけは出るのか。
リュウは思うと、働いてる手を休めることなく皮肉に笑った。この一週間、ヘルメットが脱げないため、
食物は一切口に入れていない。唯一、水だけは口元のチューブから補給出来る。その水は、リュウが
排泄した尿から濾過器で抽出したものだ。またその水には、非常用に備えられていた高カロリーの
養分がしみ出す仕組みになっていて、これがなければリュウはとっくに動けなくなっていただろう。
ただ便の方は尻の部分に付いた袋に溜まるだけで、その袋も今では一杯になり、中身が宇宙服の中にまで
あふれ出していた。
リュウはレイガンを片手に、シェルター室の上で廃材を組み合わせ、溶接作業をしている。リュウの
頭の中にあった脱出用器具の構想が、次第に実体となって姿を現し始めていた。それは日用大工の技術
があれば誰にでも作れる、単純な構造をしていた。ただ、大きさは途轍もなく大きい。
リュウはレイガンのエネルギーパックを交換しようとする。それは最後の一個であり、それを使い切っ
たら終わりだった。リュウの、エネルギーパックを交換する手指が、衰弱のためブルブルと震える。疲労は
とうの昔に限界を超えている。リュウは眩暈を感じながらも、何とかパックを差し込んだ。そして再び
ノロノロと動くと、無表情のまま、ロボットのように作業に取り掛かる。
絶対的な孤独の中、周囲の真空が、リュウの暖かい生身の心臓の中にまで侵入してこようとする。危険な闇が
リュウの希望の灯を吹き消そうと何度も試みる。しかしリュウの心には、そのような虚無や諦念を払いのける
だけの、強靭な意志が備わっていた。それは決して迷うことのない、折れない心だった。
死の静寂に包まれた宇宙の深い闇の中で、リュウが操るレイガンの光だけがチラチラと瞬いている。孤独の光は、
誰も見ることのない幻のように揺れた。
(漂流九日目)
リュウは宇宙に漂いながら、漂流物の残骸や廃材を動かしていた。その作業は破片の群れの中を、シェルター室と
遥か遠くのファイアーバードとを結ぶ直線上に、トンネルを掘り進むようにして行なわれた。このトンネル状
に開いた空間が、脱出するための道になるのだ。
リュウは一日がかりで作業を終えると、トンネルを通ってシェルター室に戻った。そしてシェルターの上に
立つと、据え付けを完了した脱出用器具を見上げた。
そこに完成していたのは巨大な「石弓」だった。石弓とは古代ローマ兵が用いた武器で、飛び道具の一種である。
仕組みはパチンコと同じで、弦を張った部分に矢や弾丸を乗せ、弾き飛ばすという原始的なものだ。ただし、リュウ
が作ったのはその特大サイズである。
適当な大きさの廃材を組み合わせて作られたそれはT字の形をしていて、全長は六十メートル、弓の部分の幅は
三十メートルという大きさだった。弦は鋼鉄のワイヤー製で、その中心には籠のような容器が付いている。
籠の尾部には別のワイヤーがフックでつながっていて、石弓の後方までピンと伸び、そこで円筒形の滑車に巻き
付いていた。そして滑車からはそれを回転させるための長さ二十メートルほどの鉄棒が、十字型に外側に突き出して
いた。その鉄棒はシェルターの横側面まで伸びていて、回す時にはその横壁を歩きながら棒を押せば良い。
リュウは無重力状態の中、シェルターの横壁を歩いて行くと、その回転用の棒に取り付いた。それから棒を抱える
ように持つと、体の前面で押し出すようにして鉄棒を回転させる。滑車が回り出し、ワイヤーを巻き付け始めた。
石弓の弦がギリギリと引き絞られていく。
弦の中心の籠がT字の最末端まで下がり切ると、リュウは石弓の尾部に向かった。そしてあらかじめ用意していた
鉄の玉を持ち出すと、籠の中に入れる。リュウは脇に退くと、作り付けてある発射用レバースイッチを両手で握り
締めた。そして前方を睨み付けると、グイと一気に引っ張る。
瞬間フックが外れ、弦は緊張から解き放たれた。
リュウは石弓の発射レバーを引いた。瞬間、フックが外れ、弦は緊張から解き放たれる。籠は
物凄い勢いで前方に押し出されると、中に乗せた鉄の玉を高速で弾き飛ばした。玉はトンネルを
突き抜けて行き、宇宙空間に飛び出して行く。
リュウは座り込むと、腕時計に目をやった。文字盤のガラス上では、点滅する輝点が、中心から
どんどん遠ざかって行く。発射した鉄の玉には発信器が取り付けてあった。その位置をこの受信機で
確認出来る。最終的にはリュウ自身が籠に乗ることになるのだが、その前に試射をして、石弓の軌道や
癖を知っておかなければならない。それには最低でも一日は必要だ。
リュウは何もする事がなくなると、床に大の字に寝転がった。もう指一本動かす気力もなくなっ
ていた。天を見上げながら、ぼんやりと思う。死ぬにせよ、生きるにせよ、結果は明日出る。この
石弓で宇宙に飛び出したら最後、方向を変えることは不可能だ。母船に辿り着くか、それとも銀河
の果てまで飛ばされ、宇宙の藻屑となるか。
疲労感の絶頂にあってリュウは、再び数日前に経験した甘い陶酔感が全身を襲ってくるのを感じた。
死の誘惑はリュウの意識を蕩けさせ、永遠の眠りへと導こうとする。
リュウの目の前に、愛梨の幻が現れた。何も身に付けない白く美しい裸身が、宇宙の闇の中に浮かび
上がっている。その均整の取れたしなやかな肢体は、リュウが何度となく慣れ親しんだ物だ。愛梨は
長い黒髪をなびかせながら、妖しく微笑む。リュウが見詰めていると、愛梨はフワリとこちらに飛んで来て
そのままリュウの体に覆い被さった。
愛梨はすんなりとした双の腕をリュウの首に巻きつけると、ヘルメットに手をかけた。そしてバイザー越し
にリュウを見詰めると、ゆっくり上に持ち上げて外した。リュウは不思議と息苦しさを感じないまま、呆然と愛梨
を見上げる。愛梨は間近から大きな瞳で見詰め下ろすと、顔を接近させ、柔らかな唇を重ねてきた。リュウは
痺れるような快感を味わいながら、同時に生への執着が急激に失せていくのを感じた。このまま身を任せるのも
悪くない。面倒は御免だ。リュウは鼻腔に甘い香気を一杯に吸いながら、深い眠りの底へと落ちていく。
異変が起きたのはその時だった。
中途半端ですが、相当疲れたので、今日はこれまで。
ここで、読んで下さってる方にいくつか質問したいことがあるのですが・・・
>>156から
>>161までについて。
@読んでる内に頭が痛くなってきて、途中で投げたって人いますか?
A読み通してみたものの、一体何がどうなってるのか、状況がサッパリ
掴めない、イメージが沸かないって人いますか?
>>152 当面は全然考えてないです
>>153 先は長い
>>154 ?
>>155 プ、プレッシャーが・・・
今週はも一回は楽勝だね
つづく
163 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/11/19 23:56
>>1 がんばってね。
応援の意味を込めて上げるよ。
あなたが書きたかったのって漂流者が石弓で宇宙から
生還するような話だったんじゃないの?
愛梨ちゃんとかパラス人いらなかったんじゃない。
∧ ∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(,,゚ー゚)< 恒例だががんばれ〜!
@_) \______________
漏れは専門的なことはからっきしだからなんともいえんな。
チョト思ったのは、主人公になんとしても定められた刻限に帰還しないと
ヤヴァイとかの使命があって、いろいろ奮闘するが結局だめで・・・みたい
な感じにしたらよかったかも。その後に、主人公が急激にへたりこんじゃったりしてさ。
なんか無力な感じを出すと言うか。
あ、でもそうすると大宇宙の群狼っぽくないですね、普通の人っぽくて。
っちゅーか、緊張/焦燥する場面の後に漂流を持ってきたらいいかなと。
あれ、どうした? 1さん。
忙しいのかな。
異変が起きたのはその時だった。
青白い光が浮遊する残骸の間に浮かんでいる。寝た姿勢のリュウはそれが視界に入ると、幻覚だろうと
思った。しかし光は消える事無く、その内に他の場所にも鬼火のように浮かび上がった。鬼火はみるみる
増殖していき、短い時間の内に破片の間を埋め尽くすほどにまでなっていく。
リュウは身を起こすと、周囲を見回した。それまで闇に包まれていた辺り一帯が、無数の青白い燐光に
よってぼんやりと照らし出されている。その光景は昔話に出て来るセント・エルモの灯のようだった。そ
れはとても不思議な、神秘的な眺めだった。
リュウはこの光を以前にも見たことがあった。まだ若い水兵の頃、乗艦が宇宙戦闘のあった宙域に味方
の救助に向かったことがある。その時、現場に漂う多くの残骸の間に同じ光が浮かび上がっていた。それ
は破壊された宇宙船から漏れた放射性元素やその他のエネルギー素を食べに来た、宇宙プランクトンの群
れだった。プランクトンはエネルギーを摂取する際に、燐光を発するのだ。
リュウは燐光の群れを間近で見て、美しいと思った。青白い光の粒子は暗闇で、まるで雪のように残骸
や廃材の上に降りそそいでいる。
リュウの心から、先程までの妖しい感覚が消えていく。光の雪が舞い散るのを眺めてる内に、リュウは
同じような光景をいつか見たような、無性に懐かしいような感覚に捕らわれた。胸の内にある記憶の海の
深いところから、古いイメージがゆっくりと浮かび上がってくる。それは少年時代のもので、リュウの人
生の重大な岐路となった、ある事件のイメージだった。リュウはなぜそれがこの状況で不意に思い出され
たのか、その必然性をすぐに理解した。あの日も雪が降っていた。しかしそれだけではない。今、危機的
状況にあって、リュウの内にある生きようとする力が、彼の人生の原点をもう一度振り返らせようとした
のだ。
リュウは清澄な心持ちの中、甦ってきた記憶にじっと身をゆだねた。過去の情景が、微細な輪郭線まで
捉えた、鮮明なイメージで眼前に広がっていく。
リュウ・カズマは二千四百二十五年、ニューヨークのダウンタウンで生まれた。
父親は宇宙海兵隊の帰還兵だそうだが、詳しいことは判らない。「カズマ」というのは
父親の姓だが、リュウの母親が本当に愛した、ただ一人の男だったようだ。いずれにせよ、
リュウは伝聞で聞いただけで、会った事は一度もない。
母親のポネルは自ら「詩人」を名乗っていた。元は富商である名家の令嬢らしいのだが、放蕩
が過ぎて勘当同然の目に会っていた。しかしポネル自身はそれを気に病むどころか、
鬱陶しい「しがらみ」から逃れられて清々しているようだった。ポネルの家は月の鉱石で
一財を成した新興の商人だったが、成金の家にありがちな、どす黒い欲望や野心が渦巻く家庭環境
であり、少女時代のポネルの繊細な神経には、その雰囲気は耐え難いものだった。ポネルは家族を
避けるようにして自室にこもり、本や音楽の世界に自らの逃避先を求めるようになる。
出奔したポネルが太陽系の各地をおんぼろ宇宙便で放浪した後、ニューヨークに流れ着いたのは
二十一歳の時だった。ポネルはそこで怪しげな自称芸術家や売れない作家、ミュージシャンなどとの
付き合いを深めていく。美しくて頭の良いポネルは、若いボヘミアンたちのアイドル的存在となり、
崇拝された。ポネル自身、それが満更でもない感じで、やっと辿り着いた安住の地で、青春を生き生きと
謳歌していた。酒を飲んで騒ぎ、議論に花を咲かせ、時には取っ組み合いの喧嘩もした。
ポネルは場末のニューヨークに咲いた、一輪の大輪の花だった。
ポネルはエゴイスティックで気性の激しいところがあり、意見が対立した時には一歩も引く姿勢を
見せなかった。また機嫌の悪い時などはヒステリックにわめき散らして、周囲の人間を辟易させたりも
した。しかし一方で、繊細な感受性や深い慈愛の心、確かな理知なども兼ね備え、それら正と負の要素
が渾然一体となり、一つの魅力的な個性を生み出していた。
ポネルは詩や評論を発表したが、仲間内では評判になっても、それが金銭に結びつく事は決してなかった。
常に生活は貧窮の底にあり、実家から便りの来ることも一切なかったが、ポネルは苦にしてる様子もなく、
気楽に毎日を過ごしていた。
そんなポネルに運命の出会いが訪れることになる。
ポネルがどのようにしてリュウの父親と出会ったのかは定かではない。恐らく当時バーで働いていた
ポネルが、たまたま夜に店に来ていた海兵隊員と知り合ったのだろう。お互いに惹かれ合った二人は
どちらから切り出すともなく、自然な流れでホテルで一夜を過ごし、結ばれた。ポネルは寝物語で
男の輝かしい戦歴、冒険の数々を聞いた。宇宙海兵隊は地球の宇宙進出の先導役として、常に最前線
に派遣され、異星の危険な敵と正面切って渡り合ってきたのだ。
ポネルは男が話して聞かせる異星人の珍しい風俗や習慣を、目を輝かせて聞いた。こんなに夢中に
なったのは、まだ幼い頃に亡くなった母親が読んでくれた絵本以来だった。ポネルは宇宙に行ったことはあるが、
まだ太陽系からは出たことがなかった。外宇宙を果てなく旅を続ける男の姿は、ポネルの目には伝説の聖杯の騎士
のようにさえ映った。
ポネルは軍隊という、自分が住む世界とは全く対照的な場所に属する、未知の男に激しく恋をした。
豪快な性格で、よく冗談を言って笑い、一方で強い克己心、鋼鉄の意志を持っている。ポネルは仲間の溜まり場にも
顔を出さなくなった。ポネルは男と一緒に住むようになり、やがて子供を産んだ。男は日本語でドラゴンを意味する
「リュウ」という名前をその子に付けた。ポネルは母親になるという人並みの幸福に酔い痴れた。
しかし、その幸福も長くは続かなかった。
ポネルの幸福は長くは続かなかった。リュウの父親が軍令によって再び宇宙に出ることになったのだ。
海兵隊は異星人と戦い続けることを宿命付けられた宇宙の戦士である。その旅に終わりはない。こうなる
ことは分かっていたものの、ポネルにとっては過酷過ぎる運命だった。
旅立ちの日、二人は激しく抱擁をかわし、貪るようにキスをした。男は必ず戻ると約束し、出征して行った。
その後、数ヶ月間は手紙のやりとりをしていたものの、その内に地球から出しても返事はなかなか来なくなり、
やがて連絡は完全に途絶えた。
ポネルの方でも敢えて居場所を探そうとはしなかった。どのみち何百光年も離れた異星の地にいる男の
消息など探りようがない。ポネルは依然として男を愛していたが、向こうの真意を知ることを努めて避けようと
していた。ポネルはひどく臆病になっていた。
部屋でたった一人で、虚ろに目を開いたまま何もせず座ってることが多くなっていった。仲間が尋ねて
来ても、ぼんやりと返事をするだけで反応がない。元々人に比べても繊細な神経の持ち主だったポネルは完全な
ノイローゼに陥ってしまい、子供の世話も放棄してしまっていた。そしてある日、発作的に
アパートの窓から飛び降りた。幸い軽傷で済んだものの、仲間たちは子供のリュウにまで危害が加わる
のを恐れ、ポネルを精神病院に入れる。
残酷な結末が間近に迫っていた。
その後、仲間の捜索によって、ポネルの実家と連絡が取れた。使いが来たものの、ポネルは引き取るが、
その子供は無理だという。豪商の一族内における権力争いの関係で、リュウがその輪に入って来るのは都合
が悪いということらしい。仲間たちは激しく反発したものの、結局言われた通りにするしかなかった。
リュウは母親との最後の別れを今でも鮮明に思い出せる。よく晴れた朝、病院の入り口で母親の友人に
抱かれて待っていると、痩せ衰えたポネルが、医師と看護婦に両脇を支えられて姿を現した。
リュウは目が合ったが、母親の目はどんよりと曇り、何の感情も見せなかった。恐らく薬漬けで朦朧と
していたのだろう。ポネルは実家から迎えに来た高級エア・カーに乗せられた。リュウの母親は人形のように
無抵抗だった。ハッチが閉まり、エア・カーが発進して行くのをリュウは無言で見送る。リア・ウィンド
越しにポネルの後ろ姿を凝視したが、母親は遂に振り返ることはなかった。
数ヵ月後、ポネルは実家の屋敷で死んだ。精神こう弱による衰弱死である。
リュウ、四歳の時の事だった。
リュウは母親と別れた後、孤児院に入れられた。ポネルの芸術家仲間に子供を養えるような
生活力のある者は皆無だった。
リュウが六年間過ごしたブロンクスの孤児院は、経営者が税金対策と政府の補助金を稼ぐため
だけに作った、典型的な悪徳施設だった。非衛生的で、共同部屋の寝室には工場廃水でミュータント化
した巨大ゴキブリがよく飛来した。食事はまったく味のしない合成食品ばかり、また教育活動と
称してロボットの電子部品作りの内職までやらされた。孤児たちはロボット以下の労働力という
訳だった。
最悪の施設ではあったが、子供が脱走してペナルティがつくのを恐れてか、塀だけは異様に立派で、
高かった。リュウは内職の間のわずかな自由時間にはいつも庭に出て、高い塀を見上げるのが日課
だった。他の子供たちが遊んだり、騒いだりしても、その輪には決して加わらず、いつも一人で塀の
向こう側の世界を感じていた。
いつか必ず塀を越えて見せるという決意を秘めながら。
リュウは常に孤独だった。孤児院のわずか五十人ほどしかいない世界でも、それなりに小さな社会
が生まれていたが、リュウは群れるのを嫌い、彼らと関わるのを徹底して避けた。それは臆病という
よりは、もっと生理的な嫌悪感に根差していた。
ある日、リュウは上級生たちに呼び出されると、数人掛かりでリンチにされた。上級生からすれば、
リュウの超然とした態度は生意気以外の何物でもなく、彼らの全世界である孤児院の、ささやかな
社会秩序に対する重大な反逆だったのだ。
ぼろ雑巾のようにされたリュウは、痣だらけになって地面に倒れながら、激しい怒りを感じた。
それは上級生に対してというよりは、自分の無力さと、理不尽な運命に対して向けられていた。
もう、うんざりだ。こんな狭っくるしい場所に閉じ込められるのは。また、こんな狭い場所にチャチな
