戦国ちょっといい話21

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799人間七七四年
慶長5年(1600)7月下旬、西軍挙兵の報に接し、いわゆる「小山評定」を切り抜け、大戦の予感に高ぶる徳川家康は、
通りかかった家臣の津田小平次秀政に声をかけた。

「こたびの戦に勝てば、褒美は思いのままじゃ、励めよ!ときに小平次よ、お前は褒美として何が欲しい?
今から、褒美の約束をしてやっても良いぞ。」
「思いのままになるのは殿でしょう?まあ、特に欲しい物は無いので、その時になったら考えます。」

「そうは言っても、侍たる者が「何も望みは無い」などと言うことはあるまい。遠慮せず、何でもいいから言ってみろ。」
「では・・・それがしも近ごろ数寄心とやらに目覚めたので、名物茶器『有明の茶入』を頂戴しとうござる。」
「ほほぅ?」

『有明の茶入』は、別名『安国寺肩衝』。その名の通り、この時点では安国寺恵瓊の所有である。
つまり、手に入れるには西軍に完勝し、総大将・毛利家を屈服させ、その参謀である恵瓊を倒さねばならない。

何のことはない、欲が無いどころか
(勝てば、などとヌルい事を言わず、圧勝して毛利の財産を剥いで、我らに分け与えるくらいの事をして下され。)
という、戦国武士らしい大それた望みであり、激励だった。

「こやつめ、ハハハ!」
「ハハハ」
家康は約束を守り、関が原の戦いの後、没収した恵瓊の私財の中から『有明の茶入』を小平次に与えた。



・・・・・・数年後に小平次を襲う災難↓を、二人はまだ知らない。
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