>>602 (ああ、なんとも寒々しい光景であるねえ)
(無邪気に喜んでいる氏綱も、賢しげに忠臣を装っている千熊丸も、どちらもなんとくだらないのだろう)
(はははは…)
(……さて、そろそろ消えてもらうよ。京兆どの…)
それでは、わたしはこの辺りで失礼いたしましょうね。
兵の用意と安宅水軍、十河衆の招集につきましては、…ん…、速やかなる手はずをもって整えましょう。
──退室し、邸へと向かう夜道──
さあて、如何に計らおうかね。
大規模な兵力の動員の目的を、内外に漏れないように注意を払え、かい。
ふふっ……
これは面白い。
きっと当家の土は赤黒い血を吸うこと数多だろうよ。
──その日以来、三好家は馬を集めて弓の手入れをし、来るべき戦の用意を粛々と進める。
計画の核心を知る者は当主三好長慶と謀主松永久秀、重鎮三好義賢のみであり、
また全ての采配も彼らの手によって行われた。
殊に、徹底した情報統制のために容赦のない口封じが行われたが、これらを一手に仕切ったのが久秀である──
兵壱「なあ、厨房を長く預かってたおやっさんだが、三日ぐれえ前から行方が知れないらしいぜ…」
兵弐「本当か? …何事も無きゃいいんだけどな。………!!!」
ざくっ
…とさっ……
隠密「………。」
さっ