秩序なんて持ち出して、それに執着する阿呆な連中にも。俺が考える世界はもっと広くて、何でも
起こる場所なんだ。
数日後の夜、リュウは行動を起こす。孤児院に火をかけたのだ。
数日後の夜、リュウは孤児院の建物に火を放った。職員や生徒たちが大混乱に陥る中、
リュウは一人、庭に走る。そして庭の木に登ると、一番高い枝に立ち、塀の向こう側を
見渡した。塀の外には薄暗いスラム街が地を這うように広がっている。それは移民のエイリアンや
被差別民のミュータントの居住区だ。そしてその先、河向こうには、マンハッタン島の大摩天楼群
が華やかな光輝を放っている。
リュウは興奮した。あそこに俺の望む本当の世界がある。夜空から消防用エア・カーが次々に
飛来して、サーチライトを地上に向けた。そのまばゆい光を全身に浴びながら、リュウは木の幹まで
一旦下がると、全力で助走し、迷わず飛んだ。枝から塀の縁まで十メートルはあった。リュウはいけると
思っていたが、やはりそれは無謀な挑戦だった。
リュウの伸ばした手は空を掴み、そのまま真っ逆様に地上に墜落していった。背中から地面に叩き付け
られると、リュウは放水の飛沫が顔に降りかかるのを感じながら、意識を失った。
>>163 はっきり言って、どう転がるか自分でも分かりません。もう成り行きに任せようと思ってます
>>164 構成って難しい・・・
>>165 もっとペースを速めたいんですがねー、なかなか
つづく
176 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/11/24 01:29
-------- 完 --------
リュウは病院に収容された。十数メートルの高さから落下したにも関わらず、少年は医者の予想を遥かに
上回る回復力を見せた。また塀際に生えていた潅木がうまい具合にクッションになってくれたことも幸いし
た。結局深刻な事態に陥ることもなく、一ヶ月ほどの入院で退院出来ることになった。
元気になったリュウは、ベッドの上でギプスで固めた足を吊って、寝たきりのままになっていた。しかし、
その顔には満足げな表情が浮かんでいる。リュウは思った。塀を乗り越えるのには失敗したものの、文字通
り怪我の功名で外には出られた。あとは足が治るのを待つだけだ。もう誰にも邪魔はさせない。
リュウの頭の中で、様々な可能性のイメージが渦巻き始める。それは楽しい想像だった。
その時、病室のドアをノックする音が、リュウを現実に引き戻した。リュウが振り向くと、やがてドアが
開き、リュウの見知らぬ男が一人、姿を現した。医者ではない。男は中肉中背の体に黒い法衣とマントをま
とっていた。歳の頃は三十歳くらいだろうか。
法衣の男は入口に立ったままリュウを見詰めると口を開いた。
「こんにちは。久しぶりだね」
男は言った。リュウの当惑した表情を見ると、男はため息をついて肩をすくめた。
「覚えてないか・・・そう、なにしろ七年前だからな。君が三歳の時だ」
男はベッドに歩み寄ると、リュウを見詰め下ろす。
「私は君のお母さんとは友達だった。お母さんはよく君を抱いて、私や仲間のところに見せびらかしに来た
ものさ。で、私が君にちょっかいを出して、お母さんにひっぱたかれるってのがお約束でね」
男は懐かしそうに目を細める。
「そう、あの頃君はまだほんの赤ん坊だった。それが随分でっかくなって・・・もっともその頃は私もこんな
格好はしてなかったが」
男は法衣の裾を摘んで見せると、皮肉っぽく笑った。
「今でも鏡を見ると、吹き出しそうになることがある。仮装行列に出られるんじゃないかって思うこともあ
るよ。柄じゃないのは分かってるが、これでも一応神父なんだな」
男の胸でロザリオが揺れている。銀の十字架がキラリと光った。
リュウは改めて入って来た男を見直した。鳶色の髪を肩まで伸ばした男は、全く同じ色の丸い瞳を
生き生きと輝かせている。どことなくユーモラスなムードを湛えた表情は、辛気臭い神父のイメージ
からは遠いものだった。リュウはふと、昔孤児院に慰問に来た大道芸者の姿を思い出していた。
男はリュウに手を差し伸べると、屈託のない笑顔で言った。
「マクシミリアン神父だ。長ったらしいんで、マックスと呼ばれることが多い。よろしく、リュウ君」
するとリュウは握手の誘いを無視したまま、神父に鋭い視線を向けた。気まずい沈黙が流れると、
神父は手持ち無沙汰に伸ばした手を引っ込め、そのまま頭に持って行き、帽子を取った。
「・・・座るかな」
神父は咳払いをすると、ベッドの脇の椅子に腰掛ける。
「・・・実はリュウ君。今日は君のこれからのことについて話し合うために来たんだ」
神父は言った。
「それで私からも幾つか提案があるんだが。それに乗るもよし、断るもよし。なにしろ君の人生だ。よ
く考えて自分で決めて欲しい」
神父の目に先ほどまで見られなかった真摯な光が宿っている。しかしリュウはそれに対して特に感じる
ところもないようだった。ただ油断の無い視線を未知の相手に向けて続けている。
神父の話はこうだった。火事騒ぎによって孤児院は閉鎖に追い込まれた。そして収容されていた孤児
たちだが、既に他の地域の施設に引き取られることが決まっている。当然リュウも怪我が治り次第、送致
されることになるが、そうなればニューヨークから遠く離れた地区に移されてしまう可能性もある。母親
の昔の友人代表としては、目の届かない所にリュウが行ってしまうのは心配だ。ならばいっその事、神
父が身元引受人になるから、ニューヨークに残ってみてはどうか。
「若い頃は食うにも事欠いて、子供を引き取るなんて余裕はとても無かったが、今は良くも悪くも、随分と
生活も落ち着いてしまってね」
神父はニヤリと笑った。
「君一人くらいなら何とかなる。それにお母さんには苦しい時に随分世話になった。だからって訳じゃ
ないが、出来れば恩返ししたい」
リュウはうろんげに神父に目を向けた。考えてることがよく理解出来なかった。自分を引き取って、
神父に何の見返りがあるというのだろう。
神父が引き上げて行った夜、リュウは消灯後の暗闇の中、ベッドで考え込んでいた。神父の肚の内は
分からない。でも、このまま何の手も打たずにいれば、また施設の塀の中に逆戻りだ。そこが前よりも
脱走し易い所だとは限らない。それに例え逃げ出せたとしても、それから先の予定など見当もついてい
ない。なら、闇雲に行動するよりも、今は神父の所に身を寄せて時機を待つべきではないか。
自ずと答えは見えてくる。リュウの肚は決まった。
一ヵ月後、完治したリュウは退院した。よく晴れた朝、門から出て来ると、病院の前でマクシミリアン神父が
迎えに待っていた。その背後には、一台のオンボロトラックが止まっている。神父は上機嫌で声をかけた。
「いい天気だな。幸先がいいぞ」
リュウはトラックに目が釘付けになっている。一応エア・カーではあるようだが、こんなオンボロで飛ぼうも
のなら途中で墜落しかねない。
神父はその視線に気付くと、喉の奥で笑い声を出した。
「心配か?二十年前の型だが、まだ乗れるぞ。ただ、三年前に飛行中にドアが落ちた時はヒヤヒヤしたっけ」
リュウの冗談じゃないという顔を見て、神父は肩をすくめる。
「・・・まあ、今日は大人しく地面を這って行くか。飛行のガス代も馬鹿にならないからな」
神父が乗り込むのに続いて、リュウは助手席に座るとガタピシするハッチを閉めた。神父がアクセルを踏む
と、接地用車輪がゆっくりと回り出し、トラックは発進した。
神父とリュウを乗せたトラックは、鉄橋を走り、マンハッタン島に向かった。
河向こうでは、陽光を受けて銀色に光り輝く大摩天楼群が威容を顕わにしていた。かつては世界の首都とし
て栄えたニューヨークも、今では大宇宙港で地球政庁のあるニュー・ヒューストンにその栄光の座を明渡して
いた。それでも有数のメガロポリスであることには変わりなく、その雲に届く高層ビルディングの群れは、伝説
のバビロンのジグラッドを思わせた。そこでは何百万、何千万の人々の多様な人生が交錯し、翻弄され続けている。
「よく見ろ。あれが虚栄の市だ」
神父は言った。神父の中で様々な想いや追憶が轟々と渦を巻いていた。神父にとってリュウを隣りに座らせて
マンハッタンを眺めるというシチュエーションは、特別な意味を持って、その胸に迫って来ている筈だった。
無論、リュウはその事に気付いてはいなかったが。
リュウは窓を開けて風を顔に受けながら、マンハッタン島を眺めた。リュウが見ている内にも、ビルの屋上から
何十機もの宇宙ロケットが白煙を噴き出しながら、晴れ渡った青空に向かって上昇して行く。そしてビルの周囲に
は、豆粒のような何百台もの色とりどりのエアーカーがせわしなく飛び交っていた。ニューヨークの大都会の繁栄
を見ながら、リュウを乗せた車は橋を渡り切り、高層ビルディングの谷間へと進んで行った。
数十分後、車がようやく停止したのは、ビルの谷間の底、薄暗い地表の古い街区の一画だった。目の前には教会
のこじんまりとした建物が立っている。教会は礼拝堂と坊舎から成っていて、どちらの建物も古びて、煤汚れていた。
神父は車から降りると口笛を吹きながら、門扉を開けに歩いて行く。リュウがウィンドウ越しに頭上を見上げると、
遥か上空、巨大なビルの、足下を睥睨する頭と頭の隙間から、日光が弱々しく地表に落ちていた。それはかろうじて
光が届いているといった風情だった。
リュウは嘆息した。この暗い地の底でリュウの新しい生活が始まるのだ。
「…『死の間際、全人生が走馬灯の様に脳裏に浮かぶ』というのは本当だったんだな…」
それがリュウの最後の思考であった。
−−− 完 −−−
初めてヒーローが生きるか死ぬかの盛り上がる場面なのに
回想でだらだらするのは如何なものか。
う〜ん、さすがに同意。
でもがんばれ〜
>>166 (漂流十日目)
リュウは目を覚ました。半身を起こして呆然と辺りを見回すと、宇宙の闇の中、周囲に浮遊する残骸の群れの
狭間に、相も変わらず無数の青白い燐光の粒子が、キラキラと輝きながら、雪のように舞い散っていた。
リュウは手の平を見詰めると、指をゆっくりと動かしてみた。まだ生きてる。リュウはこの一晩の内に、外界
ではもう何百年も過ぎ去ってしまったのではないかという錯覚を覚えた。この広い宇宙の不可思議な物理法則の
中にあっては、そういう事も十分あり得るのではないかと思えた。しかしリュウはすぐに、疲れ切った脳が抱い
た単なる妄想だと断定した。リュウの不屈の精神と冷静な判断力が目覚めるまで、わずかのタイムラグしか必要
としなかった。
リュウは腕時計を見た。前日に石弓で発射した鉄球の座標が、文字盤の上に映し出されている。鉄球を示す輝
点は弱々しく明滅しながら、中心から遠ざかって行く。リュウは予想軌道をまったくずれることなく移動する鉄
球に安堵した。数十分後にはリュウ自身が同じコースを辿ることになるのだ。
リュウは立ち上がると、ヨロヨロとした足取りで歩き始める。無重量状態にも関わらず、体が鉛のように重く
感じられた。この十日間で体重は半分近くに減ってるだろう。体力の低下は著しかったが、リュウは気力を振り
絞って歩を進める。その動きは瀕死の病人のようだった。
リュウは石弓の滑車部に辿り着くと、再び棒に取り付き、体で前に押し始めた。滑車が回転して行き、弦が少
しずつ引き絞られていく。普通時ならともかく、今現在の弱り切ったリュウの体にはそれは拷問のような重労働
だった。リュウは古代ローマの奴隷になったかのように棒を押し続ける。途中で何度も失神しかけたが、その度
に鉄の意志で自分に言い聞かせた。これが最後の峠だ。リュウは今までの三十一年間の人生のすべてをこの時に
賭けた。
鉄棒を通じてガクンという手応えが伝わってくる。石弓最後尾のフックに弦が引っかかったのだ。
準備はすべて完了した。
リュウは石弓によじ登ると、前方に漂う残骸の群れを見た。そして残骸群を貫くようにして掘り進められた
トンネル状の空間を通して、その先の宇宙の闇を睨んだ。この方角にまっすぐ飛べば、ファイアーバードの
停泊地に突き当たる。石弓によってリュウは、宇宙船の巡航速度の十分の一まで加速される。ファイアーバ
ードの足で二日半の行程ならば、単純計算でリュウの上陸時間は二十五日後になるだろう。
リュウは籠に乗った。
リュウは籠に乗った。それから身を縮めると、宇宙服の胸の部分に付いた赤い非常用ボタンの位置を確認した。
それは長期に渡る漂流の際に使用する、簡易冬眠スイッチだった。このボタンを押すと、気嚢に溜め込んである
冬眠ガスが宇宙服内に噴出し、充填される。ガスはそれを吸った人間の新陳代謝の速度を百分の一まで低下させた。
それに伴って、感覚器官や脳神経系の反応速度も遅くなるので、二十五日の時間は、体感としては六時間余りに
短縮される。ただしリュウはこのボタンを一度も押したことはない。
リュウはこれを作った技術主任のビリー・ジャクソンの顔を思い出していた。主任のビリーはリュウより年下で、
いわゆるナード(オタク)を絵に描いたような容姿をしていた。太っていて、色白で、メガネをかけ、二十代後半
にも関わらず学生のように幼い顔立ちをしていた。甘いものが大好きなビリーのデスクの上には、いつもドロップ
の缶が置かれている。ビリーは本部オフィスに来ると、決まって周りの人間に、自分の待遇について長々と愚痴を
聞かせるのを毎日の楽しみとしていた。そして五時の終業時間になると、素早く荷物を片付け、誰よりも早く帰宅
する。それは、一分一秒でも余計には働かないという、固い決意の現れだった。
リュウは白衣を着たビリーが、ピーナッツバターサンドイッチを頬張りながら、得意げに赤いボタンについて説明
している姿を思い出していた。今やリュウの命は彼の手の内にある。こうなったら「太っちょビリー」が真面目に
仕事をしてくれてたことを祈るだけだった。
リュウは籠の中で胎児のように体を丸めると、籠に付属した発射用レバーを握り締めた。心臓の鼓動が高鳴り、
呼吸が自然と荒くなって、全身の筋肉が強ばった。
リュウは目をつむると、一気にレバーを引いた。
リュウはレバーを引いた。
フックが外れると、引き絞られた石弓の弦は緊張から開放され、リュウを乗せた籠を高速で前方に
押し出した。弦が真一文字に張った瞬間、リュウは籠から吹っ飛ばされると、残骸内のトンネルを一
直線に突き抜け、宇宙に飛び出した。
リュウは激しいGに全身の骨が軋るのを感じながら、必死で胸の赤いボタンを押した。ダイヤルで
二十五日にセットしたスイッチは、冬眠ガスを瞬間的に宇宙服内に噴出させる。リュウはガスを吸う
と、周囲を流れる無数の星々が、急激に加速して行くのを感じた。やがてドップラー効果のような虹
色の光の渦が目の前に広がり始めると、リュウは意識を失った。
ここで話は十日前に遡る。
巡航艦をプロトンビームで粉砕し、リュウをその残骸の中に取り残して去ったファイアーバードは、
宇宙を巡航速度で航行していた。
そのブリッジでは、数名のバラス人たちが輪になって集まっていた。全身を鱗に覆われた巨躯のエイリアン
たちは、その虹彩のない複眼を輪の中心にあるシートに向けている。そのシートの上には、若い女の生首が
乗せられていた。それはバラス兵によって破壊された女アンドロイド愛梨の、切り離された頭部だった。
愛梨の卵型の頭部は、長い黒髪をシートに扇状に垂らし、微動だもせず沈黙していた。その閉じた瞼
は黒く長い睫毛に縁取られ、スッと通った鼻筋の下の口元には、ほのかな微笑が浮かんでいる。形の良
い唇の隙間からわずかに白い歯をのぞかせてる様は、眠れる美女の穏やかな寝顔そのものだった。その
美しい生首を囲んで異形の怪物たちが沈黙してる様子は、まるで異教の秘儀の現場であるかのような妖
しげな雰囲気を湛えていた。
そのシートの祭壇に祭られた愛梨の首の下では、一人のバラス人が作業をしている。小太りの男は愛梨
の首のもげた部分にコードをつなぎ、床に置いた携帯端末機に接続していた。男の肩には身長二十センチ
にも満たない白い小人が乗っている。小人は、先ほどまで地球人の手によって幽閉されていたバラス人た
ちを解放させた立役者だった。白い小人は自分を体内から吐き出した主人の肩に掴まって、緑色の大きな
眼で不思議そうに女の首を眺めていた。
男は携帯端末機のボタンを押した。ブンという電気音と共に、愛梨の閉じた瞼がピクピクと痙攣し始め
る。愛梨は柳眉の根元を寄せると、低い呻き声を上げた。
バラスの隊長バイアスは、丸太のような腕を分厚い胸板の前で組んで傲然と立っている。その五つの眼
を光らせ愛梨の首を見下ろすと、鋭く言い放った。
「聞こえるか、女アンドロイド。目を開けろ」
愛梨はバイアスの声に反応すると、ハッと目を開いた。
愛梨はハッと目を見開いた。そして視線を動かせると周囲に立つバラス兵の群れを眺める。愛梨は自分の置かれた状況
を瞬時に理解すると、唇を引き結び、正面に立つバイアスを見上げた。
バイアスは愛梨の目を見据えて言った。
「お前には色々と聞きたい事がある。質問に答えて貰おう。まず、お前たちはどこへ向かおうとしていたのか、そこから
始めようか」
愛梨は黙り込んだまま、バイアスの複眼を見詰めている。バイアスは続ける。
「これは取引だ。喋れば、お前はスクラップにならずに済む。いくらアンドロイドでも自分の命は惜しいだろう」
愛梨はバイアスの言葉を聞いていたが、やがて口を開くと静かに言った。
「・・・私にも自己保存プログラムはあるわ。でもそれは主人の意思に背かないという条件付きで適用されている」
愛梨は口元に艶やかな微笑を浮かべた。
「私のボスは宇宙でただ一人、リュウ・カズマだけ。彼を裏切る事は出来ないわ。私を壊したいというのなら、
好きにしなさい。私は何も恐れない」
「お前のボスは死んだ。巡航艦ごとビーム砲で吹っ飛ばした。残念だったな」
バイアスは素っ気無く告げた。
「主人が死んだ以上、お前を「制限」する者は誰もいない。なら、お前自身の身の振り方について考えたらどうだ?
