戦国ちょっといい話8

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274人間七七四年
関ヶ原の時の話である。

田中吉政の陣中に、田辺甚兵衛と言う者がいた。この時10歳。そう、子供である。
彼は父が早くに死んだため、田辺の惣領として、この幼さで合戦に出たのだ。
そして何と、田辺家の家来達と共に敵の首を獲り、褒美をいただいた。

後に黒田長政が田中吉政と四方山の話をしていた折、吉政からこの話が出て、
lこれにいたく感動した長政は、吉政に頼んで甚兵衛とその家来を呼び出してもらい、陣兵衛には
自ら杯を与え、また、家来たちにその時の状況を詳しく語らせた。

家来達が言うには、自分達が騎馬の敵を、馬より抱き落とした所を、甚兵衛が刀を抜いて
かかったのだと言う。
その時甚兵衛、わなわなと震えていたが、家来達がその姿を辱めたので、震えながらも
立ち寄りて、首を獲ったのだそうだ。

長政はこの話に、さらに大きく感じ入って、
「この子はますます勇士の兆しのある少年だ。震えずにかかるような者は、頭が空っぽなのだと
言っていい。また、辱められてかかるのは、義と言うものを知っているからだよ。」と、
そのように絶賛したそうである。

それにしてもこの時代、武士の家に生まれるとは、これほどまでに過酷で大変なのだ。そんなお話。