戦国ちょっといい話36

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245人間七七四年
徳川家康が駿府城で少々病気になったが、すぐに回復した折のこと。

家康が脈を取りに伺った医師衆に向かい「気分がよく、食事もすすむ」と言うと、
医師衆は「それはすばらしい。『命は食に有り』といいますから、
何よりめでたいことにございます」と、申し上げた。

すると家康は「『命は食に有り』ということを其の方どもはどのように心得ておるのか。
例えば今年生まれた赤子に乳を飲ませる時には、乳が足りるように、飲ませすぎないように
と思う親たちの心得が必要だ。およそ人にとって飲み食いする物が大事なのだ、
ということではないだろう」と、言った。

医師衆はいずれも承って「御もっとも至極の上意でこざいます。
『命は食に有り』ということを、只今まで間違えて理解しておりました」と申し上げた。

――『駿河土産』