協力すれば壊さずに逃がしてやる。後は新しい主人を探すなり、ロボット・コミューンで仲間と暮らすなり、好きに
しろ。お前は「自由」になれるんだ」
バイアスの口から次々と魅惑的な言葉が飛び出す。愛梨はバイアスを睨み付けた。
愛梨のようなロボットにとって、「自由」「制限なし」という言葉には非常に背徳的な意味合い
が含まれていた。ロボットはその行動の範囲をプログラムによって著しく制限されている。彼らは
「自由」という観念自体が理解出来ないように設定されていた。 しかし、だからこそと言うべき
なのか、高度な人工頭脳になればなる程、「自由」という未知の概念について激しい興味を抱く傾
向にあった。ましてや最高の電子頭脳を搭載している愛梨が興味を抱かないはずはない。
しかし「自由」はロボットにとって憧憬の対象でありながら、一方で危険な概念でもあった。実
際、極稀にプログラムのバグ等で「制限なし」のロボットが出現すると、彼が一番最初にする行動
は大抵主人殺しだった。有名な三原則を破って人を殺すことこそが、ロボットにとっての最高度の
「自由」の発揮の仕方だったからだ。
愛梨はバイアスの言葉に、悪魔の誘惑を見た。それは断固退けられるべきものだったのだ。
愛梨は首だけの姿ながら、まったく臆する事なく、巨大なバラス人を睨み付けた。その黒い瞳が怒りに
燃えている。
バイアスはニヤリと笑うと言った。
「面白い。地球のアンドロイドは怒ったりもするのか?」
愛梨は毅然と言い放った。
「ボスは私に言ったわ。「必ず戻る」と。ボスの言葉は絶対よ。私のプログラムを書き換えでもしない限り、
私の電子頭脳は彼の命令に従い続ける。百年でも、千年でも、彼の帰りを待ち続けるわ」
「そうか。なら仕方がない」
バイアスは言うと、腰のホルスターからハンドブラスターを引き抜いた。そして無造作に腕を前に突き出
すと、愛梨の眉間に狙いを付けた!
愛梨たん必殺、目からビームにょ、が炸裂したのはその時であった。
もし、大宇宙の群狼 がノベライズされたら、犬宇宙の群狼 の方も、同時掲載
してほしい。
>196
ノベライズされたら、って
これは小説になってないってこと?
198 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/12/11 00:32
虎の穴では他に『青空と小鳥と原爆』てのが結構いい評価を受けていた。
自分がかいたのは駄目駄目だったけど。
201 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/12/11 23:24
虎というと、中古同人誌本屋かね?
>201創作文芸板から派生した投稿サイトだよ
203 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/12/12 20:22
所詮 GOMI
204 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/12/12 22:26
あっ、久しぶりに浮上なんだね。
初っ端からロムしてたからなんとなく愛着がわいたYO。
コツコツガムバレ〜。
バイアスはハンドブラスターの銃口を、愛梨の生首に向けた。愛梨は大きな目で正面からバイアスを
見据えている。その瞳に恐怖の色は微塵も無く、ただ揺らぐことのない、強靭な意志の光が輝いていた。
バイアスは愛梨の眼光を、五つの眼で静かに受け止めている。やがて思案するような表情を見せると、
腕をL字に曲げ、銃口を天井に向けた。
「バリリ!」
バイアスは声を発した。床に座っていた小太りのバラス人がサッと立ち上がる。
「ハッ!」
「この女の電子頭脳に細工して、情報を吐かせてみろ。やれるか?」
「全力を尽くします」
バリリは敬礼すると、白い牙を見せた。バイアスは一同に向き直ると、不適な笑みを浮かべ、
「さて、これからだが・・・各員は直ちに船内の捜索に移れ。使える武器をありったけ掻き集めるんだ。
敵は無頼の寄せ集めとは言え、百名を超す。得物は多ければ多いほど、それだけ早く片がつくという
ものだ」
「了解!」
バラス兵たちは敬礼すると、船内各所へ散って行く。副官のセムはバイアスに歩み寄ると、
「本当に本部には連絡しないのですか?せめて大統領には知らせた方が」
「無線封鎖をかける。不用意に通信を発して傍受されでもしたら、せっかくの獲物に逃げられる恐れが
ある。この際、賊は一匹残らず退治したいからな」
「畏まりました」
セムは頭を垂れた。バイアスは言う。
「敵は俺たちが連中のアジトを知らないと思ってる・・・ところが実際にはこっちは「ある方法」を使って、
ちゃんとハイエナどもの巣の位置を掴んでるんだ。今度は俺たちが逆に奇襲を掛ける番だ。驚いたデュー
クの馬鹿面を首実検するのが待ち遠しい」
バイアスは牙を剥き出すと、残忍な笑いを浮かべた。
バイアスはセムに命令を発する。
「船のことはお前に任せた。俺は現場で指揮を執る」
「了解です」
セムは敬礼して、シートに向かう。バイアスは出口に向かおうとして立ち止まると、振り返
って愛梨の首に眼を向けた。
「本当に奴が生きてると信じてるのか」
バイアスは言った。
「仮にあの爆発を生き延びたとして、宇宙の真ん中で、食料も無しでどうやって命をつなぐ?
機材も燃料も無しでどうやって脱出する? それでも戻って来るというのなら、奴は正真正銘
のスーパーマンだ」
愛梨は首だけの姿で、ニッコリと笑った。そして、その美しいマスクを明るく輝かせながら、
確信に満ちた声で告げた。
「彼ならやるわ」
「殊勝な女だ」
バイアスはブリッジを出て行った。
バラス人たちは武器庫を漁ると、地球製の様々な武器を手に入れた。ファイアーバードの武器庫には、まるで
ノルマンディーにでも上陸するつもりだったのかと思えるほどの、大量の武器が貯め込んであった。ビームライ
フルにバズーカ砲、手榴弾に小型原爆まで揃っていた。実はこれらはすべて、リュウが惑星デンドリュームの原
住民のために、手土産として用意した物だったのだが、バラス人に宇宙船が乗っ取られた今となっては、それが
配達先に届けられる可能性は無くなっていた。そして、その武器群は、今や地球人のためではなく、その仇敵で
あるバラス人のために威力を発しようとしている。
バラス兵たちは部屋に集まると、武器の山からそれぞれ好みの品を手に取り、得物のチェックを開始した。兵
隊たちは金属の感触を味わいながら、まるでカーニバルの前日であるかのような興奮を感じていた。多くの戦友
を失った直後であり、本来なら沈んだ雰囲気になってもおかしくはなかったが、一方で、古代から受け継がれた、
戦いを愛するドラゴンの血が沸き立つのを抑えることは出来なかった。しかも彼ら陸戦隊員にとっては、長い間
船室に閉じ込められた末の、久々の実戦である。抑えつけられていたエネルギーは既に臨界点まで達していた。
バラス人たちは、あと数十時間後に彼らによって繰り広げられるだろう血の狂宴の事を思うと、自然と顔に笑
みがこぼれてきた。そして哀れな生贄たちをどのように料理するか、楽しい想像を繰り広げる。引き裂くか、そ
れとも串刺しにするか。
祭りの日まで、あと二日。
もう少し続けようと思ったのですが、どうもテンションが上がらない。
中途半端になりそうなので、今日はやめときます。たった四枚・・・
(土日やって、週明けには何とか)
>>195 にょ
>>196 挿絵はハイぺリオンの人にお願いしたい
>>197 自分じゃよう分からん。小説になってます?
>>200 めげずにがんばろー
>>201 >>204 >>202 別物
>>203 なるほどね
>>205 >こつこつがんばれ
凄くありがたいんですが、やっぱ自分を甘やかしちゃいかん。最低、週二十枚を目指します
210 :
大宇宙の群狼:01/12/14 22:50
>>199 「天井桟敷のホームレス」読みました。
感想と言うか、気付いた事が幾つかあります。
まず主人公が地下世界から地上を目指す理由が「思い付き」というのに引っ掛かりました。
確かに現実にはそういう風に「思い付き」で何らかの行動を起こす人はいるとは思いますが、
ではそういう人物が小説の主人公としてふさわしいかとなると、なかなか難しいのではないかと
思えるのです。
順を追って説明すると、「物語」というのは登場人物が「行動」を起こすことによって展開して
いきます。例えばある登場人物が椅子に座ったままボーッとしてるだけでは、物語にはなりません。
ですが、その人物が椅子から立ち上がった瞬間、「状況に変化」が生まれて、「描写するに足る」物語が
生まれます。
1ページ目=男が座っている
2ページ目=その男が立った!
これはストーリーになってますが、
1ページ目=男が座っている
2ページ目=男が座っている
ではストーリーになりません。男が立った瞬間、ストーリーが生まれます。
そして次に考えるべきなのは「なぜ男が立ったのか」という「動機」です。(「動く契機」と書いて動機)
前の例で行けば、男が立ったのは腹が減ってたからかも知れないし、窓の外にいい女が立ってたから
かも知れない。その動機の切迫度の度合いによって、立ち上がるスピード、勢いが違ってくるでしょう。
そして立つスピードが速ければ速いほど、つまり状況の変化の度合いが激しければ激しいほど、目に見える
ストーリー展開はより鮮やかに読者の目に映ります。つまり動機の強さ=ストーリー展開の力強さとなります。
そう考えていくと「天井桟敷」の主人公は、動機が弱すぎて、物語の担い手にはなりにくいのではないかと
思えるのです。つづく
どうしても「ファイアーバード」って文字が「ファイバード」に見えてしまう。
>>210 こら〜!
間違って鑑定団スレに来ちゃったのかとオモタよ!
213 :
大宇宙の群狼:01/12/14 23:23
>>210の続き
「思い付き」で地上を目指した人間は、いつまた「思い付き」で地底に後戻りするか
知れません。ここでの主人公の行きつ戻りつは、物語の行きつ戻りつに直結します。
本来力強く上昇していくべきストーリー展開の勢いが、動機の弱さによって殺されてしまう。
それは小説にとって非常にマイナスだと思います。
では「天井桟敷」の主人公が物語を引っ張って行くような馬力のある動機を持ってないのかと
いえば、とんでもない話です。まず主人公の男が(男でしょ?)本当に残飯を食っていくような
生活に満足してるかという所から、もう一度掘り下げた方がいいのではないでしょうか。
作者が主人公の身になり代わって考えてみた時に、どうしたって地上界に対するコンプレックス、
憧れと憎しみが混じり合ったアンビバレンツな感情に突き当たる筈です。他にも同じ地下人に対して
仲間意識を持つと同時に、軽蔑する気持ちだってある筈でしょう。ここら辺を作者がいじくってやれば
主人公は面白いように動き出して、それに引っ張られてストーリーも力強く展開していくに違いありません。
また脇の人物にしたって地底のリーダー、黒人、天上界へ手引きする女等、うまく絡ませれば面白くなる。
まあ軽く二百枚は行くでしょう。
あと必要なのは作者の引き出しの数と「根性」だけ。
ていうか、人の事だとよく見える。自分のことになると訳分からん。
(ちょっと調子に乗ってしまった。こっちも素人なんで、そんな気にせず片耳で聞いて頂ければ)
参考図書
D・R・クーンツ「ベストセラー小説の書き方」
今ジナルSF書きます!スレ
・概要
「面白くて稼げる作家になりたい!」
何の因果かD・R・クーンツに憧れる
>>1とやさしい瞳のSF板住人が
織り成す成長日記。あと犬宇宙も。
・現在創作中の小説
「大宇宙の群狼(だいうちゅう の ぐんろう)」-----カコイイ
>>20さん/関連情報
>>22さん
ジャンルは古典風味のSF。
時は25世紀、人類はなんてゆーか銀河の大航海時代を迎えている。
前世紀に実用化となった超光速推進技術のおかげで恒星間の連絡が容易となり、
およそ100年程の瞬く間に地球人類は銀河系へと進出した。
その過程で異なる種である勢力(少なくとも超光速技術を持ってるらしい)と遭遇。
色々問題はあったらしいが「連盟」が発足、25世紀現在では
少なくともお互い「共通の言語でコミュニケーション」可能らしい。
その割には種族偏見が根強く、妙に人間くさいエイリアンがいたりする。
また、宇宙空間における公海や、大使館などの概念も存在している。
あと犬宇宙も。
>>215 ・登場人物
リュウ・カズマ(主人公)
種族:人類(日系男性)年令:少なくとも成人であると信じたい。
職業:地球連邦政府職員で、所属は明らかにできない秘密工作員。
出身:2425年NYダウンタウンで生をうける。父は宇宙海兵の馬の骨、母ボネルは放蕩令嬢。
冷凍睡眠のあとはコーフィーを欲しがる。日本の心はお茶なのに・・・。
愛梨(あいり)
種族:日本人女性型アンドロイド(ハイパーダイン120シリーズ=女性型ビショップ?)
年令:製造から365日くらい。みかけは25才前後。
職業:地球連邦政府所有の特注装備。「よとぎ」機能あり。
出身:極秘。でも最新型をベースにしたオーダーメード。
セラミックシャシー(骨格?)を強靱でしなやかな高効率人工筋肉でつなぎ、
フレッシュスキン(高分子素材?)で包んだ。
反射/運動速度は、人間のスポーツマンくらい。
動力はバッテリー。スペックは、一度の充電で約30日程稼動。
制御中枢超小型コンピューターは頭部に組み込まれている。バックアップ電源内蔵。
アーカム
バラス勢力宇宙艦隊巡航艦「ラーマ」の艦長。
バイアス
「ラーマ」に乗り組んでいる陸戦隊隊長(声:ささきいさお予定)。
なんか人間臭くてカコイイ。でもバラスの人。
セム
バイアスの部下で、陸戦隊付の特務曹長。
兄弟を戦火で失った過去があり、地球人(笑)を憎み続ける。
公爵(でゅーく)
銀河のお尋ね者。名高い宇宙海賊で、「連盟」から特A級で指名手配されている。
出身/経歴など一切不明のはずだが、
主人公達は「公爵」の海賊名と「銀河一の海賊として名高い男」は知っている
>>68 ラディンと部下
平行宇宙「太宇宙の群狼」で一生懸命がんばった人々。
>>56 犬宇宙の群狼
イイタイミングで欺瞞レスで攻撃する謎の勢力。
漏れは大好きだ。
>>217 × 猫電波さん
○ 猫宇宙さん
大変に失礼いたしました。ごめんなさいです。
あと
>>215で、群狼世界の設定だけ書いて、本編のアオリを忘れちゃタ。
219 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/12/16 03:03
「ちょっとボス、聞いてくださいっ!」
「・・・ん、なんだ愛梨」
「さっき笑点みてたんですけどねー」
「・・・そんなのばっかり見るなよ」
「前座、嘉門達夫がやってたんですぅ。嘉門達夫ですよ。どう思いますー?」
「別に誰が前座だっていいだろ。円楽が死ぬわけじゃあるまいし」
「ボス。先に死ぬのは歌丸さんのほうです!」
「おまえはそんなことを言いにきたのか」
「違いますっ。ただボスの間違いが、私のキャパシティを遥かに超えていたので、訂正しただけです」
「で、嘉門達夫の話ってなんだ」
「あのですねぇ、笑点の前座って、もっとマイナーどころがやるべきものなんです。
それが円楽さんったら『今日の前座は嘉門達夫さんです。どーぞー』なんて普通に言っちゃって・・・
わたし、くやしくてくやしくて・・・。インカムを画面に投げつけちゃいました」
「別に前座はマイナーどころがやるわけじゃないだろう」
「ボスっ!!! 笑点の前座って、もっと混沌としているべきなんですっっ!
