政弘「殿、弾正少弼殿から降伏の使者が…」
弘忠「うむ、通せ」
実綱「長尾景虎の名代、直江実綱にございます」
弘忠「ほう…直江殿か、これはすまないことをしたな、与板城は貴殿のためにとってあるゆえすぐにお戻りになられよ」
実綱「…わが主、長尾景虎はすべての領地を御館様に返還し、剃髪して隠居したいと申しております」
弘忠「仔細は伝聞で知っておる、政景殿に後を継がせるのがよかろう」
実綱「しかしあくまでも越後は鎌倉府の領地、ここは御館様にお返ししたいとの…」
弘忠「関東管領殿は、近々鎌倉にお戻りになる」
弘忠「わしに越後を取られるのが悔しいとはいえ、今越後をお返しすることで逆に御館様を越後に縛り付けようとするのはそれこそ佞臣の業」
実綱「分かりました、ではわが主に伝えてまいります」
数刻後…
実綱「条件はすべて飲む、と…。」
弘忠「うむ、景虎殿は会津の蘆名殿がお招きしたいということだ、わしも異論は無い」
実綱「ところで、他の者の処遇については?」
弘忠「所領を没収するつもりは無い、景虎殿に付いて行くならそれでもよいがな」
実綱「では、この実綱、これからは久慈殿に御仕えいたします」
弘忠「ありがたい、では実綱、さがってよいぞ」
実綱「はっ」
かくして、長尾景虎の家臣の大半は久慈家に帰参した。