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人間七七四年:
慶長15年(1610)、大御所・徳川家康は、駿府城に家臣の安藤帯刀直次を呼んだ。
「お前をわが子・頼宣の家老として、その行く末を任せたいと思う。」
「ははっ、謹んでお受けいたします。」
「ついては、江戸の将軍家に逆らわぬ旨、誓紙を書いて欲しい。」
直次は顔色を変えた。
「これは、したり!千に一つ頼宣様が異心を抱けば、それがし、誓紙など無くともお考えを改めるよう、
諫言いたしまする。
万に一つお聞き入れ無くば、それがし、誓紙あろうとも主に従い先鋒として将軍家と一戦し、果てる所存。
よって、誓紙に意味など無く、書く必要なございませぬ。」
そう言い捨てて直次は退出し、ついに誓紙を書くことはなかったが、家康はその硬骨を良しとして、
直次を咎めようとはしなかった。