大喜利と前座のレベルの差を、円楽始め笑点メンバーがあざ笑う、
でもそれは口に出して言わないで表面上は褒めていることにする。
そんな歪んだ世界が大事なんです」
「そんなこと考えているのはおまえだけだ」
「じゃあ聞きますけどー、もし大喜利より前座のほうがおもしろかったりしたらどうなります??」
「それはそれでいいんじゃないのか?」
「よくありませんっ! そんなことになったら、チャーザー村ネタ程度では枯れ笑いも取れません。
どっちみちこん平は笑えない・萌えないという話もありますが」
「するとなんだ、愛梨は、今日の笑点の放送をどうしたいんだ」
「前座に、ゼンジー北京きぼんぬ」
「帰れ」
以上、「大宇宙の群狼/いんたーみっソン01」をお送りしました。
引き続き「大宇宙の群狼〜第二幕」をお送りいたします。
バラス人たちが宇宙の闇を進軍していた、その同時刻。
広い宇宙の片隅の、とある一室。
何処か知れぬその大広間は、青みを帯びた薄い闇に包まれていた。
水面のように磨き上げられた石の床と、荒々しい岩肌が剥き出しになったままの壁。その壁の
あちこちに龕洞が掘られ、古めかしく燭台に灯がともされていた。しかしその光も、広間の闇を
追い払うには弱過ぎる。
正面の床には二、三重の段が刻まれ、それを越えた向こう側には、大きな寝台が置かれていた。
黒い石製の寝台は、うずくまった怪獣キメラの形をかたどっていて、闇の中、不気味な気配を漂
わせている。そして寝台の上には、人工シルクの掛布にくるまって、女が一人、眠っていた。女
は全身が白く美しい毛並みで覆われていて、三角形の耳が二つ、頭の上から突き出している。掛
布の端からは白く長い尻尾がのぞき、その優美でしなやかな肢体は人間と言うよりは、猫に近か
った。雌猫は目蓋を閉じて体を丸め、静かに寝息を立てている。
そして同じ寝台の上に、もう一つ人影があった。青白い肌をした青年。青年は一糸まとわぬ姿
でベッドの上で胡座をかき、ヨーガのような姿勢で目を閉じている。全身から冷ややかな霊気の
ようなものを発散したその姿は、近寄りがたい、荘厳な雰囲気を漂わせていた。その横側、壁面
には大きな円形の窓がくり抜かれている。そして厚い窓ガラスのすぐ外には、宇宙空間が広がっ
ていた。
青年は大理石の彫像のように動かない。静寂が辺りを支配している。
墓場のような静寂の中、靴音が響いた。
広間の暗い入口から、長身の男が入って来る。足許まで隠れる緑色のローブを羽織った男は、
銀色の肌を除いては、地球人とさして変わらない姿をしている。剃り上げられたスキンヘッド
の頭頂部からは、目にも鮮やかな白い弁髪を背中に垂らしていた。
弁髪の男は立ち止まると、寝台を見上げた。そして身じろぎもしない青年に向かい、恭しく
頭を垂れる。
「公爵(デューク)・・・お知らせしたい事が」
青年は目を閉じたまま身動き一つしない。弁髪の男は静かに待ったが、やがてもう一度声を
かける。
「デューク。お目覚めになって下さい」
「おけ、サムスン。瞑想中は邪魔するなと言ってある筈だ」
青年は目を閉じたまま、口を開いた。その声に不快そうな響きが込められている。サムスン
と呼ばれた弁髪の男は平静な口調で、
「ご容赦のほどを。何分急を要する用件でしたので」
「話は分かってる。戦闘艇の事だろう」
サムスンは顔を上げた。
「はい」
「二機がやられて、一機だけ戻って来た。やったのは地球の船だな」
サムスンは目を鋭く細めると、
「何故それを?」
「いつも言ってるだろう。俺にはすべてが見通せる。俺は偉大な超人の末裔なんだ」
青年は尊大な調子で言った。
青年は目を閉じたまま続けた。
「戦艦一隻やるのに、戦闘機二機に乗務員四名か。上出来な方だ。詰めが甘かったがな」
「申し訳ありません。地球人がいるとは思いもしませんでした。この借りは必ず」
「その必要はなくなった。地球人は殺された。船はバラスの一個小隊が乗っ取り、こちらに向かっている」
「は?」
「馬鹿な連中だ。俺を騙そうと企んでる。爬虫類風情が身の程も知らずに」
青年は唇を歪めて言った。
サムスンは不思議そうに青年を眺めた。青年は均整の取れた青白い裸身を、広間の冷え冷えとした
空気に晒している。鼻筋の通った顔立ちは端正で、ギリシア神話に登場する美少年といった趣きだっ
た。ただ、吊り気味の目元に険の含んだ、一種野卑と言っても良いような気配も漂わせている。
コバルトブルーの豊かな髪が肩にかかり、耳の先端は尖って、薄い酷薄そうな唇の隙間からは、発
達した犬歯が時折のぞいた。死人のような肌の色とあいまって、その姿は、地球の伝承に出るヴァン
パイアを彷彿とさせた。
青年の足許で雌猫が目を覚ました。情事の後の幸福な疲労感から回復すると、猫は金色の眼でうっとりと
主人を見上げる。毛並みの下から盛り上がった豊かな双の胸が、たっぷりとした量感を湛えて揺れた。
青年は目蓋を開いた。ルビー色の瞳でサムスンを見据えると、
「まあ、いい。こっちも奴らには聞きたい事がある。連れて来る手間が省けるというものだ」
青年は窓の外を眺める。星明りが差し込むガラスの外には、小惑星帯の無数の隕石群が宇宙の闇を漂っている。
「バラスも地球も下らん・・・奴らは何も分かってない。銀河を支配するのはあいつらじゃない。この俺なんだ」
青年は犬歯を剥き出しにして、残虐な笑いを浮かべた。
「来るがいい、群狼の巣へ!」
真紅の目を燃え上がらせたその顔は、悪魔の面相そのものだった。
一方、ファイアーバードは、宇宙の何処かでそのような会話が行われてるとは露知らず、二日の間、順調に
宇宙を飛び続けていた。
ブリッジではセムが重力シートに座り、操縦桿を握っている。セムは始めの内こそ、慣れない異星の機体に
戸惑ったものの、今ではまるで何十年も慣れ親しんだ船のように、自在にコントロールしていた。
セムは仇敵である地球人の作った宇宙船の出来の良さに舌を巻いた。その重装甲や重武装は同クラスの船では
銀河一である事は間違いなく、また操縦性の良さでも突出したものを見せていた。セムは地球人用の窮屈なシー
トに辟易しながらも、主人の指示に機敏に反応する機体に、次第に操縦が楽しくなっていくのを感じていた。そ
して、自国の武骨で扱いにくい機体を思い起こすと、苦々しい気分に襲われた。
ガラスの外には宇宙の深い闇が広がっている。その時、ふとセムの視界に、白く小さな影が入って来た。コク
ピットの操作台の上に、身長二十センチほどの白い小人が乗っている。二頭身に近いプロポーションをした小人
は、計器盤の上に膝を抱えて座ると、大きな緑色の眼でジッとセムの顔を見上げた。セムが訝しげに三つの眼を
細めた時、小人は突然蛙飛びをすると、セムの顔に飛び掛った。セムは仰天すると、顔をかきむしり、ヤモリの
ように張り付く小人を引き剥がしにかかる。そして小人を掴み取ると、後方に振り返って怒鳴った。
「おい、バリリ! おい!」
「何だ、騒々しい」
とぼけた声が返事をした。
「おい、バリリ!」
「何だ、騒々しい」
とぼけた声が返事をした。見ると、部屋の後方で、小太りのバラス人が床に座り込み、携帯端末機
を使って仕事をしている。
「どうした、素っ頓狂な声出して。魚雷でも食らったか?」
バリリは茶化すように言った。セムは小人を鷲掴みにして突き出すと、忌々しげに、
「見ろ。お前のペットがいきなり顔に飛び掛って来たんだ」
白い小人はバリリを見ると、甘えた声で「ピー」と鳴いた。バリリは肩をすくめると、手招きをし
て言った。
「こっち来い、ピキ」
ピキと呼ばれた小人は、短い手足をバタつかせてセムの手から逃れると、一目散に主人の方へ走っ
て行く。バリリは小人を肩に乗せると、鼻で笑った。
「そういきり立つなよ。こいつはただ、お前の口に潜り込もうとしただけじゃねえか。デカイ図体し
て、こんなチビにビクつくこたぁねえぜ?」
「俺の口はペット小屋じゃないぞ」
「ケッ、知ってらぁ、そんなことは。それより黙って聞いてりゃペット、ペット言うな。ピキは仲間
なんだぜ。大体、ピキの今度の活躍は、ほとんど勲章もんだぞ。もしピキの働きがなけりゃ、今ごろ
お前は地球送りにされて、拷問にでもかけられてるさ。恩知らずが、少しは感謝したらどうだ?
なあ、ピキ?」
ピキは小さな口を開くと、退屈そうに欠伸をした。
セムは苦い顔で小人を眺めた。白い小人はバラス人の間では、愛玩動物として広く知られている。
飼育法が変わっていて、飼い主のバラス人が口から飲み込み、体内に住まわせるというものだった。
元はと言えば、バラス人の祖先である恐竜が、自分自身では作り出せない一部の栄養素を、バクテ
リアに合成させるため、体内に共生体として飼い始めたのが起源である。小人は、そのバクテリア
を遺伝子操作して、人の形に成形したものだった。
ペットを体内に飼うというのは、胎児を腹に抱えた母親のような一体感を呼び、熱心で情の深い
飼い主の中には、実の子供のように可愛がる者もいた。ただ、良識派からは、その飼育の様子が野
蛮な原始時代を思い起こさせるとして、白眼視される向きもある。
セムは溜め息をつくと、
「分かったから、早くそいつを腹の中に飲み込んでしまえ。放し飼いにされると目障りだからな」
バリリは憮然とした表情で、
「器の小せえこった。そんなんじゃ、いくら出世しても、兵隊共に陰で笑われるのが関の山
だぜ。少しは隊長を見習え」
「何を!」
セムが睨みをきかせたその時、部屋のどこからか、女の声で、低い呟きが漏れた。第三者の声
にバリリは振り向くと、舌打ちをして毒づく。
「チェッ、強情な女だぜ、まったく」
見るとバリリの正面に若い女の首が置かれている。胴体から引っこ抜かれた女アンドロイド愛梨
の卵型の頭部。声はそこから漏れていた。
バリリの正面の床に、女アンドロイド愛梨の首が置かれている。愛梨の冴えた美貌は相変わらず
ではあったが、その表情は、二日前にバイアスと舌戦した時とは、随分様子が違っていた。
その生気を帯びていた筈の美しい黒い瞳は、どんよりと曇って、焦点の定まらないまま、視線を
宙に彷徨わせている。ピンク色の形の良い唇の隙間からは、意味を成さない呟きが漏れ続け、まる
でドラッグ中毒患者のようにさえ見えた。魂の抜けたようなその表情からは、以前の利発で、颯爽
とした雰囲気は影も感じられない。それは、まるで別人だった。
セムは愛梨とバリリを見比べると、怪訝そうな声で、
「どうした。さっきから何をてこずってる」
「二日間、あの手この手で電子頭脳を攻め続けてみたんだが、全部撥ね返してきやがる。頑として
口を割ろうとしないんだ」
バリリは携帯端末機を操りながら答えた。端末から伸びたケーブルが、愛梨の首のもげた部分に
接続されている。
「記憶野にしっかりロックがかかってる。人格プログラムが亀の甲羅みたいに周りを覆ってるんだ。
要するに、この女を言葉で説得するしか、喋らせる方法はないってことだな」
セムは渋い顔をすると、
「馬鹿馬鹿しい話だ。人間がロボットに頭を下げろって言うのか?」
「いずれにしたって、話しても口を割りはしないだろう。屈強のバラス兵相手に、あれだけの大立
ち回りをやらかしたんだ。大したタマさ」
バリリは溜め息をついて、愛梨の首を見下ろした。
愛梨はバラス人たちの会話には何の興味も示さず、ただひたすら念仏のような呟きを漏らし続けて
いる。セムは愛梨のドロンとした目を見ると、
「さっきからこの女、何言ってるんだ?」
「ただの寝言だ。脳味噌ん中、散々いじくり回したんで、酔っ払ってるのさ。多分、俺たちの話して
る事なんか、何一つ耳に入ってないだろうよ」
「それで? お手上げという訳か。隊長に何て報告する?」
「言いたかないが、俺は一介の通信兵だぞ。専門家じゃないんだ・・・まあ、方法がないこともない」
バリリはポケットから一枚のディスクを取り出して見せた。セムはそれを見ると、
「何だ、そいつは」
「特製のコンピューターウィルスだ。こいつをこの女の電子頭脳に仕掛ける。そして女の人格プロ
グラムをぶっ壊し、中身の記憶部だけ取り出す。すると女アンドロイドは電卓並みの機能しか持た
なくなってしまう。喋る事も、考える事も出来なくなって、修復は不可能だ」
バリリは二ヤリと笑う。
「ただ気掛かりなのは、このウィルスは劇薬みたいなもんで、プログラムの内容によっちゃ、情報
を取り出す前に、電子頭脳なるごとオシャカにしちまう危険もある。最後の手段だな」
「やれよ。作戦が済んでからじゃ遅いんだ。駄目なら駄目で仕様が無い」
セムは言った。バリリはディスクを端末のスリットに差し込むと、愛梨の顔を眺めた。愛梨は人
形のように虚ろな目を開いたまま、無抵抗で最終的な死を待っている。ケーブルを通じて電子頭脳
に侵入して来るウィルスは、愛梨の精神を完膚なきまでに破壊し、彼女を粗大ゴミに変えてしまう
だろう。
「成仏しろよ」
バリリはボタンに指で触れた。
ネコミミ…ハァハァ…。
>232 うう。
SF高校の聖徒さんかね?
さげ。
にょにょ?
235 :
名無しは無慈悲な夜の女王:01/12/21 04:23
「犬宇宙の群狼」というタイトルは、なんかカッコイイぞ。
バリリがボタンを押して、愛梨に死の宣告を下そうとしたその時、不意に入り口の自動ドアが開いた。
ひょろりと背の高いバラス人が姿を見せる。ブリッジの二人は振り向いた。
「デムスか。階下はどうだ。連中、ピリピリしてんじゃねえか?」
バリリは皮肉を込めて言った。
「ん?ああ・・・まあ」
デムスは要領を得ない様子で答える。六つ眼のバラス人はキョロキョロとブリッジを見回すと、歩を
進めて部屋の中央に出た。
「隊長は?」
「休んでる。俺が無理にそうするよう言ったんだ。ここんとこ眠る暇もない日が続いたからな。
隊長に用か?」
セムは聞き返した。デムスは答えずに天井を見上げると、心ここにあらずといった様子でその場に
立ち尽くした。
セムとバリリはその様子を怪訝そうに眺めている。しばらく無言の状態が続いた後、デムスはセムの
顔に視線を移した。
「セム・・・妙なこと聞くようだが」
「?」
「船に異常はないか?」
セムは相手の言わんとする意味が掴めないまま、不思議そうにデムスを見返す。
「異常?何のことだ」
デムスは答えようとしたが、一瞬躊躇する素振りを見せると、また口をつぐんだ。セムは計器盤を眺めると、
「・・・故障もないし、順調そのものだ。あと半日で予定通り上陸する」
「船内はどうだ」
「船内?」
「モニターをつけてくれ。変わった様子は?」
デムスの言葉に焦りのようなものが感じられる。セムはモニターのスイッチをつけた。
「モニターをつけてくれ。何か変わった様子はないか?」
デムスの言葉に焦燥の陰が差した。
セムは言われるままに、船内モニターのスイッチをつけた。横壁の四面テレビモニターに、カメラを通じて
船内の様子が映し出される。その内の一つには、バラス兵たちが一室に集まってカード博打や、ダーツ投げに
興じてる姿が映っていた。リラックスし切った様子に、バリリは唇を歪めて笑う。
「士気は上がってるようだな」
セムはボタンを連打し、画面を切り換えていく。
「特に変わった様子はないようだが・・・」
デムスは食い入るように画面に見入っている。その様子に痺れを切らしたセムは、
「一体、何だ。もったいつけずに早く言え」
デムスは発達した下顎に手を当てると、考えに沈んだ。やがて顔を上げると、他の二人を見て口を開く。
「二人とも聞いてくれ。言っとくが俺は寝惚けてないし、酔っ払ってもない」
デムスの鱗に覆われた顔が幾分蒼ざめて見える。
「いいか。この船には、何かいるぞ!」
セムとバリリは顔を見合わせた。
数分後、バリリとデムスは連れ立ってタラップを降りて行くと、宇宙船の最下層甲板に辿り着いた。非常灯のみの
薄暗い通路の、バラス人の体格には低過ぎる天井を潜るようにして、二人は歩いて行く。
「クルーがもう一人いたって事か?地球人も女も、そんな事、おくびにも出さなかったぞ」
「いや。そういうものじゃない」
「なら密航者か」
「密航者・・・とも違う」
「何だ?じれったい奴だな。一体全体、何を見たって言うんだ」
バリリが四つの眼で相手を睨む。その頭の上には、小人のピキがくつろいだ姿勢で掴まっていた。
デムスは不意に立ち止まると、壁のドアに眼を向けた。バリリはドアと相棒の顔を見比べる。
「ここか?」
デムスは頷く。バリリはドアに手で触れると、首を傾げた。
「ん?鍵が掛かってるぞ」
バリリは天井近くの船内スピーカーに向かって怒鳴る。
「セム!こん中はどうなってる」
『食料庫だ。二日前に一度開けてから、ずっとドアはロックしてある』
スピーカーを通じて、ブリッジにいるセムの声が通路に反響した。
バリリはデムスの顔を見詰めた。デムスは緊張した面持ちでドアを見守っている。バリリはホルスターからレイガン
を抜くと、グリップを両手で握り、顔の横で構えた。
「・・・開けてくれ」
バリリはブリッジに指示を出す。数秒後、鍵の開く機械音が響くと、ドアは横に滑って開いた。
バリリは暗い室内に足を踏み入れた。
バリリは暗い室内に足を踏み入れた。
室内は広めのスペースに、大きな箱入りの食料が、所狭しと天井近くまで積み上げられている。バリリは部屋に入ると、
壁の電源スイッチを押した。白い照明が部屋の全体像を浮かび上がらせる。
バリリの頭上で白い小人が、満載の食料に感嘆の声を上げると、床に飛び降りて、倉庫の奥へ駆けて行った。バリリは
その後から、荷物の隙間を縫うように進む。
「・・・内側からロックを掛けたのか?」
物陰を覗き込みながら、訝しげに呟く。一通り見回ると、
「セム。ドアの開閉方法は?」
『暗証番号を使うか、もしくは遺伝子配列を読み取って、本人だと判別した場合のみ開く。あと今俺がやって見せたように
ブリッジで全室を一斉にコントロールする事も出来る』
スピーカーから声が響いた。
バリリは振り返ると、入り口に立っているデムスに声を掛けた。
「本当にドアを開けて入ったのか?間違いないんだな」
デムスは部屋を見回しながら、言いにくそうに、
「いや。ドアは開けてない」
「開けてない?ドアも開けずに、どっから入るって言うんだ」
「それは・・・」
「煙みたいに通り抜けたってのか。一体、何を隠してる。お前が見た密航者ってのは、何者だ?」
デムスは目を伏せると、ボソボソと呟く。
「ユ、ユーレイ・・・」
「何?」
「ユ、幽霊だ」
デムスは顔を上げると、キッパリと言った。その顔に戸惑いの色が見える。
「ユ、幽霊だ」デムスは言った。
バリリは相棒の顔を見詰めると、黙り込んだ。そして壁に片手を突いてもたれると、鱗に包まれた顔を撫でた。
「デムス・・・あのなあ」
「ウ、嘘じゃないぞ!あれは本物の幽霊だ。間違いない。この六つの眼でちゃんと見たんだ」
デムスは顔の複眼を指差した。
「得物の狙撃ライフルを母船に置いて来ちまったんで、代わりがないかと探してたら、地球人向けのなかなか
良さそうなのが見つかった。ただあんまり小さ過ぎるんで直そう思い、通路に出て調整してたんだ。部屋の中
じゃ騒々しくて集中も出来ないからな」
デムスは身振り手振りで必死に喋り出す。
「で、通路でスコープを覗いてたんだが、その時、妙な影が視界に入った。通路の奥の方に、何か「霞」のような
ものが蠢いている。俺は最初、レンズの曇りかと思ったんだ。でもスコープから眼を外してもう一度見直して
みても、やっぱり同じ場所に霞は留まってる。
俺が見詰めてると、「霞」は序々に色を濃くしていき、空気との境目の輪郭をはっきりさせていった。そして
しばらくすると、なんとそいつは薄灰色の人型になって現れた!半透明の体は確かに、頭と胴体、両手足を備えてる。
それもバラス人のサイズよりかなり小さい。そして時々首や手を動かしてるのを見ても、間違いなく生きてた」
バリリはレイガンをホルスターにしまい込む。デムスは続けた。
「半透明の人型は、しばらくこっちを見ていた。すると不意に背中を向け、通路を走り出した。俺は慌てて追い
かけた。調整中のライフルも放り出してな。曲がり角を折れると、人型はタラップを降りて階下へ逃げて行く。
俺はとっ捕まえようと甲板を降り、その前の通路に出た。
そしたら人型はこの部屋の前に立ち止まって、こちらを窺ってる。その向こうは行き止まりで、奴の半透明の体を
通して、壁の継ぎ目の筋まではっきり見て取れた。俺はしめたと思い、両腕を広げて近付いて行った。
ところがその時、思いも寄らないことが起こったんだ!」
デムスは話し続けている。
「俺は両腕を広げると、薄灰色の霞をまとった人型に近付いて行った。人型は音もなく片手を伸ばすと、ドアに触った。
すると思いも寄らない事に、奴は、そのまま手をスルスルと扉に沈めて、体を中にめり込ませていく!俺があっけに
取られてる目の前で、奴の体は数秒後には、ドアの中にそっくり埋まっちまったんだ。
俺は我に返ると、ドアに駆け寄った。中に入ろうとしたが、鍵が掛かってて入れない。ゾッとした俺は、その足
でブリッジに向かったっていう訳だ」
デムスはバリリのうろんげな視線に気付くと、吐き捨てるように、
「畜生、信じてないな。だから喋りたくなかったんだ。気違い扱いされるのがオチだからな。でも断言するが、
この船には俺たち以外にも誰か、いや、何か乗ってる!
