戦国ちょっと悪い話16

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752人間七七四年
お金を借りたい


弘治四年(1558)、大和宇智郡(現奈良県五條市)でのことである。

百姓一揆「国人一揆さん国人一揆さん」
国人一揆「なんだ!?徳政令ならお断りだぞ!」
百姓一揆「いや…、それもちょっと関係あるんですけどね、去年酷い日照りだったじゃないですか?」
国人一揆「ああ、ひどかったなあ」
百姓一揆「あのおかげで不作になって、生活がめちゃめちゃ苦しいんですよ。それでお金が無いので
      金融業者から借金しようと思ったんですが…」
国人一揆「借りればいいじゃないか。」
百姓一揆「それが業者の奴ら、徳政を警戒してわしらに金を貸してくれないんですよ!」
国人一揆「そりゃあそうだろうなあ。おまえら困ったら徳政一揆起こすもん。
      俺らもずいぶんひどい目にあった。」
百姓一揆「で、国人一揆の皆さんに、誰か金の貸し手を斡旋してもらいたいんですが?」
国人一揆「俺たちが!?なんでそんな事を!?」
百姓一揆「もうあなた方しか頼れる所がないんですよ!お願いです。高野山の僧でもなんでもいいので
      誰か斡旋してください!」
国人一揆「そう言われてもなあ…。紹介したあと徳政一揆なんて起こされたら、
      我々の信用問題になるし…。」
百姓一揆「金さえ貸してもらえれば、今後最低10年間は徳政の訴訟を起こさないことを誓います!
      それにこのまま我々が困窮して村から逃散でもしたら、国人のみなさんも困るでしょ?」
国人一揆「まあ確かに…」

と、まあこんな事があり、宇智国人一揆はその影響力を行使し金融業者に百姓への貸付を承認させた。
その上で国人一揆と百姓一揆は相互に、お互いの中で徳政一揆を企てる者がいたら、その者を
処分すること。幕府や守護が徳政を実施してもそれに従わないことを誓い合った。


まあ、いい話とも悪い話とも言い難い感じですが、
百姓などに取って良いことのように思われがちな徳政令には、こういうマイナス面が有ったんだよ、
と言うお話。