HIV (human immunodeficiency virus)感染者の予後は、近年著しく変化してきている。
中でも、減少してきた死亡因の変化には著しいものがある。従来の日和見感染症
が死因として減少し、C 型肝炎による肝疾患による死亡が増加してきているのである。我
が国においても肝疾患、特にC 型慢性肝炎とその合併症による死亡が増加してきており、
血友病患者のサーベイランス結果によれば、1997 年以前と1997 年以降では肝疾患に
よる死亡率は倍増していることが報告されている1)。
この背景には、むろん、多剤併用抗レトロウイルス療法(HAART ; highly active
anti-retroviral 以降、少なくともHAART を享受できる先進国においては、
HIV 感染者の死亡数は次第に減少してきている。その結果、HIV 感染者における死因は、
従来に比べて大きく変化してきている。例えば、欧州からの報告では、HIV 感染症患者
の死因のうち末期肝疾患が占める割合は、1991 年には11.5 %であったが、1996 年
には13.9 %、1999 年には50.0 %と急増し、そのうち93.8 %がHCV 抗体陽性であ
った2)。また、米国のCHORUS (Collaborations in HIV Outcomes Research-
United States) database によると、1997 年8 月から2000 年12 月までに135
人のHIV(+)患者が死亡したが、AIDS 関連死(例えば、非定型抗酸菌症、カリニ肺炎、サ
イトメガロウイルス感染症などの日和見感染症による死亡)は約半数に留まり、非AIDS
関連死が約半数であった。そして、そのうちの約90%が肝疾患関連であり、多くは慢性
C 型肝炎ウイルス(HCV)感染症による死と報告されている。