俺は狙撃兵だから、視力には絶対の自信を持ってる。その俺が見たっていうんだから、間違いないんだ!」
その時、部屋のどこからか突如甲高い鳴き声が響いた!
デムスが喋り終えた時、部屋のどこからか「ピー」という鳴き声が聞こえた。辺りを見回すと、
天井近くの箱の上に、白い小人のピキが、どこからか見つけ出して来た缶詰めを抱え、得意げに
している。
「ピキ、止めとけ。地球の食い物なんか腹をこわすぞ」
バリリは言った。ピキは缶詰めの蓋を開けると、指で中身をすくい取り、小さな口に入れた。
そして上機嫌に緑色の眼を見開くと、甲高い声で覚えたての言葉を発する。
「イイ!」
「来い。戻るぞ」
「戻るって・・・おい、もう終わりかよ?」
デムスは苛々とした調子で聞く。バリリはデムスの肩に手を置くと、
「まあ落ち着け。きっと戦闘前で気分が昂ぶってたんだ。俺も経験ある」
「はあ?何的外れな事言ってる。俺はいたって冷静だ!」
「声を荒げるなよ。それに見ろ。実際、部屋には何もいやしない」
バリリは室内を指し示す。
「それに仮にだ。仮に幽霊が同乗してたとして、野郎が俺たちに何が出来る?せいぜい退屈しのぎ
に俺たちを驚かせる位だろ。幽霊なんて糞喰らえだ、なあ」
バリリはニヤリと笑った。
「本当に何もいないか?本当に?」
デムスは自信をなくしたように呟く。バリリは気の毒そうに、
「まあ、ブリッジに戻って、地球のまずいコーヒーでも飲もうじゃねえか。お前は真面目過ぎる。
もっとくつろげ」
『どうだ。何かいたか?』
室内スピーカーからセムの声が響く。
「まあ待て。戻ったら説明する」
バリリは言った。
「隊長が休んでて好都合だった。赤っ恥かくところだったぞ」
「ちょっと待て。他の部屋に通り抜けたのかも知れない。一応確認を」
「おいおい。あと数時間で上陸だぞ。勘弁しろよ」
バリリは異形のマスクをしかめた。デムスは釈然としない様子で、その場に立ち尽くしている。
バリリは後方に振り返ると、
「そら、ピキ。早くしろ」
見るとピキは天井近くの箱の上で、身動き一つせず固まっている。主人の言葉に振り向きもし
ない小人に、バリリは怪訝そうに、
「ピキ、どうした。ん?」
ピキはその手から缶詰めを取り落とす。床に缶が当たる音が、シンとした室内に響いた。ピキは
緑色の眼を大きく見開いて、向こうを凝視している。バリリはその様子にただならぬものを感じて、
同じ方向に眼を向けた。しかし、積み上げられた荷物の陰になって、先を見通す事が出来ない。
ちょうどその時だった。「それ」が奇怪な姿を現したのは!
バリリは倉庫の奥に眼を向けた。向こう側に積まれた荷物の陰に、何か異様な気配が感じられる。すると
荷の隙間から、不意に淡いグレーがかった霞のようなものがはみ出して来た。霞はぼんやりとした塊のまま、
ゆっくりと動いて行くと、バラス人たちの正面に対した。
ピキは甲高い悲鳴を上げると、荷物の上をリスのように走り抜け、バリリの肩に飛び付いた。その間
にも正体不明の霞は、蜃気楼のように揺れ動きながら、次第に空気との境目の輪郭をくっきりとさせて
いく。そして灰色の霞はみるみる濃度を上げていき、凝集を高めると、黒い影に塗り潰された。影は頭
と胴体、そして手足を二本ずつ持った、完璧な人型のシルエットとなって空間に浮かび上がった。
バリリとデムスは驚きでその複眼を見開いたまま、絶句している。人型は両足を開いて立ち、両手を
腰に当て、こちらを見ていた。本体の漆黒は宇宙の闇より更に黒く、不吉な妖気を周囲に強く発散して
いる。それは日常の空間に突如開けた、地獄の暗闇への入り口にさえ感じられた。
ピキは怯え切って、小刻みに震えている。バラス人たちが凍り付いていると、人型は不意に両腕を
振って大きなストライドで歩き出し、真正面から向かって来た。バリリは我に返ると、慌てて腰のホルスター
からレイガンを抜く。両腕を前に突き出そうとしたその時、バリリの鼻面に闇の顔が迫った。闇の人型は
ぶつかるのも委細構わず、直進する。すると不思議な事に、人型はそのままバラス人の分厚い胸板に吸い
込まれ、次の瞬間には背中側に通り抜けた。デムスが脇でギョッとしているその眼前で、人型は正面の
鋼鉄の壁に体当たりすると、そのままズブズブと溶け込んで行き、跡形も無く姿を消した。
二人のバラス人は鋭い歯の並んだ大きな口をポカンと開けたまま、背後を振り返って壁を眺めている。
白けた雰囲気の中、二人は恐る恐る壁に歩み寄ると、手で触った。固い鋼鉄の感触を確かめると、互いに
顔を見合わせ、突如声を揃えて叫ぶ。
「隣りだ!」
二人は部屋を飛び出した。
バリリとデムスは通路に出ると、隣室のドアの前に立った。バリリは扉に銃口を向けると、天井の
スピーカーに向かって叫ぶ。
「セム!全室開放しろ!」
『何だと?』
「急げ!」
数秒後、通路並びのキャビンのドアが一斉に開いた。二人のバラス人は部屋に飛び込むと、
レイガンを中央に向けた。そこは小さな調理室で、レンジや流し台、調理器具が置かれている。
しかし、何かのいる気配はまったく無い。
バリリはキャビンの丸い舷窓に駆け寄ると、外を見渡した。しかしそこには宇宙の漆黒の
闇が広がってるばかりである。
バリリは歯噛みした。
「畜生、どこ行った」
「バリリ!こっちだ!」
通路からデムスの声が響く。バリリはそれに反応すると、素早く部屋から出た。
戻って見ると、デムスが通路の先の方を指差している。見ると向こうには階上に向かうタラップが
付いていて、そこに先程の謎の人型が段に足を掛けていた。人型は二人を見ると、身軽にタラップを
昇って行く。バラス人たちは大きな体を突進させ、タラップに取り付くと、後を追った。
階上に首を出してみると、通路の奥の方へ人型が駆けて行く後ろ姿が見えた。人型は通路に開いた
とある部屋の入り口に駆け込む。
バリリとデムスは追いすがると、数秒遅れで同じ部屋に飛び込んだ!
バラス人二人は部屋に飛び込んだ。
広い室内には、バラス兵たちが集合していた。兵隊たちはカードゲームをしている者や、ダーツを
している者、何もせずゴロ寝している者など、各々のやり方で休養を取っている。
バラス兵たちは、銃を抜いた二人組みが飛び込んで来ると、一斉に視線を向けた。壁に寄り掛かって
座っている大柄のバラス人が、バラス葉巻を燻らせながら、
「騒々しい奴らだ。餓鬼みてえに走り回りやがって。尻に火でもついてるのか?」
「サル、今何か、いや、誰か入って来たろう?」
デムスが聞いた。サルと呼ばれた大柄の男はのんびり紫煙を吐き出すと、
「寝惚けてるのか?人間はおろか、蠅一匹見てねえよ。銃なんか抜きやがって、どういう事か説明しろ」
バリリは無言で油断無く室内を見回している。白い証明の下、集中して四つ眼を凝らした。すると
しばらくして、大柄のバラス人の正面に、うっすらと陽炎のような空気の揺らぎがあるのが眼に止まった。
限りなく透明に近いそれは、見分けにくいものの、明らかに人の形をしている。人型は身を潜めるよう
にして、ジッと動きを止めているようだった。しかも周りのバラス兵たちは、目前の未知の存在に一切
気付いていない。
バリリはすかさずレイガンを前方に突き出すと、トリガーを引いた!
つづく
| ☆
| ミ, +
| * @ミ
| + .ミbミ,
| 。ミOミ%ミb, +
| | ̄ ̄|
|〜〜〜〜〜└─┘
あげるよ・・・。
なんていうか・・・
一言で言うと、ちっとも面白くないんですが・・・
私の感性がオカシイんですかね・・・?
次回は正月明け
>>249 Thank you!
>>250 面白くなるよう、頭捻って頑張ります(お客さんは神様)
ていうか、三ヶ月目にしてようやく、問題の核心に触れて下さる方が現れてホッとしてます
↑え?そうなの?
うーんとね、第一部(?)の方で、宇宙船のエンジン出力は、馬力より推力とか
ほかの単位にしたほうがそれらしいと思う。
また、他の星系の種族が「スーパーマン」なんて口にするのは萎える・・・。
バラス人の流行とか伝説の英雄とか、そんな感じのやつにしたほうが
とりあえずSFとして自然ではないでしょうか・・・。
バラス人て、爬虫類系なんですよね?
漏れだけかもしれませんが、昆虫系のほうが、統制のとれた軍隊の
イメージしやすいのですが。全滅しちゃって残念・・・。
しかしバラス人、しかも軍人にしては人間っぽいので、漏れはスキです。
あんまり凶悪にしないで、意外に優しい種族にしたら変ですかね?
映画「遠すぎた橋」のドイツ将校みたく。
もし、書き直す機会があったら、冒頭部分は、プロローグ入れてはどうでしょうか。
それを主人公が調査に赴くこととなった宇宙船の遭難のエピソードに
しとけば、本編で説明くさい文章を軽くできるのではないでしょうか?
>>228-229 なんですけど、なんとかならんのか〜、ゴラァ!!
バラスでは貴重なパーツが組み込んであるとかさ〜。
いっそしばらく登場しないで、主人公を窮地に陥れる存在として
カムバック。自爆装置が仕込まれてるとか・・。
それからバラス人が「ロボット」って言うのもなんか・・・。
なんかカコイイ!バラス語はないのか〜!
とにかくコンピューターウィルス却下だ、却下!!
ざっと呼んだけど(暇だなおれ)、よんでて面白い文章じゃないぞ。
あと、なんかどっかで読んだような文章だと感じるんだよな。
誰かがいってた、「古くさい」ってことかね?
読者が読んで、面白いと感じる文章書いてる自信ある?いや、素朴な疑問なんだけど。
バリリはトリガーを引いた。青白い光条が空間を走り、透明な人型の中心を貫く。しかし人型は
何のダメージも受けず、光線は空ろな体内を素通りすると、壁際に座るバラス人を襲った。大柄の
バラス人は銃口が光った瞬間、驚く間もなく野獣の瞬発力で横に飛び退いた。刹那、背後の鋼鉄の
壁に丸い弾痕が焼き付けられる。周囲のバラス兵たちは仰天すると一斉に背後に飛び退り、反射的
に腰のレイガンに手をかけた。
発砲したバリリの耳に不気味な笑い声が響いた。正確にはそれは耳ではなく、脳の中に直接伝わ
ってくる声だった。バリリは悪寒を感じると、憑かれたように立て続けに光の弾丸を発射する。す
ると人型は不意に素早く動くと、隣りの壁に向かってダイブした。透明な身体は壁の中に突っ込む
と、不思議な波紋を残して姿を消した。
バリリが舌打ちして踵を返そうとした時、いきなり、そのこめかみに銃口が押し付けられた。先
程バリリに撃たれそうになった大柄のバラス人が、片手持ちのレイガンを思いっきり突き出してい
る。
「貴様!何の真似だ!」
サルはその八つ眼を怒りに燃え立たせている。デムスは慌ててその太い手首を掴むと、
「撃つな、誤解だ!話を聞け!」
バリリは目前の壁を凝視したまま、自分の遭遇した怪異について思いを巡らしていた。
不吉な予感が全身の感覚を支配していた。
バイアスが通路を歩いて来ると、ブリッジの入り口から人が溢れていた。その異様な雰囲気に
バイアスは五つ眼を鋭く細める。バラス兵たちは隊長に気付くと、一斉に敬礼した。
「何事だ。発砲騒ぎがあったと聞いたが」
バイアスが聞くと、兵隊たちは渋い表情で、
「それが・・・幽霊が出たとかいう話で」
「幽霊?」
兵隊の一人が苦笑いを浮かべそうになって、慌てて抑える。バイアスは兵隊が道を空けると、
室内に入った。
ブリッジでは一個小隊全員が狭いスペースに集まっている。そのすべての視線が、室内を動き
回るバリリに向けられていた。バリリは無言で部屋中の装置類を点検している。
コクピットシートに着いているセムは立ち上がると、
「申し訳ありません、お見苦しいところをお見せしまして。実は密航者が出たという話で」
「まだ船内に潜んでるのか」
「それがどうも分からないんです。見たのは二名だけで、またそれがどうにも信じ難い話なもの
ですから」
セムが概要を説明している間に、兵隊たちからうんざりしたような野次が飛んだ。
「おいバリリ、いい加減にしろ!何回調べたって同じなんだよ!」
バリリは返事をせず、仕事を続けている。
バリリが無視する代わりに、横に立つデムスが反論した。
「ちょっと待ってろ。必ず見付け出すから」
「あのなあ。俺たちの内の誰一人として、密航者なんか見ちゃいないんだ。部屋の中に突っ立って
たというのにな」
「モニターにも映ってなかった。さっきも確認したようにビデオにも残ってない」
セムは言った。
「お前たちが食料庫で騒ぎ出した時も、俺には幽霊の影も見えなかったんだ。勿論、壁を通り抜け
た場面もな。別に嘘を言ってるとは思わないが、何かの見間違いだろう」
「見間違い?何をどう見間違うって言うんだ。二人揃って同じものを見たんだぞ」
デムスの足許に張り付いていた小人のピキがか細い鳴き声を漏らすと、デムスはそれを指差し、
「このチビもな!」
バリリは操作台を離れると、屈強の指揮官の前に立った。
「見付かったか?」
バイアスが聞くと、バリリは首を横に振り、
「でも、信じて下さい。奴は確かにここにいます。正体は不明ですが、センサーにもモニターにも
反応しない異常な奴である事は確かです。しかも高い知能を持ってる」
バリリは断固とした口調で言った。
「上陸前に一度、隊員全員で船内を捜索することを進言します。幽霊だか、ガス生命だか知らない
が、少なくとも味方じゃない」
「何故分かる」
「俺のことを嘲笑いやがった!」
その四つ眼が憎悪に燃えている。
バイアスが黙っていると、外野から野太い声が飛んだ。
「馬鹿馬鹿しい!海賊どもと一戦交えようって間際に、なんでいもしない幽霊なぞ探さなきゃ
いけねえんだ。やりたきゃ手前一人でやれ」
「黙ってろ、サル。それを決めるのは隊長だ」
セムは鋭く言い放つ。壁際に立つサルは睨んだが、すぐ薄笑いを浮かべると、
「なら、お前は信じてるのか?こいつの世迷い事を」
バリリは向き直ると、
「何だ。言いたい事があるなら面と向かって言え。遠慮する事はないぜ」
サルは牙を剥くと、獰猛な調子で、
「居直るな!手前がトチ狂ったお陰で、こっちは危うく蜂の巣になりかけたんだ!」
サルは隊長に向き直ると、
「この野郎を営倉にぶち込む事を提案します。こんな精神の弱い奴とは一緒に戦えません。
戦闘中、恐慌をきたして味方を撃つかも知れない。敵ならともかく、気違いに殺られたと
あっちゃあ、何の名誉にもなりゃしない」
「もう一度言ってみろ。誰が気違いだって?」
「気違いで悪けりゃ臆病者だ、このデブ野郎!」
バリリは猛獣そのままの姿で、サルに飛びかかった。サルが反撃しようとするのを、周囲
の兵隊たちが間に割って入る。
「落ち着けよ!仲間割れはよせ!」
「控えろ!隊長の前だぞ!」
セムが怒鳴った時、突如ブリッジに警報ブザーが鳴り響いた。
セムが怒鳴った瞬間、突如ブリッジに警報ブザーが鳴り響いた。一同は辺りを見回す。
「バリリ、席につけ!」
セムが叫ぶと、バリリは素早くナビゲート席に着いた。数秒前の騒ぎの事はすっかり念頭から
切り捨て、プロとしての理性、判断力が甦っている。
バリリは計器類を確認すると、怪訝そうに、
「何だ、こりゃ。レーダーが真っ白だぞ」
更に周囲を見回し、
「メーターが全部振り切れちまってる。故障か?」
「バリリ!前方だ!」
一同は一斉に正面ガラスの向こうに視線を向けた。すると宇宙の闇の中から不意に、灰色味を
帯びた、巨大な塊のようなものが浮かび上がって来た。塊は宇宙船のサイズよりも一回りも大き
く、既に至近距離にあって、急速にこちらに向かって来る。
「センサーに反応!岩塊?」
バリリの鱗に覆われた顔が、一瞬にして蒼ざめた。
「隕石だ!回避しろ!」
「もう遅い!」
セムが悲鳴のような声を上げる。巨大な隕石は岩壁のように宇宙船の鼻面に迫って来る。
次の瞬間、物凄い衝撃が船体を襲った。
>>252 >馬力より推力
推力の単位って何でしたっけ?
