戦国ちょっといい話8

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379人間七七四年
徳川の、諏訪の原城が武田軍の山県昌景の部隊に攻められ、合戦となった折のこと。
城主、松平康重は、山内冶太夫、進士清三郎、山崎惣左衛門の三人を、殿とした。

山内は矢の名人であり、その矢をもって敵を射払い退いた。が、終に矢種が切れ
そこに山県の軍勢が追い迫ってきた、その時、

進士清三郎、山内に自分の矢を投げ渡す。
山内、その矢を取って射放てば、武田方の志村金右衛門と言う者の胸板を貫き、
後ろの松の木まで貫通した。

結局、この日の合戦は物別れとなった。そして松平康重の元に、山県より使いが来た。
「敵ながらすばらしい弓矢の技であった。強弓精兵無双である。」との絶賛の言葉とともに、
志村を貫いた、あの矢を持ってきたのだ。

その矢には、進士清三郎の名が彫ってあった。そこで康重は進士を賞しようと呼べば、進士
「これは自分が渡した弓を山内が射た物でござる。」と答えた。
そこで山内を呼ぶと、山内も「これは進士の名が書いてある矢である以上、進士が射た物でござる。」
と言い出す。
双方譲らず、これに感じ入った康重は、双方に感状を与えたと言うことである。

そんな、罪の擦り付け合いならぬ、功を擦り付け合ったお話。