【西岸良平】三丁目の夕日 夕焼けの詩

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137ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
「夕焼けの詩第50集 ボート池」 全話講評

「三丁目漂流記」
記念巻が記念回でスタート。西岸版エヴァンゲリオン最終回とも言える佳作である。
「親の欲目」
西岸が持つ親子観を感じさせると共に、読者にもあらためてあるべき現代の親子関係を考え
させる微笑ましいオチがついた傑作。
「オーバーコート」
レギュラーキャラでは比較的印象が薄い木下家が主役のため地味な感がある話だが、
極貧生活の中で獲得した超能力という微笑ましいアイデアとこれに関連させたオチが良く
効いている。
「三匹のゴースト」
作中にも明記されているとおり、C・ディケンズの「クリスマスカロル」ネタ。
ただし、原作の主人公スクルージ氏は老人だが、これを若者に置換えて別なテースト
を狙っており、決して単なるパロディだけに終わっていないのはさすがである。
「年越しそば」
歳末の雰囲気が良く出ている作品。オチも面白い。
59頁の2段目(鈴木一家の出前についての会話)のコマの吹き出しの位置がおかしい。
「光る眼」
「トリフィドの日」「海竜めざめる」等の作もあるSF作家ジョン・ウインダムネタ。
SF好き・映画好きな西岸らしい異色の正月ネタでもある。
グロな描写は避けられているが結構残酷な展開、ラストのちょっとシニカルな西岸の
コメントが面白い。
138ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2 :04/10/01 20:20:51
「節分の客」
煙草屋のおタケさん主役の安定した出来栄えの作という感じ。
おタケさんの境遇からすれば、他人の不幸は蜜の味という心境になるのもわからない
ではないのだが…
「チョコレート」
西岸の実体験もあるのだろうが、他愛無いバレンタインデーネタであり、特筆すべきものは
無く出来は悪い作。
「パチンコ」
新一郎の父(=一郎)は中卒の税理士(日商簿記1級合格による受験か?)ということに
なるが、これは珍しい。高卒の税理士は多いけど。
「春眠」
春のけだるい雰囲気が良く出ているし悪い作品ではないが、
なぜかレギュラーキャラ(勝ちゃん=新聞配達少年C君、吉田さん一家等)が匿名で登場する
作品。ニワトリは「ケセラケセラ」(第9巻)に登場したサブちゃんが飼っているコケ公を
使う手もあるし、牛乳配達もミヨちゃん(第4巻の「サクラチル」で初登場、
第8巻の「夜明けのランナー」にも登場)という古くからのレギュラーキャラがいるのだが。
西岸のレギュラーキャラ起用に関して疑問を感じさせる作ではある。
「スプリング ハズ カム」
タイトルにちなんで、冒頭からさりげなくシェリーねたをかます西岸。
怪人Xも登場する(本筋には関係しない)SFタッチの作。
時間軸という表現が出て来るところを見ると、やはり西岸は2ちゃんをROMっている
ようである。
一平が歩く隣町へ続く丘は、五月の風(第8巻)でミッちゃんが佇んでいた丘だろうか?
絵の感じが随分変って来ているので判断に苦しむところではある。
139ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2 :04/10/01 20:21:32
「ボート池」
善福寺公園あたりがモデルであろうか。内容は他愛無い六さんの失恋話に過ぎない駄作。
「五月の旅人」
日真田氏シリーズ。本格謎解きという物語ではなく、松本清張風の人探しもの。
御都合主義の展開が目に付く作品だが、いかにも日真田氏ものらしいあっさりした締めが良い。
「コウモリ」
西岸が得意とする動物擬人化ネタ。ユーモア溢れる楽しい作品である。
逆さにぶら下がっているコウモリゆえ童話の展開も逆さというオチがいい。
「お姉ちゃんのお古」
179頁(左上)に吹き出しの位置がおかしいコマ(夏美と友達の会話)あり。
内容は生活観溢れる好編である。
「相合い傘」
御都合主義な展開の駄作であり評価すべきものは無い。
「夏至」
唐突な円盤山という山の登場にも納得がゆかないし、オチも見える感がある凡作。
「三丁目 スタンド・バイ・ミー」(第49巻)とは異なり、
一平とサブちゃんの2人旅というのも何気に地味で寂しいものがある。
第50集総評
ほとんどの作は立ち読み済みであったが、改めてコミックスで再読すると
作者西岸の細かい意図が読み取れて楽しめるものがある。
140大人になった名無しさん:04/10/01 20:50:51
詳細なレポートありがとうさんです。
今後のスレ運営に関してのメルクマールになりうるレスかと。