>スーパーマンより伝説の英雄とか
バラス固有の文化・・・何も考えてない・・・
>爬虫類系、昆虫類系
そこまで考えてるとは・・・一応巡航艦のバラス兵は全滅しちまいましたが、予定では
バラスの一個師団とか、物凄い大兵力も登場させるつもりではあります。昆虫系につ
いては、リュウが当初向かっていた原始惑星の住人がそれで、これも登場予定です。
(そこまで続いてればの話ですけどね)
>軍人にしては、人間ぽい
それは明確に意識して書いてます。気に入って貰えて嬉しい。
>ドイツ将校
セムは「鷲は舞い降りた」のリタア・ノイマンのイメージです(名前合ってましたっけ。
クルト・シュタイナの副官)ちょっと違うか
>書き直す機会があったら、プロローグ・・・説明臭さを軽く・・・
書き直したいところ、一杯ありますよ。でも後の祭り
>>253 >コンピューターウィルス却下
あれはですねえ、あそこで連載が中断するので、とにかく何らかの「引き」を作っときた
かったんですよー。まあ、確かにつまらんネタですよねー
>>254 >ざっと読んだ
感謝します
>面白くない
そう、そこが一番聞きたいところなんです。面白いか、面白くないか
>どっかで読んだ
きっとヒネリが少ないんで退屈に感じられてしまうんでしょう。作者の引き出しが少ないのが原因。
>古臭い
「どっかで読んだ」という感覚とは別だと思います。
古さに関しては、クラシックなスペオペの様式美みたいなものを踏襲しよう
とは目論んではいるのですが、成功してないんでしょう。面白くなけりゃ
作者の「つもり」なんて意味がない
>自信ある?
俺自身、自分は小松左京や筒井康隆には絶対なれないということは充分に理解している。
一生かかっても、多分傑作なんか一本も書けない。
俺が思ってるのは「傑作じゃないけど、それでも何ていうか、そこそこ面白いんじゃ
ねーかなあ」っていう程度ですわ。これが自信だというなら、まあ自信かもね。
でもこれって、アマチュアで物書いてる人間なら誰でも思ってることなんで、自信あるか、
無いかって聞かれると、ちょっと困ってしまいますね。
とりあえず当面の目標としては、あなたに「面白い!」と言って貰えるよう頑張るつもりです。
対読者という感覚を常に持ち続けること。自信=自己満足は毒。
つづく
262 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/01/06 23:55
終了。
263 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/01/09 16:06
>>261 >>とりあえず当面の目標としては、あなたに「面白い!」と言って貰えるよう頑張るつもりです。
それで、この3ヶ月間どう向上したのですか?
なんだー、続きはどうしたんだ。ちゃんと完結させてほしい。
「おいー愛梨ー。出かけるぞ」
「あ、ちょっと待ってください〜」
「ん、パソコンに向かって何やってるんだ。またテレビでも見てるのか?」
「ボス。私にだってプライドはありますよぅ。お正月番組なんて死んでも見ません」
「プライドとお正月番組に何の関係があるんだ」
「お正月番組を見てたりすると、間違ってせんだみつおが出てくる可能性があるじゃないですか」
「別にいいだろ、せんだなんてほっとけば」
「どうしてボスはいつもそういい加減なんですか〜。いいですか、せんだみつおこそ諸悪の根源、悪の巣窟です。
せんだみつおゲームでイメージアップを図ろうなんて、ちょっと身のほど知らずとしか言いようがありません」
「もういいから出かけるぞ。いったい何やってるんだ」
「JASRACにメールしてるんですぅ」
「は? いったいなんでJASRACにメール書く」
「ミスチルの新曲と、ラルクのWinter Fallの前奏があまりにも似すぎていますぅ。謝罪させるなり、賠償させるなりさせてくださいってメールを書いてます〜」
「どうだっていいだろ! つーかおまえミスチルもラルクも聞かないだろう」
「でも、気になっちゃったから仕方ないですぅ。ほっといてくださいっ」
「聞かないようなアーティストにクレームつけるんじゃない! だいたい、おまえは普通どんな曲聞いてるんだ」
「審判の瞳・カタルシス・我が闘争…」
「は?」
「ガーゴイルですぅ」
「知らん」
ちょっと期間空きますが、次回は多分週明け。
>>262 あがった
>>263 最初の方のレスで、書き出しがいつも「リュウは・・・リュウは・・・」ってなってるって
言われたけど、それがなおた
>>264 この調子だと、完結まであと・・・一年・・・?
>>265 ???
267 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/01/17 00:44
男は作家になる決心をした。
しかしいざとなると、何を書くべきか分からなかった。
悶々としているうち、2ちゃんねるを見つけた。
とりあえず書いてみようと思い、ネタを次々に書き込んだ。
ネタはどれも好評で男はコテハンになり、筆は益々快調だった。
遂には編集者の目に留まり、男は作家として第一歩を記すことになった。
頬を張り、気合いを入れてキーボードの前に座ったとき、男ははたと気づいた。
書きたい物は2ちゃんねるに書き尽くしていたのだ。
巨大な岩塊は、宇宙の闇から不意に姿を現すと、目前に迫った。既に数十メートルの距離し
か離れていない。
セムは悪態をつくと、猛烈な勢いでペダルを踏み込む。瞬間、ファイアーバードの前部から
巨大な逆噴射炎が吹き上がった。眩い光が周囲を包み込み、プラズマ炎の高熱でフロントガラ
スが白く曇る。
セムはそのまま渾身の力を込めて、操縦桿を後方に倒した。すると宇宙船は驚くべき反応の
良さで機首を上向かせ、急カーブを描いて上昇し始めた。ガラスの外の隕石が、徐々に下方へ
と沈んで行くのを、ブリッジのバラス兵たちは息を詰めて見守っている。
次の瞬間、轟音とともに、激しい衝撃がブリッジを襲った。さしもの屈強のバラス兵たちも
足下から突き上げられ、たまらず床に倒れ込む。隕石の尖った表面が、宇宙船の下腹を擦って、
鋼鉄の外板をナイフのように切り裂いているのだ。機体がバラバラに分解してしまうのではな
いかという強振動の中、セムはシートで歯を食いしばって耐え、必死でやり過ごそうとする。
金属を引っ掻く甲高い音を発しながら、ファイアーバードは岩の表面をバウンドすると、再び
空間に飛び出した。
危機を脱して安堵したのも束の間、今度は船首の方に、別の隕石の破片が流れて来る。セム
はハンドルをねじるようにして舵を切った。しかし遅かった。
隕石は宇宙船に直撃した。
流れて来る隕石をよけようと、セムはハンドルを切った。しかし遅かった。
宇宙船がバンクを切った瞬間、隕石はノーズ部分に直撃した。刹那、船体は無茶苦茶に回転し始
め、強烈なGに耐えながら、そのまま虚空へと弾き飛ばされて行く。コントロールを失ったファイ
アーバードは何とか体勢を立て直そうと、全身から制動ノズルの炎を噴射させた。火の独楽となっ
た宇宙船は、次第に動きを緩めていくと、やがて静止した。
「第二装甲板まで破られた!破損区画を閉鎖する」
騒然とするブリッジにセムの怒鳴り声が響く。
「何故感知が遅れた!目と鼻の先だぞ!」
「強力な電磁波だ。その影響で計器が全部イカれちまった!」
バリリが忌々しげに叫ぶ。隊長のバイアスは五つ眼を鋭く細めると、
「敵のジャミングか!」
「人為的なものじゃありません。待て・・・待てよ。こいつはひょっとして・・・」
その時、突然デムスが前方を指差した。
「見ろ!」
バラス兵たちは一斉にガラスの向こうに眼を向けた。
「見ろ!」デムスが声を上げた。
バラス兵たちは一斉にガラスの向こう側に目を向ける。すると遥か遠くの方に、天の川の星明り
に照らされて、無数の隕石が雲のように漂っているのが見えた。大小さまざまの岩塊の群れは、見
渡す限りの宇宙空間に及んでいて、宇宙船の行く手を阻んでいた。それは宇宙の大海原の水平線一
杯に広がる、危険な暗礁の群れだった。
バリリはパネルを操作しながら、
「あの小惑星帯から強い磁力線が放出されてます。スペクトル分析・・・」
スクリーンに隕石のサーチ画像が投影される。
「純度の高い磁鉱石だ。思った通りだ。あの小惑星帯は物凄い磁気嵐の地獄だぞ」
「あの中に入ったら、どんな最新の機器も無力化されるということか」
セムは唸った。いわば眼前に広がってるのは、あらゆる科学文明の進入を拒絶する、宇宙の密林
地帯と言っても良い。
「・・・なるほど。ハイエナどものねぐらにはもってこいの場所だ」
バイアスは片頬に皮肉な笑みを浮かべた。
ファイアーバードは小惑星帯の中を進んでいた。宇宙空間に漂う隕石は、河原石のサイズから、
直径数百メートルに及ぶ物までさまざまであり、宇宙船は時に巨岩をよけて迂回し、時に石つぶ
てをその身に浴びながら、低速で航行していた。
船の上面には斥候のバラス兵が二人立ち、周囲を油断なく見張っている。レーダーやセンサー
が一切効かないとなると、残ったのは肉眼での判断しかない。宇宙服を着込んだエイリアンたち
はその複眼でもって、見通しの悪い隕石群の、その一つ一つの物陰に、鋭い監視の目を配ってい
た。手にはライフル銃を持ち、怪しい影があれば、すぐさま撃ち返そうという構えだ。
下面にも同様に二人立ち、さらにもう一人、船の外板に這いつくばるようにして、何かの作業
をしている者がいた。外板には、先ほど隕石に接触した時に出来た、長さ数メートルの傷があり、
兵隊はバーナーの火でそれを溶接している。
兵隊は仕事をしながら、ヘルメットの通信機でブリッジと言葉を交わす。
「あきれるくらい頑丈な装甲板だ。並みの船なら真っ二つに裂けてる」
『直せそうか』
「穴を塞ぐのは訳はない。資材もあるし、応急処置なら一時間もかからないな」
宇宙船は危険なアステロイドベルトの「けもの道」を、一歩一歩踏みしめるようにして、慎重
に歩を進めて行く・・・
その時、ファイアーバードを遠くから見詰める、一対の視線があった。
浮遊する宇宙塵のひとつ、その岩陰に人影が見える。
真っ黒に塗られた宇宙服は、宇宙戦用の迷彩服である。そして、同じく黒いヘルメットの
額の辺りに浮き出た金色のクロスボーンは、海賊を意味する、銀河系万国共通のシンボルマ
ークだった。
黒い宇宙服の男は、手にした細長いナポレオン時代のような望遠鏡をのぞくと、隕石群の
隙間から、銀色に輝く鋼鉄の鳥を視界に捉えた。宇宙船はまだ数百メートルは離れているた
め、こちらの存在には気付いていない。
男は接眼レンズから目を外すと、背後を振り返った。するとそこには、まったく同じ黒装
束に身を包んだ男たちが静かに居並んでいた。三、四十人はいるだろう彼らは、皆手に手に
得物の武器を携え、息を潜めている。もっとも多いのは見るからに武骨な、旧式のレーザー
ライフルを胸の前に抱いた者たちで、その銃身の先には、大振りの銃剣(バヨネット)が星
明りを映して、禍々しく輝いていた。
望遠鏡を持った男は一同を見渡すと、グローブを着けた指で何かのサインをした。すると
男たちは一斉に岩を蹴り、無重力の中、蜘蛛の子を散らすように周囲に散開して行く。四十
人の海賊たちは、勝手知った自らの縄張りを、岩から岩へ、素早く飛び移って行った。何の
迷いもないその動きは、カリブを狙うコヨーテ族のそれに似ていた。
海賊たちは小惑星帯広く散り、宇宙船を遠巻きにする陣形を敷くと、岩陰に身を潜めた。
見事に統率の取れたその動きは軍隊も顔負けのものである。そのバイザーの奥の眼からは、
一様に野獣のような獰猛な光を放たれていた。その危険な視線が集中する中、何も知らな
い宇宙船とその乗員たちは、その仕掛けられた罠の只中へと飛び込んで行こうとしている。
狩るものと、狩られるもの。血戦の幕が開こうとしていた。
274 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/01/27 01:56
たまにはあげておこう。
実は密かに毎週チェックしてる漏れ…。
内容はほとんど読んでないが、たまにチェックしてる漏れ…。
連載開始時のモチベーションを100とすると、現在は20くらい
ていうか、これだけ続けてゼニにまったくならんと思うと・・・虚しい・・・(練習にはなるけどね
一応八枚あがってるが、もうちょっと書き足して、次回は木曜。
近況
本屋で「クラッシャージョウ」を購入。メカ描写等を勉強中
バラス人たちは、宇宙船の装甲甲板の上で、周囲の暗黒に鋭い監視の目を配っていた。四
人合わせて二十以上にもなる視線によって、死角はまるでないように思える。凍てつくエー
テルの只中、ダークグリーンのスペーススーツに巨躯を包んだエイリアンたちは、身じろぎ
ひとつもせず、放って置けば、そのまま何十時間でも同じ姿勢で立っていられそうだった。
低速で進む戦闘艇ファイアーバードの周囲を、無数の宇宙塵が緩やかに流れて行く。デム
スは狙撃兵特有の高い視力でもって、宇宙の闇を見分けていた。その虹彩のない眼がナイフ
のように光る。
「・・・十一時の方向だ」
デムスがヘルメットのマイクを通じて、全員の注意をうながした。兵隊たちは一斉に首を
振り向ける。しかし進行方向をわずかにずれた場所には、隕石の群れ以外、何も見えない。
バラス人たちは船首に集まると、目を凝らした。
「分かるか」
「確認出来ない・・・待て。見えた」
一人が指差した。大小の隕石の影がゆっくりと動いて行くと、やがて星明りが、岩陰に潜
む怪しい人影を浮かび上がらせた。黒い宇宙服の男は、隕石に身を伏せて、ヘルメットの被
さった顔をこちらに向けている。そして存在に気付かれたと悟ると、静かに岩盤の上に立ち
上がった。片手には旧式のビームライフルを杖のようにして持っている。
宇宙の真空で両者の視線が交錯し、火花を散らす。ライフルの先端に装着された前時代的
なバヨネットが、狼の牙のように輝いた。
堂々と身をさらす男に、バラス兵たちは忌々しげに呟く。
「舐めやがって。撃ち殺してやろうか」
「待て。あれは斥候だ。捕まえて拷問にかけてやる。来い」
言うと二人の兵隊が甲板を蹴った。そのまま男の方へ飛んで行く。
「おい!油断するな」
デムスは慌てて声を発すると、残る二人とともに見送る。一方黒い宇宙服の男は、無重力状態の
中、ふわりとトンボを切ると、隕石の反対側へ姿を消した。
兵隊たちのヘルメットの通信機に、ブリッジから声が伝わってくる。
『こちらでも確認した。これより追跡に入る』
ファイアーバードの制動ノズルが火を噴いた。ゆっくりと転針すると、静かに先行する二人を追
い始める。
バラス兵二名は、隕石群の中を岩に飛びつきながら、ジグザグに追いすがって行く。向こうには
先を行く黒い宇宙服の男の背中が見えていた。素早く移動しながら、時折立ち止まり、振り返って
こちらの様子を窺っては、また移動を開始する。バラス兵が大きな図体を持て余している内に、敏
捷な逃亡者はフッと、その視界から姿を消してしまった。
兵隊二人は獲物を見失うと、岩の上に立ち止まって、周囲を見回す。辺りは隕石の欠片が密集し
ていて、数メートル先も見通せない。
「畜生。どこだ」
『応答せ・・・どこ・・・』
通信機を通じて、雑音だらけの声が伝わって来る。振り返ると、母船は既に遥か後方まで置き去
りになっている。
兵隊たちは顔を見合わせると、
「どうする?戻るか」
「奴を逃がしたら、奇襲の計画がパアになる。手分けして探すんだ」
異変が起きたのはその時だった。
二人が言葉を交わした瞬間、頭上の隕石の陰から、不意に人影が姿を現した。
ハッとしたバラス兵が身構える間も無く、男は両腕を大きく広げると、下方に大きなネットを
投げ落とす。網は広がりながら二匹の獲物に覆い被さると、その虜にした。
ネットに絡みつかれ自由を失ったバラス人は、もがきながら必死で周囲を見渡した。すると、
宇宙塵の隙間から、今まで気配も感じさせてなかった黒い宇宙服の男たちが、一斉に湧いて出て
来た。そのヘルメットには、額の部分に一様に金色のクロスボーンが貼りついている。
五、六人のドクロの戦士たちは、武骨なライフルを手に手に持ち、背中にはもっと兇悪なバズ
ーカ砲も背負っていた。彼らは網にからめ取られたバラスの兵隊を取り囲み、不気味な沈黙を保
っている。
バラス人はヘルメットのマイクに悲痛な声を発した。
「母船、応答しろ!罠に嵌まった!」
海賊たちは銀色に輝く銃剣を向けると、勢いよく前方に突き出した。切っ先はネットの網目を
通して、エイリアンの分厚い肉体に深々と突き刺さる。バラス人はヘルメットの中で牙を剥き出
すと野獣の咆哮を上げた。処刑者たちは、粘っこい緑の血にまみれたバヨネットを引き抜くと、
一旦後退し、再び突き刺した。さらに連続で二度、三度。激しくもがく手負いの獣二匹に、その
息が絶えるまで、何度も何度も機械的に穂先を繰り出した。暗い無重力の空間に、無数の血の泡
が舞い飛ぶ。
海賊たちは虐殺を終えると、宇宙塵の隙間を通して、接近して来る銀色の鳥を見た。ファイア
ーバードのクルーは、よもやそのような事態が起こってるとは知る由もない。
海賊の一人が背中に掛けたロケット砲を手にした。岩盤に腹這いになると、肩の上で構え、照
準器を覗き込む。接近して来る宇宙船がサイトの中央に納まった。既に射程距離だ。
ゼロアワーが刻々と近付いている。
一方、ファイアーバードのブリッジでは、バイアスが腕を組んで仁王立ちしていた。その
五つ眼で、フロントウィンドの外に広がる隕石群をじっと睨んでいる。
「・・・船を止めろ」
バイアスは言った。操縦席のセムがエンジン出力を絞り、元々低速で進んでいた宇宙船は
完全に静止した。
「バリリ」
「ハッ」
「先行者を呼び戻せ。深追いさせるな」
「通信状態が最悪ですが、やってみます」
バリリは通信機のマイクに声をかける。
「こちら母船。ヤン、クレド、聞こえるか」
「捕らえなくていいのですか。首領に知られたら面倒なことに」
セムが怪訝そうに言う。すると、バリリは素っ気無い口調で、
「もう遅い。敵はとっくにこちらの動きを掴んでいた」
「は?」
「これは罠だ。近くに伏兵が隠れてる」
セムは三つ眼を鋭く細めると、窓の外を見渡し、
「考え過ぎでは。こちらはずっと単独行動でした。海賊がそれを知る手立てはありません」
バイアスは副官を見詰めると、
「思い出せ。ラーマが襲撃される前も、我々は単独行動していた。本国の役人、将軍たち
にも知らせず、無線封鎖も行い、全軍中でも知っていたのは、大統領とその側近数名だけだ。
それにしても、出航してからは連絡さえ取っていない。なのに、海賊どもは巡航艦の航路、位
置を正確に掴んでいた。なぜだ?」
「・・・!」
「始めはスパイの仕業かと思ったが、どうやらそんな簡単なものでもなさそうだ。何か思いも
寄らないカラクリが水面下で動いている」
セムは、バイアスを見詰めた。目前にいる自分たちの隊長は、元より勇敢で強力な戦士であることは
言うまでもないが、さらに言うなら、人並み外れた、ある種の予兆を敏感に嗅ぎ取る動物的な直感の持
ち主でもあった。そして実際の戦場においては、そういう目に見えない力が、生き延びるために、どん
な最新の兵器、装備よりもより重要であったりするのである。
バイアスは声を張り上げると、
「捜索班。船内はどうだ」
『床下や天井裏も探しましたが、密航者の影もありません』
スピーカーからサルのぶっきらぼうな声が響く。
「全員ブリッジに戻れ。待機だ」
『了解』
「あとでそこの女に聞いてみるさ。第三の乗員についてはな」
部屋の隅の、愛梨の生首に視線を向ける。
「ただ、今はそれどころじゃない」
「ヤン、クレド!駄目だ。電波障害が強すぎて・・・」
バリリが通信機相手に四苦八苦していたその時、突如窓の外がまばゆい閃光に包まれた。すぐに激し
い衝撃と爆発音がブリッジを襲う。クルーは手近の機材にかじり付いて振動に耐える。
また隕石か?皆がそう思った時、スピーカーを通じてデムスの叫びが全船に響き渡った。
『攻撃だ!野郎、撃ってきやがった!』
フロントウィンドの外を見ると、浮遊する隕石群の向こうから、数十発のロケット弾が炎と白煙を尻
から噴き出しつつ、急速にこちらに向かって来る。セムは歯噛みすると、唸り声を上げた。
とうとう戦争が始まったのだ。
つづく
訂正!!!!
>>281 13行目「すると、バリリは・・・」は「すると、バイアスは・・・」の間違い!
|_
|━
|ハ))) ダレモイナイネ…オドルナラ イマノウチ♪
|ー`リ
|⊂#) _ _
♪ 〃┏━━
♪ |. ノノソハ))) ウグゥ
(\リリ ´ー` リ∩ ウグゥ
(ニ⊂[#~~ ∞"_ノ ウグゥ
/__∞_| ウグゥ
し'(_f) _ _
♪ 〃┏━━
♪|. ノノソハ))) ウグゥ
.∩リリ ´ー` リ ウグゥ
\_"∞~~#]⊃ ウグゥ
|_∞__\ ウグゥ
(f_) 'J
目撃ドキュン
287 :
大宇宙の群娘:02/02/23 02:38
あまりSFを読んだ事が無いせいか、俺は面白いと思う。
288 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/02/23 02:40
焦るな。気付いて顔が赤らむ瞬間って誰にでもアル・・・
自爆?
290 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/02/26 19:12
うーむ
291 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/02/28 00:11
続きを読みたいです。
尾もろいです。
もっと回りの風景を書くとGOODです。
読みたいです。
次回週明け
とっくに明けてるぞ。
ぶっちゃけた話、めんどくさい。水曜にはあげられると思う
ていうか、読んでる人、何人いる?
>295
待ってるぜ。
>289
288は自爆じゃないよ。面白いと思ったから面白いの。
>>295 最後まで貫徹してください。実際に書き始める人は滅多にいません。
298 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/03/05 10:08
>>297の「滅多にいません」にいろんな意味でハゲシクドウイ
なんやかんやで、金曜までもつれこむ
ロケット弾が眼前に飛来して来たとき、デムスは咄嗟に外板に身を伏せた。
わずかのタイムラグで弾は次々に着弾すると、細かな破片を周囲に撒き散らしながら
炸裂していく。前に立っていたバラス兵は直撃を喰らうと、一瞬にして四肢を引きちぎ
られ、粉微塵に吹き飛ばされた。肉片と血煙が柱のように、甲板の上に渦を巻く。
後方の一名は、衝撃で背後に飛ばされると、アンテナ塔に背を叩きつけられた。デム
スは身を起こすと、失神した仲間のもとに近寄る。
抱き起こしたとき、ヘルメットの通信機からセムの声が響いた。
『デムス!中に戻れ!』
見ると背後で、装甲甲板の四角い蓋が開き、下からパルスレーザー砲塔が滑らかな動
きでせり上がって来る。
『早く!』
デムスは仲間の体を素早くハッチに引きずり込むと、自らもその中に飛び込んだ。
刹那、閃光とともに、頭上でレーザー砲が激しく火を吹いた。
デムスがハッチに飛び込んだ刹那、頭上でレーザー砲が激しく火を吹いた。
青白い光条は、秒間数十発のスピードで、前方の隕石群に撃ち込まれた。閃光とともに、
硬い岩塊は、ミキサーに掻き回されたように、いともたやすくバラバラに砕けていく。
ブリッジではセムが、自動砲塔の発射ボタンを押し続けている。センサーがまったく効
かない状況で、ただひたすらに宇宙の闇の中、見えない敵に向かって、光の弾丸をばら撒
き続けた。文字通りめくら撃ちである。
「撃ち方止め!」
背後に立つバイアスが怒声を発した。セムは一旦砲撃を止めると、フロントウインドの
外を凝視する。岩の破片が渦巻いている暗い空間は、不気味な沈黙に包まれている。しか
し敵は依然として、その闇の中に紛れているのだ。一体、数はどれくらいなのか。そして
武装の程度は。
ナビゲート席のバリリが必死な声で叫ぶ。
「デムス!状況は!」
『アルバが殺られた!ルアクは爆風に巻き込まれて重傷!』
間を置かず、再びブリッジを衝撃が襲った。敵の第二波の攻撃が始まったのだ。
敵の第二波の攻撃が始まった。
海賊たちは完全に宇宙船を包囲していた。浮遊する隕石群の岩陰にそれぞれ拠って立ち、
首だけのぞかせては、ロケット弾を、外しようのない大きい的に撃ち込んでくる。
相手がレーザーで反撃してくると、すかさず岩陰に引っ込み、位置を移動して、嵐が過
ぎたと思うや、再び攻撃を開始する。
敵にはこちらは丸見えだ。しかし逆に、こちらからは敵は見えない。
それは不正規軍による典型的なゲリラ戦法だった。これをやられた相手は、なす術もなく
緩慢な死を迎えるしかない。
三百六十度の方位からロケット弾を雨あられと浴びせかけられ、さしものファイアーバー
ドも窮地に立たされていた。五十発、六十発と命中するうちに、銀河一の防御力を誇る装甲
板も、あちこちが陥没し、無惨にヒビが入り始めている。よけようにも、密集したアステロ
イドが邪魔をして、身動きする隙間もない。
「進退きわまったな」
激しい振動にさらされるブリッジで、バリリが呻いた。その鱗だらけの顔に脂汗を浮かべ
ると、突如パネルを拳で殴りつける。
「このままじゃ嬲り殺しだ!どうしたらいい!」
セムは三つ眼を憎悪に燃やしながら、自動砲塔の操作ハンドルを動かし続けている。高出
力レーザーを何百発と撃ち込んだはずだが、効いてるのか、効いてないのかも判らない。そ
れどころか、こちらの努力を嘲笑うかのごとく、敵の攻撃は一層の激しさを増していく。
セムはその牙を食いしばっていたが、やがて振り返ると、たまらず叫んだ。
「隊長、討って出ましょう!」
鋭い鉤爪の生えた指で窓の外を差す。
「外に出て戦うんです。一対一なら、バラスに勝てる種族などいません!」
バイアスはフロアで腕を組んだまま仁王立ちして、フロントウインドの外を睨んでいる。
五つ眼をギラリと光らせると、低い、しかしよく通る声で告げた。
「プロトンビームだ」
「え?」
セムは複眼を大きく見開いた。
「プロトンビームだ」
バイアスは目前の二人を見返すと、
「プロトンビーム発射用意。前方の隕石群に照射、域外への突破口を開く。トンネルが開いたら
直ちにエンジン点火、最大戦速で駆け抜け、外宇宙に脱出する」
平然と言ってのけた隊長に、セムとバリリは度肝を抜かれた様子で、顔を見合わせた。
「・・・しかし隊長。目標が近すぎます。爆発の巻き添えを食ったら、まず助かりません」
バリリが顔を蒼ざめさせて言う。しかし屈強の陸戦隊長は穏やかな表情で、
「どのみち、このままでは結果は見えてる。鉄の棺桶に閉じ込められたままあの世に行
くよりは、いくらかマシだろう」
セムは沈黙した。隊長は死を口にしたものの、そのような気はカケラもないようだっ
た。その姿は泰然として、自信に満ちている。
「・・・了解。プロトンビーム発射準備!」
セムは正面に向き直ると、装置を素早く操作し始めた。
一方、海賊側はますます攻勢の手を強めていた。
黒い宇宙迷彩スーツに身を包んだドクロの戦士たちは、アステロイドの中に広く散開し、
取り囲んだ手負いの獲物に容赦なく火力を集中させている。虜となった宇宙船は身動きも
取れず、ただ一方的に加えられる爆発と衝撃に耐えていた。それは宇宙における集団リン
チだった。
ファイアーバードの船首の先、浮遊する隕石の裏側に、二名の海賊が潜んでいる。先程
から彼らは交互に首を出しては、ロケット弾やグレネード弾を次々に放っていた。そのど
れもが目標に命中し、派手に爆発を繰り返している。
そのうち弾が切れたのか、海賊はランチャーを放り出すと、肩に掛けたライフルに持ち
替えた。そして岩陰から顔を覗かせると、正面の様子を窺う。銀色の宇宙船はボロボロに
なって、あちこちから煙の筋を立ち昇らせているが、依然として健在だった。その距離は
百メートルも離れていない。
ヘルメットに金のクロスボーンを貼り付けた海賊は、ライフルのスコープを覗いた。甲
板のレーザーガトリング砲は、無駄を悟ったのか、先程から沈黙を続けている。見ている
と、やがて自動砲塔は静かに下方へ沈んでいき、機体内に収納された。
海賊はスコープから目を外すと、バイザーの奥から怪訝そうな視線を送った。銀色の鳥
の下腹に抱かれた大砲、そのまっすぐこちらを向いた砲口の奥に、オレンジ色の光が瞬い
ている。光は次第に輝きを増すと、まるで恒星のような、目も開けてられないほどの、眩
い光芒を放ち始めた。
海賊たちは手で目の前を遮ると、悲鳴を上げた。
ファイアーバードのブリッジでは、緊迫した空気が流れている。
セムはスクリーンに映し出された照準レクティルを睨みつけている。
「数値補正、ゼロ距離射撃。目標、前方小惑星群!」
「照射量に気を付けろ。下手うったら、こっちまでお陀仏だぞ!」
ナビシートでバリリが冷や汗を流しながら口を挟んだ。数秒後、室内にブザーが鳴り響く。
「エネルギー充填完了。発射準備よし!」
「総員、耐ショック耐閃光防御!」
船内スピーカーから声が響き渡る。バラス兵たちは各所で着座し、身構えた。
バイアスは牙を剥き出すと、吼えた。
「ファイア!」
セムがボタンを押す。
瞬間、窓ガラスの外の宇宙が、オレンジ色の閃光に包まれた。
読んでいます。
ファイアーバードの巨大な大砲が火を吹いた。砲口からオレンジ色に輝く光の奔流が
吐き出される。
ビームは正面の隕石に当たると、そこに身を潜めていた海賊もろとも、その鉱物を一
瞬にして気化させた。そのまま直進し、行く手を遮る多数の岩槐をドロドロに溶解させ
ながら、小惑星帯を一気に貫いて行く。
衝撃波が宇宙船を正面から襲い、機体は激しく身を躍らせた。隕石の細かな破片が装
甲板の表面を叩く。船内ではバラス人たちが、その大柄な体を手近な物にかじりつかせ
て揺れに耐え、嵐の過ぎ去るのを待った。
数十秒後、振動と爆発光が一段落すると、ブリッジのクルーたちは顔を上げて、窓の
外を見た。先程まで前方を壁のように塞いでいた隕石は跡形もなく消え失せ、さらにそ
の奥には、アステロイド群を突き通す、開通したばかりの宇宙トンネルが、遥か向こう
まで続いていた。坑道の縁にあたる隕石は、まだ融けたばかりの灼熱光を放ち、燻り続
けている。
恐るべきプロトンビームの威力だ。
バリリは思わず歓声を上げ、拳を突き出す。
「やったぞ、畜生め!向こうに星空が見えてるぜ!」
余韻に浸る間もなく、バイアスが命令を発する。
「プラズマエンジン始動、最大出力。緊急加速!」
「了解。エンジン点火!」
ブリッジに電子音が高く鳴り響く中、セムはブーストペダルを蹴り込んだ。
ひさしぶりだな。
またまとめたいのだが・・・。筆の進みはどうか?
そろそろギブの気配か?
で、バラス人の形態について聞きたいのだが、
目は、目はどうなっているのだ?
五つの複眼でよかったんだっけ?
>>302でセムは三つ目となっているが、バイアスは五つ目らしい。
過去の戦闘で失ったのかあるいはバラス人はいくつかバリエーションがあるのか・・・? でも個性はあるな。
それからいつか漏れのサイトに「大宇宙の群狼」を収録したいのだが、ダメかね?
はっきりいうが、金なぞ一文も持っていないのだが。
310 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/03/10 12:33
今読んでます。リュウがどうなるのか気になる。
311 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/03/10 13:59
その意気や良し。
これで1が、R.バックマン、みたいなオチだったら
ホントに笑える。(正体はだれだって感じで)
作家生命の危機かも
おおまかなあらすじ書いて。
レンズマンというよりローダンに近いかな。
天から降ってくるナレーション?
ワイズクラックのない台詞?
バラス星系の文化・習慣についての描写が欲しい
連載する時は下書きメモを用意する
時間の経過に緩急をつける
名作からアイデアを拝借する
もう一回書き直せば確実に良くなる
>>309 転載については、全然構いません。もともと練習用の捨て作品だと思っとりやすんで。
あと出来れば、そちらのサイトのアドレスも教えて頂ければ。
やっぱり、そちらのお客さんの反応も知りたいんでね。
(目玉の数は、黒人、白人、黄色人みたいな、そんな感じです。別に厳密な決まりが
あるわけじゃなく、単純にビジュアル的に見分けやすいかなと)
>>310 これ書いて悟ったことのひとつに、基本的に小説ってのは主人公を外して話を進めちゃ
いけないんだなってことです。エイリアン話になった途端、サーって客が引いていった。
>>311 そこらのアマチュアですよ。
>>312 新聞小説と同じで、その場その場で読んで頂ければ。全部読んでくれなんて、無茶は言わんとです。
>>313 天から降ってくるナレというのは、痛いとこ突いてきますねえ。
ワイズクラックって何ですか?あと下書きメモって?
次回は今週末?
>314
了解した。
サイトは、まだスペースを拝借していないのでその内に。
すまん、オフでの仕事がいそがしくって。
つーか忙しいとは思うが、第二部(?)の方をたのむ。
バラス人の複眼の数については了解。
それから、ちと漏れに言わせてくれや。
>>305の当たりとか零ジィみたいですな。「宇宙戦艦だいわ」や
「宇宙海賊船長」が脳内に・・・。
耐ショック、耐閃光防御にチョト萌えたぞ。次は電影クロスゲージだな。
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|Д`) ダレモイナイ・・ハァハァスルナラ イマノウチ
|⊂
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░▓▒░ ハァハァ ハァ
▒▓█▓░ ハァハァ ハァ
░▓▓▒ ハァハァ ハァハァ
▒░░ ハァ
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░▒▓░ ハァハァ ハァ
░▓▓▓▒ ハァハァ ハァ
░▒█▓░ ハァハァ ハァハァ
░▒░ ハァ
土、日、跨ぐべ。
セムがペダルを踏み込むと、エンジンは瞬時に臨界点を超え、その内腑に溜め込んだ超高温の
息を、轟と吐き出した。
ノズルからプラズマ炎が、巨大な手の平のように広がり、闇に沈む隕石群を明々と照らし出す。
ファイアーバードは猛烈な推進力に後押しされると、運動量ゼロの状態から、一気に亜光速ま
で加速し、宇宙のチーターさながらスタートダッシュをかけた。正面から殺人的なGを浴びなが
ら、銀色の鳥は、開通したばかりの宇宙トンネルを一気に駆け抜けようとする。
船内ではバラス兵たちがそれぞれのシートにかじりつき、激しいGに耐えている。ブリッジの
セムはハンドルを引き千切らんばかりに握り締め、重力シートに押しつぶされるようにして背を
張りつけていた。
正面ガラスの向こうでは無数のスターダストが猛然と向かって来ては、すぐさま目にも止まら
ぬスピードで後方へ飛び去って行く。
するとそのわずか数秒後、突如その情景がピタと凍りつき、まったく動かなくなった。瞬間、
高速宇宙船は急に襟首を掴まれて引き戻されたかのように、荒々しく船体を震わせて急停止する。
虚を突かれたエイリアンたちは、前方に放り出されるようにして、のめった。船体がバラバラに
分解しかねない衝撃の直後、船内はすぐに静かになった。
パネルに頭を打ちつけたセムは、呻きながら顔を上げた。そして思わずシート上で身を捻ると、
訳も分からず後方を見た。
「何だ?!」
ナビゲート席のバリリは頭を振って悪態を突くと、後方モニタースクリーンをオンにした。宇
宙船の尾部。その外版に、直径30センチくらいの小さな円盤型の金具が、いつの間にか貼り付
けてある。おそらく電磁石か何かだろう。そして、その金具の中心からは、鋼鉄のワイヤーが張
り出していて、銀色の線はピンと張り詰めたまま、後方へ続いている。
真空の闇を一直線に切り裂きながら、ワイヤーは数百メートル進み、最終的にその先に浮かぶ
巨大な隕石とつながっている。
ワイヤー先端の金具は、その岩肌にしっかりと打ち込まれていた。
バラス人たちが唖然として眺めていると、巨大な岩槐は、ワイヤーに引っ張られた慣性力を維持
したまま、停止しているファイアーバードを追いかけて来た。鋼鉄線はその緊張を緩ませながら、
優雅にとぐろを巻いていき、二者の距離を縮めていく。やがて隕石は最接近すると、その勢いを保
ったまま、宇宙船のエンジンノズルに衝突した。ノズルは陶器の皿のように砕け、セラミックの破
片が周囲の空間に飛び散る。外板にひび割れが走り、そこから青やオレンジの炎が次々に吹き出し
てくる。乗員たちはカクテルシェイカーに放り込まれたように、室内で振り回された。
船内は一瞬暗転すると、すぐに予備電源に切り替わった。ブリッジでは警報ブザーが鳴り響き、
投影スクリーンに損傷箇所のデーターがせわしなく流れ始める。
赤い非常ランプが明滅する中、セムは二度も打ち付けられた体を起き上がらせると、
「畜生・・・海賊どもが!」
怒りに声を震わせながら正面に目を向けたセムは、ハッと息を呑んだ。ガラス一枚隔てたすぐ向
こう、船首甲板の上に、いつの間にか黒い宇宙服の男が片膝を突き、腰を落としている。男は背中
にライフルを斜めに背負い、バイザーの奥の目を、ジッとこちらに向けている。
ヘルメットの額の部分には、金色のクロスボーンが光っていた。
海賊はバイザーの奥の目を光らせると、手に持っている円盤型の金具を甲板にガチリと押し
付けた。それは宇宙船の尾部に取り付けられたものと、まったく同じものだった。海賊は甲板
を蹴って飛び上がると、素早くガラス越しの視界から消えた。金具からは、またも鋼鉄のワイ
ヤーが張り出し、上方の宇宙空間へ続いている。もちろん、その鋼鉄線も小惑星につながって
いることは間違いない。
バリリは席を立つと、ガラスに駆け寄った。他のバラス人たちも各部署で一斉に、最寄りの
窓に張り付く。宇宙船の周囲では、複数の海賊の影が、原子を巡る分子の群れのように、忙し
く飛び交っている。黒い海賊たちは手に手に同じ円盤金具を持ち、甲板の上をすれすれに滑空
しながら、電磁石を次々に貼り付けていった。
ファイアーバードはワイヤーによって四方八方に引っ張られると、その力の均衡点で静止し
た。大小の隕石に括りつけられたファイアーバードは、完全に身動きを封じられてしまったの
である。
金属を引っかくような軋み音が船内に響く中、隊長のバイアスは声を発した。
「バリリ、被害状況は!」
「メインノズルに隕石が突っ込みました。エンジンルームに火災発生、自動消化装置が作動中
です。損害の程度は不明ですが、こっぴどくやられた事は間違いないでしょう」
船内モニタースクリーンには、燃え上がる機関室の様子が映し出されている。オレンジ色の
炎に包まれた室内は、灼熱地獄と化しているだろう。
「熱が引くまで近寄ることも出来ない。復旧には良くて2、3日、下手すりゃ1週間・・・敵さん
もそこまで待っちゃくれないだろうが・・・」
その時、不意に窓ガラスの外が眩い光に包まれた。
突然、窓ガラスの外が眩い光に包まれた。
エイリアンたちが反射的にそちらに目を向けると、向こうの隕石群の隙間から、いつ
の間に用意されていたのか、投光機の白い光が、真っ直ぐこちらに向けられている。複数の
サーチライトの光線に照らされ、ファイアーバードはその白く輝くシルエットを宇宙の闇か
ら鮮やかに浮び上がらせた。
バラス兵たちが眺めていると、浮遊する隕石群の岩陰から次々に海賊たちの群れが姿を
現した。漆黒の宇宙迷彩スーツの男たちは岩肌に立つと、不気味な沈黙を守りながら、野獣
のように獰猛な視線をこちらに据えた。それぞれの手には、ロケット砲やレーザーカノンな
どの得物を持ち、しっかりとこちらに狙いを定めている。
四十名は下らない海賊の勢力を見回している内に、バイアスは不意にその五つの複眼を大き
く見開いた。その視線は、ある岩槐の上に立つ、二つの人影に注がれている。二名の黒い海賊
は旧式のレーザーライフルを杖のようにして、垂直に立てている。銃身の先には大振りのバヨ
ネットが装着され、更に頂点の切っ先には何か、二つの丸い塊のようなものが乗っかっている。
それはバラス人の、鱗に覆われた、血まみれの首級だった。
「ヤン!クレド!」
遅れて気付いたバリリが叫んだ。窓の外では、変わり果てた姿の戦友二名の生首が、海賊た
ちによって銃剣に突き刺され、松明のように高々とかかげられている。死者の虹彩のない複眼
はカッと見開かれ、宇宙の虚空を睨んでいた。
「何てことしやがる!何てこと!」
バリリは怒髪天を突き、握り締めた拳を震わせた。船内各所でも、外の異変に気付いた兵隊
たちから、どよめきと怒りの声が上がる。
セムはライオンのような唸りを発すると、腰のホルスターからレイガンを引き抜いた。エネ
ルギーパックを確認すると、無言で席を立ち、扉へ向かう。
その背後から、バイアスが手を伸ばし、肩をがっしりと掴まえた。セムは肩越しに振り返る
と、無感動な声で言った。
「離して下さい、隊長」
「待て」
「もうこれくらいで充分でしょう。やられっぱなしという言葉は、バラスの辞書には無い筈だ」
「バリリ!」
突然の怒声にバリリは雷に打たれたようにビクリと動いた。
「ハッ!」
「あの光は何だ」
バイアスの指差す方向を、バリリは振り返って見た。
バイアスの指差す方向に、バリリは目を向けた。
窓ガラスの向こう、先ほどプロトンビームで射抜いたばかりの小惑星帯トンネルの中央辺りに、
小さな機体が浮かんでいる。宇宙船と呼ぶには小さすぎる箱型のそれは、無蓋の宇宙ハシケのよ
うだった。
ハシケには数人の海賊が乗り込み、その内の一名が手持ちのグリーンのライトを掲げている。
他の投光機とは色合いも強さも異なるその光は、しきりに明滅を繰り返していた。
バリリは目を細めると呟いた。
「発光信号・・・」
「訳せ」
バイアスは命じた。バリリはグリーンの光を見詰める。
「『リアクターの接続を切れ・・・拒否すれば攻撃を再開する』」
「セム、指示に従え」
「しかし!」
「やるんだ!」
セムは隊長を睨んだが、黙って席に戻ると、ボタンを操作した。
「・・・受領信号を出せ」
バイアスが命ずると、バリリは操作盤を操り、船外装備の投光機を明滅させた。遠くにいるハ
シケはそれに応え、再び信号を送り始める。
「『隊長の・・・バイアスはいるか』。バイアス!」
バリリは驚きの声を上げた。
「なぜ連中が隊長の名前を?!」
「別に不思議なことは何も無い」
バイアスは口元に皮肉な笑みを浮かべた。
「俺は、向こうの首領とは初対面じゃない。懇意という訳でもないがな」
バイアスはバリリを見下ろすと、
「こう答えろ・・・『バイアスはここにいる。デュークに会わせろ』と」
バリリがボタンを操作すると、ハシケ側はしばしの沈黙の後、ライトを点滅させた。
「『出て来い・・・ただし一人でだ。『狼の首(ウルフ・ヘッド)』に招待する』」
バリリとセムは顔を見合わせた。
「『狼の首(ウルフ・ヘッド)』?」
「招待に応じよう」
バイアスは残忍な笑みを浮かべた。
「楽しみにしてろよ、若造・・・とびきりの土産を用意して行くからな。それはお前自身の首だ!」
竜人の剥き出しの牙がギラリと光った。
325 :
大宇宙の群狼:02/03/26 21:54
掟破りの、自主保存あげ。
つづく
そんなことより、アンドロ姉ちゃんはどうなったんだ?
327 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/03/27 23:50
わーい続きだあ。
>326
生首状態で頑張ってるんでしょう多分。
>>325 ワイズ・クラック(wise crack) というのは「気の利いた発言」のことです。
”牛は笑うと鼻から牛乳を出すの?”みたいな台詞。
316は何が起こっているんだ?
330 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/04/01 06:14
バラス人ばっかりの状況をなんとかしてぇん
332 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/04/11 00:33
ちょっとわくわくしますけど、続き読まないと冷めてしまいます。読ませて。
実生活が忙しいので、もう少しかかる。
335 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/04/26 10:32
終わりか?
あ〜ん、続きかとオモタヨ。
337 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/04/26 14:07
タイトルを見てフッと気がついたが
「オリジナルでない小説」ってなんだろう?
盗作?
338 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/04/26 14:18
最近の出版界ではゲームやアニメのノベライズが幅をきかせているので、
そうでない作品をオリジナルと呼んでいます>337
結局あれだろ、大仁田と三田村邦彦が
大宇宙で喧嘩するはなしってことだろ?まとめると。
>>338 っていうかノベライズじゃないからって、オリジナルにこだわることはない。
いやこだわる必要はあるんだけれども、ようは完成度を上げろってこった。
>339
え? オーニタとミタムラって?
正直、こういうスレ読んで思う事は、才能無いヤツってマジ何やってもサエ無いなぁってこと(藁
オナニー人生ガムバッテ!キャハ!
とうとう煽りが来ました。
忙しいんじゃしょうがないけど。
343 :
大宇宙の群狼:02/05/06 09:45
緊急浮上!
344 :
大宇宙の群狼:02/05/06 10:04
(独り言)
あれだね、やっぱ小説ってのは自分の中でも「旬」てのがありますね。
それを逃すと、急激に書きたいという欲求が低下してしまう。
「群狼」の場合、三ヶ月越した辺りから、ガクンとテンションが下がった。
旬を逃さず、素早く書き上げるというのがポイントだなと思いましたね。
物語を「紡ぐ」という言い方が、実感として分かりましたわ。
本当に「糸を紡ぐ」感じ。要は集中力と根気です。
その点、「グイン・サーガ」とかすっげーなーと思った。
グインサーガは「品質」の旬がとおりすぎてますけどね。
346 :
誰かリライトしる!:02/05/31 05:02
☆ 。 + 。☆
。
* ★ +☆
☆ ・ _____________
/■\ /
( ´∀`)つ <
>>1は、おにぎり星に帰ります。みんな元気でね!
/ ̄ ̄ ̄ ̄.\ \
|) ○ ○ ○ (|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/″ \
/________ \
((  ̄ ∪∪ ∪ ∪ ∪∪  ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄
347 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/06/03 00:50
勿体無いなあ。
俺的名スレ。
349 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/07/15 09:15
350 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/07/26 19:31
これから書き上がった自分の原稿を日本SF新人賞に送るとこなんだけど、
他の応募者のレベルがここの1くらいばっかりだったりしたら嬉しいなあage
351 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/08/26 08:35
age
このスレ、まだあったんだ。さすがはSF板。
354 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/09/27 13:46
1はどこ逝った?
とりあえず、売れ線狙って、今、ラーゼフォンとCCサクラとちょびっと
のビデオアニメ見まくってます。
やっぱ、マイケル・クライトンみたいにSF作家もマーケティング考えなければね(笑)
キーワードとして不審船、拉致・・・・そうですね。仮想戦記として北朝鮮の崩壊に
時間SFテーマからめようとしてます。
宮部みゆき系列かな・・・(苦笑)
こんなのどうです?
主人公が引きこもり気味で、本当はエロゲーやってる高卒失業者だけど
それは流石引かれるので隠し設定。
ヴァルネラブルで傷つきやすいけど、それは「現代を象徴する青年像」
ということで、むしろ賞賛する描写をいれれば、ヘタレ読者の共感呼ぶと思います。
うん、そう。脇を美少女、美女キャラでかためて・・・
やっぱタイムマシンは2足歩行ロボット形態をとらせるべきですね。
でもって宇宙人なり未来人なりのオーバーテクノロジーからませて
「母の子宮」とかなんとかポエジーな名前をつける。
敵役キャラは中国の先行者。
よーし、これからシャア板いって設定マニアに協力もとめる!!
358 :
名無しは無慈悲な夜の女王:02/09/27 20:55
(・∀・)フザケロ!
359 :
大神源太i-mode@収監所:02/09/28 01:55
>355
素晴らしい企画ですね。よろしければ僕のコネで早川書房に話をつけましょうか?
早川は「星界の紋章」だかなんとかいうライトノベル化企画が思うほど金にならず
マーケティングに迷ってます。
やっぱ日本でSFやるならアニメとかゲームからませないとダメだけど、素人にはおいそれと手を出せない。
ここで4億8000万円の赤字を計上したブロッコリーと早川をむすびつけて、ブロッコリーにキャラ作成
早川に資金提供させ、「轄。からオリSF書きます!」設立したらどうでしょか?
最低資本金1千万枠も今年度中に撤廃されますし、早川の信用で株を上場。
バカアニメDVDに1万10万平気で出すアニヲタあいてにプレミアDVDつけて
株を売り出すというのはどうでしょうか?
>大神源太i-mode@収監所さん
ありがとうございます。そのときは是非お願いします
・・・なんだかSFというより取りこみ詐欺の片棒かつがされそうですが(笑)
>>359 つーかその設定でハチャハチャでも書いて欲しい(w
362 :
名無しは無慈悲な夜の女王:
一周年ということで、あげてみた